インターネットイニシアティブが、次世代クラウドサービスを支えるオールフラッシュストレージ基盤を構築
株式会社インターネットイニシアティブ 様
HPE 3PAR StoreServオールフラッシュを採用し I/O性能保証型ストレージサービスの提供を開始
"ライバルの多いエンタープライズ向けIaaSにおいて、IIJ GIO P2が競争優位を獲得するには『I/O性能保証』が不可欠でした"
―株式会社インターネットイニシアティブ
執行役員
プラットフォーム本部長
立久井 正和 氏
2015年11月、インターネットイニシアティブ(IIJ)が次世代クラウドサービス「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」の提供を開始した。HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージをシステムの中核に採用し、処理性能に対する企業ユーザーのニーズに応える「I/O性能保証」を実現。IIJは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットを併せ持つこの革新的なIaaSにより、企業が自社運用するあらゆるシステムのクラウド化を推進していく考えだ。
業界
通信・クラウド
目的
IIJ GIOインフラストラクチャーP2の開始にあたり、企業ユーザーが目的に応じて「I/O性能」を選択できるストレージサービスを提供すること。より多くのユーザーを収容しつつ、高負荷時でも決められたI/O性能を維持できる高性能なストレージ基盤を構築する。
アプローチ
ストレージ製品のQoS機能を活用し、複数のサービスそれぞれに対しI/O性能を保証する。高い性能とコスト最適化を両立させるために、ティアリング(データ階層管理)やオールフラッシュ化など複数のテクノロジーの実効性を総合的に検証。
ITの効果
・高性能HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージを採用し低レイテンシで高IOPSを実現
・1筐体でより多くのLUNを提供しLUN単位でのQoS を実現
・1ラックあたりのストレージ容量を従来システム比で3倍に拡大
・収容スペースを従来システム比で74%削減し消費電力の抑制にも寄与
ビジネスの効果
・ストレージI/O性能を保証するサービスを実現し、ストレージ性能に対するユーザー企業の満足度を向上
・大容量SSDの採用により、年率40%増加するストレージ容量に対しシステム規模の拡大を抑制
・故障率の低減、リビルド時間の短縮、安定的なパフォーマンスにより運用負荷とリスクを低減
チャレンジ
次世代クラウド「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」登場
インターネットイニシアティブ(IIJ)が、次世代クラウドサービス「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(IIJ GIO P2)」の提供を開始した。IIJ GIOコンポーネントサービス、IIJ GIOホスティングパッケージサービスなどの名称で、国内外1,300社以上のビジネスを支えるクラウドサービス(IaaS)は「IIJ GIO P2」として生まれ変わった。IIJ 執行役員 プラットフォーム本部長の立久井正和氏は、サービス刷新の背景を次のように説明する。
「企業の基幹業務システムを安心して移行していただける、高信頼・高品質なクラウドサービス『IIJ GIO』を2009年に開始しました。私たちは6年以上に及ぶサービス提供を通じて、お客様の声を入念にリサーチしながら、最先端のテクノロジーを採り入れた次世代のエンタープライズ向けクラウドを設計しました。IIJ GIO P2は、新しいサービスコンセプト『One Cloud(ワンクラウド)』を具現化したものです」
IIJが2015年に打ち出した「One Cloud」は、パブリックとプライベートのメリットを併せ持つ「1つのクラウドサービス」実現に向けた指針である。コンピューティング/ネットワーク/セキュリティを1つのリソースから提供するとともに、他社も含めた複数のクラウドサービスをつないで1つのクラウド環境を構築するマルチクラウドも掲げている。サービス推進本部 GIO推進部長の神谷修氏は、次のように説明する。
「IIJ GIO P2は、企業がビジネスを遂行するために必要なITインフラのすべてを網羅します。そのために、システム規模の大小への対応だけでなく、システム性能でも幅広い選択肢をご用意しました。『パブリックリソース(共有型)』では、ベストエフォートから性能保証タイプまで幅広いサービスメニューを提供します。同じく『プライベートリソース(占有型)』では、数分~数十分でのリソース提供を実現し1日単位で使える柔軟性も備えています」
IIJ GIO P2では、基幹業務システムから中小規模のシステム、開発・テスト環境まで、多様なワークロードに最適なクラウドリソースを適材適所で活用することができる。開発とテストをパブリックリソースのベストエフォートタイプで行い、本番環境の稼働に際して性能保証タイプに移行するような運用も可能だ。
「IIJ GIO P2の提供に際しては、高品質なサービスを提供し続けることに徹底的にこだわりました。『お客様がI/O性能を選択できるストレージサービス』は、その代表例です。これを実現するには、高負荷時でも決められたI/O性能を維持できる高性能なストレージ基盤を構築する必要がありました」(立久井氏)
クラウドサービスを支えるストレージには、より多くの顧客とサービスを収容する高い処理性能が求められる。これに、「すべてのユーザーの要求が集中してもI/O性能を保証する」という要件が追加された形だ。IIJが慎重な検討を経て選択したのは、「HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージ」だった。
株式会社インターネットイニシアティブ
執行役員
プラットフォーム本部長
立久井 正和 氏
株式会社インターネットイニシアティブ
サービス推進本部
GIO推進部長
神谷 修 氏
ソリューション
HPE 3PAR StoreServ オールフラッシュストレージを採用
「HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージ」は、HPEが提唱する「オールフラッシュデータセンターへの移行」を推進する戦略製品として位置づけられている。IIJ GIO P2で採用されたモデルは、4つのコントローラーをアクティブで稼働させ、オールフラッシュ製品ならではの高いパフォーマンスと低レイテンシを実現している。ランダムアクセス性能はHDDベースのストレージシステムの10数倍に達するという。
「HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージを採用した『パブリックリソース』のディスクオプションでは最大1TB / 5,000 IOPSを、同じく『プライベートリソース』のFCストレージメニューでは最大10TB / 10,000 IOPSのメニューをお選びいただけます。容量とともにI/O性能が割り当てられますので、お客様は高いレスポンスを求められるオンライン処理や、限られた時間内に完了させなければならないバッチ処理などを安心して稼働させることができます」と神谷氏は自信を示す。
HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージは、「I/O性能保証」という要件にどのように応えたのか。プラットフォーム本部 システム基盤技術部 ストレージ技術課長の山本裕介氏は次のように話す。
「HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージは、ストレージ機能としてQoSを活用できます。重要なのは、1筐体で多数のLUNを提供できること、そしてLUN単位でのQoSを設定可能なことです。つまり、HPE 3PAR StoreServに収容したすべてのサービスに対してI/O性能を保証できるのです」
HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージの最大性能に対して、たとえば「10,000 IOPS保証のサービスを何契約まで収容できるか」を正確に予測できるメリットも生み出す。このサイジングを適用すれば、すべてのサービスが最大値を要求しても保証されたI/O性能は確実に維持される。
「お客様へ確実なサービス品質をお約束できることが大きいですね。サービス単位でIOPSの上限を設定可能になったことで、私たちにとってもストレージ環境のサイジングが容易になりました」と山本氏は評価する。
QoS機能の提供を謳うストレージ製品は少なくないが、クラウドサービス基盤としての実効性が確かなものか慎重に見極める必要がある。事実、山本氏らは、2012年8月に提供を開始したリソース占有型IaaS「仮想化プラットフォーム VWシリーズ」のストレージ基盤において、ある課題に直面したという。
「アクセスが集中してストレージの負荷が高まると、お客様が必要としている性能を十分に提供できない現象が発生しました。ストレージI/Oの取り合いが起こったことが原因です。QoS機能を備えたストレージ製品を採用していたにも関わらずベストエフォートにならざるを得なかった理由は、設定可能なQoSグループの上限数が限られており、LUN単位のQoSが実現できなかったことにありました」(山本氏)
「ティアリングを使わない」という決断
繰り返しになるが、IIJ GIO P2のストレージ基盤において最も重要な要件は「I/O性能保証」である。当然のことながら、クラウドサービスの提供価格に見合ったコストで導入できることが必須条件だ。性能とコストの最適化を図るために、第1世代のIIJ GIOでは、高速なSSDと容量単価で有利なSAS/SATA HDDを組み合わせ、「ティアリング(データ階層管理)」を行ってきた。アクセス頻度の高いデータをSSDに置き、それ以外をディスクの階層に移動させることでストレージコストを抑えたのである。
「IIJ GIO P2のストレージ基盤では『ティアリング機能を使わない』という決断をしました。大容量 SSDを搭載したHPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージが、問題を一気に解決へと導いてくれたからです。コストさえ見合えばSSDとHDDを組み合わせる必要も、ティアリングを使う必要もありません。私たちが行ったパフォーマンス検証では、HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージは、数十万 IOPSを大きく超えても遅延が発生しないこと、多種多様なI/Oパターンに高い性能で対応できることが確認できました」(山本氏)
「フラッシュストレージはディスクベースのストレージよりも高額」というイメージが依然として強いが、2TBや4TBクラスの大容量SSDの登場によって、状況は急速に変わりつつある。HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージは、最先端の大容量SSDをいち早く採用。独自のテクノロジーにより高い信頼性を実現し、戦略的な価格設定で新製品を次々と投入している。性能とコストの最適化という課題は、オールフラッシュ化によってシンプルに解決可能なのだ。
ティアリング機能を使わないという判断を後押しした背景として、「クラウドサービスならではの予測できない処理要求がある」と山本氏は話す。
「第1世代のIIJ GIOでは、月末の集計処理を実行させたお客様から、QoSを設定しているはずの環境で『性能が出ていない、バッチが終わらない』という指摘を受けました。原因は、月末以外の処理が極端に少ない場合に、ティアリング機能が働いてSSDからSATAにデータが移行されてしまったことでした」(山本氏)
ティアリングの動作は製品によって実装方法が異なる。データへのアクセス頻度に応じて動的にデータを移動する方法では、山本氏が直面した問題が起こりうるので注意が必要だ。スケジュールを決めて動作させる方法もあるが、処理要求の予測が困難なクラウドサービスでは現実的ではない。
ベネフィット
オールフラッシュストレージが支える高い顧客満足度
オールフラッシュ製品ならではの圧倒的なI/O性能、そしてLUN単位でのQoS―HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージは、IIJ GIO P2のストレージ基盤として「I/O性能保証」を実現し、高い顧客満足度を支えている。
「HPE 3PAR StoreServが提供する監視機能により、パフォーマンスやリソースの使用状況も正確かつタイムリーに把握できるようになり、システム増強のタイミングも適切な判断が可能になっています。また、HPE 3PAR StoreServで提供されるAPIを利用して、設定の自動化、セットアップの自動化も大きく前進しました」(山本氏)
IIJ GIO P2では、サーバーやストレージの追加や返却、スペックの拡大・縮小など、すべての操作は単一のコントロールパネルからユーザー自ら行える。サーバー環境のセットアップに数分、データストアの準備に要する時間はわずか数秒だ。
「将来、ストレージシステムのアップデートに伴うデータ移行が必要になったとしても、HPE 3PAR StoreServのマイグレーション機能(ピアモーション)を使えば、サービスを停止させることなく安全なデータ移行が可能です」(山本氏)
IIJでは、年率40%でストレージ容量が増加しているという。HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージが、従来システム比で設置スペースを74%削減し、消費電力も同様に抑制できる効果は大きい。また、オールフラッシュ製品ならではの故障率の低さ、リビルド時間の短縮化は、運用負荷とリスクの軽減に寄与している。
最後に立久井氏が次のように語って締めくくった。
「ライバルの多いエンタープライズ向けIaaSにおいて、IIJ GIO P2が競争優位を獲得するには『I/O性能保証』が不可欠でした。私たちが提示した要件をクリアした上で、お客様にとって最も価値の高いサービスを提供できる製品、私たちにとってビジネスメリットの大きな製品を選びました。それが、HPE 3PAR StoreServオールフラッシュストレージだったと言えます。IIJ GIO P2の中核を支えるストレージ基盤として、お客様の高い満足度と私たちの競争力を支えてくれることを期待します」
ご導入企業様
株式会社インターネットイニシアティブ 様
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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