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2021年12月17日

企業のクラウド成熟度を測定する

データが教えてくれることと、それを組織で活用する方法


組織がトランスフォーメーションイニシアチブに乗り出すのは、トランスフォーメーションが完了したら、利点がコストとリスクを上回ると期待しているためです。その過程で、組織は機会、課題に直面し、意思決定を迫られます。成功の鍵はリスクを排除することではなく、リスクを把握して管理することです。また、結果が予測できることを前提に戦略的リスクを取ることです。

トランスフォーメーションと導入のフレームワークは、自社がジャーニーのどの段階にあるのかを理解し、ベストプラクティスとのベンチマークを行い、組織にとって適切な次のステップの優先度判定を行うための構造と共通言語を提供します。効果的なフレームワークは範囲が広く、トランスフォーメーションの戦略的、組織的、人的、テクノロジー的側面を網羅しています。

自社のクラウド運用モデルの機能を把握する体系的なアプローチによって、ビジネスにとって最適な次の行動を優先的に取ることができます。

クラウド運用モデル導入のフレームワーク

パブリッククラウドおよびオンプレミスクラウドのトランスフォーメーション、ITモダナイゼーション、エッジコンピューティングの数百ものエンゲージメントに取り組んできたHPEは、組織がトランスフォーメーションを成功させるために焦点を当てるべき分野に対して確信を持っています。ビジネスの目標をサポートする運用モデルを構築するために向上させる必要がある機能分野は何かを、HPEのエッジからクラウドまでを網羅した導入フレームワークによって特定できます (図1)。

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図1: HPEのエッジからクラウドまでの導入フレームワーク

HPEは顧客エンゲージメントでの経験によって、効果的な運用モデルのトランスフォーメーションに不可欠な8つの支援機能を特定しました。

  • 戦略およびガバナンス: おそらく、トランスフォーメーションの成功を左右する唯一の最重要要因は、進もうとしている方向とその理由を把握し、明確な目標を立てて賛同を得ることです。
  • イノベーション: 新しいイノベーションの実現を早めることは、クラウド運用モデルに移行する多くの組織にとって主要な目標の1つです。
  • 人員: 「どこでもクラウド」の働き方とそのために必要なスキルを導入することは、それほど単純なことではない可能性があります。組織の人員は、トランスフォーメーションを成功させる最良の触媒になることもあれば、最大の障害になることもあります。
  • 運用: エッジからクラウドまでに対応する単一の一貫した運用モデルを導入することにより、運用が簡素化され、既存の運用のアジリティと効率が高まります。
  • アプリケーション: 適切なアプリケーション戦略には、パフォーマンス、コスト、リスクのパラメータに基づいて、ワークロードに向けた最適なプラットフォームの組み合わせを特定する、積極的なデータ主導のプロセスが必要です。
  • DevOps: アジリティは、ソフトウェアのエンジニアリングサイクルを加速することによって達成できます。ただし、これを実現するためには、プロセス、ツール、行動を進化させる必要があります。
  • データ: データは、デジタルで優位性を築く基礎になります。ただし、データから価値を引き出すには、データの利用者がタイムリーにデータを利用できる必要があります。
  • セキュリティ: エッジからクラウドまでの資産のあらゆる部分にセキュリティを組み込む必要があります。このためには、適切なツール、プロセス、人員が連携して同じ目標に向かう必要があります。

成熟に向けた積極的な道筋

HPEは、お客様へのエンゲージメントにおいて、この8分野のフレームワークによる共通言語を使用し、それぞれのお客様の成熟度を評価します。各分野は複数の機能エリアで構成されており、それらに照らして組織を評価します。

各分野の全体的なお客様の成熟度は、以下のように5ポイントの尺度で評価されます。

1. 限定的: これは最も低い機能レベルです。お客様のクラウド運用モデルの機能は低いか、まったく備わっていません。または、クラウド機能が非常に限定的です。

2. 導入中: お客様のクラウド機能が、限定的なレベルを超えて進歩しているという証拠が見られます。

3. クラウド対応: ある分野でレベル3に達しているお客様は、その分野における効果的なクラウド運用モデルを備えています。ビジネスのゴールに応じて、多くの組織にとってレベル3が妥当な目標となります。

4. 最適化済み: 組織はクラウド運用モデル機能を最適化しており、より大きな価値を達成しようとしています。

5. 価値を最大化済み: 同業他社や業界のベンチマークに照らして、組織はその分野のクラウド運用モデル機能のベストプラクティスを達成しています。

各分野における機能開発の度合いを客観的に測定することで、各成熟度レベルの完了度を把握することができます。一般的な顧客エンゲージメントにおけるこの評価の例を、図2に示しています。機能の成熟は通常、直線的に進むため、特定の分野でレベル1の機能を100%完了すると、お客様は効果的にレベル2の機能に取り組むことができます。その後も同様です。

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図2: お客様の成熟度の例

データから分かること

HPEでは、最近のトランスフォーメーションエンゲージメントから取得した成熟度データを検証しました。このデータには、北米、アジア、オセアニア、ヨーロッパの製造、金融サービス/保険、医療、化学/加工、エネルギー、ライフサイエンスといった業界における34件のエンゲージメントが反映されています。

すべてのエンゲージメントで、8分野の平均成熟度にはまだ改善の余地が多く残っていました。ほとんどの組織が、大半の分野で、レベル1およびレベル2の成熟度を達成するために、引き続き多くの努力を必要としていました。

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図3: お客様の成熟度の平均

最も成熟している組織は、特定の分野で「クラウド対応」よりも高い機能を達成していました。母集団の上位20%の組織の平均では、すべての分野で成熟レベル3までにとどまっており、特定のエリアでは引き続き努力を必要としていました。

通常、組織はビジネスのゴールに基づいて、一部の分野のみに優先して焦点を当てます。たとえば、製品とサービスのイノベーションを加速したいと考えている化学業界の企業なら、DevOpsとイノベーションの機能に注力します。

こちらもご覧ください: コンピューティング管理がクラウドに移行している理由

最も進んでいたエンゲージメントにおける機能レベルの成熟度を図4に示します。ほぼすべての分野で「クラウド対応」の運用モデルが達成されていました。最も成熟していたのは、多くの組織にとって達成しやすい分野である「DevOps」でした。

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図4: 最も優れたエンゲージメントの成熟度 (分野ごと)

分野や組織によって大きな差異が見られましたが、「人員」の分野が共通して最も成熟が難しい分野でした。「人員」の平均成熟度スコアは1.74で、標本母集団全体で最も成熟度が低い分野となっています (図5参照)。トランスフォーメーションエンゲージメントでの数年にわたる経験で、HPEは、人員に関連する機能の不備は通常、簡単に特定できるものの、解決が難しいことに気づきました。これは一部には、深く根付いた文化的要因が原因で、解決に向けた変化が緩やかにしか進まないことが挙げられますが、経営陣が文化や従業員の変革を実現するために必要な時間的、財務的投資をすることに躊躇しているためでもあります。

すべてのエンゲージメントで、組織は「セキュリティ」と「運用」の分野のイニシアチブに優先して取り組む傾向にありました。また、それらの分野では、機能の成熟度のスコアが平均して2.0を超えており、成熟度の高い組織は「クラウド対応」の最低限のベンチマークである3.0を超えていました。「セキュリティ」と「運用」の分野はいずれも複雑ですが、適切に定義されたベストプラクティスとフレームワークがあるという利点があります。

「アプリケーション」、「イノベーション」、「データ」の分野は平均成熟度が低くなっています。この要因の1つは、これらの分野で大きな成長を達成するためには「戦略」、「セキュリティ」、「運用」、「人員」の分野の土台が必要となるためです。

母集団で最も成熟度が高かった分野は「DevOps」です。この分野のテクノロジーとプラクティスは明確に定義され、確立されています。DevOpsを適切に導入すると、アプリケーションチームの成果はより早く形になり、成功によるポジティブな影響もすぐに表れます。

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図5: 達成成熟度の平均 (分野ごと)

まとめ

クラウド運用モデル機能を把握するための体系的なアプローチによって、ビジネスに向けた適切なトランスフォーメーションのステップを優先的に実行することができ、それまでの自社の状況とベストプラクティスの両方に照らして成熟度を把握することができます。特定の分野で成熟すること、またはそれを加速することを阻害する要因を把握することで、その障害を克服し、成果に自信を持って、トランスフォーメーションを次のレベルへと進めることができます。

特に重要なのは、以下のようなフレームワークを使用して組織を前進させることです。

  • 共通言語を使用する。効果的なトランスフォーメーションには、全員が参加することが必要です。共通のフレームワークによって、組織全体で優先事項を伝え、目標を揃え、アイデアを交換することができます。
  • ベストプラクティスとのベンチマークを行う。共通して適用されるフレームワークによって、他社と比較した自社の進捗状況を把握できます。また、外部から新しい人員が組織に入ってきた場合もフレームワークが役立ちます。馴染みのある言語を使用することで、新しい人員は円滑に業務に取り組むことができます。
  • 成熟度を測定する。機能を定量的に、一貫的に評価することで、ゴールに対する進捗度を正確に測定し、結果に基づいて軌道を修正することができます。
  • 盲点を特定する。トランスフォーメーションのイニシアチブの範囲が、イニシアチブ設計者の知識のレベルに限定されることは珍しくありません。これにより、イニシアチブで重要なトピック分野が見逃される恐れがあります。特に、チームが人員やプロセスの面よりもテクノロジーに焦点を当てている場合は、その可能性が高まります。包括的で実証済みのフレームワークを使用することで、必要なことをすべて踏まえてトランスフォーメーションに取り組むことができます。

    リーダーへのアドバイス
  • トランスフォーメーションと導入のフレームワークは、自社がジャーニーのどの段階にあるのかを理解し、ベストプラクティスとのベンチマークを行い、組織にとって適切な次のステップの優先度判定を行うための構造と共通言語を提供します。
  • ほぼすべての分野で「クラウド対応」の運用モデルが達成されていました。最も成熟していたのは、多くの組織にとって達成しやすい分野である「DevOps」でした。
  • トランスフォーメーションエンゲージメントでの数年にわたる経験で、HPEは、人員に関連する機能の不備は通常、簡単に特定できるものの、解決が難しいことに気づきました。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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