ライオンが、基幹業務システムにオールフラッシュストレージを採用しバッチ処理時間を1/2以下に削減
ライオン株式会社 様
HPE 3PAR StoreServ 7450オールフラッシュストレージを採用 年間数千万ケースの受注・出荷・在庫等の集計処理を高速化
"ミッションクリティカルな基幹業務システムを支え、2020年を見通したビジネス戦略の遂行を支える、高信頼かつ高性能なストレージ基盤を実現できたと考えています。
検証と実運用を通じてHPE 3PAR StoreServ製品の優れた能力を実感しています"
―ライオン株式会社
統合システム部
部長
宇都宮 真利 氏
ライオンが、リアルタイムの受発注管理を担う基幹業務システムのインフラを全面刷新した。西日本エリアにデータセンターを新設し、ここに統合的な仮想化基盤を構築。2系統稼働させてきたストレージシステムを「HPE 3PAR StoreServ 7400(SSD/SAS/ニアラインSAS)」および「HPE 3PAR StoreServ 7450オールフラッシュストレージ」に移行し、バッチ処理時間を1/2以下にするなどシステム全体のパフォーマンスを大幅に強化した。ライオンのITパートナーとしてプロジェクトを支援したのは、兼松エレクトロニクス(KEL)である。
業界
製造
目的
基幹業務システムのインフラ刷新からデータセンター統合までを包括する全社プロジェクト「Proj-OK」の推進。新データセンターへの移行に合わせて仮想化基盤へのシステム統合を図るとともに、受注・出荷・在庫等の日次・週次集計のバッチ処理時間を短縮する。
アプローチ
西日本エリアにデータセンターを新設し仮想化基盤を構築。旧環境のストレージシステム(2系統)を全面的に刷新して統合ストレージ基盤に移行するとともに、高性能なフラッシュストレージを採用して高負荷のバッチ処理を高速化する。
ITの効果
・オールフラッシュストレージ「HPE 3PAR StoreServ 7450」を採用し高負荷な集計処理を高速化、週次のバッチ処理時間を1/2以下(19時間を7時間50分)に削減
・SSD/SAS/ニアラインSAS搭載の「HPE 3PAR StoreServ 7400(4コントローラー)」を採用し、HPE 3PAR Adaptive Optimizationにより自動的にデータ配置を最適化
・2系統の従来ストレージを運用管理性に優れたHPE 3PAR StoreServ(計50TB)に統合し運用負荷を大幅に低減
・シンプロビジョニングを活用し容量効率を高めるとともに、オンラインでの柔軟な容量増設を可能に
ビジネスの効果
・2020年を見通したビジネス戦略を支える高性能かつ高信頼なストレージ基盤を実現
・生産・販売・在庫情報の集計の高速化により、より精緻でタイムリーな調達・生産計画の立案が可能に
・仮想化統合基盤への移行により15ラックを占めていたハードウェアを7ラックに収容
・HPE 3PAR StoreServの「リモートコピー機能」を利用したDRサイトの構築も視野に
・HPコンサルティングサービスによる全面的な支援により短期間での構築・移行を実現
チャレンジ
ホストマイグレーション後にストレージシステムの性能限界が顕在化
ライオンは、日本を代表するパーソナルケア用品メーカーとして、毎日の暮らしに役立つ製品やサービスを長年にわたり提供している。2011年に創業120年を迎え、新たな経営ビジョン「Vision2020」を策定。『今日を愛する。』という企業スローガンを掲げた。現在、「V-2計画(Vision2020 Part-2)」において、高付加価値商品の伸長やグローバル展開の強化を打ち出した成長戦略を推進中だ。
「新しい経営ビジョンと事業戦略の遂行を支える、新しいIT環境への変革が求められていました。まず私たちは、30年以上使い続けてきたメインフレーム上の基幹業務アプリケーションを、オープンなプライベートクラウド環境へ全面移行するホストマイグレーションに取り組みました。この一大プロジェクトを完了させたのは2012年夏のことです」と統合システム部 部長の宇都宮真利氏は振り返る。
ライオンの基幹業務システムは、受注、在庫引き当て、出荷までをオンラインでリアルタイムに実行する。およそ数千アイテムを対象に、年間数千万ケースを超える商品の受注・出荷処理を担うミッションクリティカルなシステムだ。
「ホストマイグレーションによって、基幹システムのリアルタイム処理性能は大幅に向上しました。しかし、その一方でバッチ処理の長時間化という問題に直面したのです。週次のバッチ処理に19時間。日次処理は8時間を要し、深夜12時にバッチ処理を開始しないと翌日の業務開始に間に合わないという状況が起こりました」
日々の受注・出荷情報に基づき、販売実績の集計、在庫管理、請求額の集計などが日次・週次でバッチ処理されるが、中でもPSI(プロダクション・セールス・インベントリ)システムの処理時間の伸長が著しかったという。PSIシステムは、販売実績や在庫推移を可視化し、調達や生産管理の意思決定、在庫バランスの最適化など重要な役割を担う。
「パフォーマンスが上がらない原因は、ストレージシステムのI/O性能の限界にありました。ストレージがボトルネックになって多重処理ができない、シリアル処理では始業時間に間に合わない―このジレンマを解消する方法として、最も有効と考えたのがオールフラッシュストレージの導入でした」
宇都宮氏は、オールフラッシュストレージ2製品を自社データセンターに導入し、パフォーマンス検証を実施した。検証機のひとつに選ばれたのが「HPE 3PAR StoreServ 7450オールフラッシュストレージ」である。
ライオン株式会社
統合システム部
部長
宇都宮 真利 氏
ソリューション
高負荷・多重度処理に強いHPE 3PAR StoreServ 7450を実証
2014年4月、宇都宮氏は「HPE 3PAR StoreServ 7450オールフラッシュストレージ」を含む2製品のパフォーマンス検証を開始。シーケンシャルアクセスとライダムアクセス、それぞれの読み込み/書き込み性能をテストツールで計測した。
「2~16GBまでファイルサイズを変化させ、1~16多重まで負荷を変えていきました。その結果、HPE 3PAR StoreServ 7450は、従来のHDDベースのストレージより5~10倍高速であることが確認できました。これは、同時に検証した別のフラッシュストレージ製品をも1.5~2倍上回る性能でした」と宇都宮氏は話す。
さらに興味深い検証結果も得られた。多重処理による高負荷時のパフォーマンスである。
「4多重を超えた処理において、HPE 3PAR StoreServ 7450は別のフラッシュストレージの1.5~3倍の性能を発揮することがわかりました。4多重以上でのランダムライトという条件は、膨大なデータを対象に販売実績や在庫推移を集計するPSIシステムのバッチ処理にまさに合致するものです」
実際、このパフォーマンス検証が基幹業務システムの「バッチ処理の長時間化」という課題にシンプルな解決をもたらすことになった。
「興味深いのは、シーケンシャルな処理では別のフラッシュストレージ製品との性能差は小さく、多重度を上げるほどHPE 3PAR StoreServ 7450の優位性が際立つという傾向です。複数のサーバーからランダムリード/ライトの要求が集中する高負荷な環境でこそ、HPE 3PAR StoreServ 7450本来の能力を活かせると言えます」と宇都宮氏は期待を込めて話す。
HPE 3PAR StoreServ 7450の高い性能を支えているのは、4つのコントローラーをメッシュ状に接続してすべてをActiveで稼働させるHPE 3PAR独自の「Mesh - Activeコントローラテクノロジー」である。テストした別のフラッシュストレージ製品がActive - Standbyで構成されているのに対し、これが大きな優位性をもたらした。万一のコントローラー障害時に、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えるメリットも見逃せない。
「550MB/秒の性能で稼働しているHPE 3PAR StoreServ 7450のコントローラー1台を、強制的に停止させるテストを実施しました。コントローラー間でフェイルオーバーを実施する間だけ半分程度まで性能が下がりましたが、15秒ほどで元の性能に復帰しました。HPE 3PAR StoreServ 7450にコントローラー障害が起こっても、その後縮退運転になっても、サービスに影響を及ぼさないことが確認できたのです」と宇都宮氏は評価する。
さらに、HPE 3PAR StoreServ 7450では「シンプロビジョニング」を使用した運用でパフォーマンスが低下しないことも確認された。
「これらの検証結果が、次の大きなプロジェクトに結びついていくことになりました。まずは、バッチ処理高速化のためにHPE 3PAR StoreServ 7450の導入を決めました」
インフラ刷新からデータセンター統合までを包括する「Proj-OK」
先のホストマイグレーションプロジェクトが佳境に入った2011年3月、東日本大震災が発生した。首都圏で基幹業務システムを運用してきたライオンにとって、これが事業継続の方針を大きく見直す契機となった。新たな方針は、西日本エリアにデータセンターを新設し、首都圏2カ所のデータセンターで運用してきた基幹業務システムのインフラを全面的に刷新して新しいデータセンターに統合するというものである。
「基幹業務システムのインフラ刷新からデータセンター統合までを包括する全社プロジェクト『Proj-OK』をスタートさせたのは、2012年8月のことです。ハードウェアの9割を新規で導入し統合的な仮想化基盤を構築したのですが、ミッションクリティカルな基幹業務システムを支えるプライマリーストレージの選定には慎重を期しました」と宇都宮氏は振り返る。
首都圏2カ所のデータセンターでは2つの異なるストレージシステムが稼動し、データの総量は50TBを超えていた。優れた性能と高負荷に耐える能力、高い信頼性を備えたストレージ製品が求められるだけでなく、投資対効果も考慮しなければならない。プライマリーストレージ製品の選定に際して宇都宮氏が提示した要件は、次の4つに整理できる。
①2系統の既存ストレージシステムを統合するとともに、一元的かつ効率的に運用できること
②ストレージがパフォーマンスボトルネックになる問題を解消するとともに、容量の拡張が容易なこと
③首都圏のデータセンターから西日本のデータセンターへ、安全かつ確実にデータ移行が可能なこと
④将来の災害対策サイト構築を視野に入れ、リモートでデータを同期できる仕組みを実装可能なこと
10件を超えるプランの中から選定されたのは、兼松エレクトロニクス(KEL)の提案だった。
「KELの提案の中心には、4コントローラーを搭載した『HPE 3PAR StoreServ 7400』が据えられていました。高性能のSSD、高信頼なSAS、大容量ニアラインSASをバランス良く組み合わせ、コストを抑えながらパフォーマンスと容量の要件をクリアしていました。アクセス頻度やポリシーに応じて、データボリュームを3つの階層に自動的に配置する『HPE 3PAR Adaptive Optimization機能』を利用できることも高評価のポイントです」と宇都宮氏は話す。
HPE 3PAR StoreServ 7400を選定する裏付けとなったのが、先に行われたHPE 3PAR StoreServ 7450の実機検証である。高負荷に際しても高いパフォーマンスを維持できること、シンプロビジョニングなどの機能を利用してもパフォーマンスに影響を与えないことは実証済みだった。
「導入済みのHPE 3PAR StoreServ 7450オールフラッシュストレージと、統合ストレージ基盤のHPE 3PAR StoreServ 7400を一元的に運用できることもメリットと考えました。さらに大きなポイントは、HPE 3PAR StoreServの自律運用能力の高さにあると感じています。実際に本番稼動を開始して以降、ほとんど手放しで運用されています」と宇都宮氏は評価する。
ベネフィット
週次バッチ時間を1/2以下に削減、さらに高度な要求に応える
2015年5月、新設した西日本データセンターで基幹業務システムが稼動を開始。基幹業務システムのインフラ刷新からデータセンター統合までを包括する3年越しのプロジェクトは、ようやく終焉を迎えた。50TBに及ぶデータ移行も滞りなく完了した。そして、ミッションクリティカルな基幹業務システムを支えるプライマリーストレージ環境は、HPE 3PAR StoreServの2製品(総容量50TB)に統合された。
旧システムで課題となっていたバッチ処理の長時間化は解決され、PSIシステムからのより高度な要求にも応える余力も確保できた。今後、より精緻でタイムリーな調達・生産計画の立案が可能になる。
「旧環境で19時間を要していた週次バッチは、7時間50分で完了できるようになりました。従来の1/2以下、4割程度まで時間短縮したことになります」
また、新たに構築された仮想化統合基盤への移行により、物理サーバーの台数やラックの本数も半減されたという。
全社プロジェクト『Proj-OK』を振り返って、宇都宮氏は次のように語った。
「ミッションクリティカルな基幹業務システムを支え、2020年を見通したビジネス戦略の遂行を支える、高信頼かつ高性能なストレージ基盤を実現できたと考えています。検証と実運用を通じてHPE 3PAR StoreServ製品の優れた能力を実感しています。HPE 3PAR StoreServのこの高い能力を活かしながら、NAS環境まで統合できるユニファイドストレージへの進化を期待しています」
ご導入企業様
ライオン株式会社 様
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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