全社仮想化基盤をHPE Synergy+HPE Primeraで刷新、ビジネスの成長を加速する柔軟なインフラを実現
高い性能・信頼性を確保すると同時にハイブリッド・クラウドへの展開も視野に
国内最大手のケーブルテレビ事業者として知られるJ:COMでは、各種の社内業務システムを収容する全社仮想化基盤の再構築を実施した。インフラの性能・信頼性・拡張性をさらに向上させると同時に、業務ニーズや市場の変化にも柔軟に対応できる環境を実現するのが狙いだ。システムの中核には日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)のコンポーザブル・インフラ製品「HPE Synergy」と、高性能プライマリストレージ「HPE Primera」を新たに採用。ハイブリッド・クラウドへの発展も見据えた先進的なインフラを実現している。
業界
通信・放送
目的
各種の業務システムを収容する全社内仮想化基盤を再構築し、より高い性能・信頼性・拡張性を備えた先進的なインフラ環境を確立すること。
アプローチ
「HPE Synergy」+「HPE Primera」による新仮想化基盤を構築。「VMware NSX®」も新たに導入し、外部クラウドサービスとのシームレスな連携を可能にする。
ITの効果
・「HPE Synergy」+「HPE Primera」による新仮想化基盤を構築
・将来のハイブリッド・クラウド化も見据えた先進的なITインフラを実現
・物理機器の制約に捉われない柔軟なネットワーク環境を「VMware NSX®」で実現
・大量の業務システムを余裕で収容できる高い性能・信頼性・拡張性を確保
ビジネスの効果
・バッチ処理時間を従来の約1/6に短縮するなど大幅な性能向上に成功
・サーバーラックの占有スペースを2ラックから1ラックに削減
・新旧データセンターをまたいだ無停止での仮想マシン移行を実現
・既存システム群の集約によりインフラのさらなる最適化を推進
全社の事業活動を支える仮想化基盤の再構築に着手
「もっと、心に響かせよう。もっと、暮らしを支えよう。明日を、未来を、拓いていこう。」の企業理念の下、ケーブルテレビ、メディア・エンタテインメント、エネルギー、通販の4領域でビジネスを展開するJ:COM。国内最大級の規模を誇るケーブルテレビ事業では、札幌・仙台・関東・関西・九州エリアにグループ11社・70局の拠点網を展開。約555万世帯(2020年9月末現在)の顧客に対し、ケーブルテレビや高速インターネット接続、固定電話、モバイル、電力、ホームIoTなど多彩なサービスを提供している。ケーブル敷設工事が完了し、いつでも加入が可能なホームパス世帯の数も2100万世帯を超えるという。
加えて、メディア・エンタテイメント事業においても、各種専門チャンネルへの出資・運営・広告事業や映像企画・製作、劇場配給、各種VODサービスへのコンテンツ調達・提供など、多角的な事業を展開。コンテンツバリューチェーンの推進を図ることで、「J:COM」グループの総合力を高めている。
こうした同社の事業活動を支える様々な業務システム群を担っているのが、情報システム本部 ケーブルTV事業システム部だ。同部門の部長を務める清水 浩一氏は「お客様や社内ユーザーへの安定的なサービス提供はもちろんですが、最近ではデジタル・トランスフォーメーションに向けた取り組みも強く求められるようになっています。そこで、DevOpsの手法なども積極的に取り入れ、新たなニーズによりスピーディに対応できるよう努めています」と語る。
また、同部門では、インフラの環境改善にも継続的に取り組んでいる。その中でも注目されるのが、2014年に実施されたサーバー仮想化だ。ここでは、HPEのブレードサーバー/ストレージと「VMware vSphere®」による仮想化基盤を構築し、社内の決裁系システムや営業系システム、顧客系システムなど、様々な業務システムを統合した。2019年9月時点では140台以上ものサーバーが集約され、単体の物理IAサーバーで環境を構築する場合と比較して、約3億5000万円もの大幅なコスト削減に成功している。しかし、当初導入したハードウェアが更新時期を迎えたことから、今回同部門ではこの全社仮想化基盤の再構築に着手した。
JCOM株式会社
情報システム本部
ケーブルTV事業システム部
部長
清水 浩一 氏
JCOM株式会社
情報システム本部
ケーブルTV事業システム部
アシスタントマネージャー
中村 英之 氏
JCOM株式会社
情報システム本部
ケーブルTV事業システム部
大浦 正嗣 氏
ハイブリッドITインフラの実現に向けHPE Synergy +HPE Primeraを採用
今回の新仮想化基盤の導入にあたり、同部門が強く意識したのが、「ハイブリッドITインフラ」の実現である。J:COM情報システム本部 ケーブルTV事業システム部 アシスタントマネージャー 中村 英之氏は、その背景を「最近では、業務システムを構築する際にパブリック・クラウドを選択するケースが増えています。しかし、IT先進国である米国の状況などを見ていると、一度クラウド化したシステムをまたオンプレミスに引き戻す動きが現れています。理由の一つはセキュリティで、やはり機密性の高いデータは自社の環境でしっかりと守りたい。またコスト面でも、長年システムを使い続けることを考えると、必ずしもクラウドが有利とは限りません」と説明する。
もちろん、同部門としても、決してクラウドの有用性を否定するものではない。サービス利用形態で短期間に環境を用意できる、インフラのリソースを柔軟にスケールさせられるなど、クラウドならではのメリットも捨て難いところだ。「そこで、今回の新仮想化基盤では、外部のクラウドとも柔軟に連携できる環境を構築し、各種の業務システムを必要に応じて適切な場所に配置できるようにしたいと考えました」と続ける。
同部門ではこうしたコンセプトに基づき、新仮想化基盤を支えるハードウェア製品の選定に着手。その結果新たに採用されたのが、「HPE Synergy」(以下、Synergy)だ。コンポーザブル・インフラ製品であるSynergyは、各種のモジュールを組み合わせて自由に環境を構成することが可能。また、外部のクラウドサービスとも柔軟に連携することができる。「たまたまVMware社のイベントで出会ったのですが、非常に優れたコンセプトの製品だと感じましたね。高信頼なインフラをシンプルに実現できる上に、内部通信も40Gで非常に高速。重たい業務システムも安心して載せられます」と中村氏は語る。
また、Synergyと組み合わせるストレージには、最新の高性能ストレージである「HPE Primera」(以下、Primera)を採用。J:COM情報システム本部 ケーブルTV事業システム部 大浦 正嗣氏は「全社仮想化基盤は社内のほとんどの部門で使われますので、高い安定性とパフォーマンスが要求されます。その点、Primeraは『100%の可用性』を謳っていますし、専用ASICによる高速処理アーキテクチャーも備えています。これなら、今後インフラの規模が拡大しても問題なく対応できると判断しました」と語る。
VMware NSX Data Centerも新たに導入しデータセンター間を無停止で移行
今回のプロジェクトで注目されるのが、「VMware NSX Data Center」(以下、NSX Data Center)によるネットワーク仮想化にも取り組んだ点だ。中村氏はNSX Data Centerの導入理由を「物理機器の制約に捉われない柔軟なネットワークを実現できる点を評価しました。たとえば、ファイアウォール機器をネットワークのどこかに追加するとなると、ケーブルの結線作業を行うために一度システムを止めなくてはなりません。その点、NSX Data Centerを利用すれば、物理ネットワークには一切手を加えることなく簡単に設定変更が行えます。また、個々のVM単位でファイアウォールを設置できるなど、設定の自由度が非常に高いのも大きなメリットです」と説明する。
この利点は、新仮想化基盤への移行作業でも早速発揮されることとなった。大浦氏は「実は当社では、今回から新しいデータセンターを利用することになりました。新旧の仮想化基盤が同じ場所にあれば大きな問題は生じませんが、今回は両者が別々の場所になるため、どう移行するかを考える必要がありました」と振り返る。こうしたデータセンター間移行を行う場合には、あらかじめデータをコピーしたストレージを物理的に移動させる、バックアップからシステムを復元するなど、様々な手法が考えられる。しかし、いずれにおいても、ある程度のシステム停止が避けられない。
「社員が毎日使っているシステムなので、ダウンタイムの発生は極力避けたい。そこで今回は、NSX Data Centerの機能に着目。新データセンターへのL2延伸を行い、2つのデータセンターをまたいだ仮想マシン移行を行うことにしました」と大浦氏。2つのデータセンターをつないでVMware vSphere® vMotion®で仮想マシンを移動させれば、システムを止めることなく移行作業が行えるというわけだ。
実際の作業もスムーズに進んだとのこと。「1ヶ月程度の期間を掛けて、順次新データセンターへの移行を行いましたが、まったくトラブルらしいトラブルはありませんでしたね。日中帯にシステムが使われている最中にも、仮想マシンの移動を行いましたが、ユーザーには全く気付かれずに済んでいます。もちろんクレームなども一切ありませんでした」と大浦氏。また、清水氏も「かなり大掛かりなプロジェクトになりますので、多少の不安や懸念はありました。しかし、拍子抜けするくらいすんなり移行が終わったので驚かされましたね」と続ける。
こうした成功の裏側には、ITパートナーの手厚いサポートもあった。今回のプロジェクトを担当した横河レンタ・リース(株)では、事前に検証機を用意するなど万全の体制で導入を支援。特にPrimeraについては、本件が国内での初導入事例となることから、HPEとも連携しながら、新仮想化基盤の実現に取り組んだ。その努力が見事実を結び、2020年3月末より無事本番稼働を果たしている。
さらに、横河レンタ・リースが果たした貢献はこれだけに留まらない。今回のバックアップシステムには、Veeam Software社の「Veeam Backup & Replication」(以下、VBR)が採用されているが、もちろん、PrimeraとVBRの組み合わせも今回が国内初事例となる。そこで横河レンタ・リースでは、こちらについてもHPE / Veeam両社と密接に協調し、無事Primera + Veeamのストレージスナップショット連携を実現している。さらには、導入後の保守サポートもワンストップで提供。インフラの安定稼働を強力に後押ししているのである。
大幅なパフォーマンス向上に成功、インフラの最適化を今後も推進
Synergy + Primeraが導入されたことで、同社の業務環境にも様々なメリットが生まれている。大浦氏は「まず一点目は、大幅なパフォーマンス向上です。たとえば、これまで約6時間掛かっていた処理が、1時間程度にまで短縮。処理が終わるまで長々と待つ必要がなくなりましたので、業務効率化や生産性向上に役立つと、現場のユーザーからも大変好評です」と胸を張る。これに加えて、vSphere vMotionのスピードも飛躍的に改善。大浦氏は「旧ブレードサーバーでは、筐体内のvSphere vMotionに十数秒程度掛かっていましたが、現在では数秒で終わります。体感的には、以前の2~3倍に性能がアップした印象ですね」と続ける。
もう一つ見逃せないのが、インフラの省スペース化だ。従来の環境と比較して、ラックスペースは以前の1/2に減少。性能や容量を大幅に強化しつつ、インフラ全体の最適化を図ることに成功している。ちなみに、Synergy、Primeraの両製品とも、AIによる予測分析機能を備えたクラウドベースの運用監視プラットフォーム「HPE InfoSight」に対応している。システム内部に問題の予兆を検知した場合にはいち早く通報が行われるため、手間を掛けることなくサービスの安定稼働を維持することが可能だ。
「社内には今回移行したシステム以外にも、物理サーバーで稼働しているシステムがいくつか存在します。今後はこうしたものについてもリニューアルを図ることになりますが、先にも触れた通り、必ずしもクラウド化が最適解とは限りません。社内仮想化基盤に載せた方が良いものも多いでしょうから、今後はそうしたものをどんどん巻き取っていきたい」と中村氏は語る。
さらに、その先に見据えているのが、当初の目的であったハイブリッドITインフラの実現である。「今回は、まず旧環境からの移行にNSX Data Centerを活用しましたが、仮想マシンを送る先は別に社内環境である必要はありません。それが社外のクラウドサービスであっても全く構わないわけです。今回の取り組みを通して、業務を止めることなく自由にシステムを再配置できることが確認できましたので、より柔軟で理想的なインフラ環境を目指していきたい」と大浦氏は語る。また、清水氏も、今後の展望を「ユーザーの様々なリクエストに応えていくことが、我々に課せられた最大の使命です。今回導入した新仮想化基盤もフル活用し、現場の期待に沿えるよう力を尽くしていきたいと思います」と述べた。
ご導入製品情報
HPE Synergy
強力なソフトウェア デファインド ソリューションであるHPE Synergyを活用すれば、物理/仮想コンピュート、ストレージ、およびファブリックリソースの可変的プールをあらゆるワークロードの構成に組み込むことができます。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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導入ハードウェア
導入ソフトウェア
VMware NSXR
Veeam Backup & Replication