読了所要時間: 6分 | 公開日: 2025年10月28日

Open RAN
Open RANとは

オープン無線アクセスネットワーク (Open RAN) は、現在進行しているモバイルネットワークアーキテクチャーの変革であり、サービスプロバイダーがさまざまなベンダーの独自仕様ではないサブコンポーネントを使用できるようにするものです。Open RANは、通信サプライヤーが関連機器の製造時に準拠できる、一連の業界標準によって可能になります。Open RANにより、プログラム可能、インテリジェント、分散型、仮想化、相互運用可能な機能が実現します。具体的には、独自仕様のリモート無線ヘッド (RRH) とベースバンドユニット (BBU) が無線ユニット (RU)、分散ユニット (DU)、集中ユニット (CU) に分割され、その多くは仮想化またはコンテナ化が可能です。これらの新しいコンポーネント間のインターフェイスはオープンで相互運用が可能です。 

O-RAN Allianceでは、すべてのOpen RANコンポーネントとそれらの間のインターフェイスの仕様を定義しています。2018年に設立されたO-RAN Allianceは、世界中の通信分野で活動するモバイルネットワークオペレーター、メーカー、ベンダー、研究機関、学術機関で構成された、進歩的なグローバルコミュニティです。Open RANに関連して、Open-RAN、ORAN、oran、O-RANなどの類義語も使用されています。通常、Open RANが、複数のサプライヤーから提供されるネットワークコンポーネント間のオープンインターフェイスを備えた分散型無線アクセスネットワークを指すのに対し、O-RANは、O-RAN Allianceとその取り組みを指します。

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Open RANアーキテクチャーのメリット。

Open RANによって解決されるサービスプロバイダーの問題

サービスプロバイダーがOpen RANを導入する主な目的は、ベンダーの多様性を高めてベンダーロックインを回避することです。ベンダーロックインは、サプライヤーの切り替えが簡単ではないために、サービスプロバイダーが機器とソフトウェアの供給を単一のベンダーに「ロックイン (固定)」される場合に発生します。サービスプロバイダーは、単一ベンダーソリューションから、より制御性と柔軟性に優れたオープンなマルチベンダーネットワークに移行したいと考えています。

O-RANを導入することで、プロバイダーは、完全にプログラム可能でインテリジェントなマルチベンダーRANに移行できるようになります。RAN Intelligent Controller (RIC) を使用すると、統合アプリケーションのRAN機能を制御および最適化できます。厳密に言うと、RICは、サービスプロバイダー、ベンダー、サードパーティのアプリケーションのオンボーディングを支援する、Open RANアーキテクチャーのソフトウェア デファインド コンポーネントです。これらのアプリケーションは 「アプリストア」で入手でき、サービスプロバイダーが大規模なRAN運用を自動化および最適化するのに役立ちます。アプリケーションでは、モバイルオペレーターの総所有コスト (TCO) を削減し、顧客のエクスペリエンス品質 (QoE) を向上させる、革新的なユースケースもサポートされています。

Open RAN RICアーキテクチャーでは、人工知能 (AI) および機械学習 (ML) テクノロジーも導入できます。これらのAI/ML機能によって、より迅速で革新的なサービスとTCOの削減が可能になります。

O-RAN Allianceがサポートするさまざまなワーキンググループ。

Open RANの仕組み

レガシーネットワークがOpen RANへとどのように進化していくのかを考えてみましょう。従来の非仮想化サイト (下図) には、物理的に同じ場所に配置されているリモート無線ヘッド (RRH) とベースバンドユニット (BBU) が含まれます。RRHは着信および発信の無線信号を処理し、BBUはアップリンクおよびダウンリンクのデータトラフィックのデジタル信号処理を支援します。BBUは、バックホールトランスポートネットワークを介してコアに接続します。

一部のサービスプロバイダーは、ネットワークを集中型RAN (C-RAN) と呼ばれる新しいトポロジに進化させました。ここでは、BBUは、データセンターなどの中央拠点にグループ化されます。集中型BBUは、フロントホールトランスポートネットワークを介してRRHに接続されます。集中型BBUは、電力と冷却に関連する運用コストを削減し、無線ネットワークの管理を簡素化します。これはクラウドを介さないBBUの物理的なプールです。

次の仮想化RAN (vRANまたはV-RANとも呼ばれる) では、BBU機能がクラウドに移動されて制御が強化され、アジリティと拡張性が向上します。

Open RANが登場するまで、BBUとRRH間のインターフェイスは独自仕様であり、BBUとRRHの両方を提供できるのは1つのベンダーだけでした。Open RANはこのアーキテクチャーを分解し、オープンなインターフェイスを導入しました。RRHとBBUの代わりに、機能は無線ユニット (RU)、分散ユニット (DU)、集中ユニット (CU) に分割され、それらの間のインターフェイスはオープンになっています。RU、DU、CUの機能も仮想化またはコンテナ化が可能です。新しいエレメントであるRICは、ネットワークにインテリジェンスを追加します。RICは基本的に、ベースステーション用のアプリストアです。サービスプロバイダーはRICを使用して、革新的なユースケースに対応するとともに、AI/MLテクノロジーによって大規模環境のRAN機能を強化するサードパーティのrApps/xAppsをオンボードできます。これにより、TCOが削減され、QoEが向上します。

O-RAN Allianceがサポートするさまざまなワーキンググループ。

HPE Juniper NetworkingによるOpen RANの実装

HPE Juniper Networkingは、さまざまな業界団体および標準化団体においてOpen RANを積極的に推進しており、O-RAN Allianceの10のワーキンググループのうち6つに協力しています。HPE Juniper Networkingは、O-RAN Slicing Task Groupの議長、Use Cases Task Groupの共同議長を務めており、複数のO-RAN仕様書の編集者および寄稿者でもあります。

また、HPE Juniper Networkingでは、ネットワーク全体にわたってO-RAN準拠の製品およびソリューションを提供しています。具体的には以下のとおりです。

オープンで相互運用可能なRIC Platform

HPE Juniper Networkingのオープンで相互運用可能なRIC platformにより、Open RANエコシステムのパートナーとの統合が容易になります。このRICは、HPE Juniper NetworkingとサードパーティのrApps/xApps両方のオンボーディングを支援します。サービスプロバイダーは、簡単に新しいビジネスモデルを実現してサービスエクスペリエンスをパーソナライズしながら、CapExとOpExを最適化できます。

エンドツーエンドのService Management and Orchestration

HPE Juniper NetworkingのService Management and Orchestration (SMO) は、RAN、トランスポート、コアネットワークにわたって、規定されたサービスレベルアグリーメント (SLA) をサポートするエンドツーエンド (E2E) のネットワークスライシングを提供します。このソリューションは、マルチクラウド、マルチドメイン、マルチテナントの展開モデルをサポートしており、O-RAN SMOの要件とインターフェイス、および3GPPのNetwork Slicing Management Functionsに準拠しています。

低レイテンシで信頼性の高いフロントホールトランスポートネットワーク

O-RAN Fronthaulでは、エンドツーエンドの低レイテンシ (約100~150マイクロ秒) と、数マイクロ秒の小さなジッターが求められます。JuniperのACX 7100ルーターは、優先順位付けされたeCPRIまたはPTPパケットに関するTime Sensitive Networking (TSN) Profile A、Class D timing、およびセグメントルーティングやEVPNなどのトランスポート機能をサポートしています。

コネクテッドセキュリティ

Open RANでは、CU、DU、RU、RIC、SMOなどの新しい機能と、それらの間のセキュリティ保護が必要なオープンインターフェイスが導入されています。また、RANの分散化においては、仮想化インフラストラクチャをセキュリティ上の脅威から保護する必要があります。HPE Juniper Networking Service Provider Securityは、脅威インテリジェンスをすべてのネットワーク接続ポイントに拡張することで、ユーザー、アプリケーション、インフラストラクチャを保護します。

オープンエコシステム

オープンネットワークでは、コスト効率が高く、オープンで、最適な組み合わせのインフラストラクチャを広範囲に展開するための共同イノベーションが必要となります。HPE Juniper Networkingは、楽天およびIntelと連携して、統合型ルーティングおよびOpen RANを単一のプラットフォームで提供し、プロバイダーのコストメリットと運用上のメリットを向上させています。HPE Juniper NetworkingとIntelは、RIC platformおよびアプリケーションでも連携し、カスタマー・エクスペリエンスをさらに向上させてROIを高めるとともに、Open RANエコシステムの迅速なイノベーションを推進しています。

Open RANについてよくあるご質問

Open RANとはどのような意味ですか。

Open RANは、open radio access network (オープン無線アクセスネットワーク) の略です。具体的には、Open RANは、現在進行しているモバイルネットワークアーキテクチャーの変革であり、サービスプロバイダーがさまざまなベンダーの独自仕様ではないサブコンポーネントを使用できるようにするものです。リモート無線ヘッド (RRH) やベースバンドユニット (BBU) などの特定の独自仕様のコンポーネントが、集中ユニット (CU)、分散ユニット (DU)、無線ユニット (RU) に分割されます。Open RANを使用すると、新しい分散型機能も仮想化またはコンテナ化が可能です。O-RAN Allianceは、これらのコンポーネント間のインターフェイスをオープンで相互運用可能にすることで、この取り組みをさらに進めています。

Open RANにはどのようなメリットがありますか。

Open RANは、サービスプロバイダーがベンダーロックインを回避しながらベンダーの多様性を高めるのに役立ちます。サービスプロバイダーは、機器とソフトウェアが単一のベンダーから提供される、無線アクセスネットワーク用の単一ベンダーソリューションを導入することは望んでいません。Open RANのアプローチなら、RAN Intelligent Controller (RIC) を使用して、完全にプログラム可能でインテリジェントなマルチベンダーRANに移行できるようになります。

RICとは何ですか。RICがOpen RANに必要な理由は何ですか。

RAN Intelligent Controller (RIC) は、RAN機能を制御および最適化する、Open RANアーキテクチャーのソフトウェア デファインドコンポーネントです。RICはOpen RAN分散化の重要な要素であり、無線アクセスネットワークにマルチベンダーの相互運用性、インテリジェンス、アジリティ、プログラマビリティをもたらします。これにより、モバイルオペレーターの総所有コスト (TCO) を削減して顧客のエクスペリエンス品質 (QoE) を向上させる革新的なユースケースをサポートしながら、大規模なRAN運用を自動化および最適化するサードパーティのアプリケーションをオンボードできるようになります。

HPE Juniper Networkingは、RICを使用してユーザーのOpen RANをどのように最適化しますか。

HPE Juniper NetworkingのRIC platformは、自動化、制御、インテリジェンス、保証に対するHPEのビジョンを無線アクセスネットワークにまで広げるものです。HPE Juniper NetworkingはRANニュートラルなベンダーとして、HPE Juniper Networkingおよびサードパーティの強力なrApps/xAppsを、Open RANの「アプリストア」を通じて利用できるようにする、オープンなRIC platformを構築するアプローチをとっています。オペレーターは、新しいビジネスモデルを構築してサービスエクスペリエンスをパーソナライズしながらCapExとOpExを最適化できるようになります。HPE Juniper Networkingのソリューションは、ノースバウンド側とサウスバウンド側にオープンなインターフェイスを備えた設計となっており、Open RANエコシステムのパートナーソリューションと簡単に統合できます。

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