読了所要時間: 6分14秒 | 公開日: 2025年10月1日

クラウドマイクロサービス
クラウドマイクロサービスとは

クラウドマイクロサービスは、ソフトウェアアプリケーションまたは機能を、さまざまなアプリケーションサービスを実行する独立して展開および管理可能なモジュールの分散セットとして開発するアーキテクチャー手法です。各サービスには、明確に定義されたアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) を介して他のサービスと通信する独自の機能があります。このソフトウェア開発手法では、従来のモノリシックな手法に比べて、アプリケーションの開発時間が短縮され、スケーラビリティが向上します。マイクロサービスは分散型アプリケーションコンポーネントとして構築されるため、サービスが独立して動作しながらも、全体のアプリケーションパフォーマンスのニーズに合わせて展開、更新、拡張できます。

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クラウドマイクロサービスの説明

従来、ソフトウェアはモノリシックなアーキテクチャーを使用して作成されていましたが、ソフトウェアの複雑さが飛躍的に増大するにつれて、コードベースを拡張して対応することが困難になりました。インストールと更新には計画が必要で、ダウンタイムも頻繁に発生し、いくつかカスタム設定を選択する以外は、個々のコンポーネントを選択する機会はまったくと言っていいほどありませんでした。

マイクロサービスソリューションのクラウドベースのスケーラビリティとは、どのサービスでも実行インスタンスの数が問題にならないことを意味します。また、マイクロサービスアーキテクチャーでは開発時間が短縮され、レガシーアプリケーションよりも迅速に機能やイノベーションを市場に展開できるようになります。たとえば、更新は毎週行われる場合がありますが、過去の定期的なリリースサイクルとは異なり、エンドユーザーには気づかれません。

クラウドマイクロサービスによって解決される問題

アプリケーションがより大規模で複雑になるにつれて、従来のモノリシックな手法でエンタープライズアプリケーションを構築することが問題を引き起こし、非効率になっています。時間と共に機能が追加されて相互依存性が生じ、それによってソフトウェアが大幅に複雑化し、開発およびテストサイクルの長期化とソフトウェアバグの増加につながっています。対照的に、最新のクラウド上に構築されたアプリケーションでは、複雑なアプリケーションがマイクロサービスに分割され、各マイクロサービスは小規模な専任の開発チームによって設計および管理されます。

マイクロサービスは、そのサービス専用に選択された最適なテクノロジースタックを使用して、他のサービスから切り離して設計されます。機能の追加や削除がしやすくなり、バグはほぼリアルタイムで修正され、更新はアプリケーション全体を中断することなく単独で展開されます。さらに、マイクロサービスアーキテクチャーでは、もともとアプリケーションに耐障害性があるため、1つのサービスの障害が他のサービスに影響を与えることはありません。

従来のモノリシック構造と比較して、マイクロサービスアーキテクチャーには次のようなメリットがあります。

  • 柔軟性: サービスは他のサービスから切り離して設計されるため、問題や複雑さが軽減されます。
  • スケーラビリティ: 高価なハードウェアを必要とせず、必要に応じて柔軟にサービスをスケールアップまたはスケールダウンできます。
  • 耐障害性とプログラマビリティ: 1つのサービスの障害が他のサービスに影響を与えることはありません。100%のAPIプログラマビリティにより、サービス間の通信や障害対応が極めてスムーズに行えます。
  • 効率: マイクロサービスは、そのサービス専用に選択された最適なテクノロジースタックを使用して、他のサービスから切り離して設計されます。
  • アジリティと導入の容易さ: 機能の追加とアップグレードが簡単で、バグ修正とパッチはネットワークを中断することなくほぼリアルタイムで適用されます。
マイクロサービスクラウドアーキテクチャーの図。

クラウドマイクロサービスの機能

マイクロサービスアーキテクチャーでは、小規模で疎結合され、単独で展開可能なサービスの集合としてアプリケーションを構築します。各サービスは特定のビジネス機能を実行するように設計されており、明確に定義されたAPIを通じて他のサービスと通信できます。

マイクロサービスの仕組みの概要は次のとおりです。

  • サービスの分離
    アプリケーションの機能は、ビジネス機能に基づいて、より小規模で管理可能なサービスに分割されます。各サービスは特定のタスクに重点を置いており、個別に開発、展開、拡張できます。
  • 独立した開発と展開
    各マイクロサービスは、通常は異なるテクノロジーとプログラミング言語を使用して、別のエンティティとして開発および展開されます。これにより、開発チームは特定のサービスに最適なツールとフレームワークを選択して、自律的に作業できます。
  • APIベースの通信
    マイクロサービスは、HTTP/REST、メッセージキュー、イベント駆動型メカニズムなどの軽量プロトコルを使用して、APIを介して他のマイクロサービスと通信します。サービスは、他のサービスとの間でデータを送受信できるようにする、明確に定義されたAPIを公開します。
  • 疎結合
    マイクロサービスは疎結合であるため、独立しており、他のサービスに影響を与えることなく発展および更新できます。1つのサービスに変更を加えたときに、アプリケーション全体を変更したり再展開したりする必要はありません。
  • 個別に拡張可能
    各マイクロサービスは、特定のニーズに基づいて個別に拡張できます。需要の高いサービスはスケールアップし、利用率の低いサービスは小規模にとどめておくことで、リソース使用率を最適化できます。
  • データ管理
    マイクロサービスは独自のデータベースを保有できるため、各サービスは特定の要件に最も適したデータベーステクノロジーを選択できます。サービス間のデータの一貫性と同期は、イベントソーシングや分散トランザクションなどの手法を通じて管理できます。
  • 耐障害性と障害切り分け
    マイクロサービスは、耐障害性のあるフォールトトレラントな設計となっています。1つのサービスで障害や問題が発生しても、アプリケーション全体が停止することはありません。サービスは、障害を適切に処理し、独立して運用を継続できます。
  • 開発運用 (DevOps) と継続的デリバリ
    マイクロサービスはDevOps手法によく合致しており、頻繁な展開と継続的デリバリが可能になります。各サービスは独立して展開されるため、アプリケーション全体を中断することなく、更新や新機能を迅速にリリースできます。
  • 監視と管理
    マイクロサービスの監視と管理は、分散型というアーキテクチャーの性質により、困難になる可能性があります。ツールとプラットフォームを使用して各サービスの稼働状態、パフォーマンス、可用性を監視し、プロアクティブなメンテナンスとトラブルシューティングを実現します。

組織がマイクロサービスアーキテクチャーを導入すると、スケーラビリティ、柔軟性、障害切り分けの向上、新機能の市場投入までの時間短縮などのメリットが得られます。ただし、このアーキテクチャーでは、サービス間通信、データの一貫性、分散型システムの管理に伴う複雑さも生じるため、慎重に対処して管理する必要があります。

Juniper Mistマイクロサービスクラウドアーキテクチャーの図。

HPE Networkingによる実装

HPE Networking Mistクラウドは、マイクロサービスを備えた最新のクラウドアーキテクチャーを活用することで、これまでにない柔軟な拡張性とサービス速度を運用中断なしに実現します。

すべてのクラウドサービスが、最適化されたデジタルエクスペリエンスを提供する設計となっているわけではありません。企業がアジリティを実現するためにモビリティとクラウドに注目しているように、HPEでは、ビジネスのアジリティと拡張性を実現するためにマイクロサービスを中心としたMistクラウドを設計しました。Mistクラウドは、常時稼働のクライアントツークラウドのネットワーク運用管理に対する革新的なアプローチです。GenAI、エージェンティックAI、機械学習、データサイエンスに最新のマイクロサービステクノロジーを組み合わせ、ユーザーエクスペリエンスを最適化するスマートでスケーラブルなソリューションを提供します。

Juniper Mistクラウドアーキテクチャーマイクロサービスの主要コンポーネントは次のとおりです。

  • マイクロサービス
    Mistクラウドは、ネットワークの管理と運用にアジリティと拡張性をもたらすマイクロサービスアーキテクチャーを基盤として構築されています。オンデマンドのネットワークのアップグレードとパッチ適用が、数か月ではなく数分で完了します。
  • AI、機械学習、データサイエンス
    Mistクラウドは、ユーザー、デバイス、アプリケーションの動作の変化にリアルタイムで適応し、予測可能で信頼性の高いネットワーク運用を実現します。ネットワークの傾向をリアルタイムで監視し、サービスレベルが低下したときにアラートを送信し、トラブルシューティングの推奨事項を提供し、承認された場合は自律的な自動アクションを実行します。 
  • 最新のクラウドエレメント
    Webスケールにより、Mistクラウドでは、接続されているすべてのネットワークデバイスからリアルタイムのメタデータを収集、分析、保存できます。コンテナがポータビリティとフォールトトレランスを確保します。Kafka、Storm、Sparkなどのエレメントが速度、拡張性、耐障害性を提供し、グローバルクラウドインスタンスがマクロレベルの傾向に関する有益な情報を提供します。

クラウドマイクロサービスについてよくあるご質問

クラウドマイクロサービスの導入を加速している要因は何ですか。

マイクロサービスの導入を後押しする主な要因としては、ITモダナイゼーション、デジタルトランスフォーメーション、成長と拡大があります。

クラウドマイクロサービスの導入を加速しているのは、スケーラビリティ、アジリティ、障害切り分け、コスト効率、柔軟性、合理化されたDevOpsといった特徴です。クラウドマイクロサービスは、クラウドプラットフォームを活用して、リソースの最適化、市場投入までの時間の短縮、耐障害性、テクノロジーの多様性を実現します。マイクロサービスは個別の拡張と開発を可能にし、クラウドサービスはインフラストラクチャ、自動化、およびサービス管理機能を提供します。これらを組み合わせることで、組織は需要の変化に対応し、コストを削減し、クラウドでアプリケーションを効率的に提供できるようになります。

クラウドマイクロサービスの主な機能は何ですか。

マイクロサービスを使用すると、今日のビジネスニーズと同じ速度で革新的なソフトウェア開発が可能になります。クラウドマイクロサービスの主な機能は次のとおりです。

  • スケーラビリティ: 需要に応じてサービスを個別に拡張することで、リソース使用率を最適化します。
  • アジリティ: サービスを個別に開発、展開、更新して、市場投入までの時間を短縮します。
  • 障害切り分け: 1つのサービスで障害が発生しても他のサービスには影響が及ばないため、システム全体の耐障害性が向上します。
  • コスト効率: きめ細かいリソース割り当てにより、オーバープロビジョニングを最小限に抑えてインフラストラクチャコストを削減します。
  • 柔軟性: サービスごとに異なるテクノロジーとフレームワークを選択して、最適なソリューションを活用します。
  • インフラストラクチャとサービスの管理: クラウドサービスを利用して自動スケーリング、負荷分散、サービス検出、コンテナオーケストレーションを実現します。
  • 耐障害性: クラウドプラットフォームに組み込まれたメカニズムを活用して、フォールトトレランスと高可用性を実現します。
  • スピードと効率: 迅速に新機能を提供し、市場ニーズに対応し、リソース使用率を最適化します。
  • テクノロジーの多様性: 単一のアプリケーションアーキテクチャー内で多様なツールとプログラミング言語を活用します。
マイクロサービスクラウドベースのアプリケーションとモノリシックなソフトウェアアプリケーションにはどのような違いがありますか。

モノリシックなアプリケーションが単一の統合型ユニットとして構築されるのに対し、マイクロサービスアプリケーションは、個別に開発、展開、拡張できる疎結合のサービスで構成されます。これにより、スケーラビリティ、アジリティ、障害切り分けが向上します。

マイクロサービスでは、需要に応じて個々のサービスを拡張し、リソース使用率を最適化して、市場投入までの時間を短縮できます。さらに、マイクロサービスではテクノロジーを選択できるため、チームが各サービスに最適なツールを使用できます。全体として、クラウドのマイクロサービスアーキテクチャーは、モノリシックなアプリケーションよりも柔軟性、耐障害性、適応性に優れています。

クラウド環境でマイクロサービスを導入する際の主な課題は何ですか。

クラウドマイクロサービスアーキテクチャーでは、分散型クラウドアプリケーションシステムでサービス間通信とデータの一貫性を慎重に管理する必要があります。サービスの数が増えると、サービスの監視と管理がさらに複雑になる可能性があります。もう1つの課題が、複数のサービスにわたって適切なセキュリティとアクセス制御を確保することです。

クラウドマイクロサービスの今後の動向はどうなりますか。

予測されるクラウドマイクロサービスの動向は次のとおりです。

  • マイクロサービスの人気の高まりと導入拡大は今後も続くと予想されます。
  • クラウドネイティブテクノロジーは継続的に開発されており、マイクロサービスアプリケーションをより迅速かつ確実に開発および展開することが容易になります。
  • マイクロサービスのエコシステムは急速に拡大しており、開発者がイノベーションを推進するために使用できる新しいツール、フレームワーク、サービスも増えています。

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