アイシン・エィ・ダブリュがコストを抑えながら大容量メモリシステムを導入、CASE時代を勝ち抜く開発力を強化
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 様
所在地:愛知県安城市藤井町高根10番地
URL:https://www.aisin-aw.co.jp/
インテル® Optane™ パーシステント・メモリーを1.5TB搭載HPE ProLiant DL360 Gen10により解析の高速化・高精度化を実現
オートマチックトランスミッション(AT)で世界トップシェアを誇るアイシン・エィ・ダブリュが技術開発力の強化を推進している。100年に一度の変革期といわれるCASE時代を見据え、2019年にCAEシスムの大幅な増強を実施。高度なシミュレーション技術で一部の試験をCAEに置き換え、試作コストの低減および開発効率化を図ろうとしている。注目すべきは、第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーからサポートされた「インテル® Optane™ パーシステント・メモリー」を1.5TB搭載したHPE ProLiant DL360 Gen10サーバーの採用である。
業界
製造
目的
高度化する技術開発・製品開発の要求に応えるための解析・シミュレーション技術の活用推進と、これを可能にする高性能CAEシステムの実現。
アプローチ
電磁界解析など、大容量メモリが必須となるCAEアプリケーション向けのシステム環境を、コストを抑えながら構築する。
ITの効果
• インテル® Optane™ パーシステント・メモリー搭載のHPE ProLiant DL360 Gen10サーバーを採用し、当社調べでメモリコストをDDR4メモリ比で30%以上削減しながら1.5TBメモリの解析システムを実現
• 大容量メモリが有効なCAEアプリケーションに対し、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの有効性を確認
ビジネスの効果
• 従来の環境では不可能だった大規模モデルを使った電磁界解析が可能に
• 従来の限界を超えた大容量メモリ搭載CAEシステムを、コストを抑制しながら導入可能なことを確認
• 「ゼロエミッション」「自動運転」「コネクティッド」分野における技術開発力の強化に貢献
ご導入製品
チャレンジ
CASE時代を勝ち抜くための技術開発力の強化
AT世界最大手のアイシン・エィ・ダブリュが技術開発力の強化を加速させている。その背景には、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)時代を見据えたアイシングループの変革へのチャレンジがある。2017年にバーチャルカンパニー制を導入。重点領域と定めた「ゼロエミッション」「自動運転」「コネクティッド」への取り組みに、グループの総合力を結集する体制を強化した。変革の集大成とも言える「アイシン精機-アイシン・エィ・ダブリュの経営統合」は、2021年4月に迫っている。
「自動車業界は100年に一度といわれる大きな変革期に突入しています。新生アイシンにおいて、私たちは強みであるパワートレイン技術を軸に、電動化やコネクティッドの領域で中心的な役割を担っていきます。アイシングループ各社が長年にわたり培ってきた技術力を結集し、グループシナジーを大きく発揮してCASE時代を勝ち抜いていく決意です」とアイシン・エィ・ダブリュ 解析技術部 CAE開発グループの東田憲太郎氏は話す。
エンジンで作られた回転力を駆動輪へと伝えるパワートレイン――アイシン・エィ・ダブリュは「品質至上」にこだわり、世界初・業界初となる革新的なオートマチックトランスミッション(AT)を次々と開発。スムーズで力強い加速と静寂性を両立させた同社のATは世界中で高い評価を獲得してきた。ハイブリッドシステム(HV)、プラグインハイブリッドシステム(PHEV)、電気自動車(EV)向け駆動モジュールeAxleなどの製品化でも世界をリードし、技術開発のスピードをさらに加速させている。
「さらなる高性能化・高品質化に向けた新技術の開発に加え、CASE領域での新しい技術分野へのチャレンジも多岐にわたります。そうした状況下で、より大きな期待が寄せられているのが解析・シミュレーション技術です。私たちはCAEの解析精度を高めながらその適用範囲を拡大し、試作を削減して開発の大幅なスピード化・効率化を目指しています」(東田氏)
アイシン・エィ・ダブリュでは100台以上のCAEサーバーを運用しており、2019年度の更新で40台規模の最新化を果たした。注目すべきは、1.5TBという大容量の「インテル® Optane™ パーシステント・メモリー」を搭載したHPE ProLiant DL360 Gen10サーバーの採用である。
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
解析技術部
CAE開発グループ
東田 憲太郎 氏
インテル株式会社
メモリーストレージ
プラットフォーム
テクニカルセールス
石橋 史康 氏
インテル株式会社
インダストリー事業本部
HPC事業開発部長
矢澤 克巳 氏
インテル® Xeon®
スケーラブル・プロセッサー搭載
ソリューション
解析の大規模化・高精度化に応える大容量メモリ搭載サーバー
2019年4月に登場したインテル® Optane ™ パーシステント・メモリーは、電源を切ってもデータを保持できる新世代の「不揮発性メモリ」として注目を集めた。Memory Modeでは、DRAMと同じ「揮発性メモリ」としてサーバーシステムのメインメモリに利用できることも大きな特徴だ。DDR4メモリと比較して容量単価における優位性が高く、コストを抑えながら大容量メモリ搭載サーバーを構築できる。
「CAEシステム増強の目的は、高度化する開発ニーズに応える計算性能を確保することです。これを実現するには、ソフトウェアライセンスを追加して解析環境を増やすか、より高性能のハードウェアを導入して解析時間を短縮するか2つの選択肢があります。近年の状況では、最新のハードウェアを活用する方がコストパフォーマンスで明らかに有利。開発ニーズを踏まえた上で、1年ごとに型落ちしたサーバーを最新のものに入れ替える計画をたて、利用者のニーズに応える、というのが現在の私たちの基本方針です」と東田氏は話す。
アイシン・エィ・ダブリュでは、構造解析、流体解析、NVH(Noise、Vibration、Harshness)解析、電磁界解析など、多様な解析・シミュレーション技術をものづくりに活用してきたが、CASE領域でのチャレンジが新しい計算要求を生み出しているという。
「電動化への取り組みの中で、大規模なモデルを使った高精度の電磁界解析へのニーズが高まっています。電気機器から放出される電磁波ノイズや、電気機器が耐えうる電気的な負荷を正確に予測することが重要になってきます。私たちがこの分野の解析技術解析を進めるにあたり、注目すべき周波数帯を網羅した解析を効率的に実施するには、巨大なメモリ領域を利用できる新しいCAEサーバーが不可欠でした」(東田氏)
解析アプリケーションに十分なメモリ量を提供できないと、解析時間が伸長するだけでなく、解析そのものが収束しないリスクもある。モデルを細かく分割して並列処理する方法では、ソフトウェアライセンスを追加購入しなければならない。必要な周波数帯を網羅した解析を「1システム」で実行するために、東田氏が算出したメモリ量は1.5TBだった。問題はコストである。DDR4メモリで1.5TBメモリを構成すると予算を大幅に超過してしまったのだ。東田氏は次のように続ける。
「HPEから提案されたインテル® Optane™ パーシステント・メモリー搭載サーバーが、この問題を解決してくれました。DDR4メモリのみを搭載したサーバーと比べ30%以上メモリのコストを抑えることができたのです」
実機でパフォーマンスを評価し期待通りの性能を確認
アイシン・エィ・ダブリュにとって、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの採用は初めてだった。コスト優位性は明らかだが、期待通りの性能を出せる確証を得ておく必要がある。東田氏はベンチマーク用の解析モデルを用意し、HPEにパフォーマンス評価を依頼した。検証はHPEとインテルが協力し、日本ヒューレット・パッカード本社(東京・大島)のソリューションセンターで行われた。
「大規模な解析処理を、想定した時間内に完了させることができました。検証結果には十分満足しています。幅広い技術の融合が求められるCASE領域では、解析規模は今後ますます大きくなっていくことが明らかです。1.5TBメモリの解析サーバーを利用できることは、将来の大きな安心にもつながります」と東田氏は話す。
インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの製品技術を担当するインテルの石橋史康氏は、次のように話す。
「幅広いお客様・パートナー様と協力しながら、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの能力を最大限引き出せるアプリケーションや、高いコストパフォーマンスを発揮する分野を模索しています。大容量のメモリを必要とするアイシン・エィ・ダブリュ様のCAE環境への適用は、ベストプラクティスのひとつになることは間違いありません」
HPE ProLiant DL360 Gen10サーバーによる40台規模の新CAEサーバーが稼働したのは2019年12月である。検証で確認したハードウェア構成、高い性能を引き出すシステム設定などを引き継ぎ、本番環境の構築は予定通りスムーズに行われたという。2019年12月、アイシン・エィ・ダブリュはCASE領域のチャレンジを支える新しいCAEシステムを完成させた。
ベネフィット
不可能だった解析が可能になったことが最大の成果
大容量メモリ搭載のHPE ProLiant DL360 Gen10サーバー導入は、今後のCAEシステムの方向性にも影響を与えることになりそうだ。解析モデルの大規模化と解析時間の伸長が開発者を悩ませているが、大容量メモリの利用によって解決できる課題は少なくない。東田氏は次のように話す。
「陰解法を用いる構造解析アプリケーションや連成解析を行う場合でも、行列をメモリに格納しインコアの状態にできれば高速な計算が可能になるため大容量メモリが有効です。2019年度は電磁界解析環境を整備しましたが、必要とされる計算速度とコストのトレードオフ関係を把握すれば、コストを抑えながら大容量メモリ環境を構築できるインテル® Optane™ パーシステント・メモリーの応用分野はまだ数多くあるはずです」
アイシン・エィ・ダブリュが運用するCAEシステムは、HPEサーバーの割合が増加している。今回採用されたHPE ProLiant DL360 Gen10サーバーは、1U/2ソケットラックマウント型サーバーのベストセラーであり、優れたサーバーセキュリティを備える「世界標準の安心サーバー」として高い支持を得ている。「HPE ProLiantサーバーはコストパフォーマンスに優れるだけでなく、高負荷の解析要求にも安定的に応えてくれています。技術サポートもハード・システム合わせて対応していただけるので助かっています」と東田氏も評価する。
2021年4月に計画されているアイシン精機との経営統合は、CASE時代のグローバル競争を勝ち抜くための大きな決断だ。「ビジネス環境の変化と、これに伴う技術開発の変化を正しく捉え、最適なテクノロジーを選択していくことがますます重要になるだろう」と指摘する東田氏に対し、インテル インダストリー事業本部の矢澤克巳氏は「CPU、メモリ、ストレージまで、すべての製品領域でHPC/CAEの高速化に寄与するテクノロジーを強化していく」と応じた。
最後に、東田氏は次のように語って締めくくった。
「大規模メモリ環境の導入の限界を超える可能性が得られたこと。これまで不可能だった解析が可能になったこと。そして、ソフトウェアライセンスを追加購入することなく、解析処理時間にも妥協することなく、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーを搭載したHPE ProLiant DL360 Gen10サーバー上で解析処理を完結できるようになったことが最大の成果です。HPEとインテルには、最新のテクノロジーでアイシン・エィ・ダブリュの解析環境を支え続けてもらえることを期待します」
ご導入製品情報
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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