業務用電気給湯機器大手の日本イトミックが、設計開発から生産、保守に至る全社プロセスの変革を推進
株式会社日本イトミック 様
所在地:東京都墨田区押上1-1-2 東京スカイツリー イーストタワー24F
URL:https://www.itomic.co.jp/
HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーを採用しSOLIDWORKS PDMによる製品データの全社共有を可能に
"プラットフォームの選定は5年以上安定して使い続けられることを前提とし、求められるスペックを要件化しました"
―株式会社日本イトミック 情報システム部 次長 谷本 洋太 氏
業務用電気給湯機器のパイオニアとして国内トップクラスのシェアを誇る日本イトミックが、ダッソー・システムズの3D CADソリューション「SOLIDWORKS PDM」を導入した。目指すは、2,320品目を超える商品群の製品データの全社共有、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンのシームレスな連携である。設計開発から生産、保守に至る全社プロセスを高効率かつ迅速な流れへと変革し、ビジネスの競争力を高めるチャレンジが始まっている。HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーによる本システムの導入を全面的にサポートしたのは、SOLIDWORKSソリューションに豊富な経験とノウハウを持つ大塚商会である。
業界
製造
目的
新製品の設計開発、2,320品目を超える既存製品の改良やカスタマイズにかかる業務の改善。設計開発部門を起点に、生産管理部門、購買部門等で設計データを正しく共有し全社プロセスの高効率化・スピード化を図る。
アプローチ
最新の3D CAD/CAE/PDM(製品データ管理)ソリューションを採用し設計開発部門の業務改善から着手。製品データの共有とシステム連携を段階的に進め、全社プロセスの変革を実現する。
ITの効果
・インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーを採用し高性能のSOLIDWORKS利用環境を構築
・最新の3D CAD環境にCAEおよびPDMを統合し設計開発環境を高度化
・CAE(熱伝導解析)により試作に要していた工数と時間を大幅に削減
・PDMによる設計開発部門内での効果的な製品データ管理と共有を可能に
ビジネスの効果
・最新の製品データや製品リリース時点の構成を正しく管理・共有することで、手戻りのない設計開発が可能に
・多品種の製品群に対応するための設計開発プロセスの高効率化・スピード化を推進
・生産管理、購買、保守部門との部品データの共有を進め全社のプロセスの変革に着手
・HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーのハードウェア主導のセキュリティがインフラの安全性を強化
ご導入製品
チャレンジ
技術情報の共有という課題に対しエンジニアリングチェーン刷新を決断
業務用電気給湯機器・エコキュートの分野で国内トップクラスの実績を誇る日本イトミック。1948年の創業以来、電気温水器の製造・販売で成長を続けてきた。その製品は空港、オフィスビル、大学、ホテル、コンビニエンスストア、ファストフード店をはじめ、さまざまな場所や生活に密着した存在として活躍している。2018年時点の標準製品数は2,320品目を超える。手のひらサイズの超小型電気瞬間湯沸器など、ユニークな新製品開発に加え、顧客ニーズに合わせたカスタマイズなど、高度な技術力に顧客からの評価は高い。
「当社は業務用電気給湯機器の専業メーカーとして、大手には対応できないものづくりでビジネスを展開してきました。お客様固有の要件に対するスピーディな対応が強みです」と話すのは技術本部 開発部 兼 生産管理部 部長 結城孝典氏。
日本イトミックでは、5年ほど前から全社的な業務改革を進めている。その一環として設計開発環境の最新化に着手したのは2018年である。
「当社の強みを支えてきたものはまさに“人”です。経験から得られたノウハウを含め技術情報の保持は人に依存していました。また、多品種少ロット生産を適正なコストで実現してこられたのも、生産管理部門の手作業による独自のサプライチェーンあってのことでした。ところが世代交代が進んだことで、両者に限界が見えてきたのです。これがプロジェクトのきっかけでした」(結城氏)
製品に関する正確なデータを得るために、膨大な図面や資料を確認する工数は大きな負荷になりつつあった。製品データを扱うのは設計開発部門にとどまらない。製造、販売、保守・メンテナンスに至るまで、社内各部門のすべてが影響を受ける。
製品の種類は年を追うごとに増加する一方、同社の扱う電気給湯製品は設備として10年20年というライフサイクルで利用される。その間のメンテナンスにも製品データは欠かせない。製品データは日本イトミックのもっとも重要な資産といえる。その資産に容易にアクセスできない状況が続けば、次世代への継承も困難になる――その危機感が設計開発環境の刷新につながった。
「製品データはほぼすべての業務に紐付いています。これを、誰がいつどのように変更したかまでを含めて正確にデータとして管理し、誰でも共有できる資産に変換できれば、当社独自のサプライチェーンが強化されるだけでなく、あらゆる業務の効率化につながります。全社的なメリットは計り知れないと判断しました」(結城氏)
株式会社日本イトミック
技術本部
開発部 兼 生産管理部
部長
結城 孝典 氏
株式会社日本イトミック
情報システム部
次長
谷本 洋太 氏
株式会社日本イトミック
情報システム部
主査
山口 利広 氏
ソリューション
SOLIDWORKS 3D CADとシームレスに利用できるSOLIDWORKS PDMの導入を決断
日本イトミックが導入を決断したのは、ダッソー・システムズが提供する「SOLIDWORKS 3D CAD」と「SOLIDWORKS PDM」だった。SOLIDWORKS 3D CADは、3次元ソリッドモデラーとして製造業の機械設計分野で業界標準として定評がある。そしてSOLIDWORKS PDMは製品図面、部品の構成表、技術文書など、製品設計に関連する情報を一元管理するソリューションである。
両者はシームレスに統合され、データ同士の参照関係が複雑な3D CADデータを、参照関係を維持した状態のまま、製品データを扱うすべてのメンバー間で共有・連携できる。3D CADデータだけでなく、Microsoft WordやExcelで作成された仕様書や関連データなどのファイルの管理も可能だ。
導入プロジェクトをリードした大塚商会 PLMソリューション営業部の長雅也氏は次のように紹介する。
「今回はデータ共有を主要なテーマとし、最新データの明確化、製品リリース時点の部品構成の明確化などを重視しつつ、他システムとの連携のための環境構築も目的のひとつに掲げ、プロジェクトをスタートしました」
SOLIDWORKS 3D CADはシミュレーションモジュールを追加することで、多彩な解析ニーズに応えることもできる。
「設計開発部門から、『CADで作成した3次元モデルを熱解析にも活用したい』というニーズが高まっていました。モジュール追加によって解析を手軽に実現できることもSOLIDWORKSを選定した理由のひとつです」と話すのは、情報システム部 次長 谷本洋太氏。
従来の製品開発では、製品の試作とその評価プロセスに数ヶ月以上を要していた。ここに3次元モデルによる解析が加わることで、設計精度が高められるとともに、市場投入への期間を大幅に短縮することが可能になる。
これまでの設計開発業務に加え、3D CADデータの管理、解析も担うことになる新たな設計開発システムが扱うデータ量は膨大なものになることが予想された。そのプラットフォームとして大塚商会が選定したのが、HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーである。
信頼性の高さを評価しHPE ProLiant DL380 Gen10サーバーを選定
インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載するHPE ProLiant DL380 Gen10サーバーは、独自開発のASIC「HPE Integrated Lights-Out 5(iLO 5)」によりハードウェアレベルでセキュリティ機能を強化し、シリコンレベルの信頼性(Silicon Root of Trust)を備えたHPE ProLiant Gen10サーバープラットフォームである。
「5年以上安心して使い続けられることを前提とし、求められるスペックを要件化しました」と話す谷本氏に対し、大塚商会 技術本部の高村裕章氏は次のように応えた。
「設計開発チームの陣容に合わせてメモリや容量を確認し、PDMシステムに高負荷がかかっても十分なレスポンスを維持できるスペックを目標にサイジングを行いました」
HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーは、近年深刻視されているファームウェアを改ざんするようなサイバー攻撃に対しても、自動検知と自動復旧が可能な高度なセキュリティ機能を備えている。その点について谷本氏は次のように話した。
「これまで心配していなかったような新たなリスクに対しても、セキュリティ対策が実施されているということは、今後のサーバー選定の理由になり得るものと思います」
日本イトミックは1990年代の基幹システム構築時から、HPEサーバー製品を採用し続けているという。
「これまで、HPEサーバー製品を利用してきた実感を率直に言えば、“安心”ということに尽きます」と情報システム部 主査 山口利広氏は話す。
「HPEサーバーの信頼性の高さは身をもって体験していましたので、本プロジェクトでもベンダー指定をさせていただきました」と谷本氏も振り返る。特に評価するのが信頼性の高さとともに、保証の手厚さと対応の確かさという。
HPE ProLiant Gen10サーバープラットフォームでは、サーバー運用・保守に必要な情報をクラウド上で管理する「HPE Insight Online」、ハードウェアの不調を自働検知し自動通報する「HPE Insight Onlineダイレクトコネクト」など、運用管理を効率化する多彩な機能を実装している。さらに標準保証に加え、最長7年間の長期保守パッケージの利用も可能など、業界最長クラスの安心を提供する取り組みを実施している。
結城氏も同じ製造業としての共感を込めて次のように語る。
「機能や性能、品質、耐久性など、製品を評価する軸はいくつもあります。しかし、その製品を使っていく中で、何か起きたときにどのような対応をしてくれるのか、最終的にはそこが評価の決め手になるのだと思います」
株式会社 大塚商会
PLMソリューション営業部
首都圏製造PLM2課
担当営業 セールスリーダー
課長
長 雅也 氏
株式会社 大塚商会
技術本部
首都圏CADサポート3課 担当SE
係長
高村 裕章 氏
ベネフィット
より良い製品を通じた顧客満足を目指しメーカー保証を1年から3年に延長
プロジェクトは2018年7月頃にスタートし、9月にはSOLIDWORKS 3D CADの稼働が開始。その約6ヶ月後にはSOLIDWORKS PDMの導入も完了するというスピード感で実施された。
「今回のプロジェクトは期限が決まっていたため、SOLIDWORKS PDMの早期立ち上げに確かなノウハウを持つ大塚商会に尽力いただきました」(谷本氏)
大塚商会はSOLIDWORKSのリセラーとして、日本市場21年連続販売No.1をはじめ、世界有数の実績をバックボーンとした早期導入・早期稼働を実現するテンプレートを保持しており、それが本プロジェクトにも適用されている。
既存の技術情報のSOLIDWORKS PDMへの移行も順次推進しているが、「参照頻度の低いものや、複雑すぎるものについては従来の手法を用いるなど、人手とシステムを柔軟に使い分ける考えです。システム化したことで業務が複雑化しないよう全体最適を追求していきます」と結城氏は話す。
また、PDM導入を決定した時点で、製品データを基幹システムに連携するシステムの開発もスタートしている。この開発は2019年内に完了する予定だが、基幹システムから正確な製品データが参照できるようになることで、たとえば、アセンブリー調達した部品の中の個別のパーツを取引先に供給するというような複雑な業務も効率化が可能になる。その後はデータ整備を実施したうえで、2020年4月からは完全に新しいシステムのうえで、すべての業務を進めていく予定だ。
「さらに業務効率を高め、優れた製品をお届けしていくことで、お客様満足を高めていくことが最終的な目標です。その下支えを確たるものにしていくために、ネットワークを含めた情報システムすべてを刷新し、業務改革を進めてきました。今回のプロジェクトもその一環なのです」(谷本氏)
日本イトミックでは、24時間/365日対応のメーカー保証を従来の1年から3年に延長するなど、顧客満足度を高める取り組みを始めている。最後に今回のプロジェクトを振り返り、結城氏は次のように話して締めくくった。
「技術継承の仕組みを再構築できるのは、今しかないと言う判断をし、このプロジェクトを進めてきました。生産管理部門にはリードタイム短縮、開発部門には正確な情報共有と開発スピードの向上などが期待できるでしょう。今後、使っていく中で、確かな成果が挙げられるようなシステムに育てていきたいと考えています。引き続き、大塚商会とHPEの支援を期待しています」
ご導入製品情報
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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