重要なのは「書き過ぎない」「話し過ぎない」こと
プレゼンのプロが伝授する「オンライン商談」成功のポイント

新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務を実施する企業が増えました。感染の第3波が猛威を振るう今現在も、リモートワーク中心に仕事をする状態が続いており、従来なら、企業を訪問していた営業パーソンも、オンラインで商談を進めざるを得なくなっています。

このオンライン商談、従来の営業スタイルのまま行ってもうまくいかなかったと悩んでいる方、多いのではないでしょうか。今回は企業プレゼンの達人であり、一般社団法人プレゼンテーション協会 代表理事の前田鎌利氏に、どうすればオンライン商談を成功に導くことができるか。その方法を聞きました

プレゼンテーションクリエイター/書家
株式会社 固 代表取締役/一般社団法人 継未 代表理事
一般社団法人 プレゼンテーション協会 代表理事
前田鎌利 氏


注意したい、対面での商談との2つの違い

 

――コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションが一般化していますが、これは対面でのコミュニケーションと、何が違うのでしょうか。

 最大の違いは、オンラインではこちらの意図や雰囲気など、コミュニケーションにおける多くの要素が「伝わらない」ということです。これを日々、痛感しています。営業活動においても、リアルの場合と比べると10分の1も伝わらないという印象を持っています。

 これをスポーツに例えると、サッカーには屋外で行うものと屋内で行うものがありますが、同じサッカーでもルールが違います。企業活動もこれと同じで、営業であっても会議であっても、フィールドが違えばルールや作法が異なるわけです。つまり、やり方を変えなければゲームが成立しないし、営業活動も失敗に終わってしまう。だから、営業パーソンの皆さんにはまず、伝え方を変えることから始めてもらいたいと思います。

 オンラインでは、なぜ伝わらないかというと、「情報量が圧倒的に少ない」からです。決められた時間に集まり、オンライン会議に接続し、さらに接続後、冒頭にちょっと雑談をしてすぐに打ち合わせに入る場合、そこから得られる情報はものすごく少ないのです。

 これに対して、対面で商談を行う場合は、会社の受付を通ってエレベーターに乗り、会議室に案内されるという過程を経ます。この際、受付やその他のスタッフの方など途中で会う人も多く、そのプロセスの中で、商談相手と相対しますよね。こうすることで会議室の中の様子や、周辺情報を感じてから話し始められるわけですが、私は商談には、この時に得られる情報が非常に重要だと思っています。

 また、オンラインのコミュニケーションでは複数人が参加しても、メインで話すのはだいたい一対一で、その途中で他の人がカットインするのは難しいもの。商談の場合も人数が多いほど成功しにくくなります。そのため私は、オンライン商談はできるだけ少ない人数で行うことを勧めています。一番成果が出るのは、一対一の2人の場合で、圧倒的にクロージングできます。

 つまり、オンラインでの営業活動はなるべく少人数で行うことがポイント。こうすることでコミュニケーションがインタラクティブにたくさん取れ、商談が進めやすくなるのです。


カメラオフやバーチャル背景もNG

 

――オンライン商談は、対面のときとやり方を変えないといけないわけですね。

 もちろん、両方に共通する部分はあります。ただし、オンラインにはオンラインの「勝ち筋」があって、その攻め方を無視して戦っても、勝ち目はありません。

 皆さん、コロナ禍で正解が分からず、試行錯誤を繰り返してきたと思いますが、時間が経ち、徐々にこれがオンライン商談の勝ち筋かなというのが見えつつあります。私の中でも、幾つかの方法論が分かってきました。

 コロナ禍でリモートワークが始まった当初、「バーチャル背景」がすごく流行りましたね。しかし、これを見たとき、皆さんは相手のことを「信用していいんだろうか」と不安に感じないでしょうか。あるいは相手から「隠したいものがある」と表明されたように見えていませんか。

 私は、今リモートで営業をしている人には、カメラをオフにするとか、バーチャル背景を使ってはいけないと話しています。バーチャル背景ではQRコードを見せるなどできますが、商談の間中そのままにしておくのは、相手に隠し事をし続けているようなもの。これでは相手の信用度が増していきません。こうなると、どんなに営業トークを頑張っても成果が得られにくくなります。

 つまり、オンラインのツールを使った、情報量が少ない中での商談では、いかにセルフブランディングをしていくかが重要。今、営業パーソンにはそれが求められています。例えば、背景に一枚の絵を飾るだけでも、相手に興味を持ってもらうことができます。それを糸口に会話をし、自分がどのような人間なのかを相手に理解してもらいましょう。


しっかりと間を取る、沈黙の時間が大事

 

――カメラオフやバーチャル背景のほかにもオンライン商談で、やってはいけないことはありますか。

 実力のある営業パーソンがやりがちなのが、「しゃべり過ぎる」ことです。これには注意した方がいいですね。画面越しの商談の場合、沈黙が続くと自分でその間を埋めようとしてしまうわけですが、自分だけが一方的にしゃべると、相手はその間は話してはいけないと思い、聞きたいことがあっても黙ってしまいます。

 これを避けるには、話の「間」をしっかり取ることが大切です。沈黙が続いていても無理に話さず、相手に考えてもらう時間を作りましょう。

例えば、このようなイメージです。

話の区切りがいいところで、「ここまでで、何かご質問はありますか?」と聞いて、しばらく考えてもらう。

※ここで間が持たないからと、「えーと、よくある質問はですね・・・」などと、切り出してはいけない。

 沈黙が続くのは怖いと思うかもしれませんが、不思議なもので、こちらが黙っていれば相手は話してくれます。そのため、私は「安心して黙っていてください」と言っています。

自分からの説明に専念すると、相手も受け身になり、それで満足してしまうという別の問題も生じます。商談では「相手からの質問とそれに対する答えのやりとり」を繰り返しながら進めることで、信頼関係を深めていく。この原則を忘れてはいけません。

もし30分アポイントがとれたら、その時間全てを説明に充てては駄目という点も重要です。そして、提案の説明を冒頭の3分ぐらいで済ませてしまいましょう。3分では細かな部分までは伝え切れないので、商談相手の疑問は解消せず、相手はその点を聞きたくなるのです。

 また、BtoBのオンライン商談を行う場合は、相手が決裁者かどうかを見極めておくことも重要です。相手が決裁者ならその人に刺さるように商談を進めればいいのですが、決裁者でない場合は、その相手に、社内で決裁者に話す代弁者になってもらわなければなりません。自分がそうするときを想像すると分かりますが、よく分かっていないものは上申できませんよね。この場合は相手が決裁者に代弁しやすいように話すことが大切で、このように相手によってやり方を変えることが必要になるのです。

 ビジネスでは、相手のことをよく知ることも重要です。商談相手の社長が落語好きなら、商談の最初の話題は落語の話にすれば成功の確率が高まります。こうした基本的なことも怠ってはいけません。


カメラ、マイク、ライトをケチってはいけない

 

――オンライン商談に必要なツールや環境について、注意すべき点はありますか。

 安定した回線品質は不可欠です。調査会社のJ.D.パワーが「リモート会議の悩み」について調べていますが、そのトップ5は、全て回線品質に起因するものでした。在宅でオンライン商談をするのであれば、自分で回線を確保しなければならないため、このリテラシーも必要になります。

「カメラ」と「マイク」「ライト(照明)」も重要です。全てそろっていると言う人もいるでしょうが、大事なのはそのクオリティ。これらはある程度、いいモノを使わなければ、オンラインで営業をする際は“失格”です。

想像してみてください。商談相手がクオリティの低いカメラやマイクを使っていて、ぼやけた見た目、歪んだような声で何かを売り込まれても、好んで買いたいとはならないでしょう。

 カメラは、ノートPCに付いているものを使っているようでは、オンライン商談ではまず伝わらないと考えた方がいいでしょう。外付けの高画質なカメラを付けて、自分の表情をちゃんと伝えなければいけません。よくあるのが、やや逆光となり、自分の顔が暗く、しかもノートPCのカメラの位置の関係上、下からあおられたような映像のまま商談してしまうケース。これは、相手には表情が怖く見えてしまうので、カメラの位置にも注意が必要です。

マイクもPC内蔵のものではノイズを拾いやすいので、別に用意すべき。ライトも、顔をきれいに映すためには必須で、顔が暗く見えると印象が悪くなってしまいます。

 実は、これは科学的にも証明されています。人間は何から情報を得ているかを調べた「メラビアンの法則」によれば、表情、ボディランゲージなどの視覚情報が55%、声の大きさ、スピードなどの聴覚情報が38%、残り7%が言語情報となっています。

 話す際の目線も大事です。資料を説明し終わったら、カメラのレンズを見て話すことで、より伝わりやすくなります。また、イヤホンマイクもワイヤレスのものでなく有線のタイプを使うべきです。ワイヤレスだと途中で電池切れの心配があるからで、安定した通信ときちんとリモート会議ができる環境を整えることは、オンライン商談をする人にとって最低限必要な「設備投資」と考えた方がいいでしょう。


オンライン商談ならではのコミュニケーションのお作法

 

――オンライン商談にかける時間や、進め方の注意点は何でしょうか。

 商談の時間は、30分が一つの目安です。1回の商談時間を短くして、すぐに次のステップに向けた商談につなげていくというように細やかに動くことが、信頼を勝ち取る秘訣です。

 また、時間を短くすることと矛盾するようですが、早口にならないようにすることも非常に大事です。話すスピードは、自分で話していることが、自分の耳から入って理解できる程度が目安になります。また、声の大きさも、普段より2割増しぐらいで話した方がいいでしょう。

 話を聞くときも、見られていることを意識しなければいけません。時々、生気のない表情をしている人を見掛けますが、商談中に笑顔でいることは基本中の基本。自分がワクワクしていなかったら、売れるものも売れません。うなずいたり、傾聴していることを示すべきです。

 また、見られるだけでなく、聞こえていることにも注意したいですね。特にマウス、キーボードの音は結構、耳障りだということは覚えておきましょう。

 コミュニケーションのツールについても、商談の相手によって臨機応変に切り替えていく必要があります。もし関係を構築できた相手がメールしか使っていないようなら、こちらからチャットツールなどでのやりとりを提案して、その後はチャットでのやりとりによってさらに関係性を深めていくこともできます。チャットツールのいいところは、細かなコミュニケーションを継続して行うことで関係性を担保できる点。ここを活かしましょう。

 直接、商談に行けないコロナの時代は、顧客と新しい関係を構築できるかが営業の成果を左右することになります。このときに重要になるのが、検索スキル。顧客が「グローバルのデータが欲しい」と言ってきたときに、対面での商談のときのように「後日改めて用意してきます」は通用しません。「5分ください」と言ってその場で検索し、5分後に返せるぐらいのスキルが必要になります。


資料は1枚に盛り込む量を減らし、枚数を増やす

 

――オンライン商談で使う資料は、対面での場合と変えるべきでしょうか。

 資料は、対面の場合、紙に印刷して渡すことが多いわけですが、オンラインでは印刷する必要がありません。つまり、オンライン商談の場合、枚数はいくらでも増やせるのだから、1枚に盛り込む量を減らしてページ数を増やした方がいいでしょう。

 1枚に多くの文字を入れてしまうと、その資料の説明の際に多くの文字をそのまま説明する訳ではなく、内容を端折って進めることになると思います。実は、この「端折る」ということは、相手からしたら手を抜いて説明されたと感じる行為だと知っておくべきです。

資料自体はシンプルにし、口頭では具体的な説明を補足するくらいのバランスの方が相手に伝わりやすくなります。先ほど、オンライン商談では「しゃべり過ぎない」ことが大切と言いましたが、資料も「書き過ぎない」ことが重要です。

 また、視覚に訴える意味でも、ビジュアルでエモーショナルに伝えられる資料にすることが大切です。感情に訴えるために、相手が何を求めているかを知った上で資料を作っていきましょう。

その際のポイントが「自分事」にさせること。私は「つかみ」と呼んでいますが、最初に文章をだらだら読ませるのでなく、インパクトのあるビジュアルで右脳を刺激することを勧めています。一つの数字だけを書いたスライドを用意したり、視覚に訴え、疑問を抱かせることで、自分で考えてもらうきっかけにしてもらうのです。

 例えば、「御社の課題は、30代サラリーマン層の悩みに応え切れていないことです」と文字で見せるよりも、悩んでいる30代のサラリーマンの写真を見せるといった具合です。これだけで、相手は自社の30代社員を想像しながら話を聞くようになり、そこから具体的な解決策について議論ができるようになります。自分事にさせるとは、こういうことです。

アンケート結果がある場合

アンケート結果がない場合


最後はやり抜くこと、経験を積むこと

 

――最後に、オンライン商談を自信を持って進めるための秘訣を教えてください。

 オンライン商談の場合、相手にどれだけ伝わっているのかが分からず、不安なことがあるでしょう。そうしたときでも、自分を信じてやり抜くことが大事です。私も営業時代に法人営業で1日100社の飛び込み営業をしていた時、心が折れそうになりましたが、自分を信じてやり抜きました。

 こちらが手を尽くしているのに、相手が興味を示していないときにどうするか。話が刺さっていないと感じる場合には、いろいろな理由が考えられますが、そもそも課題感がずれていることが多いのも事実です。事前に課題を調べていても、間違っていた場合もあるでしょう。その場合は相手は何を求めているのか。コストダウンなのか、効率化なのか。改めて質問をしながら確認していくしかありません。

 質問の仕方も重要です。漠然と「お困りの事はありませんか?」と聞くのでは、何も答えてくれません。私は商談で「御社が今使っている〇〇がもしなくなったとしたら、明日からどうしますか?」など極端な例を示して聞くことがあります。こうした質問をすることで、相手に深く考えるきっかけを与え、そこから対話を進めていくと、本当の課題が浮かび上がってくるものです。

 相手のタイプを見極めることも大事。よく利用されるのが「ハーマンモデル」の4つの分類ですが、これを使わなくても、相手がどのようなタイプなのかは事前の情報収集から推察できます。タイプが分かれば、話を進めるときに「ジャブ」が打ちやすい。例えばロジカルな人だと分かれば、あえて細かい数字を示してみると、そこから話がスムーズに進む場合があります。

 コロナ禍で重要性が高まっているオンライン商談。対面での商談とは違い、まだ経験が少ないと思うので、ここで紹介した手法で経験を積んでいってください。経験を積むことで技術が磨かれていきます。