日揮が、CAD環境をVDIに移行し次世代ビジネス基盤の構築を推進



日揮株式会社 様

 

HPE Graphics Server BladeとVMware Horizonを採用し、最大5日間を要していたCAD環境のセットアップを最短1時間に短縮


"ただワークステーションをリプレイスしたのではなく、ITリソースを柔軟に使いこなせる次世代のビジネス基盤を整備できたところに、今回のプロジェクトの意義があります。今後はこのVDI環境を拡張して、より強固で柔軟な基盤へと進化させていきたいと思います"

―日揮株式会社 エンジニアリング本部 プロジェクトIT部
 インフラ技術リーダー
 半田 敬人 氏

グローバルなエンジニアリングビジネスを支える

 

日揮が、業界をリードするパフォーマンスと最大限の電力効率を実現するインテル® Xeon® プロセッサー E5 ファミリー搭載のHPE Graphics Server BladeとVMware Horizonを採用し、2D/3D CAD環境を「仮想デスクトップ(VDI)」に移行した。プロジェクト編成時のCAD環境のセットアップ時間を劇的に短縮し、ビジネスのスピード化に貢献。ワークステーションの配備作業を半減するなど、運用管理にかかる工数・コストも大幅に削減した。協力ベンダーや海外パートナーを結ぶ、次世代のビジネス基盤としての活用を見据えた戦略的な決断である。

 

業界

建設・エンジニアリング

 

目的

グローバルなエンジニアリングビジネスの大規模化、複雑化、短納期化に対応するための2D/3D CADによる設計環境を強化し、高性能なCAD環境を場所を選ばず利用可能にするとともに、プロジェクトの編成に伴うCAD環境の構築期間を大幅に短縮する。

 

アプローチ

物理マシンによるワークステーションから、「仮想デスクトップ(VDI)」によるCAD環境へ移行。システムリソース、アプリケーション、データの統合的な管理とリモートアクセスを可能にする。

 

ITの効果

・業界をリードするパフォーマンスと最大限の電力効率を実現するインテル® Xeon® プロセッサー E5 ファミリー搭載のHPE ProLiant WS460c Gen8 Graphics Server BladeとVMware Horizonを採用し高性能なVDIシステムを構築

・1エンクロージャー(8サーバーブレードと8グラフィックブレード構成)に120ユーザー環境を統合

・テンプレートを利用しCAD環境のセットアップを5日から最短1時間に短縮

・年間1,000時間を要していたワークステーション運用保守業務を1/2に削減

 

ビジネスの効果

・協力ベンダーや海外パートナーへの提供も視野に入れた次世代ビジネス基盤を実現

・システムリソース、アプリケーション、データの統合的な管理とリモートアクセスによる「統合的なCADプラットフォーム」を実現

・デスクトップに縛られない柔軟なCAD環境の利用を実現

・ユーザーへCAD環境を即座に提供可能になり、プロジェクトの要求に柔軟に対応

チャレンジ

大規模化、複雑化、短納期化への対応

 

日揮(JGC)は、我が国を代表するエンジニアリング企業だ。1928年の設立以来、世界約80か国で2万件におよぶプロジェクトの実績を有している。石油・ガス・化学をはじめとするさまざまな分野のプラント建設を得意とし、優れた技術と高度なプロジェクトマネジメント力を発揮している。さらに、EPC(Engineering / Procurement / Construction)技術の知見を活かした投資事業や企画・マネジメントサービスを展開するなど、エンジニアリング会社の枠を超えた新たな企業への進化を図っている。

その日揮が、横浜本社・エンジニアリング本部の2D/3D CADワークステーション環境の刷新を進めている。仮想デスクトップ(VDI)への移行である。「背景には急速なビジネス環境の変化がある」と、エンジニアリング本部 プロジェクトIT部の林幹高氏は話す。

「プロジェクトの難易度の高まりと大型化・複雑化が進み、複数の企業が参加するジョイントベンチャー方式も増えています」(林氏)

永久凍土下のガスや深海油田の採掘など、これまで以上に高度な技術や巨額の投資を必要とする案件が増え、規模とともにリスクも大規模化・複雑化しているという。同部の半田敬人氏も次のように話す。

「代替エネルギーの登場による競争の激化や、政治情勢により大きな影響を受ける市況など、プロジェクトを取り巻く変化が激しさを増しており、短納期化への要求も高まっています」

プラント建設は緻密な収益プランに基づく投資判断のもと実施される。操業開始の遅れは多大な損失につながるため、工期に対するプレッシャーは非常に厳しくなっているという。

「設計業務を支えるCAD環境の整備をいかに迅速化するか。そして、いかにプロジェクトを支援するか。『仮想デスクトップ(VDI)』への移行は、この課題を解決するための戦略的な取り組みです」と半田氏は力を込める。

2D/3D CAD環境をデスクトップ仮想化へ移行

 

2D CADでプロセスの概念設計を行い、プラントを構成する多様な設備機器の設計やそれらを組み上げていく空間設計を3D CADが担う。これら2D/3D CAD環境を支える屋台骨とも言えるワークステーションには、効率の高いエンジニアリングを遂行するための高い性能が求められる。

「これまでは、プロジェクトが編成される度にワークステーションを配備していました。エンジニアが使うアプリケーションを準備し、動作をチェックして配備を完了するまでに最大5日程度を要していました」と同部の島村光氏は話す。

ワークステーションは、横浜本社だけでおよそ350台が使われている。中規模のプロジェクトで30人のエンジニアがアサインされたとすると、30台のワークステーションを手作業でセットアップし設置作業までを行う必要があった。プロジェクトが完了すれば、ワークステーションを回収し在庫として管理しなければならない。

「本社のワークステーションの運用保守に要する時間を計測したところ、年間およそ1,000時間に達していました。セットアップ時間の短縮、保守にかかる負荷の軽減に、VDIが有効であることは明らかでした」(半田氏)

半田氏らが検討を開始したのは2012年度末。オフィスから導入が進んできたVDIを、高性能ワークステーション領域にも適用しようというソリューションが出てきたタイミングだ。

「グラフィックスカード、プラットフォーム、仮想化ソフトウェアそれぞれが進化し、私たちの要件を満たすテクノロジーが出揃っていました」(半田氏)

選ばれたのは「HPE ProLiant WS460c Gen8 Graphics Server Blade」と「VMware Horizon」。CAD環境のVDI化で豊富な実績を誇るソリューションである。

日揮株式会社

エンジニアリング本部
プロジェクトIT部
技術統括マネージャ
林 幹高 氏

日揮株式会社

エンジニアリング本部
プロジェクトIT部
インフラ技術リーダー
半田 敬人 氏

日揮株式会社

エンジニアリング本部
プロジェクトIT部
島村 光 氏

ソリューション

1エンクロージャーに2D/3D CAD 120ユーザー環境を統合

 

採用された業界をリードするパフォーマンスと最大限の電力効率を実現するインテル® Xeon® プロセッサー E5 ファミリー搭載の「HPE ProLiant WS460c Gen8 Graphics Server Blade」は、最大2CPU/20コア/64GBメモリを搭載可能で、NVIDIAの高性能グラフィックスカード最大6枚を拡張ブレードに収容する。物理ワークステーションに匹敵する性能をVDI環境で実現するための強力なスペックを備えた製品だ。

「高度なグラフィックス性能を求める3D CAD(6ユーザー)と、相対的に要求度の高くない2D CAD(6ユーザー)、計12ユーザー分の環境を1サーバーブレード内に混在させました。1エンクロージャー内に8ブレード、合わせて96ユーザーを収容します。ユーザーの稼働率は80%程度なので120ユーザー分の環境を統合できる計算になります。ここまで高い集約率を実現できたのは、HPE Graphics Server Bladeだけでした」と半田氏は評価する。

VDI環境の導入コストは、物理ワークステーションのそれを上回る。半田氏らは、3D CADユーザーと2D CADユーザーを同じHPE Graphics Server Blade内に収容することで集約率を高め、コスト面での課題を解決した。

では、仮想化ソフトウェア「VMware Horizon」の選定理由はどこにあったのか。

「3D CADを利用するにはグラフィックスカードが必須です。VMware HorizonはvDGA(Virtual Dedicated Graphics Acceleration)に対応し、3D CADソフトウェアの要求スペックを満たすことができたのが大きかったですね」(半田氏)

vDGAでは、1ユーザーが1GPUを独占的に利用できるうえ、NVIDIAのドライバーが仮想化ハイパーバイザーを経由せずに直接GPUを操作するため最大性能を引き出せる。

また、VMware Horizonの優れた操作性や管理性も評価された。

「VMware Horizonのインターフェースは直感的に操作でき、他の製品と比べてもセットアップから運用管理までが非常に容易と感じています」(島村氏)

120ユーザー分のCAD環境が、HPE Graphics Server Bladeの1エンクロージャー8ブレードに集約されることになった。アプリケーションを含めすべてのデータは高性能なSANストレージ「HPE 3PAR StoreServ 7400」に収容される構成だ。このVDI環境は、2013年末のHPEソリューションセンターでの実機検証を経て正式に採用された。2014年3月に構築に着手し2014年11月から運用が開始されている。

 

ベネフィット

最短1時間でセットアップを完了

 

このVDI環境について、島村氏は次のように評価する。

「最大5日を要していたCAD環境構築が、最短1時間程度で完了できるようになりました。このスピード感は圧倒的です」(島村氏)

構築はCADアプリケーションが稼働するテンプレートを仮想マシンにコピーし、GPUパススルーを設定するなど、3~4工程で完結するほど効率化されている。テンプレートは作業内容に応じて7種類ほどが用意されている。VDIの導入に際して環境の標準化も進められたのである。
ユーザーの評判も上々と半田氏も話す。

「クライアント端末のスペックにパフォーマンスが左右されないので、OA用のノートPCを使って、会議室など、場所を選ばず打合せやレビューができるようになりました。今後、仕事のやり方をさらに改善できるかもしれません」(半田氏)

3D CADアプリケーションは3Dモデリングデータを専用のデータベースとやりとりするが、ネットワークを経由せずにサーバー側でデータベースとアクセスできることも高速化に寄与している。

「複数の物理マシンを使い分ける必要もなくなりつつあります。ワークステーションの山に埋もれていたデスクもスッキリして、部屋も涼しくなるのでは」と林氏は笑顔を見せる。

次世代のビジネス基盤を整備

 

コストの面ではどうだろう。島村氏によれば、「ハードウェア集約による稼働率向上と台数削減を考慮すれば、導入コストは物理ワークステーションと比較して遜色ないレベル」という。これに加え、CAD環境のセットアップにかかる工数や時間の解消、備品管理に要していた手間など、運用管理にかかるコスト削減効果は大きい。 島村氏は、「ワークステーションの運用保守に要していた年間1,000時間に及ぶ工数は、ほぼ1/2にまで削減することができました」と話す。

そして、「それ以上に、将来を見越した時の投資対効果が大きい」と半田氏は言う。

これまでは海外と共同作業をするにも、拠点ごとにサーバーを設置して本社のマスターサーバーと同期しながら運用する必要があった。そのための手間やコスト、万一、障害が発生したときの対応などが短納期化を阻害する要因にもなっていた。また、作業環境を準備するための初期投資が、このことが高度な専門性を備えながらも規模の小さな外部ベンダーにとってはハードルになっていたという。

「すべての業務データはバックエンドのストレージに収容されているため、拠点ごとのサーバー設置やデータ同期は不要でセキュリティ面でも安心です」(島村氏)

必要なスタッフを必要な時に柔軟にプロジェクトにアサインできるようになると、将来的に大きなプラスのインパクトをもたらすはずだ。

「ただワークステーションをリプレイスしたのではなく、ITリソースを柔軟に使いこなせる次世代のビジネス基盤を整備できたところに、今回のプロジェクトの意義があります。今後はこのVDI環境を拡張して、より強固で柔軟な基盤へと進化させていきたいと思います」(半田氏)

ご導入企業様

日揮株式会社 様

本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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導入製品

HPE ProLiant WS460c Gen8
HPE 3PAR StoreServ 7400
VMware Horizon

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