ネットワークアタッチトストレージ
NASとは
NASシステムとは、ネットワークに接続された大容量のストレージデバイスで、許可されたネットワークユーザーやクライアントが一元的な拠点からデータを保存、取得できます。
基本的に、NASデバイスはハードドライブ用のコンテナであり、ファイルの共有や認証のためのある程度のインテリジェンスが加えられています。NASデバイスは、Redundant Array of Independent Disks (RAID) と呼ばれるテクノロジーを使用しているため、保存されたデータを複数のハードディスクに分散、複製することができます。この冗長性により、ドライブ障害が発生した場合のデータの耐障害性が確保されます。
組織がNASを採用する理由
NASシステムは、汎用性、柔軟性、拡張性に優れているため、ストレージニーズの拡大に合わせて既存のソリューションに追加できます。あらかじめディスクを搭載することもディスクレスにすることもでき、USBポートを1つまたは2つ備えているため、プリンターや外部ストレージドライブをネットワークに接続でき、すべての接続ユーザーに新たな選択肢を提供します。
NASを管理するためにIT部門が必要か
NASデバイスは簡単に運用でき、ブラウザーベースのユーティリティから構成、管理できるため、ストレージを管理するためにITプロフェッショナルを待機させる必要は必ずしもありません。さらに、NASデバイスはリモートでアクセスが可能なため、プライベートなDropboxやGoogle Driveとして利用できるうえ、ストレージはずっと大容量で、月額費用もかかりません。
NASデバイスの仕組み
NASデバイスは任意のプラットフォームまたはオペレーティングシステム上で実行されます。基本的には、独立して稼働するようにオペレーティングシステムが組み込まれた、ハードウェアとソフトウェアのバンドルです。多くの場合は、ネットワークインターフェイスカード (NIC)、ストレージコントローラー、多数のドライブベイ、電源装置を単純に組み合わせたものです。NASデバイスには2~5台のハードドライブが格納され、冗長性と高速ファイルアクセスを実現しています。NASは小型のサーバーであるとみなされることがよくありますが、NASのコントローラーはストレージ用にディスクを管理するのみであり、サーバーとしては動作しません。
NASデバイスは、基本的には、ハードワイヤー接続のイーサーネット (RJ45) ケーブルまたはWi-Fiを介してネットワークに直接接続するアプライアンスであり、WANではなくLANを構成します。IPアドレスが割り当てられ、TCP/IPによりユーザー、サーバー、NAS間のデータ転送が行われます。NASは、従来のファイルシステムであるNew Technology File System (NTFS) またはNFSで動作して、リモートファイルサービスとデータ共有を実現します。デバイス上のすべてのストレージに対するアクセスは、ファイル共有を通じてファイルレベルで行われます。
NASデバイスは、ネットワークにマウントされたボリュームとして共有ストレージを提供し、NFS、SMB/CIFSなどのプロトコルを使用します。共有ストレージとして使用する場合、NASデバイスにより複数のサーバーが共通のストレージデバイスに接続されます。これらの「クラスター」は、クラスター共有ボリュームを介してフェイルオーバーに使用されることが多く、すべてのクラスターノードが同じデータにアクセスできるようになります。
NASは以下の要素で構成されます。
- ハードウェア: ストレージディスクまたはドライブ、プロセッサー、RAMを搭載したサーバーです。NASボックス、ユニット、サーバー、ヘッドとも呼ばれ、データストレージとファイル共有という2種類の要求のみを転送します。
- ソフトウェア: ストレージソフトウェアは事前構成済みで上記ハードウェアにインストールされており、ハードウェアに内蔵された軽量オペレーティングシステム上に展開されています。
- ネットワークスイッチ: ユーザーはこのスイッチを介してデータ転送プロトコルにアクセスします。基本的には、すべてをつないで要求をルーティングする中央サーバーです。
- プロトコル: Transmission Control Protocol (TCP) によりファイルが結合されてパケット化され、Internet Protocol (IP) を使用して送信されます。
NASを使用するメリット
NASシステムは効率的で拡張性が高く、低コストのストレージソリューションであるため、企業による採用が急速に進んでいます。NASシステムを利用すると、データに一貫してアクセスできるため、ユーザーは簡単に連携でき、顧客にサービスを提供できます。他のソリューションではなくNASを選択するかどうかは、現在のバックアップ/リカバリに関する業務要件にかかっています。データ保護プランとビジネスニーズに応じて、NASを利用する利点を以下に示します。
スピード
NASはLANに接続されたデバイスであるため、ファイルの保存、転送を高速で行えます。ファイルの高速バックアップも可能であるため、増分変更データを保護できます。
制御性
NASを使用すれば、企業はストレージにサードパーティを使用しないため、データに対するアクセスの完全制御を維持できます。
使いやすさ
NASは登場から年数を経ているため、管理者はNASのセットアップと管理の方法に慣れています。さらに、多くのNASアーキテクチャーには簡素化されたスクリプトや効率的なオペレーティングシステムが既にインストールされているため、簡単にセットアップできます。
安定したアクセス
専用ネットワーク上にあるため、ユーザーはどこからでもデータにアクセスできます。また、NASはオンサイトにあるため、インターネットサービスの中断の影響を受けません。
SANとNASのプロトコルの違い
ネットワークストレージの主なタイプは、NASとストレージエリアネットワーク (SAN) の2つです。NASとSANはいずれも、保存されたデータを複数のユーザーが同時に利用できるように開発されました。両者とも、ユーザーグループに対して専用ストレージを提供しますが、アプローチは全く異なります。
NASデバイス は、比較的手頃な価格のシングルストレージのデバイスで、イーサーネット経由でファイルを提供し、セットアップが簡単です。 SAN は複数のデバイスが緊密に連携するネットワークで、セットアップや管理がNASよりも複雑です。
ユーザーの観点からすると、この2つの最大の違いは、NASが音声、ビデオ、Webサイト、テキストファイル、MS Officeドキュメントなど構造化されていないデータを扱う一方、SANはデータベースに格納された構造化されたデータやブロックストレージを扱う点です。
さらに、仕組みもかなり異なります。両者ともI/O要求を管理しますが、NASはファイルごとの処理であるのに対し、SANは連続したデータのブロックを処理します。トラフィックの移動に使うプロトコルも異なります。NASはTransmission Control Protocol/Internet Protocol (TCP/IP) を使用するのに対し、SANではストレージネットワーク用にFCプロトコルや、イーサーネットベースのISCSIプロトコルを使用できます。
最後の違いは、クライアントOSからの見え方です。クライアントOSから見ると、NASは個々のファイルを管理する単一のデバイスとして認識され、SANはクライアントOSのディスクとして認識されます。SANはブロックベースのデータシステムであるため、「エコノミークラス」のNASデバイスに代えて、ビジネスクリティカルなデータベースの格納にしばしば利用されます。
中堅・中小企業がNASを採用する理由
データストレージに関して、小規模企業では、低コストで拡張性が高く、操作とデータバックアップが容易なストレージを必要としています。組織がこの問題を管理する方法について、数例を以下に示します。
通信
業界をリードする通信事業者が、限られた予算に収まる、管理の容易なバックアップソリューションを探していました。同社は、特に従業員の生み出す社内データのボリュームに悩んでおり、全部を格納できるディスク領域をどう確保するかが課題でした。1,600名を超える従業員がおり、少なくとも同じ数のデスクトップ、ノートパソコン、モバイルデバイスがあるため、同社の2PBのストレージ容量では不十分でした。また、定期的なバックアップを手動で行っていたスタッフを解放するための、最高レベルのデータ保護と簡単なメンテナンスも必要でした。同社は、低コストで高容量のファイル共有機能を備えていることからNASを選びました。
銀行
住宅ローン金融業界向けにクラウドベースのプラットフォームを提供するある大手企業では、300億個の小さなファイルを保存していましたが、そのボリュームは急速に増加しており、現在のストレージ容量では効率的に管理できませんでした。同社は、修理や拡張、メンテナンスの問題に悩まされ、顧客のセキュリティにも常に留意していました。信頼性の高いスケールアウトNASファイルシステムが見つかり、ストレージ効率を大幅に向上させるとともに、ラックスペース、電力、冷却、暖房などのコスト節減に成功しました。拡張性、柔軟性、可用性の高いシステムにより、ストレージに割く時間とリソースを減らし、顧客のためにより多くの時間を割くことができるようになりました。
刑事裁判
ある国の刑務所のシステムでは、職員と囚人の安全を確保することを目的とした高解像度映像監視のデータを確実に保存できるストレージシステムが必要とされていました。この刑務所では、既存のストレージアレイに可視性と映像を体系的に削除するための自動プロセスがなかったために容量の問題が発生していたうえ、高解像度映像だけにアップグレードしたことで問題が大きくなっていたことから、データをレビューして保存の要件に対応できる、容量がはるかに大きくて拡張の余裕があるNASソリューションを実装しました。
HPEのNASソリューション
HPEには、大企業から小規模企業までに対応し、セキュアで、カスタマイズされた、採算の合うNASソリューションがあります。HPEが提供する、耐障害性に優れた自己防御型のプラットフォームが、構造化されていないデータの保護に役立ちます。HPEソリューションの備えるデータ暗号化、高度なアクセス制御、ファイルアクセス監査、ファイル不変性、削除防止などのネイティブの機能は、セキュリティリスクの軽減に役立ちます。
HPE StoreEasy は、企業が容量を最大限活用し、ストレージの管理に費やす時間を削減し、成長に合わせて容量を密にスケールしてデータを保護するのに役立ちます。StoreEasyを使用すると、多様なワークロードを持つ数万の同時ユーザーをサポートでき、内蔵された暗号化により、保存中とインフライトのデータセキュリティを確保できます。また、StoreEasy管理コンソールを使用することで、複数のインターフェイスの統合、ストレージタスクの自動化、監視の一元化が可能になります。
構造化されていないデータが急増するなか、企業はそうしたデータを管理するためのスケールアウト ソリューションを必要としています。 HPE Apollo 4000システム はインテリジェントなデータストレージサーバーであり、ストレージ使用量の多いワークロードで高速パフォーマンス、エンドツーエンドのセキュリティ、予測分析を実現します。