SBIリクイディティ・マーケットが、世界最大規模のSQL Server 2014環境を構築し次期FX取引システム基盤へ移行
SBIリクイディティ・マーケット株式会社 様
HPE Integrity Superdome X(2システム:計32CPU/480コア/8TBメモリ)を採用し、SQL Server 2014による大規模ミッションクリティカルデータベース環境を実現
"「インターネット金融の世界において、SBIグループは名実ともに国内No.1のポジションを占めています。次の目標はアジア圏で同等のご評価をいただくことです。私たちは、HPE Integrity Superdome Xによる新しいFX取引システム基盤によって不可能だったことを可能にし、新たな成長戦略を強力に推し進めていきます」"
-SBIリクイディティ・マーケット株式会社
代表取締役社長
重光 達雄 氏
年間495兆円の取引を24時間365日無停止で支える
FX取引(外国為替証拠金取引)のマーケット機能とシステムサービスを提供し、年間495兆円という取引実績を誇るSBIリクイディティ・マーケットが、いよいよ「次期FX取引システム基盤」の構築に着手した。高性能・高信頼のインテル® Xeon® プロセッサー E7 v2 ファミリーを搭載する「HPE Integrity Superdome X」(2システム:計32CPU/480コア/8TBメモリ)を採用し、Microsoft Windows Server 2012 R2とSQL Server 2014によりこれを実現する。世界最大規模のミッションクリティカルWindows Server システムの誕生である。
業界
金融
目的
年間495兆円のFX取引(60億トランザクション)を24時間365日無停止で実行する「FX取引システム基盤」の刷新。リアルタイム処理/バッチ処理能力を大幅に強化し取引量の増大に応えるとともに、海外進出を支えるビジネス基盤を確立する。
アプローチ
SBIグループ各社向けに構築されたデータベースサーバーを超ハイエンドサーバーに統合するとともに、スケールアップによるパフォーマンス/キャパシティの十分な拡張性を確保。さらに、オールフラッシュストレージによりデータベースのI/O処理を高速化する。
ITの効果
・高性能・高信頼のインテル® Xeon® プロセッサー E7 v2 ファミリーを16CPU/240コア搭載する「HPE Integrity Superdome X」を2式採用し、物理パーティション(nPars)により8台のデータベースサーバーを統合
・計32CPU/480コアのスケールアップシステムでMicrosoft Windows Server 2012 R2 / SQL Server 2014を稼働、世界最大規模のWindows Serverシステムを実現し従来比2倍以上の処理能力を確保
・Microsoft AlwaysOn可用性グループを採用し可用性を強化するとともにフェイルオーバー時のサービスへの影響を数秒単位にまで削減
・オールフラッシュストレージHPE 3PAR StoreServ 7440cを採用しデータベースのI/Oボトルネックを解消
ビジネスの効果
・従来の性能限界を打ち破るスケールアップ型サーバーによる統合データベース環境を構築
・リアルタイム処理/バッチ処理能力の強化により顧客へのサービス品質を向上
・HPE Integrity Superdome X内に「シミュレーター環境」を構築し実データを用いた稼働・性能・障害テストを徹底的に実施することで問題発生の可能性を最小化
・次期バージョンWindows Server 2016 / SQL Server 2016における大容量インメモリ処理を可能に
ご導入製品
HPE BL920s Gen8サーバーブレード
HPE 3PAR StoreServ 7440c
Microsoft Windows Server 2012 R2
Microsoft SQL Server 2014
Microsoft AlwaysOn
チャレンジ
「個人が主役の金融市場」を創造するイノベーター
1998年の外為法改正により、外国為替取引は自由化へと大きく舵を切った。以来、FX取引(外国為替証拠金取引)市場は目覚ましい成長を遂げ、個人投資家向け金融商品の主役級に躍り出ている。SBIリクイディティ・マーケットは、SBIグループ3社(SBI証券、住信SBIネット銀行、SBI FXトレード)に対してFX取引のマーケット機能とシステムサービスを提供しており、その取引実績は年間およそ500兆円*1に達する。同社の代表取締役社長である重光達雄氏は、次のように話す。
「私は、為替市場において個人が主役になる時代が来ると確信していました。今や、日本のFX取引高は世界全体のおよそ50%*2を占めています。金融ビジネスで世界に遅れをとってきた日本にとって、唯一リーダーシップを発揮している領域と言えるでしょう。個人が主役の金融取引が、今後も市場の『流動性』を牽引していくものと考えています」
社名にあるリクイディティ(流動性)とは、「大規模なマーケットがあり常に適正な価格で取引できる」ことを意味している。SBIリクイディティ・マーケットの強さは、この「マーケット」の魅力・競争力が多くの参加者(銀行・証券会社など)を惹きつけてきたこと、個人投資家が「いつでも・どこでも・安心して」取引できるサービスを提供し続けてきたことを裏付けるものだ。
「世界各国の通貨の動向を追うFX取引はリアルタイム、かつ24時間365日眠りません。パソコン、タブレットPC、スマートフォンから、時間や場所を選ばず、お客様が常に安心してお取引いただけるマーケット運営と取引サービスを提供することが私たちのミッションです」と常務取締役 増田浩之氏は話す。
SBIグループ3社の預り残高合計は1,840億円を超え、口座数の合計は63万4,373に達する。*3強豪がひしめく業界でともにトップの座を占めるが、現状に満足することなく新たな成長戦略を打ち出している。
「SBIグループの総力を結集してアジア圏でのビジネスを推進しています。いわば、日本で確立したインターネット金融のビジネスモデルの海外展開です。SBIリクイディティ・マーケットとしては、中国とアジア諸国の個人投資家を取り込んでマーケットを拡大し、更なる流動性を獲得することが大きな目標です」(重光氏)
2015年3月、SBIリクイディティ・マーケットは「次期FX取引システム基盤」の具体化に着手。新たな成長戦略を支えるプラットフォームとして、2014年12月に発表された超ハイエンドサーバーの採用をいち早く決断した。高性能・高信頼のインテル® Xeon® プロセッサー E7 v2 ファミリー搭載「HPE Integrity Superdome X」である。その経緯を聞いていこう。
*1 SBIリクイディティ・マーケットによるFX売買金額(2014年4月~2015年3月期)
*2 フォレックス・マグネイト調べ(2013年5月)
*3 矢野経済研究所調べ(2015年5月)
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
代表取締役社長
重光 達雄 氏
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
常務取締役
増田 浩之 氏
ソリューション
FXの常識を変えた「最小取引単位1ドル」
SBIリクイディティ・マーケットでは、最大20万トランザクション/秒という高い処理能力を持つFX取引システムを稼働中だ。その中核であるデータベース環境は、「HPE ProLiant DL980 G7」を中心とするHPEサーバー製品群とマイクロソフト製品によって構築されている。
「カバー取引を処理するプロセスに最新のSQL Server 2014のインメモリ機能を採用し、従来比30倍という高速化を実現しました。次の課題は、取引量の増大に伴うシステムのキャパシティと同時処理能力をさらに強化することです」とIT統括本部長の堤一夫氏は説明する。
金融機関同士が通貨を取引するインターバンク市場では、100万通貨単位(例:100万米ドル)での売買が基本だ。FXは、取引の最小単位を1千~1万通貨単位に小口化して個人投資家が扱えるようにした金融商品である。
「SBI FXトレードでは、さらに小口化を進めて1米ドル、1ユーロからの取引を可能にしました。仮に1米ドルが125円、レバレッジを25倍とすると、わずか5円からFX取引を始められます。この圧倒的な手軽さがあってこそ、アジア圏でのビジネス展開が可能になるのです」(重光氏)
業界の常識を覆す「1通貨単位での取引」は、SBI FXトレードのビジネスに新たな競争力をもたらした。しかし、取引単位を小さくするほど取引件数・トランザクション数は増大し、オンラインのリアルタイム処理にもバッチによる集計処理にも大きな負荷をかける。アジア展開を進める上で、FX取引システムのキャパシティと同時処理能力を大幅に強化することは喫緊の課題であった。稼働中のHPE ProLiant DL980 G7は、8CPU/80コアという最大構成を採っており、成長戦略を推し進めるにはこのマシンの性能限界を打ち破らなければならない。
「だからこそHPE Integrity Superdome Xが必要だったのです。現在より2倍高性能なCPUを利用でき、1筐体内に最大16CPU/240コアを搭載可能なスケールアップ型サーバーは他にはありません。まさに私たちが待ち望んでいたサーバーシステムでした」(重光氏)
HPE Integrity Superdome Xを提案したのは、CSK Winテクノロジ 特別役員/技術フェローの熊澤幸生氏だった。日本マイクロソフトの技術顧問も務め、データベース技術者の間で「SQL Serverパフォーマンスチューニングの匠」として知られるエキスパートである。
ミッションクリティカル Windows Server環境を実現
2014年12月、熊澤氏は日本ヒューレット・パッカードのソリューションセンターに設置されたばかりのHPE Integrity Superdome Xでパフォーマンス検証を実施した。
「TPC-Cに準拠したベンチマークテスト環境を用意し、SQL Server 2014とHPE Integrity Superdome Xによるパフォーマンスを計測しました。この検証で期待を大きく上回る性能を実測し、次期FX取引システム基盤として提案できるとの確証を得たのです」(熊澤氏)
熊澤氏の評価の視点は2つあった。「CPUを増設したときに直線的に性能を向上させることができるか」「最新の4ソケットサーバーと同等構成で優位性があるか」である。
HPE Integrity Superdome Xは、HPE BL920s Gen8サーバーブレード(インテル® Xeon® プロセッサー E7 v2 ファミリー 2CPU/30コア)を1エンクロージャー内に8枚収容する。検証では、サーバーブレードを2枚に拡張したときのパフォーマンスが約1.9倍、同じく4枚では約1.6倍を記録(図1)。これは、スケールアップ型サーバーでCPUを増やしてもリニアに性能が伸びないという定説を覆すものだ。
「しかも、サーバーブレード2枚(4CPU/60コア)の性能は、同じCPU構成の4ソケットサーバーHPE ProLiant DL580 Gen8を20%近く上回りました(図2)。これは、現行FX取引システム基盤で稼働中のHPE ProLiant DL980 G7(8CPU/80コア)を20%近く上回る性能です」(熊澤氏)
HPE Integrity Superdome Xでは、すべてのCPUをHPE独自のチップセット「XNC2」で接続してデータ転送のオーバーヘッドを解消している。60コアのサーバーが80コアの現行システムを上回る性能を発揮するという事実は、システム性能の向上に寄与するだけでなく、ソフトウェアライセンスを有効活用できるメリットももたらす。
「HPE Integrity Superdome Xは、私たちが描いてきた次期FX取引システム基盤のグランドデザインにまさに合致するものでした。HPE Integrity Superdome Xによるデータベースサーバーの統合は、システムの高速化と同時処理能力の向上、ソフトウェアライセンスの有効活用、キャパシティと将来に向けた拡張性、すべての面で大きなメリットをもたらします」(熊澤氏)
2015年6月、SBIリクイディティ・マーケットは「HPE Integrity Superdome X(2システム:合計32CPU/480コア/8TBメモリ)」とオールフラッシュストレージ「HPE 3PAR StoreServ 7440c」を採用し、次期FX取引システム基盤の構築に着手した。システム運用部 チーフマネジャーの渡邉倫明氏は次のように説明する。
「HPE Integrity Superdome Xの物理パーティション(nPars)を利用して、HPE ProLiant DL980 G7を中心とする複数台の物理サーバーからなる既存のデータベース環境の統合を進めていきます。SBIグループ各社のデータベースシステムを統合するとともに、本番環境と同一の『シミュレーター環境』の構築に着手しました」
渡邉氏は「シミュレーター環境がHPE Integrity Superdome X導入成功のカギを握っている」と続けた。どのような役割を担うものか。
「安心・安全なFX取引」の業界スタンダードを構築
SBIリクイディティ・マーケットは、本番環境と完全に同一のハードウェアリソースとソフトウェア構成、実データを使った「シミュレーター環境」の構築に着手している。従来の「テスト」の枠を超えた徹底的な検証を行っていくという。
「FX取引の安心・安全で且つ利便性あるシステムを提供することが私たちにとってミッションです。私たちが知りたいのは、理論値でなく実際の性能であり、お客様が体感するレスポンスです。また、問題発生時には、それを解決するための最短かつ最良の手順です。特に、ヒューマンエラーのような想定できない問題に備えることを重視しています」(渡邉氏)
TCOの削減は、障害復旧にかかるコストをどれだけ削減できるかにかかっている。SBIリクイディティ・マーケットの方針は「リスクをとって投資し先行者利益を得る、ただしリスクを最小化するための手間も投資も惜しまない」(重光氏)というものだ。
HPE Integrity Superdome Xには、x86サーバーの常識を超えた高信頼性・耐障害性を備えたプラットフォームとしてHPEが持つ技術の粋が結集されている。実績あるハードウェアベースRAS 機能に加え、Windows Serverと連携したメモリやCPUコアの復旧やI/Oエラーの封じ込めを実現。復旧が困難と判断した場合には故障したコンポーネント(CPU/メモリ/ブレード)を自動で切り離すことも可能だ。さらに本システムでは、Microsoft AlwaysOnを採用して可用性を強化するとともに、フェイルオーバー時のサービスへの影響を秒単位にまで削減している。
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
IT統括本部長
アプリケーションスペシャリスト
堤 一夫 氏
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
システム運用部
チーフマネジャー
渡邉 倫明 氏
株式会社CSK Winテクノロジ 特別役員 技術フェロー(兼)日本マイクロソフト株式会社
サーバープラットフォームビジネス本部
クラウド アプリケーション ビジネス部
技術顧問
熊澤 幸生 氏
ベネフィット
Windows Server / SQL Server次期バージョンを見据えて
熊澤氏が実施した先のパフォーマンス検証では、もうひとつ重要な示唆が得られていた。HPE Integrity Superdome Xは1エンクロージャーあたり最大12TBものメモリを搭載できるが、次期Windows Server / SQL Serverへのアップデートにより劇的なパフォーマンス向上が期待できることだ。
「2016年に出荷が予定されているWindows Server 2016 / SQL Server 2016では、インメモリ処理機能、カラムストア機能が大幅に強化されます。これらの最新技術をHPE Integrity Superdome X上で活用すれば、バッチ処理を限りなくリアルタイムに近づけることも可能になります。オンライン処理とデータウェアハウスのデータベースを1つに統合し、取引の経過がリアルタイムで分析レポートに反映されるような仕組みも夢ではありません」(熊澤氏)
SBIリクイディティ・マーケットの創業時からFX取引システム基盤の設計・構築・運用に多大な知見を提供してきた熊澤氏にはさらに大きな期待がかかる。重光氏は次のように語って締めくくった。
「インターネット金融の世界において、SBIグループは名実ともに国内No.1のポジションを占めています。次の目標はアジア圏で同等のご評価をいただくことです。私たちは、HPE Integrity Superdome Xによる新しいFX取引システム基盤によって不可能だったことを可能にし、新たな成長戦略を強力に推し進めていきます」
ご導入製品情報
あらゆる規模のビジネスにおいて、重要なデータをリアルタイムのビジネスインサイトに変えることができる、独自のモジュール方式を採用し、かつ高い柔軟性と信頼性を備えた、シームレスに拡張するプラットフォーム。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。
導入製品
HPE BL920s Gen8サーバーブレード
HPE 3PAR StoreServ 7440c
Microsoft Windows Server 2012 R2
Microsoft SQL Server 2014
Microsoft AlwaysOn