電気通信大学が、HPE Synergyを採用して新たな学内クラウド基盤を構築、より柔軟で可用性の高いインフラ環境を低コストで実現
"より柔軟で使い勝手のいい情報基盤を実現するために、HPE SynergyとHPE 3PAR StoreServの組み合わせを選択しました。これでOpenStackを最大限に活用することができます"
―国立大学法人 電気通信大学 教授 情報基盤センター 博士(工学) 高田 昌之 氏
電気通信大学では4年に一度、学内外の環境変化に対応するために情報基盤の刷新を行っているが、一方でコスト削減やセキュリティの強化、エネルギーコストの低減といったシステム要求もより顕著なものになってきていた。そこで2018年3月カットオーバーの「ITC2018」では、オープンソース(OSS)のIaaSであるOpenStackの採用を決定、クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル® Xeon® プロセッサー・スケーラブル・ファミリーを搭載した「HPE Synergy」と「HPE 3PAR StoreServ」をセットで導入して、より柔軟で可用性の高いインフラ環境を低コストで実現した。
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目的
4年に一度の情報基盤刷新のタイミングに際し、ITコストのさらなる低減と運用負荷の軽減を図る。またセキュリティ対策の強化とシステム稼働の状況把握、省電力対策も重要な要件。
アプローチ
「HPE Synergy」と「HPE 3PAR StoreServ」を導入して次世代型IT基盤を構築し、OpenStackによるプライベートクラウド/セキュリティ対策/ファイルサーバー/認証サーバーなど様々なワークロードを集約して、一元的かつ効率的なシステム運用・管理を実現
ITの効果
・システムに必要な機器を1つの筐体に集約した「HPE Synergy」を導入して、柔軟なコンピュートリソースの配備を可能に
・IOPS要求されるシステムには、SSDとHDDを組み合わせた「HPE 3PAR StoreServ」を、バックアップ用には「HPE Apollo 4200」を採用し、システムの重要度に応じたストレージ利用を実現
・OpenStackを採用して、より柔軟で可用性の高い情報基盤を構築
ビジネスの効果
・学内ユーザーに対して、より速く柔軟に仮想マシン環境を提供することが可能に
・運用コストの削減に加え、運用負荷の低減、管理性の向上も実現
・セキュリティの強化、省電力対策などの課題についても解決
・今後のシステム増強時にも、低コストで柔軟かつ迅速に対応することが可能に
より柔軟な情報基盤の構築と運用コストのさらなる低減を目指してOpenStackの採用を検討
2018年に創立100周年を迎えた電気通信大学は、科学・技術分野における先進的な“研究大学”として精力的に活動しており、近年には研究力強化のための構想「D.C.&I. 戦略」を構築した。D(=ダイバーシティ)を尊重して、C(=コミュニケーション)を大局的な行動指針とし、I(=イノベーション)の持続的な創出を目指すというものだ。同大学では、このD.C.&I.戦略に基づき、持続発展可能な社会の構築に寄与する新たな価値の創造とイノベーションリーダーの養成を推進している。
同大学では4年に一度、世の中の環境変化に対応するために学内の情報基盤を刷新している。その役割を担うのが、大学全体にわたる情報基盤の整備から全学共用の情報システムの運用までを行う情報基盤センターだ。前回2014年の「ITC2014」プロジェクトの際には、それまでサーバーOSとして利用していた商用UNIXからの脱却を図り、Linuxへと移行した。そして2018年3月にカットオーバーした「ITC2018」プロジェクトでは、より柔軟な情報基盤の実現を目指して、OpenStackを利用したIaaS環境の構築を計画した。その背景について、電気通信大学 教授で情報基盤センター博士(工学)の高田昌之氏は、次のように説明する。
「2011年の東日本大震災発生時、当大学もサーバーの電源などシステムの運用環境に非常な苦労をしました。その教訓を踏まえて、万一の事態も乗り切れる環境を構築することを目指し、ITC2014以前の2013年に“大学のプライベートクラウド”として多摩ICT拠点を作り、当大学のマシンルームをデータセンタ並みの電源や空調設備に替えて、無停止で動かせるようにしました。そしてITC2018のタイミングでは、いよいよOpenStackを使ったIaaS環境を実現したいと考えたのです」またもう1つ、高田氏がOpenStackに着目した大きな理由がある。それが運用コストのさらなる低減だ。
「ITC2014では、Linux環境の上にVMwareで仮想化環境を構築して、先生方や学生の皆さんに仮想マシンを貸し出すサービスを開始しました。ITC2018のタイミングでは、このサービスが安定して稼働するようになってきており、さらに今後は利用が進み、貸し出す台数も増えていくことが予想されました。同時に運用コストも増加していく。一方で大学からは、ITコストの低減が求められ続けています。その際にOpenStackを利用すれば、その時々で一番性能のいいハードウェアを適正価格で選択することができる。こうした観点からもOpenStackは、非常に有用なテクノロジーでした」
国立大学法人 電気通信大学
教授
情報基盤センター
博士(工学)
高田 昌之 氏
インテル® Xeon® プロセッサー・スケーラブル・ファミリー搭載
柔軟性を提供するシステム基盤としてHPE Synergyを採用、高いIOPSを支えるストレージにはHPE 3PAR StoreServを選択
同大学ではITC2014の際、情報基盤を構成するハードウェアとして、HPE ProLiantサーバー、HPE 3PAR StoreServ、各種ネットワークスイッチといったHPE製品を採用しており、HPEに対する信頼性が高かった。
「まず新たなサーバーを導入するに際しては、HPEを始めとする複数ベンダーから提案をもらい、比較検討を行いました。そして最終的に採用したのが、柔軟な次世代情報基盤の構築を可能にしてくれると実感することができたHPE Synergyでした」
クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル® Xeon® プロセッサー・スケーラブル・ファミリーを搭載したHPE Synergyは、システムに必要なサーバー/ストレージ/ネットワーク機器を1つの筐体に集約し、一括してコントロールすることができる次世代型のITシステムインフラだ。オンプレミスでありながら“クラウドの利用感”を実現し、瞬時にコンピュートリソースを配備することができる。また運用・管理性の大幅な改善や、省電力化・省スペース化にも高い効果を発揮する。
「今回のITC2018では、何よりもOpenStackを支えてくれる次世代のサーバー環境が必要不可欠でした。その時にHPE以外のベンダーからの提案は、1Uサーバーをいくつも積み上げてコンピューティングパワーを確保しようとするものがほとんどだったのです。それは見栄え的にも美しくないですし、ラック内のワイヤリングも複雑になって、サーバーの冷却も気を配らなければならない。それではシステムの拡張に伴って、サーバースペースも、安定稼働のための管理工数、右肩上がりで増えていくことになります。我々にとっては、HPE Synergyの選択が最適解だったということです」またストレージ製品としては、2014年システムでメールサーバー用に利用していた実績を評価し、改めてHPE 3PAR StoreServを採用することにした。
「HPE 3PAR StoreServは、何よりもまず非常に安定していましたし、高いパフォーマンスも提供してくれていました。それで2018年システムでも採用を決めたのですが、今回は耐障害性をさらに高めるために、コントローラ構成を採りました。またRAID処理などを専用設計のASICにオフロードしたり、全てのドライブで分散処理をして特定ドライブがボトルネックになるのを防いだりすることで、高いIOPSにも十分に耐え得る性能を提供してくれるものでした」
またバックアップ用およびログの長期保管用のストレージとしては、コストを抑えるためにHPE Apollo 4200を導入した。2018年システムのカットオーバーは、2018年3月1日だ。
ネットワークの集約と帯域確保のテクノロジーを搭載したHPE Synergy
今回電気通信大学が採用したHPE Synergyには、高田氏が懸念した複雑なワイヤリングの課題を解決する最先端のテクノロジーが搭載されている。その1つがトップ・オブ・ラック(ToR)スイッチを不要とするHPE Synergy用バーチャルコネクトの特徴であるマスター/サテライト構成。同一ラック内のマスターモジュールとサテライトモジュール間をボトルネックを発生させることなく結び、マスターモジュールから直接コアスイッチに繋ぐことで、従来のようなToRスイッチの設置や複雑なワイヤリングを不要としている。これによってケーブル数を大幅に削減することが可能となり、同時に高可用性も担保することができる。
また物理ポートを論理的に分割するFlex-20テクノロジーも、各帯域を確保しつつワイヤリングをシンプルにする技術で、1つの2ポートNICのみで、OpenStackに必要となるLAN、あるいはファイバーチャネル(FC)接続などを構成することができる。1ポート当たりの帯域は20Gbpsで、各接続に必要となる帯域は十分に確保可能だ。
「こうしたテクノジーは、筐体内のケーブルを減らせると同時に、各サーバーのネットワーク帯域も十分に確保できるという大きなメリットを提供してくれました。ケーブルが減れば、それだけ管理も楽になる。こうしたポイントも、HPE Synergyの大きなアドバンテージとなった要素です」
柔軟な情報基盤を完成させ、サーバー環境の省スペースも実現、今後はKVMを利用した仮想化環境の構築を目指す
今回一連のHPEソリューションを導入したことで、電気通信大学では、様々なメリットを獲得することができた。第一に挙げられるのは、何と言っても新しい情報基盤(=プライベートクラウド)が安定稼働していることだと、高田氏は強調する。
「まだ定常運転に入ってからそれほど時間が経っていませんが、今のところ、ほとんど手間はかかっていません」
また今回HPE Synergyを採用したことで、サーバースペースの大幅な削減にも繋がった。高田氏は「感覚的にラックの本数は、3分の2ぐらいになりました」と評価する。
「今後当分の間、サーバーの設置スペースを心配する必要が無くなりました。ストレージのディスクを拡張するとか、バックアップ用にもう少しメディアを追加するということも考えやすくなりました。消費電力の削減効果については、これから時間をかけて評価していく予定です」
さらに今後はSIerに任せているプライベートクラウドの運用を、自分たちだけで回していくことを考えているという。この点について同大学 特任准教授で情報基盤センター 博士(工学)の矢﨑俊志氏は、次のように説明する。
「我々はシステムが正しく動いているかどうか、自分たち自身で目を配れることが重要だと思っています。今回OpenStackに着目した理由として、商用ソフトウェア製品のようにテクノロジーがブラックボックスになっておらず、我々が理解して使いこなすことが可能である点も挙げられます」
実際導入に際して矢﨑氏はPCを5~6台並べてOpenStack環境のプロトタイプを作り、学内関係者に“こんなものを作ります”というプレゼンテーションをしたという。
現在同大学では、統合監視ツール(Zabbix)を利用して、HPE Synergy上のシステム監視を行っている。HPE Synergy に標準搭載される統合インフラ管理ツールのHPE OneViewからZabbixが必要な情報を受け取り、GUIを介して表示する。SIer はリモートで監視をしており、異常があった際にはメールで大学側に通知するというスキームだ。
同大学では今後2年間をかけて、今回構築した情報基盤の検証と、次のITC2022に向けた要件を詰めていく。
これに関して、ネットワーク部分を担当する情報基盤センター 教育研究技師部 主任学術技師の石井和弘氏は、1つの検討事項としてネットワーク環境の強化を挙げる。
「今回の新たな情報基盤のリリースで、ネットワーク上のトラフィックはさらに増え、長期保存する必要のあるログも膨大になることが予想されます。サーバー環境の検証に加え、ネットワーク環境においても、帯域の確保や環境変化に応じたセキュリティ製品の選定が求められると考えています」
そして最後に高田氏は、次回の情報基盤刷新時の重要なテーマとして、OSSのハイパーバイザであるKVMによる仮想化環境の実現を挙げた。
「今回新たなテクノロジーとしてOpenStackを採用しましたが、そこで使用されるハイパーバイザとしてはVMwareを使用しています。今後はそのハイパーバイザにおいても同じOSSであるKVMを利用した仮想化環境の構築というビジョンが出てきます。現在のVMwareを全てKVMに置き換えるということではありません。サービスとして安定性が求められるものについては、やはりVMwareが必須です。しかしそれ以外についてはKVMを利用する。それがより柔軟で低コストな情報基盤の実現に繋がると考えています」
ご導入製品情報
HPE Synergy
強力なソフトウェア デファインド ソリューションであるHPE Synergyを活用すれば、物理/仮想コンピュート、ストレージ、およびファブリックリソースの可変的プールをあらゆるワークロードの構成に組み込むことができます。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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