量子計算
量子コンピューティングとは
量子コンピューティングは、多次元の計算空間を利用して数十億ものデータポイントのパターンを特定し、極めて複雑な問題を解決する手法です。スーパーコンピューターよりもはるかに小型でありながら、従来のスーパーコンピューターでは解決できない問題を解決します。
量子コンピューティングの仕組み
量子コンピューティングのパワーの秘密は量子ビットにあります。量子ビットは量子コンピューターのビットバージョン、または通信やコンピューティングで使用されるデータの最小単位のことです。
量子ビットが通常のビットと異なるのは、情報を「重ね合わせ」の状態で保持できる点です。つまり、考え得る限りのデータ構成が量子ビットで表されることになります。最も基本的なレベルでは、データ自体を同時にさまざまな形で表現できるため、より高度な分析が可能になります。
また、量子アルゴリズムは「もつれ」と呼ばれる力学的効果を考慮して解決策を見出します。もつれとは、2つの異なる物体間の関連する動作を指しており、量子的に説明すると、一方の量子ビットに対する変更がもう一方の量子ビットにも直接影響を与えることになります。こうした相互関係の働きを維持することで、量子プロセッサーはさらに複雑な計算分析に対応できます。
量子コンピューターが必要とされる理由
企業とテクノロジーが進化し続けるなか、業界が抱える最大の課題を解決するのに最適なのが量子コンピューターです。実際に、イノベーションによって増え続けるニーズに対応できるかどうかは技術力にかかっています。
たとえば、再生可能エネルギーシステムは、化石燃料を完全に置き換えたいのであれば、効率を高めてコストを削減するために継続的に改善していく必要があります。研究者は、バッテリ技術を向上させる新素材を探すなか、量子コンピューティングを活用して複雑な化合物や化学反応をシミュレーションしています。
深宇宙探査では、極めて過酷な動作条件に耐えられるものを発見するために、素材を継続的に改善する必要があります。量子コンピューティングを利用できなければ、研究所でのテストサイクルに数か月もかかり、開発が遅々として進みません。
日用品を製造する一般的な業界でも、量子コンピューティングを活用することでさまざまなメリットが得られます。物流ルートの設定から工場の組立計画、スケジューリングの最適化まで、量子アルゴリズムを実行することでこうした業界が飛躍的に効率化しつつあり、スケールメリットによるコスト削減も可能になります。
量子コンピューティングのメリットと用途
膨大な処理能力により、量子コンピューティングは次のような大きなメリットをもたらします。
· 高度: 量子コンピューティングは、多次元の空間を作成してデータセット間の重層的な関係に適応させることで、スーパーコンピューターでは対応できないタスクを処理できます。
· 包括的なモデリングオプション: 量子コンピューターは原子と同じ物理法則を利用しており、複雑な自然体系の分析が実行しやすくなります。
· 高速: 量子プロセッサーを拡張すれば、膨大な量のデータに対応できます。
· 省電力: 量子コンピューティングシステムは、データ処理に超電導体を使用することで消費電力を大幅に削減します。
· 低リスク/コスト: 複数のシミュレーションを一度に実行できる量子コンピューティングがラボベースの研究に取って代わる可能性があります。それによって物理ラボで実験を行う際のリスクが減り、コストも大幅に削減できます。
· 部分的なトレーニング: 量子コンピューティングでは特別なプログラミング言語を使用しないため、特殊なプログラミングスキルは不要です。
量子コンピューティングは、以下をはじめとするさまざまなアプリケーションで使用されています。
· 予測: 量子コンピューティングは膨大なデータセットを極めて効率的に処理できるため、天気予報と財務予測の精度を高めてよりタイムリーに行えます。
· 暗号化: 量子プロセッサーは、スーパーコンピューターで作成されたものでも、暗号化プロトコルのクラッキングをすばやく処理できます、このプロトコルを使用するケースが増えており、仮想的にハッキングを防ぐ低レベルのプロトコルを置き換えつつあります。
· 自動車: 量子アルゴリズムはパターン識別がベースとなっており、トラフィックの流れを分析してバックアップが予測されるときにトラフィックをリダイレクトする際に非常に役立ちます。また、量子システムで運転行動とトラフィックのパターンを組み合わせると、自動運転車のプログラミングの信頼性が大幅に向上します。
· 生物学/医療: 大規模な行動分析から細胞のマイクロスケール実験に至るまで、無数の医学研究で量子プロセッサーが活用されています。遺伝子研究では、アミノ酸の長い配列を分析して病気の原因となる配列を突き止めたり、タンパク質の折り畳みによって性質が変わる仕組みを明らかにしたりします。
HPEと量子コンピューティング
組織は膨大な量のデータをわずかな電力で迅速に理解する必要に迫られており、量子コンピューティングへの関心も高まっています。問題解決に何台汎用コンピューターを投入しても、将来のコンピューティングの課題に対応できないからです。ただし、量子コンピューティングでビッグデータ、AI、および分析の問題を解決したいと考えている人は、何年も待つことになります。
HPEはこうした課題を解決するために、特定のワークロードを対象とした新しい形のコンピューティングの開発に取り組んでおり、それをアクセラレータと呼んでいます。この特殊なコンピュートエンジン (アクセラレータ) は、特定のコンピュートのタスクを桁違いのスピードで解決でき、省エネルギーも実現します。HPEは、お客様のAI分析能力を強化して企業が実際に直面している課題を解決できる、各種のアクセラレータを提供しています。
次の段階の課題については、量子コンピューティングは特定の種類の問題を解決できる大きな可能性を秘めていると考えていますが、こうした問題はほとんどの企業に影響しません。量子コンピューティングは、材料工学や創薬など、特に基礎量子システムをモデリングする、重要な分野の一定範囲の問題については非常に強力な解決手法となる見込みです。新素材や新薬を開発する分子モデリングなどの特定の用途では、量子コンピューターにより、今日の最も高性能なスーパーコンピューターでも対応できないタスクを実行できます。
その目標に向け、HPEは革新的なスタートアップであるIonQに投資しました。同社は新しい量子コンピューティング市場をリードする企業に急成長しています。HPEがIonQに投資したのは、同社が急成長していることに加え、超電導接合ではなく、捕獲されたイオンを使用して量子を作成するという同社のアプローチが、真に有益なシステムを構築するうえで最も有望な方法であると考えているからです。また将来、HPEのお客様が他のコンピュートタイプと同じように簡単に量子アクセラレータを選択して、量子コンピューティングをサービスとして利用できるようになると考えています。量子が数多くの柔軟なコンピュートオプションの1つにすぎない世界で、HPEが主導的な役割を果たすことを目指しています。HPEは、IonQのサポートによってその目標を達成できると確信しています。