日産自動車が、eVDIによる次世代グローバル設計基盤を業界に先駆けて構築

日産自動車株式会社 様

所在地:神奈川県横浜市西区高島一丁目1番1号
URL:http://www.nissan.co.jp/

HPE ProLiant WS460c Graphics Server Bladeを採用し、日米欧3拠点での設計情報の共有と同時開発を実現

"特に大量の部品データを扱う設計者は、eVDIのメリットを享受しています。データのダウンロードが不要になったことで作業時間が大幅に短縮されました"

―日産自動車株式会社
 グローバル情報システム本部 エンジニアリングシステム部
 主管
 松木 幹雄 氏

日産自動車は、グローバル開発拠点における3D CAD アプリケーションの利用環境として「エンジニアリングVDI」技術を用いた次世代設計基盤を構築した。エンジニアリングVDIの本格的グローバル利用という自動車業界初※の試みを可能にしたのは、クラス最高水準の性能を誇るインテル® Xeon® プロセッサー E5-2600 v3 製品ファミリー搭載のブレード型ワークステーション「HPE ProLiant WS460c Graphics Server Blade」とGPU高速化ソリューション「NVIDIA GRID」である。グローバルなコンカレントエンジニアリングを加速する“攻めのIT”が、日産自動車の世界戦略を支えている。

※NVIDIA調べ

 

業界

製造業

 

目的

グローバル同時開発体制の強化による開発リードタイムの短縮。最新のCAD情報、PDM情報を一元管理し、同時開発による生産性向上と管理コストの低減、セキュリティ強化を実現する。また、技術者には時間と場所に左右されない柔軟なワークプレイスを提供する。

 

アプローチ

GPU仮想化技術を採用し、3D CADアプリケーション画面の高速配信に対応した「エンジニアリング仮想デスクトップ環境(eVDI)」を構築し、日米欧の3つの開発拠点から一元管理されたCAD/PDM情報に高速アクセスできる次世代設計基盤を構築する。15の業務シナリオと評価基準を策定し、自動車業界初の本格的なグローバル利用を目指す。

 

ITの効果

・クラス最高水準の性能を誇るインテル® Xeon® プロセッサー E5-2600 v3 製品ファミリー搭載の「HPE ProLiant WS460c Graphics Server Blade」を採用し3D CADアプリケーション処理の高速化を実現

・GPU仮想化技術をサポートする「NVIDIA GRID K2ボード」を搭載し、3D CAD/PDMに対応したeVDI環境を構築

・HPE 3PAR StoreServ 7400ストレージを採用し"フラットSAN構成"によりサーバー=ストレージ接続をシンプル化

・概念実証から性能検証、チューニングまでHPEが支援し、海外拠点からの高速なレスポンスを実現

 

ビジネスの効果

・グローバルで一元化された設計情報に基づく同時開発により、開発リードタイムを短縮

・設計情報の一元管理によるセキュリティ強化

・場所によらないCAD業務や手配業務など、仮想デスクトップを利用する新しいワークスタイルが可能に

・eVDIによりCAD/PDMシステム準備のリードタイムを最小化し、グローバル開発拡大に対応

ご導入製品

HPE ProLiant WS460c Graphics Server Blade

HPE 3PAR StoreServ 7400

Citrix XenDesktop

Citrix XenServer

HPE Systems Insight Manager

データセンターケア

NVIDIA GRID K2


チャレンジ

海外開発拠点の連携と生産性を支える設計基盤

 

日産は、2011年策定の中期経営計画「日産パワー88」において世界シェア8%、営業利益率8%という目標を掲げ、世界各地の市場で攻勢をかけている。その成果は眼を見張るものだ。世界販売台数は6年度連続で過去最高を更新し、北米、西欧といった主力市場では短期間の新車攻勢によりシェアを急速に拡大している。

日産の世界市場開拓の原動力となっているのは、グローバルな開発体制から生み出される魅力的な商品群である。日産では世界16ヶ所の開発拠点が連携し、現地の市場ニーズに応える多彩な車種を開発している。今回、日産は、その海外開発拠点に向けた次世代設計基盤を構築した。プロジェクトを率いたグローバル情報システム本部エンジニアリングシステム部主管の松木幹雄氏はその背景を次のように語る。

「グローバル開発体制を支える基盤として日産では全社のPDM/CADデータを一元的に管理するシングルデータベースを構築し、拠点間の情報共有を推進してきました。これにより拠点間の連携は進みましたが、一方では共有データのダウンロードによる業務効率の低下という新たな問題も生まれたのです」

PDM/CADデータは容量が大きく、WANを介した伝送には時間がかかる。車両全体のデジタルモックアップなど大きな設計データの場合にはダウンロードに数時間を要することもあったという。

「シングルデータベースによる情報共有のメリットを現場の生産性を損なうことなく享受できるしくみが求められていました。日産の商品開発力を強化するために、グローバル開発体制を支える新たな設計基盤を構築することにしたのです」

日産自動車株式会社

グローバル情報システム本部
エンジニアリングシステム部
主管
松木 幹雄 氏

日産自動車株式会社

グローバル情報システム本部
エンジニアリングシステム部
高畠 聡士 氏

ソリューション

3D CAD画面を高速配信するeVDI技術に注目

 

日産が当初、検討したのはマルチサイト方式だった。PDM/CADデータベースを主要開発拠点に分散配置することでダウンロード時間の短縮を図るしくみだが、データベースの同期が必要で各拠点に運用負荷が発生、さらに将来のグローバル開発プロジェクトの増加に対応できなくなるという問題があったという。

その代替案として浮上したのが「エンジニアリング仮想デスクトップ環境(eVDI)」である。サーバー上の仮想ワークステーションにPDMや3D CADアプリケーションを置き、手元のデスクトップからその画面を操作する方式だ。ユーザーには画面だけが転送されるのでWANを介したCADデータのダウンロードなしに最新データを共有できる上、データの漏洩などセキュリティ上のリスクも回避できる。

「2013年にGPUを高密度で共有する『NVIDIA GRID』が発表され、3D CADアプリケーションを利用する際のコスト面の問題も解消されたことから、具体的な検討に入りました」とグローバル情報システム本部エンジニアリングシステム部の高畠聡士氏は当時を振り返る。高畠氏らはNVIDIA GRIDを評価用のシステムに搭載し、アメリカ、イギリスのエンジニアに3D CADアプリケーションの使い勝手を検証してもらった。しかしその評価は「操作性が悪く業務には使えない」という否定的なものだった。これを受けて部内の意見はマルチサイト方式の採用に傾いていったという。

この流れを変えたのが2014年にプロジェクトリーダーに就任した松木氏である。シングルデータベースのメリットを活かせるeVDIを高く評価していた松木氏はその再評価を行うことにした。

「最初のトライアルのときにはeVDIが本来の性能を発揮できる環境を用意できず、評価基準もあいまいでした。IS/IT部門横断で組織したプロジェクトにより本番環境を想定したシステムを構築、さらにCAD業務のエキスパートにも協力をお願いして徹底的なチューニングを施した上で、実際の業務に即した客観的な評価基準に基づいて、きちんと評価し直すことにしたのです」(松木氏)

ブレード型ワークステーションを採用し仮想デスクトップ環境を構築

 

評価用のシステムについては、本番稼働を想定し、eVDIの性能を最大限に発揮できるハードウェア、ソフトウェアを選定することになった。検証環境の提供から、製品提案までトータルにサポートしたのが日本ヒューレット・パッカードである。システム構築を担当したグローバルIT本部ITインフラサービス部の野口博隆氏は次のように語る。

「HPEは機能や性能だけではなく、既存環境との整合性、ネットワークリソースへの影響、将来の拡張性などあらゆる角度から、日産の業務要件やシステム環境に最適なシステムを提案してくれました」(野口氏)

サーバーは、クラス最高水準の性能と拡張性のインテル® Xeon®プロセッサー E5-2600 v3 製品ファミリーを搭載するブレード型ワークステーション「HPE ProLiant WS460c Graphics Server Blade」が選ばれた。高い基本性能に加えて「NVIDIA GRID K2」の高密度搭載が可能な専用エクスパンション、帯域の有効活用とネットワークのシンプル化に貢献するI/O仮想化テクノロジーHPEバーチャルコネクトが、3D CADアプリケーション処理の高速化を支える。なお、仮想化ソフトウェアとしては、ハイグラフィックアプリの利用を可能にするDX 3D Pro Graphics機能を備えた「Citrix XenDesktop」が採用された。

米英の拠点と連携しeVDIをチューニング

 

2014年の4月から、評価用システムの構築、チューニングと、アメリカ、イギリス、日本の3拠点における検証が行われた。グローバルIT本部はサーバー担当の野口氏やネットワーク担当の森本照尚氏らITインフラサービス部のトップエンジニアからなる精鋭チームを編成しこれにあたった。日本ヒューレット・パッカードもヶ国を横断するプロジェクトチームを立ち上げ、現地の検証環境の構築からチューニング時の問題解決までをトータルに支援した。

「まず、エンジニアの個人的な意見に左右されない評価基準を用意しました。現地の業務を分析し、3Dデータの作成からビューアーによる閲覧まで15の利用シーンを想定した評価シナリオを作成したのです」(高畠氏)

この評価シナリオに基づいて現地のエンジニアがその日の実際の業務の中でeVDIを利用する。野口氏や森本氏らはそこで指摘された問題をその日のうちに解決して翌日の検証に備えたという。海外拠点との時差を活かした24時間体制で検証・チューニングを繰り返していったのである。

「参考事例が少なく、レスポンス低下時の問題の切り分けも当初は試行錯誤の連続でした。HPEのコンサルタントと協力して問題解決に当たる中で共にノウハウを蓄積していきました」(野口氏)

最も大変だったのはネットワーク周りのチューニングだったという。森本氏は次のように語る。

「WAN回線におけるeVDIではレイテンシーや利用帯域においてLAN環境と違う工夫が必要です。HPEは擬似環境上で様々なパターンを検証して最適なネットワーク構成や帯域をアドバイスしてくれました。原因不明のレスポンス遅延が生じたときも私たちと一緒に問題解決に尽力してくれました」(森本氏)

2014年8月、eVDIシステムは、現地のエンジニアが納得する次世代設計基盤として正式導入が決まり、本番環境の構築が始まった。再評価プロジェクトがスタートしてわずかヶ月目のことである。

日産自動車株式会社

グローバルIT 本部
IT インフラサービス部
野口 博隆 氏

日産自動車株式会社

グローバルIT 本部
IT インフラサービス部
森本 照尚 氏

インテル ® Xeon® プロセッサー
E5-2600 v3 製品ファミリー搭載

ベネフィット

場所も時間も端末も選ばない画面利用で広がる “攻めのIT”

 

eVDIを利用した次世代設計基盤は日本、アメリカ、イギリスの3拠点で利用されている。それぞれの拠点では、従来のローカルワークステーション環境とeVDI環境をエンジニアが自由に選択できる。

「特に大量の部品データを扱う設計者は、eVDIのメリットを享受しています。データのダウンロードが不要になったことで作業時間が大幅に短縮されました」(松木氏)

システム基盤としてのメリットも大きいという。

「数多くのCADアプリケーションを集約した仮想環境を持ったことで、必要時に短納期で提供できます。またGPUのドライバの更新や、ソフトウェアのアップグレードによりVDIの性能を向上できるため、システム投資の抑制にもつながりました。最小限の設備投資ですぐに利用できる設計基盤として、今後は新規拠点などにおける利用を促進していきます」(松木氏)

高畠氏、野口氏は、今回のプロジェクトの成功には、日本ヒューレット・パッカードの協力が欠かせなかったと言う。

「eVDIの性能は的確なチューニングによって初めて引き出すことができます。HPEが実践の中でそのノウハウをいち早く蓄積してくれたことが今回の成功につながりました。他社にないノウハウを私たちと共有するパートナーを得られたことがこれからの日産の強みになるでしょう」(高畠氏)

「今回HPEは私たちの要望を的確に把握した上で、Citrix、NVIDIAといった他のベンダーと連携して、最適なシステムを提供してくれました。アメリカやイギリスにおけるサポート体制も合わせて、ソリューションベンダーとしてのHPEの総合力を実感しました」(野口氏)

海外拠点での利用を前提として開発された次世代設計基盤だが、現在はルノーに出張しているエンジニアも利用しているという。

「eVDIの3D CAD画面を利用したインタラクティブなプレゼンテーションによって、ルノーのエンジニアとの間でより精度の高い打合せができるようになりました。利用する端末を選ばずに、PDMや3D CADをいつでもどこでもセキュアに利用できるeVDIは、今後エンジニアの業務のポテンシャルを飛躍的に拡大してくれるでしょう」(松木氏)

「日産パワー88」と連動したグローバルIS/IT戦略「VITESSE」を展開する日産は、経済産業省、東京証券取引所が指定する「攻めのIT経営銘柄」に2015年、16年と2年連続で選ばれた。今回の次世代設計基盤構築はまさにVITESSE が目指す「Value Innovation=部門や地域をまたがる機能提供による価値創造」を具現化するものだ。グローバルなコンカレントエンジニアリングを加速する“攻めのIT”が、日産の次の世界戦略を支えていく。


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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導入製品・サービス

HPE ProLiant WS460c Graphics Server Blade
HPE 3PAR StoreServ 7400
Citrix XenDesktop
Citrix XenServer
HPE Systems Insight Manager
データセンターケア

NVIDIA GRID K2