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2020年10月9日

従量制課金モデルによって勢いを増すAI主導型ストレージ

ハイブリッドクラウド環境において、新しいクラウドライクな経済性を提供するインテリジェントストレージの利用が急速に拡大しています。

今となっては思い出すのも困難ですが、ストレージ市場が活気に欠け、データセンターにおいてイノベーションが進まない領域と認識されていたのは、それほど昔の話ではありません。しかしながら、その後状況は一変しました。この10年間にストレージ市場では、クラウドストレージサービスからエンタープライズ規模のオールフラッシュアレイに至るまで、革新的な製品が次々と登場しています。ネットワークやコンピュートとより緊密に接続されたストレージを求める企業の声に応えて、ベンダー各社はハイパーコンバージド インフラストラクチャを開発しました。またメモリチップ上に空きスペースがなくなったことから、垂直に層を重ねた3D NANDメモリも誕生しました。

さらに近年のハイブリッドクラウドインフラストラクチャへの移行とAIの普及によって、ストレージ市場は再び大きな変化を遂げ、その流れに乗って台頭したのがインテリジェントストレージです。インテリジェントストレージとは、ストレージハードウェアと、リモートデータ収集やAIなどを活用するサービスを組み合わせたもので、オンプレミスとクラウドのどちらでも、ストレージ環境のアクティブな管理が可能です。

このインテリジェントストレージの勢いをさらに加速させているのが、もう1つの重要なトレンドである従量制ITモデルです。

 

インテリジェンスはどのように機能するか

インテリジェントストレージは単なる情報のリポジトリではなく、企業が必要なときに必要な場所でデータを確実に利用できるよう、ストレージの管理に役立つ情報をプロアクティブに提供します。たとえば環境全体にわたるパフォーマンスボトルネックの監視、セキュリティ脅威や季節性の使用量の急増といった変化の検知、アラートの発行などが可能なため、管理者は問題に速やかに対処できます。

インテリジェントストレージには次のような特徴があります。

  • AI主導。テレメトリにより、スタック全体にわたってAPIと管理インターフェイスから提供されるデータ、およびストレージデバイス自体から得られるデータが監視されます。さらに高度な分析と機械学習を活用して環境内の正常な状態をモデル化することで、異常な状態を迅速に検知して解決できます。インテリジェントストレージでは、予測分析により管理者が気付く前に多数の潜在的な問題が解決され、その他の問題についても分析およびレコメンデーションエンジンに基づく自動ガイダンスにより、(問題の原因がストレージデバイスの外部にある場合も含めて) 問題の詳細と解決方法が提示されます。
  • クラウド向けの設計。インテリジェントストレージにはクラウド統合機能が標準で搭載されており、マルチクラウドの管理、オーケストレーション、および自動化を簡素化して、パブリッククラウドとプライベートクラウドをシームレスに接続できます。そのため任意のワークロードを必要に応じて本番データベース、セカンダリデータ、またはバックアップデータからクラウドに移動したり、パブリッククラウドからデータを内部に戻したりすることが可能になります。またオープンなクラウドネイティブAPIにより、クラウドの自動化やDevOpsのエコシステムに参加するベンダー各社の製品との統合が容易なため、企業は新たなサービスを迅速に開発できます。さらにインテリジェントストレージに組み込まれた専門的なアドバイス機能やクラウド管理ツールは、パブリッククラウドを利用する場合に発生しがちな隠れコストや過剰支出の回避に役立ちます。
  • As-a-Serviceモデルによる提供。ブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージ向けに、フラッシュ型やハイブリッド型など、ビジネスニーズに最適なストレージを選択できます。ハードウェアは企業サイトに設置されますが、その所有権はプロバイダーにあります。企業サイトには予測された需要に基づき容量のローカルバッファーが配備され、ストレージのサポート、管理、および (オプションで) 運用に必要なサービスも提供されます。追加容量が必要になった場合はオンデマンドで要求でき、不要になったらスケールダウンすることも可能です。料金は実際に使用した分しか発生せず、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスの使用料が1つの月額請求書にまとめられます。

 

クラウドの経済性を備えたオンプレミスストレージ

上記の3番目の特徴であるAs-a-Serviceモデルによる提供は、ハイブリッドクラウド環境におけるインテリジェントストレージの普及を加速させる要因となっています。IDC社によると、2023年までに60%の企業がフレキシブルかつ低コストのIT消費モデルを利用するようになると予想されます。インテリジェントストレージは、オンプレミスストレージでクラウドライクなエクスペリエンスを実現する真の従量制モデルです。

一般企業がパブリッククラウドから学んだ教訓があるとすれば、シンプルであることの強み、とりわけ財務面のシンプルさです。言うまでもなく、クラウド型経済モデルの活用とは、支払いにクレジットカードを使用するだけの単純なものではありません。しかしながら多額の先行投資から月額払いへのシフトは多くの企業にとって魅力的な選択肢です。クラウドはITの予算編成と資金調達のためのさまざまな新しいアプローチを可能にし、またITリソースの使用量の測定を容易にしました。

次に登場したのが、オンプレミス インフラストラクチャ向けに同等のメリットを提供可能なテクノロジーです。先進的な測定システムは、オンプレミスのハードウェアリソースの使用状況を追跡および記録し、レポートを生成することが可能です。この新たなテクノロジーを、インフラストラクチャの提供から監視やサポートまでを包含するサービスと組み合わせることで、物理データセンター内に真のオンデマンドソリューションを構築できます。従量制ITモデルの登場により、企業はオンプレミスのIT資産を新たな視点で捉えることが可能になりました。

ストレージに対するオンプレミスの従量制アプローチを検討する際は、以下の基準に照らして、自身の環境およびビジネスニーズに適しているかどうかを判断することが大切です。

データ主権とプライバシー。コンプライアンス要件は厳しさを増す一方で、企業のストレージ戦略に影響を与えています。EUの一般データ保護規則はその一例にすぎません。多くの企業は顧客情報をオンプレミスに保持することを好み、また医療分野における患者情報の保護など、各業界でも機密データの取り扱いに関する規則が定められています。

レイテンシ。コンピュートリソースが、データセンター外部のITゾーンであるエッジに移動する動きが続いています。これはリソースが、アクションが実行される場所のより近くに移動していることを意味します。工場の現場で生産管理に不可欠な計算を実行したり、化学プラントの安全状況を監視したりするようなケースでは、リアルタイムまたはほぼリアルタイムのアクションが求められます。クラウドとの間で情報をやり取りする際に発生する遅延は許容されません。

場所とコネクティビティ。エッジへの移行は、コンピュートリソースがリモート環境や苛酷な環境、たとえばコネクティビティが不安定な石油掘削プラットフォームなどに配備されることを意味します。エッジの場合に限らず、処理に不可欠な顧客データをクラウドから取得する必要があると、ネットワーク問題の発生が顧客サービスの低下に直結します。多くの企業にとって、この点はバックアップシステムを設計する際にも考慮すべき事項です。計画外のダウンタイムが発生した場合は一刻も早い完全復旧が求められるのが当然であり、クラウドへの安定した接続が復旧処理に欠かせないような構成は望ましくありません。

先行投資。一般的なCAPEXモデルの下では、ビジネスリーダーがオンプレミスストレージへの投資をためらう可能性がありますが、通常はコストと使用量を連動させるアプローチの方が長期的には財務上のメリットに優れています。

キャパシティ管理。ストレージへの投資は過剰になりがちです。一般的に企業は、需要のピーク期間にもワークロードのパフォーマンスを低下させないために、余分な容量を事前購入する傾向にあります。オーバープロビジョニングは無駄になることが多く、電力、冷却、メンテナンスなどのコストの上昇も招きます。

アジリティ。新しいビジネス要件に合わせたオンプレミスリソースの導入は、一般的に時間のかかるプロセスです。調達サイクルは長く、新しいハードウェアの導入にも時間を要します。容量が足りなくなった場合、追加容量がデータセンターに配備されるまでに数ヶ月を要することも珍しくありません。こうした状況は内部顧客の不満を招きます。その結果、個々のチームや事業部門がITポリシーをかいくぐってパブリッククラウドの利用を開始し、問題の多いシャドーITが発生する可能性があります。

オンプレミスの従量制アプローチは、こうした複雑かつ対立しがちな状況を調整し、よりスマートなストレージ環境への迅速な移行を可能にします。

 

従量制のインテリジェントストレージがもたらすメリット

従量制課金戦略はさまざまな新しい可能性を切り開きます。期待される主な成果は以下のとおりです。

生産性の向上。多額の先行投資を必要とすることなく、新しいプロジェクトを迅速かつ容易に開始できるようになります。As-a-Service型のアプローチは試験的な取り組みを容易にし、イノベーションへの障壁を引き下げます。この点は、製品やビジネスモデルが目まぐるしく変化する今日のビジネス環境において大きな強みとなります。

従量制サービスの利用にあたっては、先進的なデータベース管理システム、ビッグデータと分析、セカンダリストレージなど、ビジネスニーズに応じて幅広いインテリジェントストレージ テクノロジーを提供可能なベンダーを選ぶことが大切になります。プロバイダーによっては、データ可用性ソリューションやバックアップソリューションなどの補完的なソフトウェアをハードウェアと組み合わせることで、ストレージの展開と管理をより一層簡素化して、顧客のイノベーションを加速させることが可能です。

ITの予算編成と計画を簡素化。従量制のストレージは、従来の予算編成における「使わなければ失われる」という原則からの脱却を可能にし、ビジネス目標と支出の整合性を高めます。インテリジェントストレージを使用する場合は、リソースの実際の消費量を、日、週、月単位で明確に把握して管理できます。

あらゆるリソースは、チェック機能がなければ、計画以上に消費してしまうものです。古いデータが体系的に消去されずに増え続けていれば、容量の無駄やパフォーマンスの低下が引き起こされます。従量制のソリューションには、セルフサービス型の使用状況ダッシュボードや予算編成機能が搭載されており、事前設定した使用量や支出のしきい値に達するとアラートが発行されます。

容量需要の変動にスムーズに対応。従量制課金モデルは、年末の報告書作成のような定期的に発生するデータ集約型タスク、予測できない市場需要の急増、新しいビジネスモデルなどに対応するためのリソースの確保を容易にします。追加した容量が不要になった場合は、その容量に対する支払いを継続する必要はありません。ただしベンダーによる容量の管理方法を把握しておくことが重要です。たとえば、追加の容量が提供されるまでのリードタイムや、キャパシティプランニングに対する支援を得られるか、といった点を事前に確認しておく必要があります。

管理者を煩雑な作業から解放。ストレージの管理には多くの手間がかかります。インテリジェントストレージのAI機能を利用すれば、ITスタッフの時間を奪う多くの作業が不要になります。さらに従量制のITには、ITスタッフの負担をより一層軽減する、管理サービスやサポートサービスも組み込まれています。煩雑なストレージ管理から解放されたITスタッフは、より価値の高いプロジェクトに専念して組織のイノベーションを促進できます。

 

導入タイミングの見極め

従量制ストレージが提供するクラウドライクな経済性とアジリティは、現代のハイブリッドクラウド環境に最適です。従量制ストレージが自身の組織に適しているかどうかを判断するには、バックアップ、データ移行、可用性、セキュリティ、コンプライアンスなど、あらゆる要件を洗い出し、以下に示すような目標の達成にどのように役立つかを評価する必要があります。

  • ハイブリッドクラウド環境全体にわたって、データをあるべき場所に確実に保持する
  • コアからクラウドやエッジに至るまで、マルチベンダーソリューションを含めて、複雑なインフラストラクチャを管理する
  • 新規および既存の規制、コンプライアンス、およびデータ主権に関する要件に適応する
  • スタッフの負担を軽減して、ハイブリッド環境におけるイノベーションを促進する
  • 資金や運用面の負担が大きい時代遅れのビジネスモデルから脱却する

 

AI主導の従量制ストレージは、産業界全体にとって最適なタイミングで登場したと言えます。統計からも明らかなとおり、企業データが急増し、ゼタバイト単位のデータが利用されるようになり、IoTの影響が拡大し続けています。

ここで抑えておくべき点として、企業がデータエコノミーの時代を勝ち抜くためには、ストレージを単に増やすだけでなく、よりスマート、フレキシブル、かつ財務面でも合理的なストレージが必要です。こうした特徴を備えた従量制のインテリジェントストレージは、今後さらなる利用拡大が予想されます。

 

従量制のインテリジェントストレージ: リーダーのためのアドバイス

  • クラウド向けに設計され、As-a-Serviceモデルで提供されるAI主導のインテリジェントストレージは、パフォーマンスボトルネックからセキュリティ脅威、季節的な使用量の急増、およびその他の変化に至るまで、多岐にわたるリアルタイムの知見をプロアクティブに提供します。
  • ストレージに対するオンプレミスの従量制アプローチを検討する際は、データプライバシー、レイテンシ、コネクティビティ、先行コスト、キャパシティ管理、アジリティなどの要件を考慮する必要があります。
  • 従量制課金のインテリジェントストレージを使用すると、多額の先行投資なしに新しいプロジェクトを立ち上げることが可能になり、ITの予算編成と計画が簡素化され、容量需要の変動に効率的に対応できるようになるなど、多くの新たな可能性が広がります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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