みずほ銀行が、「みずほクラウド(IA)」のサービス基盤最新化を推進し、予測できない変化への適応力を強化
HPE SynergyとHPE GreenLakeフレックスキャパシティを採用し、あらゆる変化に適応可能なITインフラを月額・従量制で導入
"新規ビジネスニーズやパブリッククラウドの進展等、様々な不確実性がある中で、HPE SynergyとHPE GreenLakeの組み合わせは、私たちが『予測できない変化』に適応していくための理想的なソリューションとなりました"
―みずほ銀行
IT・システム統括第一部
共通インフラ推進チーム
次長
田附 良太 氏
2019年7月に勘定系システムの刷新を完遂したみずほ銀行が、プライベートクラウド基盤である「みずほクラウド(IA)」のインフラ更新を進めている。銀行業務を支える約120システムを稼働させる本環境は、1,000台規模のサーバーとペタバイト級のストレージで構成されている。新たに採用された「HPE Synergy」は、REST APIによるコード制御と自動化が可能なコンポーザブルインフラ製品。注目すべきは、みずほ銀行が「HPE GreenLakeフレックスキャパシティ」を採用し、サーバーやストレージなどのインフラ機器とソフトウェア群を「月額・従量制」で導入開始したことである。
業界
金融
目的
「みずほクラウド(IA)」の次世代インフラ構築。市場系・情報系を中心とした銀行業務を支える安定的なサービス提供と、予測できない変化に迅速に対応できるIaaS基盤を実現する。
アプローチ
IaaSを構成するハードウェアが公開するREST APIを活用し、セットアップの「自動化」を推進。さらに、インフラ機器やソフトウェア群を「従量制」で導入する。
ITの効果
・コンポーザブルインフラ製品HPE Synergyを採用し、Ansible Playbookによるハードウェア環境のセットアップ自動化を実現
・最新のブレードアーキテクチャーによりハードウェア導入やネットワーク配線をシンプルかつ容易に
・HPE 3PAR StoreServオールフラッシュアレイにより優れたIOPSを1ミリ秒以下のレイテンシで実現
・HPE GreenLakeフレックスキャパシティを採用しインフラ機器/ソフトウェアの従量制・月額費用化を実現
ビジネスの効果
・拡張や変更の容易なインフラ機器とコンサンプションモデルを組み合わせ、プライベートクラウド基盤として現時点で考えうる最高水準の「変化への適応力」を獲得
・インフラ提供の迅速化や月額費用化など、ユーザー部門からの多様な要求に柔軟に応える体制を強化
・予測分析テクノロジー「HPE InfoSight」による障害予兆検知とプロアクティブ保守の実現を目指す
チャレンジ
およそ3,000VMを稼働させるプライベートクラウド基盤の最新化
2019年7月16日、みずほ銀行が新勘定系システム「MINORI」を全面的に稼働させた。2018年6月から進めてきた大規模なデータ移行の完了をもって、この世界屈指の巨大プロジェクトはいよいよ終息へと向かう。IT・システム統括第一部 共通インフラ推進チーム 次長の田附良太氏は次のように話す。
「勘定系システムの刷新により、新サービスへのより柔軟な対応や開発期間の短縮が可能になります。お客さまの利便性を高める革新的なサービス開発に向け万全の体制が整いました。私たち共通インフラ推進チームでは、これと平行して第5世代『みずほクラウド(IA)』のインフラ構築を進めていました。掲げた目標は『予測できない変化に適応できるサービス基盤』の実現です」
「みずほクラウド(IA)」では、およそ120システムのアプリケーションが稼働する。サービス基盤は1,000台規模のサーバーとペタバイト級のストレージで構成され、仮想マシンの数は3,000に達するという。共通インフラ推進チーム 調査役の德田洋介氏は次のように話す。
「『みずほクラウド』には、ミッションクリティカルな要求からスピード感が重視されるサービスまで、まさに多種多様なシステムを収容しています。適材適所のインフラ適用を進める中、『みずほクラウド(IA)』の次世代サービス基盤には、パブリッククラウドに比肩する柔軟な使い勝手が不可欠と考えていました」
標準化、統合化、仮想化環境のデプロイと運用自動化、コスト効果の追求――運用開始から約10年、「みずほクラウド(IA)」は常に最新技術を採り入れながら進化し続けてきた。
「今回のインフラ導入における大きな狙いは、『ハードウェアレイヤーの構築自動化』と『従量課金モデルへの移行』です。必要なときにオンデマンドで利用でき、使用量に応じてコストが決まるパブリッククラウドに近い環境を、セキュアなオンプレミス環境で実現することを目指しました」(田附氏)
新たに「みずほクラウド(IA)」の中核に採用されたのは、コンポーザブルインフラという新しい市場を創造した「HPE Synergy」である。そして「HPE GreenLakeフレックスキャパシティ」がオンプレミス環境の従量制・月額費用化を実現した。
みずほ銀行
IT・システム統括第一部
共通インフラ推進チーム
次長
田附 良太 氏
みずほ銀行
IT・システム統括第一部
共通インフラ推進チーム
調査役
德田 洋介 氏
ソリューション
「ハードウェアレベルの自動化」と「従量課金モデルへの移行」を実現
「ハードウェアレイヤーの構築自動化」と「従量課金モデルへの移行」がなぜ必要だったのか。その背景を、みずほ情報総研 銀行システムグループ ITインフラ本部 課長の坂本晃浩氏は次のように説明する。
「仮想化基盤上でVMの作成やOSの設定はテンプレート化により自動化されていましたが、ハードウェアの設定はエンジニアによる手作業に多くを依存していました。この手間と時間を解消してパブリッククラウドのスピード感に近づけたい、という思いが強くありました」
みずほ情報総研は、みずほフィナンシャルグループにおけるIT戦略の実行を担う。坂本氏らは「みずほクラウド(IA)」の運営を手がけるとともに、本プロジェクトでは技術評価からインフラ設計と構築、自動化テクノロジーの実装まで中心的な役割を果たしている。
「通常、ハードウェアの調達には数週間を要します。また、年次リソース増強のようなまとまった規模の導入では、一時的なコスト負担も遊休資産も大きくなります。いわばオンプレミス環境の宿命でした。さらに、カンパニー制が導入されたユーザー部門では、『必要なときに即座にリソースを使いたい』『使った分だけ支払いたい』という声も高まっていました」と坂本氏は話す。
共通インフラ推進チームにとっては、「伸縮自在のITインフラをオンプレミスで実現せよ」という難題を突きつけられているも同然だった。田附氏は次のように話す。
「私たちは、最新のインフラ機器とフィナンシャルサービスを組み合わせて『伸縮自在のITインフラ』を実現しようと考えました。様々な検討を重ね、私たちの理想に最も近い環境を実現できると判断したのが、APIによるインフラ制御が可能な『HPE Synergy』と、オンプレミス環境を従量制で導入できる『HPE GreenLakeフレックスキャパシティ』だったのです」
「予測できない変化に適応できるサービス基盤」をいかに実現するか
「みずほクラウド(IA)」の次世代基盤として採用されたHPE Synergyは、世界初のコンポーザブルインフラ製品として登場し、新たにこの市場を創造したパイオニアである。ブレード型のコンピュートとストレージモジュール、ネットワークファブリックをフレームと呼ばれる筐体に統合し、それぞれのリソースを自由に組み合わせて、ワークロードごとに最適化された環境を迅速かつ自動的に構築できる。
「まず、HPE SynergyのAPIによるコード制御への適応度の高さに注目しました。評価を進めるうちに、すでに導入済みだった構成管理ツールAnsibleとの相性がよく、私たちにとってハードウェアのセットアップを自動化するのに最適なプラットフォームであることが分かりました」と話すのは、みずほ情報総研 銀行システムグループ ITインフラ本部第2部 ITエンジニアの古田暁宏氏である。
HPE Synergyでは、REST APIに対応した管理モジュール「HPE Synergyコンポーザー/HPE OneView」により、ハードウェアの統合的なコード制御が可能だ。さらに、HPEでは、HPE Synergy 向けに「Ansible Modules for HPE OneView」提供しており、これを利用すればAnsibleによる自動化を容易に実装できる。
古田氏は、「Ansibleモジュールを活用することにより、ハードウェアセットアップの自動化を実現し、既存の自動構築の仕組みに統合することができました。具体的には、HPE Synergyフレームへコンピュートモジュールを挿入した後の、IPアドレスの付与、VMware ESXiのインストール、VMware vCenterへの接続とそれに続く基本設定を自動化しています」と話す。
「同時に『HPE GreenLakeフレックスキャパシティ』を採用して、サーバーやストレージなどのインフラ機器とVMware vSphereやサーバーOSを月額・従量制で導入しました。これにより、パブリッククラウドの『使った分だけ支払う』費用処理に近づくことができました」(坂本氏)
HPE GreenLakeフレックスキャパシティでは、ハードウェア/ソフトウェア資産をHPEが保有し、ユーザー企業は自社のセキュリティポリシーを適用したデータセンターに設置して利用できる。従量制を採用すれば、数年後にどの程度のリソースが必要になるか予測が難しい環境でも、IT投資リスクやTCOを低減することが可能だ。
「サーバーやストレージの予備リソースを事前に用意しておき、必要になった時点で利用できる『バッファキャパシティ』にも大きなメリットを感じています。予告なしのリソース要求にも即座に対応でき、スピード感でパブリッククラウドに大きく近づくことができたと思っています」と德田氏も評価する。
「HPE GreenLakeは、私たちの現実的なニーズにきめ細やかに応える柔軟性を備えていました。支払いスキームの検討と精査に十分な時間をかけて、満足できる形に落ち着けることができたと考えています。新規ビジネスニーズやパブリッククラウドの進展等、様々な不確実性がある中で、HPE SynergyとHPE GreenLakeの組み合わせは、私たちが『予測できない変化』に適応していくための理想的なソリューションとなりました」(田附氏)
みずほ情報総研株式会社
銀行システムグループ
ITインフラ本部第2部
課長
坂本 晃浩 氏
みずほ情報総研株式会社
銀行システムグループ
ITインフラ本部第2部
ITエンジニア
古田 暁宏 氏
ベネフィット
予測分析テクノロジーの活用も視野に理想的なプライベートクラウド基盤へ
新環境の統合ストレージに採用されたのは、優れたIOPS性能を1ミリ秒以下のレイテンシで実現する「HPE 3PAR StoreServ 8450オールフラッシュアレイ」である。坂本氏は次のように話す。
「HPE 3PARで利用できる予測分析テクノロジー『HPE InfoSight』に注目していました。高精度にインフラの障害予兆を検知し、問題が顕在化する前に保守対応できることは私たちにとって大きな安心です。ネットワーク接続の課題が解消できた時点で、ぜひ活用していきたいと考えています」
HPE InfoSightは、高精度の障害予兆検知とパフォーマンス自動最適化に威力を発揮する。その効果は、HPE Nimble StorageやHPE 3PAR StoreServで実証済みだ。2019年7月には、HPE InfoSightの適用範囲をHPE SynergyやHPE ProLiant Gen10サーバーにも拡大している。
「IaaSとしてはひとつの目指していた形に到達した」(田附氏)と評す「みずほクラウド(IA)」は、これからどんな進化を目指すのか。
「お客さまにより良いサービスをいち早くお届けするための基盤として、必要な機能強化を果たしていくことになるでしょう。PaaSのような方向性がまず考えられます。HPE Synergyなら、API化の推進やコンテナの活用など、私たちが始めようとしている新しいチャレンジに対して制約が非常に少ないことも大きな魅力です」(德田氏)
プロジェクトを振り返って、田附氏が次のように語って締めくくった。
「HPE GreenLakeは、テクノロジー活用の自由度を飛躍的に高めてくれました。オンプレミス機器を従量制で利用できるメリットはもちろんですが、HPE Synergyとともに『伸縮自在のITインフラ』を実現できたことがやはり大きいですね。ビジネスもテクノロジーにおいても不確実性が高まる中、優れた『変化への適応力』を備えたサービス基盤を実現したことは大きな成果です。日本ヒューレット・パッカードには、これをスタートに私たちのチャレンジと共に歩んで欲しいと思っています」
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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