マルチクラウド

マルチクラウドとは

マルチクラウドは、パブリックかプライベートかを問わず、異なるプロバイダーの少なくとも2つのクラウドに組織がアセットを分散するクラウドコンピューティングモデルを指します。

マルチクラウドの人気の理由

ほとんどのすべての組織では、成長によって、ITインフラストラクチャが単一のクラウド環境に収まらなくなっています。ビジネスを効率的に進めるために、多くの組織が複数のプロバイダーのパブリッククラウドプライベートクラウドを組み合わせて利用しています。マルチクラウドの仮想インフラストラクチャを展開することで、ビジネスはより容易に目標を達成できるため、マルチクラウドはコンピューティングの主流となりました。

事実、2020年のレポートによれば、従業員数1,000人以上の企業の93%がマルチクラウド戦略を採用しています。別の調査によれば、98%が2021年までにマルチクラウドに切り替えようと計画しています。

マルチクラウド戦略を立てる際に企業は何を考慮するべきか

組織がマルチクラウド戦略を立てる際は、各クラウドのAPI形式とエンコーディング、ユーザーアクセスや、データ、アプリケーション、Webサービスの保管場所を考慮して、シームレスな体験を生み出す必要があります。リソースの統合、セキュリティの懸念、異なるプライバシー規制に対応することも、設計にとって欠かせません。ただし、注意深く計画すれば、その結果得られるマルチクラウドアーキテクチャーによって、あらゆるロケーションから、可能な限り低いレイテンシで、簡単にデータにアクセスしてそれを管理できます。

企業がマルチクラウドのアプローチを採用する理由

マルチクラウド環境は複数の利点を提供しますが、実際の価値は組織の目標に応じて変わります。潜在的な利点には、柔軟性の向上、リスクの軽減、資本支出を必要としない高価なテクノロジーへのアクセス、高い可用性などがあります。以下でそれぞれを詳しく説明します。

  • 柔軟性: 柔軟なモジュラー型のインフラストラクチャによって、企業はソフトウェアを迅速に開発し、変化する需要にすばやく対応し、消費した分の料金だけを支払うことができます。また、企業はテクノロジーの進化の利点をすぐに享受し、異なるベンダーを選択してサービスを組み合わせ、よりカスタマイズされた競争力のあるアプリケーションを作成することができます。
  • 耐久性: 複数のクラウドを使用することで、1社のベンダーのみに対する依存を削減でき、機能停止/セキュリティ障害のリスクを低減できます。1つのクラウドで障害が発生しても他のプロバイダーのサービスは実行できるため、ビジネスが停止することはありません。そのような冗長性によって、組織は常時利用可能で、高度にスケーラブルなデータ、ワークフロー、システムのバックアップを利用できます。
  • コスト: リソースをサービスとして使用することで、企業は資本支出と、従業員の増員を避け、データ管理のコストを削減することができます。また、メンテナンスとアップグレードのコストはプロバイダーが負担してくれるため、企業は管理要員を増やすことなく、新しいより多くの製品とサービスをお客様に届けるためにリソースを割り当てることができます。
  • 可用性/パフォーマンス: オンプレミスの長期的なタイムラインとは異なり、新しいソリューション/サービスを見つけると、クラウドプロバイダーはほとんど即座にそれを提供してくれます。また、ユーザーがいる場所に近いクラウドにワークロードを展開することで、応答時間を最速にして高い可用性を維持できます。
  • イノベーション: マルチクラウド環境で、企業は新しい、強化された製品およびサービスを開発し、革新的なビジネスモデルを確立し、新たな収益源を生み出すことができます。
  • データ主権: 規制、法律、企業ポリシーによって、特定の地域または国にデータを物理的に保管することを求められる場合があります。組織はマルチクラウドソリューションを活用して、規制が適用される地域内のデータストレージを見つけることができます。

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの主な違いは、ハイブリッドクラウドはパブリック/プライベートといった異なるタイプのクラウドやオン/オフプレミスで構成されるのに対し、マルチクラウドには異なるサービスプロバイダーが含まれることです。どちらのクラウドモデルを選択するかは、組織のITニーズによります。

ハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドは、実際はプライベートクラウドとパブリッククラウドという異なる環境が1つになったものです。2つの環境を統合して1つのユニットとみなします。プライベートクラウドとパブリッククラウドはリソースを共有し、需要の変動に合わせてワークロードを一方からもう一方へと移すことができます。

マルチクラウド環境

マルチクラウド環境での作業はずっと複雑です。簡単に言えば、多数のピースがあるパズルを組み立てるようなものです。企業は自社の要件を満たすために最適なコンポーネントを選択し、目的に応じてそれを統合することも、しないこともできます。マルチクラウドは難しい反面、環境の構成が完成すれば、組織はより効率的なリソースの活用、耐久性の向上、潜在的なコストの削減といった恩恵を受けることができます。

マルチクラウド環境の活用例

組織はマルチクラウド環境を使用することで、スケーラビリティやカスタマイズ能力、ディザスタリカバリ、アプリケーション開発、社内の「シャドーIT」サービスの管理など、さまざまな利点を享受できます。以下にいくつか例を示します。

ポーランドの大手SAPサービスプロバイダーであるSNPは、HPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームが提供する高度なストレージサービスによって顧客へのサービスを拡大しました。GreenLakeのプラットフォームによるマルチクラウドソリューションがSNPのストレージ本来の高可用性を強化し、ヨーロッパのお客様に向けた事業継続性と中断のないオペレーションが実現しました。

世界最大の法律事務所であるGarriguesは、7,000万件の書類のうちの1件を即座に取得するために事務所で必要とされている速度、信頼性、パフォーマンスを下げることなく、需要の急増に対応するためのアジリティとスケーラビリティを提供してくれる、予算に優しいソリューションを探していました。HPE GreenLakeクラウドサービスが、同事務所にとってのゲームチェンジャーとなりました。このマルチクラウドサービスは強力な処理能力を提供し、そのコストは事前に把握できます。

サービスとしてのITインフラストラクチャプロバイダーであるblueApacheは、アプリケーションをグローバルにスケールする中規模から大規模のビジネス向けに、世界クラスのプライベートクラウドを提供しています。継続的な可用性に加えて、高度なアプリケーションのパフォーマンスとエンドユーザーに向けたサービス品質を保証するうえで、blueApacheはハードウェアの要件を予測することに苦労し、ほとんどの場合は余分なキャパシティが発生していました。HPE GreenLakeを使用してクラウドインフラストラクチャを管理することで、柔軟かつ経済的にスケールすることができ、初期費用を削減するとともに、価値を生み出すまでの時間を加速できるようになりました。

大手生命保険会社であるYF Lifeは、新しい製品やサービスを開発しながら処理も効率化したいと考えていました。また、規制へのコンプライアンスとデータ主権に関する法律を厳格に遵守するという、別の重要な課題もありました。これらのニーズを満たすために、YF LifeはHPE GreenLakeHPE PointnextHPE OneViewHPE GreenLake Centralを選びました。これらのHPEソリューションによって、YF LifeはTCOを約35%削減し、新しい電子契約ソリューションをサポートし、IT関連の支出を明確に把握することができました。

HPEとマルチクラウド

長年テクノロジーイノベーションをけん引しているHPEは、マルチクラウド環境をシンプルに管理しながらデータの保護と可用性を強化する、多様な製品とサービスを提供しています。HPEを活用することで、お客様はクラウド戦略を立て、マルチクラウド環境を実装し、消費モデルによってコストと運用を円滑化できます。

HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォームは、お客様が必要とする運用効率とアジリティに加え、ガバナンス、コンプライアンス、可視性を、オールインワンのas a serviceの従量制契約で提供します。また、HPEのプラットフォームでは、インフラストラクチャをすばやくスケールアップして財務上の柔軟性を保ち、キャッシュフローを維持し、支出を抑え、リソースのオーバープロビジョニングによるコストを削減できます。

HPE GreenLakeはサービスとしてのマルチクラウドおよびワークロードも提供し、お客様はより優れたビジネスバリュー、制御性、適合性を手に入れられます。リソースの使用効率の最大化と支出管理に向けて、使用量を単一のビューで確認でき、マルチクラウド全体のコストを集約できます。詳細を掘り下げることも可能です。

さらに、HPE GreenLakeは、お客様がエッジからクラウドまでのデータを保護し、インサイトに基づいてすばやく行動するためのクラウドデータサービスも提供しています。HPEを利用するお客様は、ランサムウェア、サイバーアタック、その他の予期しないダウンタイムから数分で復旧し、攻撃や中断が始まるわずか数秒前の状態にデータを戻すことができます。

また、お客様はHPE GreenLakeのクラウドプラットフォームを、業界をリードするインテリジェント ストレージサービスとして使用できます。HPE InfoSightの予測分析によって、ミッションクリティカルなアプリケーションを、セキュアで常時利用可能、かつアジャイルな環境で実行できます。