ハイブリッドクラウドとマルチクラウド ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いとは
ハイブリッドクラウド環境が、パブリッククラウドサービスにオンプレミスのプライベートクラウドインフラストラクチャを組み合わせ、柔軟でセキュアなITリソース管理を実現するのに対して、マルチクラウドは、複数のベンダーが提供するパブリッククラウドサービスを利用し、各プロバイダーのインフラストラクチャのメリットを享受します。
マルチクラウドの手法ではパブリッククラウドプロバイダーの選択肢が増える一方で、ハイブリッドクラウドはオンプレミス インフラストラクチャを拡張します。
読了所要時間: 8分5秒 | 更新日: 2026年3月19日
目次
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのアーキテクチャーの違い
適切なクラウドアーキテクチャーを導入することが、組織の成功には不可欠です。ハイブリッドクラウド環境とマルチクラウド環境の主なアーキテクチャーの違いは次のとおりです。
- 展開場所:
- ハイブリッドクラウド: 認証、セキュリティ、データベース、監視などの主要なIT業務にオンプレミス インフラストラクチャ (サーバー、ストレージ、ネットワーク) を利用します。この方法では、導入済みのシステムと緊密に連携させることができます。
- マルチクラウド: 同じプロバイダーまたは異なるプロバイダーが提供するクラウドベースのリソースを利用します。この方法では専門的なサービスが拡張され、初期コストを削減できます。
- データの統合と管理:
- ハイブリッドクラウド: オンプレミスとパブリッククラウドのデータを関連付けるには、強固にデータを統合する必要があります。さまざまなツールを使用してオンプレミスとパブリッククラウドのシステムを管理する場合、管理が複雑化します。
- マルチクラウド: 複数のベンダーが提供するパブリッククラウドソリューションのサービスを統合します。さまざまなクラウドプロバイダーのコンソールを管理する作業は、インフラストラクチャ管理よりも複雑になります。
- セキュリティ上の懸念:
- ハイブリッドクラウド: セキュリティポリシーおよび対策をオンプレミスとパブリッククラウド両方の環境に適用します。それにより、きめ細かいデータセキュリティを実現します。
- マルチクラウド: セキュリティは、各パブリッククラウドプロバイダーが提供するセキュリティ対策次第となります。包括的なセキュリティポスチャを実現するには、既存のセキュリティ製品との統合が必要となります。
企業に適したクラウド展開のタイプ
1つのソリューションで、クラウド導入のすべてのユースケースに対応できるわけではありません。最適なソリューションは、企業の目標によって異なります。
次のような意思決定の枠組みについて検討します。
- ニーズの評価: 現在のITワークロード、データセキュリティのニーズ、予算、制御レベルを評価します。
- 既存のインフラストラクチャの評価: 多額のオンプレミス投資を統合しますか。
- 拡張性とアジリティを優先: ニーズの変化に対応するうえで重要となるのが、迅速な拡張です。
こうした特性を踏まえ、以下の展開オプションについて検討します。
- パブリッククラウド: コスト効率に優れたスケーラブルで迅速な展開が可能になりますが、データセキュリティやベンダーロックインが問題となる場合があります。
- プライベートクラウド: 機密データの保護が強化される一方で、より多額のインフラストラクチャ管理費用が必要となります。
- ハイブリッドクラウド: パブリッククラウドの自由度とオンプレミスの制御性を兼ね備えていますが、強固なデータ統合および管理が必要となります。
- マルチクラウド: 業界をリードするサービスにアクセスできますが、多くのクラウド環境を管理することは簡単ではありません。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い
ハイブリッドクラウドとマルチクラウド
| 特徴 | ハイブリッドクラウド | マルチクラウド |
|---|---|---|
| 定義 | プライベートおよびパブリッククラウドインフラストラクチャの組み合わせ | 複数のパブリッククラウドプラットフォームを統合 |
| アーキテクチャー | オンプレミス インフラストラクチャとクラウドを統合 | 異なるプロバイダーの各種クラウドサービスを利用 |
| 柔軟性 | ワークロードのバランス調整に関して柔軟性が高い | サービスの選択に関して柔軟性が高い |
| ベンダーロックイン | 単一クラウドプロバイダーへの依存を軽減 | さまざまなサービスでベンダーロックインのリスクを軽減 |
| 複雑さ | 統合とデータ移動の管理が必要 | 効果的なオーケストレーションとガバナンスが必要 |
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの両方に対応したクラウド戦略の策定は可能でしょうか
はい、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの両方に対応したクラウド戦略を策定できます。この組み合わせはますます一般的になってきています。この2つの用語は正反対のものではなく、クラウド環境の異なる部分を指しています。
簡単に考えてみましょう。
- ハイブリッドクラウドはインフラストラクチャに関するものです。プライベートクラウドまたはオンプレミスのデータセンターを少なくとも1つのパブリッククラウドと組み合わせ、すべてが1つのシステムとして連携して動作できるようにするということです。
- マルチクラウドはパブリッククラウドプロバイダーに関するものです。AWSやMicrosoft Azureなど、複数の企業のサービスを利用するということです。
これら2つのアイデアは、企業が自社のプライベートクラウドを複数のパブリッククラウドに接続する際に結びつきます。たとえば、企業はセキュリティ上の理由から機密性の高い顧客データベースをプライベートクラウドに保存し、データ分析にはAWSを、機械学習にはGoogle Cloudを利用するといったことが考えられます。
ハイブリッドマルチクラウド戦略により、組織の柔軟性が向上します。各ワークロードをコスト、パフォーマンス、コンプライアンスの面で最適な場所に配置することができ、特定ベンダーへのロックインを回避できます。
ハイブリッドクラウドやマルチクラウドのアプローチは、セキュリティとコンプライアンスにどのような影響を与えるのでしょうか
ハイブリッドクラウド戦略とマルチクラウド戦略にはそれぞれ、固有のセキュリティ上およびコンプライアンス上の課題があります。組織は、ネットワークのエッジを保護するだけでなく、データやワークロードがどこにあっても保護する必要があります。
ハイブリッドクラウドのセキュリティとコンプライアンス
ハイブリッドクラウド環境は、組織がきめ細かく制御できるため、コンプライアンスの確保に役立ちます。たとえば、企業は、医療記録 (HIPAA) や財務情報 (PCI DSS) などの機密データをプライベートクラウドまたはオンプレミスシステムに保存して、厳格な規則を遵守できます。最大の課題は、データがプライベート環境とパブリック環境の間を移動する際にデータのセキュリティを確保することです。そのためには、組織は一貫したセキュリティポリシー、強力なID管理、そして転送中および保存中のデータに対する確実な暗号化を必要とします。
マルチクラウドのセキュリティとコンプライアンス
複数のクラウドプロバイダーを利用していると、セキュリティがより複雑になります。チームは、AWS、Azure、Google Cloudなど、各プロバイダーの異なるツールや制御を管理する必要があり、それがポリシーの不整合やエラーにつながる可能性があります。しかし、このアプローチでは、組織が具体的なニーズに合わせて各クラウドの最適なセキュリティ機能やコンプライアンス機能を活用することも可能になります。最大の課題は、統一されたセキュリティ対策を構築することです。これにより、チームはすべてのクラウド環境における脅威の監視、ガバナンスの管理、コンプライアンスに関する報告を、一元的に行うことができます。
ハイブリッド/マルチクラウド環境の管理に不可欠なツールとプラットフォームは何ですか。
複雑なハイブリッド/マルチクラウド環境を管理するには、制御を一元化し、タスクを自動化し、明確な可視性を提供する統合されたツールセットが必要です。単一のツールですべてのニーズを満たすことはできないため、ほとんどの企業は複数のプラットフォームを組み合わせて使用しています。
クラウド管理プラットフォーム (CMP) は最も重要なツールです。プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を一元的に管理、整理、制御できます。たとえば、GreenLake、VMware Aria、Red Hat OpenShiftは、アプリケーションがどこで実行されるかにかかわらず、同じ方法でアプリケーションの展開、管理、監視を行うのに役立ちます。
中央CMP以外にも、いくつかのツールが不可欠です。
- Infrastructure as Code (IaC) ツール: HashiCorp TerraformやAnsibleといったプラットフォームは、インフラストラクチャの構築を自動化する上で重要な役割を果たします。これらは、異なるクラウドプロバイダー間で展開の一貫性と再現性を確保するのに役立ちます。
- セキュリティおよびコンプライアンスツール: クラウドセキュリティポスチャ管理 (CSPM) とクラウドワークロード保護プラットフォーム (CWPP) は、セキュリティポリシーの適用、設定ミスの検出、ワークロードの均一な保護に不可欠です。
- FinOps (財務運用) プラットフォーム: これらのツールは、すべてのクラウドアカウントにおけるコストの可視化、最適化に関する推奨、予算管理を行うことで、計画外の支出を防ぎます。
- 可観測性プラットフォーム: DatadogやDynatraceといったツールは、あらゆる環境からメトリクス、ログ、トレースを収集します。この統合データは、監視とトラブルシューティングに役立ちます。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドをサポートするHPEのソリューション
HPEでは、ハイブリッド/マルチクラウド戦略をサポートするソリューションを提供しています。
GreenLakeは、ハイブリッド/マルチクラウド企業に変革をもたらします。オンプレミスのInfrastructure as a serviceにクラウドエクスペリエンスを提供することで、初期コストと管理負荷を軽減します。また、ハイブリッド/マルチクラウド戦略を次の面で強化します。
- 柔軟性と選択肢: GreenLakeは画一的なソリューションではなく、柔軟性と選択肢を備えています。処理能力、ストレージ、プライベートクラウド環境などのカスタマイズが可能な幅広いサービスを提供します。
- 従量制課金モデル: 高コストで前払いのITインフラストラクチャ投資を回避できます。GreenLakeは従量制課金方式のため、使用した分の料金を支払うだけで済みます。それによって重要な取り組みの資金を温存し、過払いを防ぐことができます。
- 管理の簡素化: ハイブリッド/マルチクラウド環境の管理は簡単ではありません。GreenLakeの単一管理プラットフォームはこうした手順を効率化します。オンプレミスとクラウドのサービスを単一プラットフォームで管理することで、管理コストを削減して効率を向上させます。
- シームレスな統合: GreenLakeでは、複数のプロバイダーのパブリッククラウドなど、既存のクラウド環境とシームレスに統合できます。そのため、ハイブリッド/マルチクラウドインフラストラクチャを維持しながら、異なるクラウドプラットフォームの強みを生かすことができます。
- GreenLakeによってITチームはインフラストラクチャ管理から解放され、イノベーションに注力できます。アプリケーション開発、データ分析、イノベーションなどの重要なプロジェクトに専念できるようになり、企業価値が向上します。
GreenLakeについて、さらに詳しく見ていきます。
- GreenLake for Computeは、従量制課金方式でコンピューティングリソースを提供し、前払い金を削減します。お客様には次のようなメリットがあります。
- コンピューティング容量を柔軟に拡張: ワークロードのニーズの変化に合わせて、コンピュートリソース (CPU、RAM) を細かく調整できます。
- 各種ワークロードを最適化: 特定のワークロード向けに設計された、HPCまたは仮想デスクトップ設定を選択できます。
- コンピューティングインフラストラクチャの自動プロビジョニング、パッチ適用、ライフサイクル管理により、管理を簡素化できます。
- GreenLake for Compute Ops Management: GreenLake for Computeを強化し、従量制課金方式のソリューションをコンピューティング環境に提供します。たとえば、以下のことが可能になります。
- 単一の簡単なコンソールで、オンプレミスとクラウドベースのコンピューティングリソースを管理します。
- プロビジョニング、パッチ適用、稼働状態監視などの通常業務を自動化することでITプロフェッショナルの負荷を軽減し、戦略的プロジェクトに注力できるようにします。
- コンピューティングリソースの使用状況を分析して最適なインストール容量にすることで、コストを最適化します。
- HPE Private Cloud Enterpriseソリューションは、オンプレミスでフルマネージドのプライベートクラウド環境を提供します。
- 高度なセキュリティと制御性: データとアプリケーションをお客様の管理下に置きながら、クラウドのようなアジリティと拡張性を得ることができます。
- エンタープライズグレードの機能: マルチテナンシー、ディザスタリカバリ、セルフサービスプロビジョニングなどの機能を活用して、強力なプライベートクラウドエクスペリエンスを実現できます。
- IT環境の複雑さを最小化: プライベートクラウドインフラストラクチャの管理とメンテナンスをHPEに委託し、負荷を軽減できます。
- HPE Private Cloud Enterpriseは、基本的なプライベートクラウドを必要とする企業向けのソリューションです。効率化された低コストのプライベートクラウド ソリューションは次のような特徴を備えています。
- 事前構成済みの新たなインフラストラクチャによって展開に必要な時間を短縮します。
- 増大する企業のニーズに合わせて、プライベートクラウドリソースを拡張できます。
- プライベートクラウドを簡単に管理できます。
HPE Private Cloud EnterpriseとGreenLake for Private Cloud Business Editionのどちらを選択すべきかは、企業のニーズによって異なります。Private Cloud Enterpriseが安全で機能が豊富なプライベートクラウドに最適であるのに対して、Private Cloud Business Editionはよりシンプルで低コストのクラウドに適しています。こうしたGreenLake製品を利用すれば、ハイブリッド/マルチクラウド環境で優れたアジリティ、拡張性、制御性が得られます。
上記に加えて、HPEでは次のようなハイブリッド/マルチクラウド製品およびサービスを提供しています。
- OpsRamp, a Hewlett Packard Enterprise company: 監視、分析、自動化を簡素化する、ハイブリッド/マルチクラウド運用向けのAIOpsプラットフォームです。
- HPE Zerto Software: ハイブリッド/マルチクラウド環境におけるディザスタリカバリとワークロードモビリティを最適化します。
この他にも、さまざま製品を取り揃えています。HPEなら、コンピューティング、ストレージ、管理、ディザスタリカバリ、移行のサービスをハイブリッド/マルチクラウド環境向けにカスタマイズできます。
FAQ
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドでは、データ、分析、およびAI/MLの管理方法がどのように異なりますか
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドはどちらも、データファブリック/データメッシュを使用してデータソースを統合します。ハイブリッドクラウドでは、機密データはオンプレミスに保持し、分析/AIはクラウドGPUに一気に処理させます。マルチクラウドでは、オープンフォーマット (Parquet、Delta)、ポータブルパイプライン、一元化されたカタログ、データリネージ、フィーチャーストアを標準化します。ポリシー・アズ・コード、暗号化、およびレジデンシーを適用し、MLOpsと連携し、変更データキャプチャ (CDC) とストリーミングを介してレプリケーションを行うことで、データ送信とレイテンシを最小限に抑えます。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドでは、コストをモデル化し、FinOps体制を構築する方法がどのように異なりますか
まずは、ハイブリッド/マルチクラウドにおけるTCOと単位あたりの経済性を検討することから始めます。ラベリング、割り当て、ショーバック/チャージバックを調整します。データ送信、接続性、ストレージ階層、GPUに関する義務を作成します。適正なサイズ設定、予約/割引、自動シャットダウン。FinOpsの構築: 部門横断的な活動のペース、予算、安全対策、異常検知、およびビジネスKPI (トランザクションコスト、ワークロードコスト)。単一のコストダッシュボードで、予測、最適化、責任を管理できます。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドでは、大規模な移行、最新化、運用の方法がどのように異なりますか
大規模環境におけるハイブリッドクラウドとマルチクラウドを比較する際に、複雑さ、データグラビティ、ビジネス上の重要度に基づいてワークロードに優先順位を付けます。コンテナ、共有サービス、ランディングゾーンを活用してハイブリッドクラウドを最適化します。移植性を高めるため、IaC、GitOps、Kubernetes、およびサービスメッシュを用いてマルチクラウドを標準化します。移行ファクトリー、ゴールデンテンプレート、およびガードレールを作成します。SRE、一元的な可観測性、自動化されたディザスタリカバリ、およびコンプライアンスを維持します。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドでは、成功を定義するKPIとOKRがどのように異なりますか
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのどちらがよいか比較するために、SLOの稼働時間/レイテンシ、MTTR、展開頻度、リードタイム、トランザクション/ワークロードあたりのコスト、利用率、データ送信コスト、セキュリティ/コンプライアンス合格率、および二酸化炭素排出量を追跡します。OKRを設定し、SLOを達成しながらクラウドコストを15%削減し、アプリケーションの30%をコンテナに移行し、クロスクラウドDRを15分以内に実現し、P1インシデントを25%削減し、ポリシー・アズ・コードを使用して50%のワークロードモビリティを実現します。
エンタープライズITにおけるハイブリッドクラウドとマルチクラウドの未来はどのように予測されていますか
クラウドのハイブリッド化とマルチクラウドが一般的になりつつあります。AI、機械学習、データ主権、レジリエンスに関して、組織は、オンプレミス、エッジ、各種クラウドサービスを統合すると予測されています。クロスクラウド制御、プラットフォームエンジニアリング、ゼロトラストセキュリティ、Kubernetesがさらに発展し、財務、AIOps、およびサステナビリティトラッキング自動化が、ワークロードの配置決定においてますます重要な役割を果たすようになります。また、機密コンピューティングとソブリンクラウドの領域も拡大します。プロバイダー間でのアプリケーションの移植性向上、統一されたデータ管理、ポリシーに基づいた運用が求められています。