医療法人HSR名嘉村クリニックが、電子カルテ端末からのセキュアなインターネットアクセスを実現
HPE ProLiant DL360 Gen10サーバーを採用し、Windows Server 2016/Hyper-Vによるリモートデスクトップ環境を構築
"検討段階でHPE DirectPlusのコールセンターに連絡したところ、懇切丁寧に相談に乗っていただき、機種選定や内蔵ストレージのサイジングなど、使用目的や規模に応じた適切な提案をしていただけました"
―医療法人HSR名嘉村クリニック 情報管理活用推進室 室長 石嶺 哲芳 氏
医療法人 HSR名嘉村クリニックが、ファイルサーバーリプレイスをきっかけに電子カルテ端末からのセキュアなインターネットアクセスを実現するリモートデスクトップ環境を構築した。HPE ProLiant DL360 Gen10サーバーをファイルサーバーとしつつ、インターネット接続用の仮想PCをHyper-Vで構築。完全なネットワーク分離を果たしたうえで、HPE ProLiant DL20 Gen9を用いた通信制御を実施することで、医療機関に欠かせないセキュリティを確保しつつ、手軽なインターネットアクセスを実現。ユーザー利便性を向上させ業務効率化を達成した。
業界
医療
目的
まもなくサポート終了となるWindows Server 2008のファイルサーバーのリプレイスを機に、電子カルテ端末からセキュアにインターネットにアクセスできる環境を構築する。
アプローチ
サーバー上にHyper-Vで仮想PCを構築。ネットワークセグメントを切り分けたうえで、一方向のみの通信で電子カルテ端末からリモートデスクトップ経由でインターネットに接続する。
ITの効果
・オンラインストア「HPE DirectPlus」のアドバイスで要件に最適な構成のサーバーを調達
・電子カルテシステム用ファイルサーバーとして、HPE ProLiant DL360 Gen10を採用し、自動化ツールによってシステムの最適化を実現
・性能向上に伴い、Hyper-Vでインターネット接続用の仮想PC10台(5台×サーバー2機)を増築
・Hyper-Vの設定でネットワークセグメントを分離(電子カルテシステム/インターネット)し、HPE ProLiant DL20 Gen9によるソフトウェアルーターでセキュアなインターネットアクセスを実現
・HPE ProLiant DL360 Gen10の7年標準保守により、長期利用を実現
ビジネスの効果
・電子カルテ端末から安心したインターネット接続が可能となり、医療の現場での利便性が大幅に向上
・電子カルテ端末から限定的なWebサーバーへのプロキシによるアクセスも可能となり、外部検査機関からの検査結果取得時の利便性も向上
・「Silicon root of trust(シリコンレベルの信頼性)」によって、ファームウェアへの脅威から脱却
ご導入製品
チャレンジ
電子カルテ導入を機に院内ネットワークの刷新を決断
医療法人HSR名嘉村クリニック(以後、名嘉村クリニック)は、沖縄県浦添市を中心に、那覇市、宜野湾市などの地域医療を担う医療機関。創業者で院長の名嘉村博氏は、我が国の睡眠障害医療分野の先駆者として、数々の実績を挙げてきた。
「院名に入れたHSRはそれぞれ、HomeCare(在宅)、Sleep(睡眠)、Respiration(呼吸器)の頭文字。この3分野に注力していこうという決意を込めて命名しました」(名嘉村氏)
得意分野といえる睡眠外来をはじめ、呼吸器、一般内科、糖尿病、甲状腺の外来診療のほか、認知症外来にも対応している。1日の外来患者が200名を超えることもあり、クリニック=診療所としては県内有数の規模だ。近年は在宅ケアニーズの高まりを受け、訪問診療や訪問看護など在宅ケア分野に特に力を入れている。 2018年12月には在宅ケアと訪問看護の新たな拠点として4階建てのビルを新築。訪問看護ステーションやケアプランセンターを設置している。また、2020年から始まる那覇市地域密着型サービスの開始に向け、新規事業所の建築が始まっている。
また、名嘉村クリニックがユニークなのは、院内に情報システム部門として情報管理活用推進室を整備し、2名のシステムエンジニアを擁していることだろう。現在は3拠点で物理サーバー10台、クライアント140台を運用。電子カルテシステムも2015年に最新版に刷新している。
「当初から医療サービスの提供において重要なのは情報システムと考え、2000年の開院時に電子カルテシステムを導入するなど、この分野には積極的な投資を続けてきました。」(名嘉村氏)
「現在の電子カルテシステムは大病院向けのハイエンドな製品を導入しています。データベース構造が公開されていることからそのデータを活用し、患者様の待合状況をモニターできるシステムを独自開発するなど、スタッフのニーズに機動的に応えるシステム関連業務を展開しています」と話すのは、情報管理活用推進室 課長冨里 茂寿氏。
院内スタッフの情報共有にクラウド型のグループウェアも活用するなど、ITシステムの充実ぶりは大きな総合病院にも遜色ないレベルとなっている。
医療法人HSR名嘉村クリニック
院長
名嘉村 博 氏
ソリューション
Windows Server EOSを機に、老朽化したファイルサーバーをリプレイス
名嘉村クリニックでは、Windows Server 2008のサポートが2020年1月に終了することを機に、老朽化したファイルサーバーを刷新。同時に、かねてからの課題だったインターネットアクセスの利便性を改善するプロジェクトに乗り出すことになった。2018年夏頃のことだった。
「閉域ネットワークで運用する電子カルテシステムとは別に、医師、看護師、事務方を含め、医薬情報や近隣の医療機関の検索など、インターネットを利用する機会が多かったのです。そのため、各フロアに1台ずつインターネットに接続できるPCを設置し、数台のタブレットで補完する体制を整えていました。しかし、PCがある場に行かないと使えない、使いたい時に使えないなど、ユーザー利便性に課題がありました」と話すのは、情報管理活用推進室 室長 石嶺 哲芳氏。
機器選定に入った情報管理活用推進室では、既存サーバーのベンダーとともに、新しい電子カルテシステムのサーバーに導入していたHPEを候補に挙げた。
「ブラウザ上で構成を組むのが難しかったこともあり、検討段階でHPE DirectPlusのコールセンターに連絡したところ、懇切丁寧に相談に乗っていただき、機種選定や内蔵ストレージのサイジングなど、使用目的や規模に応じた適切な提案をしていただけました。また、Ubuntuをインストールしたサーバーをソフトウェアルーターとして使用することも検討していましたが、Ubuntuの動作情報などもご提供いただけたので、安心感がありました」(石嶺氏)
また冨里氏は過去の経験から次のように話す。
「前職ではHPEサーバー製品に触れる機会が多かったのですが、故障が少なく、信頼性の高さを実感していました。今回のプロジェクトでも他のサーバーメーカーに対して価格優位性が高く魅力的でした。またサーバーは稼働し始めると容易に入れ替えができないため、7年保守の安心感が決め手となり、導入を決断しました」(冨里氏)
名嘉村クリニックが採用したのは2台のHPE ProLiant DL360 Gen10、そしてHPE ProLiant DL20 Gen9だった。新世代であるGen10のモデルから、従来から提供する5年保守に加え、6年/7年の標準保守の提供を開始している。導入したWindows Server 2016の延長サポートは2027年まであり、7年保守が最適だったという。
「自働サーバー」として進化したHPE ProLiant DL360 Gen10を採用
1Uラックマウント型サーバーのベストセラーとして、世界で最も豊富な導入実績を持つHPE ProLiant DL360シリーズ。その最新モデルであるGen10は、「Intelligent System Tuning」という、性能を最適化する機能群を備えており、これまでハードウェアのセットアップに不可欠だったチューニングを自働的に設定することができる。たとえば、「Workload Matching(ワークロード最適設定機能)」では、固有のワークロードに対し、サーバーリソースを自動的に適合させることができる。テンプレート化されたワークロードプロファイルを選択するだけでBIOSを自動設定し、サーバーのチューニングに必要な時間を短縮することが可能だ。性能を高めたい場合には「Performance」、仮想化環境であれば「Virtualization 」を選択するだけで、最適なBIOS設定が完了する。
「情報提供を受けてWorkload Matchingを活用しました。テンプレートを選ぶだけで設定作業が完了したことには驚きました。仮想化環境向けの「Virtualization 」を選択するだけで済んでしまったので、サーバーを設定した実感が沸かなかったくらいです」(石嶺氏)
また、導入後の運用を軽減する機能やサービスが無償で提供されているのも、HPEのサーバーの特長であり、初期設定しておくだけで、障害時の迅速な復旧が可能だ。
「HPE Insight Online ダイレクトコネクト」を利用した「自動通報サービス」は、ハードウェアの不調を自働検知し、管理プロセッサーである「HPE iLO 5」が日本ヒューレット・パッカードのサポートセンターに通報する。また、1600を超えるシステムパラメーターを監視し、ログを収集する「Active Health System」によって、解決の手がかりを提供するとともに、根本原因の特定や対策立案も容易となる。
「実は導入後、1台のHPE ProLiant DL360 Gen10にトラブルがあり、マザーボードを交換しています。ログ収集など、その対応に多くの工数がかかりました。『自動通報サービス』などの便利な機能が標準で使えるのなら、はじめから活用しておけばよかったと思いました。今後は『Active Health System』などの管理機能を活用し、運用管理の効率化に役立てていく考えです」(石嶺氏)
電子カルテ端末からセキュアなインターネットアクセスを実現
課題だったインターネット接続の利便性は、次のような方式で解消された。
①2台のHPE ProLiant DL360 Gen10上に、Hyper-Vで各5台、計10台の仮想PCを構築。②HPE ProLiant DL360 Gen10はレプリケーションを取り、電子カルテシステムのファイルサーバーとして構築。③Hyper-Vの設定でネットワークを切り分け、ネットワークポートの1・2番を電子カルテ用ネットワークセグメントに、3・4番をインターネット用ネットワークセグメントにそれぞれチーミングを構成して接続。
「ネットワーク上、ホストと仮想PCは完全にセグメントが分離した環境になります。そのうえで、両セグメントを中継するサーバーとして、UbuntuをインストールしたHPE ProLiant DL20 Gen9を設置しました」(石嶺氏)。
HPE ProLiant DL20 Gen9 はポート指定によるパケット フィルタリングを利用して、電子カルテ用のセグメントからインターネット用セグメントに存在する仮想PCへのリモートデスクトップ接続のみ一方通行で通信できるよう制御している。電子カルテ端末で呼び出したリモートデスクトップからセキュアにインターネットにアクセスできるわけだ。
「万一、仮想PCがインターネットからマルウェアなどに感染しても、電子カルテシステムには一切影響を及ぼしません。リモートデスクトップはクリップボード制御でコピー/ペーストが使用できなくしており、電子カルテ側からの情報漏えいリスクも排しています」(石嶺氏)
さらにHPE ProLiant DL20 Gen9はホワイトリストで制御されたプロキシサーバーとしても稼働させ、業務上、どうしても必要なWebサーバーにのみ、電子カルテ端末からアクセスできるよう工夫されている。
「電子カルテ端末からダイレクトにアクセスできるのは、検査を依頼し、そのデータ取り込みに利用する外部機関のWebサーバーと、在宅診療で使用するクラウドシステムだけです。当初は中継サーバーにもHPE ProLiant DL360 Gen10の導入を考えていましたが、調達時にHPE ProLiant DL20 Gen9でも十分というアドバイスを受けて採用しました。トータルコスト抑制に繋がりました」(石嶺氏)
医療法人HSR名嘉村クリニック
情報管理活用推進室
室長
石嶺 哲芳 氏
医療法人HSR名嘉村クリニック
情報管理活用推進室
課長
冨里 茂寿 氏
ベネフィット
ユーザーからも好評な手軽でセキュアなインターネット接続
電子カルテ端末からインターネットにアクセスできるようになったことで、利便性、業務効率ともに確実に向上していると石嶺氏は手応えを語る。
「自席にいるまま、電子カルテ端末からリモートデスクトップを呼び出し、1クリックするだけの手軽さでインターネットが使えます。ユーザーからは非常に好評です」(冨里氏)
「インターネットへの接続状況をモニターできるシステムも構築しました。誰がどの仮想PCからインターネットにアクセスしているのか、リアルタイムで把握できます」(石嶺氏)
当初からネットワークセグメントを完全に切り分ける環境を想定していたため、サーバーのセキュリティは特に重視していなかったそうだが、導入後にあらためてHPE ProLiant DL360 Gen10の評価を確認し、サーバー自体のセキュリティも万全という思いを強くしたとのこと。
新世代であるGen10のモデルから、他のx86サーバーとは次元の異なる強固なサーバーセキュリティを実現しており、製造から移送・流通工程を含め、導入・起動、運用、廃棄までをセキュアにする。今後起こり得るファームウェア改変やマルウェア感染などのサイバーリスクから、オンラインでの問題検知と復旧が可能になっている。
「実感はありませんが、こうした環境は安心であることに越したことはありません。ひとつでもセキュリティリスクを減らし、利便性を広げられることは、業務効率の向上にも繋がります」(冨里氏)
最後に名嘉村氏は次のように締めくくった。
「今回のプロジェクトでは自社調達として初めてHPEサーバー製品を導入しました。システム部門からは製品そのものの品質や得られた成果とともに、カスタマー対応についても非常に満足したと聞いています。現代医療にとってITシステムは欠くことのできないインフラです。これをより充実させていくためにも、HPEには一層の支援を期待しています」
ご導入製品情報
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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