読了所要時間: 5分10秒 | 公開日: 2025年5月8日
ネットワークの可観測性 ネットワークの可観測性とは
ネットワークの可観測性とは、ネットワーク内で何が起きているかを確認し、把握するプロセスです。一般にネットワークメトリック、デバイスの特性、トラフィックフロー、イベントログなどのデータを収集、相関、分析し、ネットワークの状態を表す視覚情報を生成することによって実現されます。
一般にネットワーク観測ワークフローは、より広範なAIOps、セキュリティ、またはネットワーク管理ツールの一部として統合されます。 これらのワークフローは、オープンシステムインターコネクション (OSI) モデルの複数のレイヤー全体で可視性を高め、テレメトリをキャプチャーして、豊富で包括的なデータセットを開発するために使用されます。その結果、ITチームは、パフォーマンス、健全性、動作、ポリシー、リソースに関わるネットワークの問題に積極的に対処すること、またはこれらを軽減することができるようになります。ネットワーク可観測性ツールの大半はベンダー専用ですが、HPE Aruba Networking CentralとHPE OpsRamp は、幅広いサードパーティITインフラストラクチャからのデータを統合するように設計されています。
ネットワークの可観測性の定義
ネットワークの可観測性には、ネットワークスイッチ、アクセスポイント、ゲートウェイなどのさまざまなネットワークデバイス、および接続されたクライアントやIoTデバイスから詳細なテレメトリとデータを収集することが必要です。ネットワーク可観測性ツールは継続的にデータを収集し、ネットワークの健全性とパフォーマンスを明確にリアルタイムで表示します。
最新のネットワーク可観測性ツールは、人工知能 (AI) と機械学習 (ML) を駆使してデータの相関関係を分析し、有益な情報の取得、傾向の明確化、問題の予測、テストおよびトラブルシューティングのワークフローの自動化によってデータ収集の価値をさらに高め、ネットワーク運用チームの作業負荷を大きく軽減します。
ネットワーク可観測性のキーコンポーネント
1. データ収集
可観測性の実現は、ネットワークデバイス (たとえば、スイッチ、アクセスポイント、ゲートウェイ)、アプリケーション、サーバー、エンドユーザーデバイスなど、さまざまなソースからデータを収集することから始まります。含まれるデータタイプ:
- メトリクス: 帯域幅の使用量、レイテンシ、パケット損失などの定量的測定値。
- ログ: イベントデータ、エラーメッセージ、システムアクティビティ。
- トレース: データがネットワーク上でどのように流れるかを理解するためのエンドツーエンドのトランザクションレコード。
2. 相関とコンテキスト
可観測性ツールは、複数のソースからのデータを相関させてコンテキストを提供します。たとえば、アプリケーション性能の問題を特定のネットワークイベントにリンクすると、根本原因が特定しやすくなります。
3. 可視化
ダッシュボード、チャート、トポロジ マップは、ネットワークの健全性とパフォーマンスの視覚的表現を提供するので、チームはデータを解釈しやすくなります。
4. データ分析と有益な情報
可観測性プラットフォームには、多くの場合、参照データレイクに照らしてデータを分析し、パターンや異常を特定して、ネットワークパフォーマンスを向上させるための変更をプロアクティブに提案する人工知能 (AI) および機械学習 (ML) 機能が搭載されています。
ネットワークの可観測性がもたらすメリットとは
最新のネットワークの可観測性は、包括的なメトリック、有益な情報、分析の提供に役立ちます。急速に進化する今日のデジタル環境において、シームレスな信頼性、セキュリティ、パフォーマンスを維持するためには、サードパーティの可観測性とAI搭載の自動化が不可欠です。ネットワークの可観測性がもたらす主なメリットは次のとおりです。
- 幅広い可視性: ネットワークデバイス、接続リンク、アプリケーション、エンドポイントから分析情報を取得し、ネットワークのパフォーマンスを高めてシームレスな接続を保証します。
- パフォーマンスの最適化: ボトルネック、トラフィックフロー、帯域幅の使用状況を発見してそれらに対処し、ビジネスクリティカルアプリケーションを優先します。
- プロアクティブな問題解決: トラフィック、レイテンシ、エラーを監視して、ネットワーク上のユーザー、デバイス、ビジネスワークロードに影響を与える前に問題を検出し、対処します。
- セキュリティ強化: ネットワーク内の異常なアクティビティや悪意あるアクティビティを示すパターンを識別して、セグメンテーションポリシーを通知し、侵害を検出してリスクを軽減し、インシデント対応を迅速化します。
- コンプライアンスとレポート: 規制およびポリシーに対するコンプライアンス監査のため、またセキュリティとパフォーマンスの標準への準拠を証明するために、データを正確に収集し、レポートを生成します。
- キャパシティプランニング: ビジネスの成長に対応するためのインフラストラクチャのスケールに関して情報に基づいた意思決定を下すため、履歴データを分析して負荷を評価し、データ通信量を予測します。
- 運用コストリダクション: トラブルシューティングの迅速化とネットワークインフラストラクチャの効率的管理により、ネットワークダウンタイムのリスクと運用コストへの影響を最小限に抑えます。
ネットワークの可観測性とネットワーク監視の比較
従来のネットワーク監視では、事前定義されたメトリックを追跡し、しきい値を超えたときにアラートを送信することに重点が置かれていました。根本原因分析に対するこの限定的アプローチでは、オンプレミス、クラウド、リモート、ハイブリッド環境に分散していることが多い今日の最新エンタープライズ ネットワークの動的性質と複雑な規模に対応することが困難です。
最新のネットワーク可観測性は、詳細なデータと高度な分析を活用し、ネットワークを深く広く掘り下げたビューを提供します。従来のネットワーク監視を超えて何が起きたのかを捉え、それが起きた理由を明らかにし、AI搭載のツールと一連の統合を使用して問題の解決に役立つアクションを実行します。
したがって、ネットワークの可観測性は、従来型のネットワーク監視では目的が果たせない現代の動的IT環境において特に有益です。ネットワークの可観測性は、ますます複雑化する今日のネットワークを管理し、組織が最適なパフォーマンスを維持し、信頼性を向上させ、エンドユーザーにシームレスなエクスペリエンスを提供できるようにするために不可欠な機能です。
ネットワーク可観測性のベストプラクティスとは
エンタープライズ環境でネットワークの可観測性を有効かつ確実に実装するために、次に挙げるベストプラクティスをご検討ください。
- 広範囲にデータを収集する: ネットワークデバイスとレイヤー全体でデータを体系的に収集します。アクセスポイントやネットワークスイッチなどのインフラストラクチャ機器を評価するときは、リアルタイムのテレメトリ、分析、アプリケーションの可視性、イベントログを生成する能力にどれだけの幅があるかを考えてください。
- ツールのコンソリデーションと統合: セキュリティ、インフラストラクチャ、アプリケーションパフォーマンスの監視を統合できる一元管理プラットフォームを展開してください。データサイロを防ぎ、可視性を妨げる断片化されたビューを回避するために、ベンダーツールが統合可能かどうか、あるいはサードパーティの可観測性を提供できるかどうかを検討してください。
- AIを活用して有益な情報を大規模に入手: AIとMLを活用してパターンを速やかに識別し、問題を予測し、修正アクションを自動化することにより、ネットワークインフラストラクチャ全体のリアルタイム可視性の維持に必要なワークロードとリソースを削減します。
- ユーザーエクスペリエンスを最優先: ネットワークの可観測性実践を通じて特定されたネットワークの問題をランク付けして対処する際は、ユーザーの生産性と満足度への影響に基づいて優先順位を付けます。これにより、チームの進捗を妨げるおそれのあるインシデントチケットの蓄積が防げます。
- 定期的な評価と改善: ネットワークの需要の変化に応じて戦略を調整できるように、ネットワーク パフォーマンス、実装されたソリューション、および可観測性の実践に関する定期的レビューをスケジュールします。ディープデータレイクを備えるネットワークオブザーバビリティソリューションは、ピアツーピアのベンチマークと評価もサポートします。チームは、規模と構造が類似した企業に照らして自社のネットワークをランク付けすることができます。
HPEネットワーク可観測性ソリューションとは
HPE はさまざまなソリューションを提供しています。これらのソリューションは互いに連携し、直感的なネットワーク可観測性と広範なテレメトリ収集を実現します。そこには、HPEにおけるAIの倫理と原則に基づいた AI搭載の自動化によるサードパーティ可観測性と、業界最大のネットワークテレメトリデータレイクが含まれ、HPE Aruba Networkingとハイブリッドエンタープライズネットワーク環境向けの統合インターフェイスを提供しています。
- HPE Aruba Networking Central
- HPE OpsRamp
- HPE Aruba Networking User Experience Insight (UXI)
- HPE GreenLake for Networking
企業にネットワーク可観測性が必要である理由
ネットワーク監視と比較すると、ネットワーク可観測性は、急速に変化する今日のデジタル環境に合わせてスケールすることができ、環境に後れを取らない最新のネットワークを構築し、維持するための総合的でプロアクティブなアプローチを求める企業のニーズにより的確に対応することができます。
ネットワークの可観測性 | ネットワーク監視 | |
|---|---|---|
| 問題検出のカバレッジ | ネットワークデバイス、クライアント、アプリケーションを含めた、非常に広範囲なテレメトリデータ収集と分析。 | ネットワークデバイスから特定のメトリックとログを収集します。 |
| 有益な情報と可視性の深さ | さまざまなソースからのデータを相関させる、より深い有益な情報がRCAを加速させ、問題をプロアクティブに解決します。 | ネットワークパフォーマンスの表面レベルビューでは、問題を診断するために手動での介入が必要となる場合があります。 |
| プロアクティブなアプローチとリアクティブなアプローチ | プロアクティブ。AIを多々活用し、パフォーマンスに影響が及ぶ前に異常や問題を検出します。 | 一般にリアクティブ。既定義済みのしきい値を超えたときに警告します。 |
| ユーザーエクスペリエンス | 超高速の自動化解決が有益な情報の提供を加速させ、アップタイムとパフォーマンスを改善します。 | アラートの頻発がオペレーターを疲弊させることや、手動でトラブルシューティングを行わなければならないことから問題解決が遅れます。 |
| データ収集 | パケット、API、テレメトリにわたる多様な、構造化されていないデータの収集。 | SNMPおよびログから収集した構造化データ。 |