倉敷中央病院が、共同利用型画像サービス基盤を構築し、地域医療機関の連携を推進
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 様
サービス基盤の中核にHPE 3PAR StoreServを採用し PACS画像データの統合管理と災害対策を実現
"GE社製PACSにHPE社製ストレージを採用できたこと、アプリケーションとハードウェアの『分離調達』が可能になったことが大きな転換点でした"
―公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
情報システム部
部長
藤川 敏行 氏
倉敷中央病院が統合画像管理システム(統合PACS)を構築し、診療部門ごとに運用してきたPACSの集約を進めている。GE社製統合PACSの中核ストレージには「HPE 3PAR StoreServ 8400」を採用。院内にSTS(Short Term Storage)環境を、データセンターにLTA(Long Term Archive)環境を構築し、LTAのデータを宮崎県のバックアップサイトで保護する体制を整えた。その先に見据えているのは、地域の医療機関による共同利用が可能な画像サービスの提供である。岡山県を基盤にデータセンターサービス/SIサービスを提供するアイアットOECが、本プロジェクトをリードした。
業界
医療
目的
統合PACS導入に伴うストレージ(STS)、アーカイブ(LTA)およびバックアップ環境の構築。岡山県内の医療機関が利用可能な共通基盤システムとして広く開放し、効果的な医療連携の実現を目指す。
アプローチ
5年以内の画像データの参照を担うSTSを院内に、大容量データを長期保存するLTAをデータセンターに構築。さらにバックアップセンターを遠隔地に整備し、広域災害に際しても安全に画像データを保護する。
ITの効果
・HPE 3PAR StoreServ 8400を採用し、24時間365日無停止運用の統合PACSの信頼性を強化
・GE社製PACSのレプリケーション機能を利用し、LTA画像データをバックアップサイトのHPE MSA2040で二重化
・HPE 3PAR StoreServの問題検知と自動通報機能を利用し障害発生前の対処を可能に
ビジネスの効果
・画像データの取得から管理・閲覧・長期保存・バックアップまでのシステムと手順を標準化
・PACSとサーバー/ストレージ環境の分割発注により投資対効果を大きく改善
・アイアットOEC、GE社、HPEが連携した運用・保守体制を確立
・地域医療機関向け「画像共有サービス」の準備を着実に推進、遠隔読影サービスへの展開も視野に
チャレンジ
岡山県南西部の中核的な役割を担う総合病院
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院の歴史は、1923(大正12)年の倉紡中央病院設立まで遡る。以来90余年の歴史の中で、「患者本位の医療」「全人医療」「高度先進医療」の実践を掲げ、岡山県南西部の基幹病院として地域医療の充実に寄与してきた。2013年には救命救急センターに指定されるなど、高度医療を伴う急性期基幹病院としての役割を高めている。倉敷中央病院は、1972年に他の病院に先駆けて汎用機を導入するなど、情報化への先進的な取り組みでも知られる。
「当院では、40年ほど前から情報システムの専任チームを編成し、システム開発を内製してきました。1977年には、医療機関の情報化促進に寄与した実績により通産大臣表彰を受けています。その後も医事会計システムやオーダリングシステム、電子カルテシステムなど、患者様へのサービス向上と医事業務の効率化のために、積極的にIT化を推進しています」と情報システム部 部長の藤川敏行氏は話す。
医療記録の電子化と平行して、CTやMRIといったデジタル画像撮影装置の導入も加速。2007年にはフィルムの環境を撤廃し、医師がモニターだけで診察可能なフィルムレス環境をいち早く実現している。
「電子化の進展は、診療の精度向上とスピード化に大きく貢献しましたが、放射線画像、内視鏡画像、超音波診断画像、心電図など、診断装置ごとに画像データが管理されていました。そこで、これらの画像を横断的に閲覧するための『画像ポータル』を2012年に構築しました」(藤川氏)
そして現在、藤川氏を中心とする情報システム部が「画像ポータル」の次を見据えて取り組んでいるのが、医療用画像管理システム(PACS)の統合化である。
「循環器内科でのGE社製PACS導入に合わせて、これを病院全体の『統合PACS』として位置づけ、放射線診断科で運用してきたPACSを統合するところから着手しました。目指すは、院内全体の画像管理の一元化です。統合PACSにより、多様な画像データを単一のビューワから迅速に閲覧できるようにするとともに、システムの重複運用・重複投資を解消していきます」と藤川氏はその狙いを語る。
GE社製PACSで大容量の画像データを統合管理するための高性能ストレージには、「HPE 3PAR StoreServ 8400」が選定された。日本ヒューレット・パッカードと連携して本プロジェクトをリードしたのは、岡山県を基盤にデータセンターサービス/SIサービスを提供するアイアットOECである。
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
情報システム部
部長
藤川 敏行 氏
ソリューション
統合PACSへ院内全体の画像管理の一元化を推進
PACSの画像管理を担うストレージシステムは、日々の診療に利用するSTS(Short Term Storage)と、長期保存用のLTA(Long Term Archive)で構成される。倉敷中央病院は、これらに加えLTAのデータを遠隔地でバックアップする仕組みまでを整えた。本プロジェクトのポイントを整理すると次のようになる。
① 新LTA(HPE 3PAR StoreServ 8400)に300TB以上の大容量を確保しデータセンターへ設置
② バックアップ環境(HPE MSA 2040)はコストを抑えつつLTAのデータを宮崎バックアップセンターで保護
③ バックアップにはGE社製PACSのレプリケーション機能を活用
「PACSのストレージ環境は、医師の閲覧要求に対して即座にレスポンスできることが最も重要です。高い性能は必須ですが、同時要求など高負荷に際してもレスポンスが落ちないことも重視しました。HPE 3PAR StoreServは院内での導入実績があり、3年間でトラブルが一度もないという安心感が大きかったと思います」と情報システム部 情報システム課 係長の前田貴之氏は話す。
LTAストレージ環境は、過去10数年分の画像データを統合的に管理する役割を担う。採用されたHPE 3PAR StoreServ 8400は、4つのコントローラーをメッシュ状に接続して高い性能と耐障害性を両立させている。コントローラーすべてをActiveで稼働させ、障害発生時にはコントローラー間で高速にフェイルオーバーを実行。高負荷時でも高い性能を維持し、縮退時にはサービスへの影響を最小化できるなど優れた特長を備えている。また、優れた問題検知・自動通報機能を備え、サービスに支障をきたすトラブルが発生する前に対処が可能だ。
「LTAのデータは将来にわたって増え続けますので、HPE 3PAR StoreServ 8400が無停止で容量を拡張できることは提案の大きなポイントでした」とアイアットOEC システム営業グループ 営業第一チーム 課長の郡大輔氏は話す。
アイアットOECが提供する岡山県内のデータセンターをメインに、バックアップセンターは数100km離れた宮崎県に設置された。GE社製PACSのレプリケーション機能を活用し、岡山のHPE 3PAR StoreServ 8400から、宮崎のHPE MSA 2040に差分データを転送してバックアップする仕組みである。
「放射線診断科のPACSは、LTOテープライブラリを使ってバックアップを取得してきましたが、すでにテープが数百本に達しています。データそのものは保護されているものの、いざというとき戻せる確証がありません。新しいバックアップ環境では、データの参照先を切り替えるだけで確実にサービスの継続が可能なので安心感が違います」と情報システム部 情報システム課 課長代行の戸田悟氏は評価する。
PACSとストレージ環境の分離調達を実現
LTAストレージ(HPE 3PAR StoreServ 8400)とバックアップストレージ(HPE MSA 2040)の導入に際しては、まず倉敷中央病院内にこれらの環境を構築し、ローカルネットワークを介して画像データをコピーする手順が採られた。旧環境から数年分のデータ移行が完了したところで、ストレージ機器は岡山のデータセンターと宮崎のバックアップセンターそれぞれに移設される。倉敷中央病院とデータセンター間は高速なネットワークでつながれるという。
「統合PACSに格納すれば、LTA、バックアップまで一気通貫でデータが管理・保護される仕組みが確立されました。PACSごとにバラバラだった手順も、統合PACSへの集約とともに標準化を進めることができます。取扱いの面倒なテープメディアからも解放されます」(戸田氏)
PACSの統合化、LTAストレージおよびバックアップの統合化は、重複投資を解消し大きなコスト削減効果をもたらすことが期待されている。さらに、システム導入にかかるコストの透明性を高める工夫も、将来にわたってこれに寄与するという。
藤川氏は、「GE社製PACSにHPE社製ストレージを採用できたこと、アプリケーションとハードウェアの『分離調達』が可能になったことが大きな転換点でした。PACS提供ベンダーがストレージシステムまで垂直統合的に提供する時代は終わり、より優れたストレージ製品を、コストを抑えながら選択できる時代になったのです」と話す。
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
情報システム部
情報システム課
課長代行
戸田 悟 氏
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
情報システム部
情報システム課
係長
前田 貴之 氏
株式会社アイアットOEC
システム営業グループ
営業第一チーム
課長
郡 大輔 氏
ベネフィット
地域医療連携を加速させる「画像共有サービス」の実現へ
「地域医療の品質をさらに高めていくために、倉敷中央病院が岡山県南西部の急性期基幹病院としての役割を果たしていくためにも、医療機関を結ぶ連携がますます重要になると考えています。そこで、私たちがデータセンターに構築したLTAストレージを、地域の医療機関が共同利用できる『画像共有サービス基盤』として開放する計画を進めています」(藤川氏)
たとえば、ある患者が倉敷中央病院から他の医療機関へ転院する際には、患者の了承を得て診療記録や画像データを共有する。これにより既往歴や検査結果、治療方針などを正しく伝達し、患者は安心して診療を受けられるわけだが、これまでは人手を介したやりとりが中心だった。
「DVDなどのメディアでCTやMRIの画像データを渡し、受け取った病院では手作業でPACSに読み込ませていますが、もっと効率的でスピード感のある方法の確立が急務です。また、小規模な医療機関にとってPACSやストレージへの投資負担は大きく、確保できる容量にも限界があります」(藤川氏)
倉敷中央病院が提供する「画像共有サービス基盤」を使えば、こうした問題を一挙に解決できる。
「私たちが画像共有サービスを手がける強い動機は、『医療連携を推進するには、IT資源を地域で有効に使う仕組みが欠かせない』という課題認識にあります。クラウド事業者が手がける商用サービスもありますが、コスト負担の重さは変わりません。そこに、地域の基幹病院である倉敷中央病院がオンプレミス環境を開放する意味があると考えています」と藤川氏は力を込める。
現在、画像データの相互連携や遠隔読影サービスについても、複数の医療機関との間で話し合われている。HPE 3PAR StoreServ 8400の優れた性能と拡張性に加え、マルチテナント機能も威力を発揮するだろう。藤川氏は次のように語って締めくくった。
「画像共有サービスは、医療機関の投資負担を軽減するだけでなく、患者様の重複検査の解消にも貢献します。PACS画像データの共有は、地域の医療連携の基盤として現実的なニーズに応えるものです。地域医療のいっそうの品質向上に向けて、アイアットOEC、GE社、HPEと協力して取り組んでいきたいと考えています」
詳しい情報
ソリューションパートナー
株式会社アイアットOEC 様
ご導入企業様
公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 様
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