北海道電力が、ハイブリッドITの実現に向けインフラのRight Mixを推進
北海道電力株式会社 様
HPE Pointnextが、クラウド適合性診断からMicrosoft Azureへの移行までをトータルに支援
"社内が『パブリッククラウド も安心して選べる』という空 気になったのは大きな変化 ですね"
―北海道電力株式会社
情報通信部
情報基盤グループリーダー
藤谷 泰樹 氏
北海道電力が、パブリッククラウドサービスの活用へ大きな一歩を踏み出した。同社では長年にわたりオンプレミス環境に高い信頼性を作り込んで きたが、より柔軟でコスト競争力の高いIT環境を指向する中での決断だ。 本プロジェクトでは、HPE Pointnextのコンサルティングチームが、ワーク ショップを通じて「IT基盤のあるべき姿」を描き、システムごとのクラウド 適合性チェック、プロトタイプ環境構築、本番環境への移行までをトータルにサポート。北海道電力/ほくでん情報テクノロジーのハイブリッドITへの取り組みを支えている。
業界
公共
目的
より柔軟で投資対効果に優れたIT基盤の実現。オンプレミスシステムとパブリッククラウドサービスを適材適所で選択でき、いつでも利用可能な環境を整える。
アプローチ
既存システムのクラウド環境での適合性を評価し、 プロトタイプ構築を通じて検証。ビジネス要求に応じてパブリッククラウドを利用するためのガイドラインを整備する。
ITの効果
・ワークショップを通じて「クラウド導入の基本方針」を策定
・プロトタイプ環境の構築を通じて実際に設計や機能を検証
・インフラ系システムの一部からMicrosoft Azure への移行に着手
・PaaS上に機能を実装することで高価な既存設備を撤廃可能に
ビジネスの効果
・あるべき姿として独自のハイブリッドITを描き、実現に向けたロードマップを策定
・社内向けに「クラウド導入検討ガイド」を策定し導入検討を円滑化
・「クラウドの適合性」をシステムごとに事前評価できるチェックシートを利用可能に
・オンプレミスとクラウドの“Right Mix”の実現に向けHPE Pointnextによる支援体制を強化
チャレンジ
パブリッククラウド採用の第一歩を HPE Pointnextとともに
2018年3月、北海道電力がMicrosoft Azure上でインフラ系システムの一部を稼働させた。同社初となる本格的なパブリッククラウドサービスの採用である。北海道全域への電力供給という社会的使命を担う同社を、クラウドシフトへと動かしたものは何か。北海道電力 情報通信部 情報基盤グループリーダーの藤谷泰樹氏は、次のように話す。
「電力自由化に伴うビジネス環境の変化は、私たちのIT戦略にも変革を迫っています。より柔軟に、よりスピード感をもってビジネス要求に応えるITサービスを提供すると同時に、合理的にコストを抑制していかなければなりません。パブリッククラウドの採用は、私たちがやるべきことを考えたときに必然的な選択だったのです」
北海道電力では、長年にわたりオンプレミス環境に高い信頼性を作り込んできた。それは、社 会インフラとしての電力サービスを安定的に提供し続けるための英知の結晶でもある。同部の八鍬史典氏は次のように話す。
「オンプレミス環境と同等のセキュリティと信頼性を維持しながら、パブリッククラウドならではのメリットを手に入れる方法を模索していました。そうした中、HPE Pointnextのコンサルタントから重要な示唆を得たのです。Right Mixという考え方です」
HPEでは、ITインフラのひとつの理想形を「ハイブリッドIT」として描いている。オンプレミスとクラウドのリソースを適材適所(Right Mix)で使い分けながら、柔軟にアプリケーションやデータを連携させるアプローチである。
「たとえば、データをセキュアなオンプレミス環境に置いたまま、パブリッククラウドのコンピュートリソースを使うようなハイブリッドモデルは、私たちにとってクラウド利用の現実解になるはずです。また、高価な既存設備をクラウドに移行することでコスト削減も期待できると考えました」(八鍬氏)
クラウドへ舵を切った北海道電力/ほくでん情報テクノロジーを全面的にサポートしたのは、HPE Pointnextのコンサルティングチーム。プロジェクトがスタートしたのは2016年末である。
北海道電力株式会社
情報通信部
情報基盤グループリーダー
藤谷 泰樹 氏
北海道電力株式会社
情報通信部
情報基盤グループ
八鍬(やくわ) 史典 氏
ほくでん情報テクノロジー株式会社
情報技術部
情報システム計画グループ
課長
佐藤 順一 氏
ほくでん情報テクノロジー株式会社
情報技術部
情報システム計画グループ
坂井 潤 氏
ソリューション
ワークショップと適合性調査を通じてクラウドの活用方針を具体化
HPE Pointnextは、企業のデジタルトランス フォーメーションをトータルに支援するサービス 組織である。世界80カ国、2万5,000人を超える ITプロフェッショナルが、豊富な実績とナレッジ に基づくコンサルティング、構築サービス、運用 保守サービスを一貫して提供している。中でも、 クラウドコンピューティングとハイブリッドIT分野 におけるアドバイザリサービスへの評価は高い。
「パブリッククラウドの特性を正しく捉えながら、 システムの性格やサービス要件によって適合性 がどう変わるのかを見極めることから始めまし た。初期段階のヒアリングとワークショップでは、 独自の『クラウド適合性チェックシート』を用いて システムごとに移行の是非を判定しながら、関係 者全員が目指すべきゴールを明確化していきま した」とHPE Pointnextのコンサルタント 惣道 哲也氏は話す。
HPE Pointnextでは、オンプレミス環境からク ラウドへ移行するための方法論を「ハイブリッド ITトランスフォーメーションサービス」として整 えている。HPEがコンサルティングの初期段階 で重視しているのは、プロジェクトに参加する全 員の共通理解を深めることだという。HPE Pointnextのコンサルタント 大塚麻実氏は次の ように話す。
「プロジェクトには、システムの企画、開発、運用、 セキュリティ、ネットワークなど、それぞれの業務 に携わるメンバーに参加していただきました。シ ステムが担う業務内容や重要度、アーキテク チャー、扱うデータの機密性などに照らしたとき、 クラウド移行の適合性がどれだけあるのか―― これを『チェックシート』という共通の尺度をもっ て検討を進めたことで、スムーズに合意形成を 図っていきました」
「中立的な立場から主要なパブリッククラウド サービスの特徴や優位性を分析してもらえた ことも、判断の大きな助けになったと思います。 サポートデスクの対応品質などは、机上での検討 では評価が難しいものです」と話すのは、ほく でん情報テクノロジー 情報技術部 情報システム 計画グループ 課長の佐藤順一氏である。
ほくでん情報テクノロジーは、北海道電力グルー プのITサービス企業として、電力の安定供給と経 営効率化に長年にわたり貢献している。高いサー ビス品質が要求される業務システムやITインフ ラの設計・構築・運用における実績が豊富だ。
「信頼性の高いオンプレミス環境を活かしつつ、 適合性が高くコスト削減も見込めるシステムか らクラウドへ移行する、という基本方針を確認し ました。目指すべき姿は、Right Mixを具現化し た北海道電力独自のハイブリッドIT環境です」 (八鍬氏)
Microsoft AzureのPaaSを利用し顧客サービス系システムの一部を移行
「クラウド適合性チェックシート」による診断結果は、システムごとのプライベートクラウド/パブリッククラウドへの適合率、IaaS/PaaS/SaaSそれぞれの適合率として可視化される。続くフェーズでは、クラウド上にプロトタイプを構築して動作・機能の検証が行われた。プロジェクトが最初の移行対象に選んだのは、顧客サービス系システムの一翼を担う環境だ。
「社外利用向けのサービスに高価なアプライアンス機器を利用していたのですが、この機能を切り出してMicrosoft Azureで稼働させることを最初のターゲットに設定しました。ポイントは、IaaS上にOSから構築して移設するのではなく、PaaSの機能を利用して機器を丸ごと置き換えることです」とHPE Pointnextのコンサルタント戸田智雄氏は話す。
PaaSを利用することで機能の作り込みに要する時間とコストを削減しつつ、OSレベルの管理もクラウド側に任せることが狙いだ。「今回のミッションで私たちにとって重要なことは、業務システムをオンプレミス環境に置いたま ま特定の機能だけをクラウドに移行できることでした。このハイブリッドモデルは、自社環境を最初にクラウド化する方法として最適と判断しました」と八鍬氏は振り返る。
データをクラウドに置かないながらも、顧客との接点を担う重要なサービスだ。プロトタイプ環境が構築され、セキュリティ要件を満たすネットワーク設計や、既存アプライアンスからの切り替え手順が慎重に確認された。本システムが本番稼働を始めたのは2018年3月である。
「実際のところPaaSには機能的な制約もありましたが、諦めず妥協せず、知恵を出し合いながら解決していきました。パブリッククラウドに対する共通理解があったからこそ、移行を完遂できたものと考えています」と話すのは、ほくでん情報テクノロジーの坂井潤氏である。
Azureへの切り替えは営業時間内に実施された。事前に手順や挙動を確認していたので、「お客様にサービスへの影響を感じさせることなく、予定通り切り替えを完了できた」(坂井氏)という。
「今後、顧客サービス系システムを構成するいくつかのモジュールをPaaS上に移行できるような設計としました。シンプルかつ運用コストを抑えられるシステムへ、段階的に生まれ変わっていくことになるでしょう」と同社の佐藤氏は話す。
日本ヒューレット・パッカード株式会社
Pointnext事業統括
クロス・インダストリ・ソリューション統括本部
テクノロジーアーキテクト部
プロジェクトマネージャー
惣道(そうどう) 哲也 氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社
Pointnext事業統括
クロス・インダストリ・ソリューション統括本部
テクノロジーアーキテクト部
戸田 智雄 氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社
Pointnext事業統括
トランスフォーメーションコンサルティング本部
ITアドバイザリーコンサルティング部
大塚 麻実 氏
ベネフィット
開発部門のニーズに応える 「クラウド導入検討ガイド」を作成
北海道電力/ほくでん情報テクノロジーでは、す でに次の準備を始めている。複数ある開発環境 や認証システムをクラウド上へ移行する計画も 具体化しつつある。移行対象となるシステムの 評価や選定には、新たに制定された「クラウド導 入検討ガイド」が活用されるという。
「HPE Pointnextの支援を受けて『クラウド導入検討ガイド』を策定しました。クラウドの一般的な検討事項だけでなく北海道電力グループ固有の検討事項を示して、開発部門で導入に関する議論を円滑に行えるよう工夫しています」(八鍬氏)
このガイドに加え、ワークショップで威力を発揮した「クラウド適合性チェックシート」も活用される。
「社内が『パブリッククラウドも安心して選べる』という空気になったのは大きな変化ですね。また、地図情報や画像認識などのクラウド上のサー ビスと、私たちのシステム情報を連携させた付加価値の高いサービス開発など、新しいアイデアがいくつも出ています。AIやIoTの活用も視野に入ってきました」と藤谷氏は話す。
2018年、「北海道」の命名から150年目の節目を迎えた。北海道電力は、より地域に根ざした企業として、より良い地域社会の実現に貢献していくことを変わらぬ目標として掲げている。最後に、藤谷氏が次のように語って締めくくった。
「最先端のIT活用でお客様へのサービスを改善すること。コストを抑えながらこれを実現することは、企業目標を達成するための取り組みの一環 です。私たちは、HPE Pointnextのアドバイスを受けながら、自社に最適なハイブリッドITの姿を描き、オンプレミスとクラウドを適材適所で選択していつでも利用可能な環境を整えました。この取り組みが、将来に向けた大きな一歩になると確信しています。HPE Pointnextには継続的なご支援を期待しています」
ご導入企業様
北海道電力株式会社 様
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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