南関東最速!
どこよりも遅く、限りなく個人的な
Red Hat Summitセッションレポート'14 San Francisco
一旦収まったかに見えた食品偽装が、今度は IT業界にも波及してきたみたいです。「このサーバはレイテンシーも少なく非常に高速、むっQEMU製... この CPUを作ったのは誰だぁ~!!」とか云ったとか云わないとか...
4月14~17日に掛けてサンフランシスコで開催された Red Hat Summit 2014に参加してきましたので、今更ながら遅報させて頂きます。
最初にお断りしておりますが、Red Hat Summitでは同時に複数のセッションやトレーニングセッションが開催される形式です。セッションを大きく分類すると、Red Hat Enterprise Linux, Red Hat Enterprise Virtualization, Red Hat Storage Server, OpenStack, Cloud, Jbossとその他の開発やビジネス展開等に分かれております。そのセッション数は 190本。筆者の仕事柄 Red Hat Enterprise Linuxを中心にセッションの受講を行いましたので、OpenStackや JBossについての情報は全くありませんのでご承知おきくださいます様お願い致します。
会場はサンフランシスコと云えば、ここしかないと云ってもいい Moscone Centerです。かつて LinuxWorld Conference and Expoと云うイベントが東海岸と西海岸の年 2回開催されており、西海岸はここで開催されておりました。毎年 Red Hat Summitは 6月に Bostonで行われきましたが、今回は初の西海岸で 2ヶ月繰上げての開催です。昨年の参加者は 3,500名でしたが、今年は 4,700名と参加者が大幅に増えています。西海岸だからなのか、昨年迄は少しは見かけた背広姿の参加者を全く見かけませんでした。
今回も Red Hat Summit用の Android/iPhone用のスケジュールアプリが提供されていました。興味のあるキーノートやセッションを登録する事で自分のスケジュールを作成する事ができたり、ソーシャルとの連携、写真の投稿、サーベイ等も可能でした。今年は紙でスケジュール表等が配られる事もなく、また毎日発行されていた Red Hat Newsと云う新聞形式のペーパーも廃止されており、非常にエコな印象を受けました。
レポートの本題に入る前に。今回の Red Hat Summitを一言で表すと、「弩派手!」になるのではないでしょうか。
キーノート
初日最初のキーノートは Red Hat社 CEOの Jim Whitehurst氏が登壇しました。オープンソースがイノベーションを左右するものになっていると訴えていました。強力に生まれ変わる事になる Red Hat Enterprise Linuxの次期メジャーバージョン 7を中心に Red Hat社の製品が強力なラインナップを構成し、パートナー支援の元に一緒に成長を続けていく事になるとの事です。また、コンテナ技術の一形態と云える Dockerの採用について説明がありました。昨年の Red Hat Summitでのコンテナ技術の注目度は勿論高かったのですが、ビジネスに結びつくにはもう少し時間が掛かりそうな印象を(個人的に)受けました。そして、この Dockerを強力に展開していくためにRed Hat Enterprise Linux Atomic Hostと云う製品がこの場で発表されました。これは Dockerを稼動させるための軽量なホスト環境です。Dockerを安全に、低コストで、簡単に利用できる様にしたもので、Dockerだけでは実現できない部分を強化するための仕組みらしいです。昨年迄のコンテナは `KVMよりも軽い感じのプライベートクラウド用`と云う感じで、且つ技術よりのセッションしかなかったのに今年一気にビジネスレベルで花開きそうな勢いです。ただ、この Red Hat Enterprise Linux Atomic Hostですが、その名称からして Red Hat Enterprise Linuxのアドオン製品っぽい感じを受けたのですが実際には別製品としてリリースされる模様です。
二日目のキーノートには Red Hat社製品&テクノロジ担当上級プレジデント Paul Cormier氏が登壇しました。技術観点からの Red Hat Enterprise Linux 7についての話が盛りだくさんかと思ってましたが、意外にもビジネス観点から顧客の必要なものを提案していきましょうと云う流れの中に Red Hat社の製品ポートフォリオをはめ込んでいく形式での説明でした。
顧客が求めているのはエンタープライズクラスのサービスである。それを実現するにはアプリケーションのポータビリティとその柔軟性が必要となる。VMwareの CEOが語った THE TRADITIONAL OPERATING SYSTEM HAS ALL BUT DISAPPEARED(従来型の OSは消えてしまった)と云う話を引き合いに出し、それは間違っているんだ Linuxは逆に存在意義が従来以上に高まっていると語りました。
THE APPLICATION IS KING. THE OS IS THE HEARTBEAT.と云うのは、顧客が求めているのはアプリケーションが提供する業務支援であり、そのアプリケーションを柔軟に実行するために必要なのが Dockerであり、Linuxがその開発環境を担っていく。そして、Red Hatは ISVパートナーが開発した Dockerベースのアプリケーションパッケージに対し認証を行うとの事です。これにより ISVが Docker形式でのアプリの配布を安全に行う環境を Red Hatがエコシステムとして構築していく模様です。Red Hat Enterprise Linux Atomic Hostに対しては `light weight`と云う説明もありました(別セッションで云っていたのかもしれません)。ここで云う light weightは Dockerの稼動環境としての軽量と云う意味は Ubuntuや CoreOS(ChromeOSベース... #rpmや #yumの様なパッケージマネージャが存在せず、アプリは #docker pullでインストする Docker専用ディストリ)に対抗して、Dockerの稼動に特化した価格的に安価なもので攻めていくと云うダブルミーニングではないかと思われます(勝手な想像です)。
Red Hat社以外にもスポンサー各社が登壇しました。HPEからは CIOの Steve Bandrowczakが The New Style of ITとして市場動向を中心としたマーケットトレンドの説明とハードウェアベンダーの役割の説明を行いました。昨年のハードウェアを中心に添えた、いかにもハードウェアベンダーのプレゼンとは異なった趣きのものでした、話を聞いていた方からも HPEの話はハードウェアベンダーとしては意外なもので面白かったと云って貰えました。
他のベンダーも勿論登壇されていました。Dellは Vice President and Chief Technical Evangelistの Sam Greenblatt氏が登壇されていました。Dellの Cloud戦略としては Red Hat社とガッチリ手を組んで、つまり自社独自路線ではなく Red Hat社の OpenShiftを利用した PaaS環境の構築を行っていく事を説明していました。これは他のハードウェアベンダーとは一線を画すもので、Dellらしい興味深い戦略です。
Ciscoの Chief Technology and Strategy Officeの Padmasre Warrior氏(名前が相当かっこいいです)が、UCSのプラットフォーム戦略について。IBMの General Manager, Cloud and Smarter Infrastructureの Deepak Advani氏が Open Cloudsについて、Intelの Corporate Vice President and General Managerの Doug Fisher氏が、将来のデータ爆発等を用いた IT処理能力の拡大についての説明を行っていました。
セッション
Red Hat Summitの主目的であるセッションの多くは、現在Red Hat Summitサイトにて PDF形式で提供されています(注: 下記の urlはドキュメントの改定により変更されている場合があります)。Red Hat Summitに参加していなくてもアクセス可能です(Red Hat社太っ腹!!)。本章は実際にセッションに参加、もしくは後日ドキュメントを読んでみての概略等をまとめたものです。
セッションの人気度ですが、予想通り Red Hat Enterprise Linux 7を中心としたもので、中でも systemd関連のセッションが一番人気でした。Dockerを中心としたコンテナ関連がその次に位置していた感じです。
Red Hat Storage Server performance
40Gb Infiniband接続、LSI Logic社の Nytro SSD(Fusion IOみたいなやつ)をキャッシュ構成にし、libgfapi経由と FUSE経由での性能測定が示されています。XFS上での LVM Thin-Provisioningによるスナップショット利用時の bio-sorting(どこで設定する話なのか分かりませんでした)での書込みによるフラグメンテーション回避の例が示されています。Virtual Red Hat Storage Serverとして KVM上での構成例もあります。今誰もが知りたい、話題の分散ストレージ環境 Cephと Glusterの対比も示されており、Cephがランダム I/O時に Glusterよりも高い性能を発揮するのは Gluster利用時に推奨される RAID-6がボトルネックになっているとの事でした。
Red Hat Storage Server Administration Deep Dive
Hadoop利用時に HDFSの代わりに Red Hat Storageを利用する際、シームレスに変更できる模様です(具体的にはよく分かりませんでした)。データの増大に対してスケールするとの事ですが、現状 64ノードまでですので HDFSの方がスケールすると思われますので、将来の話を含んでいるのかも知れません。メリットとして HDFSの Nameノードが SPoF(single point of failure: 単一障害点)になり得る事が記載されていますが、今の HDFSでしたら ZooKeeperが使えますので、過去の時点での話しをしているのかも知れないかとも思われます。正直、本資料よりも一つ前の `Red Hat Storage Server performance`の方が Deep Diveっぽい内容かと思われます。
Applying Tuning Profiles with Tuned
Red Hat Enterprise Linux 7になり tunedを利用して各種の設定を行う様になります。ストレージに対しての barrier設定と Wake on LANでの設定方法等が示されています。ただ、/etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eno*は生きていますので、Wake on LANはこちらに設定しても利く筈かと思いますが、tuned経由にする事でどんなメリットが生まれるのかは分かりませんでした。tunedでまとめて設定する事でデフォルトから変更した内容が把握しやすいと云うメリットがあるかとは思われます。
Next-generation High Availability Linux Clutering
Red Hat Enterprise Linux 7になり HAクラスター構成が corosync+Pacemaker+pcsに大きく変わっています。Pacemakerの内部構成から実際の設定手順迄が記されています。WEBブラウザアクセス利用時のオレオレ証明書経由でのアクセス方法等もステップ毎にスクリーンショットを採っている非常に親切な資料です。
RHEL Migrations and Upgrades
従来の Red Hat Enterprise Linuxのメジャーアップグレード(in-place upgrade)をする際、既存バージョンからのアップグレードは正式サポートしないのでスクラッチな新規インストールがひつようでしたが、Red Hat Enterprise Linux 7ではアップデート用の専用ツールを開発してきています。また、今回はアップグレードのための本セッションまで設けられていますし、別のトレーニング Lab.でもアップグレードの体験学習ができる様にしている力の入れようでした。プレゼンターが云うには 「この専用ツールで事前にアップグレードが可能と判断されれば、バックアップなんか不要... なぐらい鉄板だぜ!!」みたいなノリでしたので、相当ツールに自身があるのかと思われます。推奨手順としてはフルバックアップをしてから、#lvcreateでのスナップショットを取って、失敗しても rescueモードでスナップショットを戻せばフルリストアをする事は基本発生しないよ、との事でした。新規インストールとは異なり、Red Hat Enterprise Linux 7の目玉機能の一つでもある XFSを /bootや /に使う事は当然できませんので、Ext4のままでいい場合にのみ利用可能なアップグレード方法となります。ちなみに、新しいインストーラではパッケージグループ内の個別パッケージの選択が出来なくなっています。本セッションで記憶に残ったフレーズとして「test test test, fix fix fix!」が思い起こされます。
Red Hat Enterprise Linux Roadmap
本セッションは昨年のものと大きくは変わっていません。但し、Containerの扱いがあきらかに大きくなっていました。APP ENABLINGとして Red Hat Enterprise Linuxを APP OPTIMIZEDとして Red Hat Enterprise Linux Atomic Hostがプラットフォームになるとの事です。今回 Red Hat Enterprise Linux 6上の KVMゲストが 7上の KVMに live migration可能な事が示されました(逆が可能なのかは説明がありませんでした)。これで既存の環境からの移行が非常にやりやすくなると思われます。昨年ちらっと話を聞いたインストール時にシステム構成をチェックしてそのハードウェアにあわせてチューニングを施すと云うのが tunedである事が理解できました。tuned用データを採取するのは powertopツールらしいのですが、powertop自体は Red Hat Enterprise Linux 7 RC-3のデフォルトパッケージグループである minimumには入っていませんので、インストール時にのみ自動でプロファイルが作成される仕組みと思われます。Fedoraでおなじみの Gnome Boxesもサポートされます。これって Gnome3 Shell上の動作に合わせているのか Classicモードだと終了ボタンが旨く押せない感じでした(私の環境だけかも知れませんが、そもそも全画面表示でタスクバーから終了するのが基本な感じです)。あとちょっと驚きなのが Google Chromeのベースとなった Chromiumが Red Hat Enterprise Linux 7に将来的に搭載されるとの事でした。がっかりなのが、btrfsは Red Hat Enterprise Linux 7のイニシャルリリースである 7.0では正式サポートではなく Technology Preview扱いになるとの事です。期待したロールバック機能は LVM Thin-provisioningを snapperからすればいいとは云え snapperが CLIのみしか提供されない感じなのと snapper用の plug-inが yum向けに用意されていないのは... 今後に期待です(SUSE系は GUIツールありますし、#zypperに snapper用 plug-inも用意されています)。Container自体は RC版では Fully Supportedとの事で、その説明には Docker CLIの記載もありました... ただ、Red Hat Enterprise Linux 7が RC-3な現在でも docker-ioは EPELレポジトリ上にしかあがっていないので、本当にギリギリまで開発が進められている模様です。Fedoraサイトでは Docker v1.0の話もでてきますので UIDを Containerと Host側で分離させる user namespaceがサポートされる形で出てくるのかもしれませんが、資料には `User Namespace - in later releases`との事で途中でバージョンがあがるのかもしれません。LVM/DM-cacheの記載はありますが、bcacheの記載がなくなってしまいました。個人的には bcacheに期待していたのですが無いことになってしまったのでしょうかね? あと、昨年は結構注目度が高かったと感じた Open vSwitchのプレゼンスが低下していた気がします。冒頭でプレゼンターが Red Hat Enterprise Linux 7のリリースが `real soon now`と云う事で非常に大喜びしていたのが印象的でした。ちなみに皆が気にしている(していない)、/etc/redhat-releaseの中身は `Red Hat Enterprise Server release 7.0 (Maipo)`です。
Maximizing RAS with RHEL 7 beta, DKU & Other Best Practices
最初の 60分程度は rsyslogdの設定をしろ、kdumpは有用だ、device mapperで二重化できるとかのどうでもいい話で別のセッションに移動したかったのですが、最後の 15分は恐らく Red Hat Summitで唯一細かい Dynamic kernel patchの話が聞けました。本機能は昨年には全く影も形もなかったもので、Oracle Linuxの ksplice対抗になるもので、kpatchをベースとしています。ちなみに SUSEは kGraftベースです。今のところどの方式も upstream kernelにマージされていませんが、シンプルさで云えば kpatch > kGraft >> kspliceだとの事です。この機能も Red Hat Enterprise Linux 7のイニシャルリリースでは Tech. Preview扱いとの事ですが、この機能を目当てに Red Hat Enterprise Linux 6からのアップグレードするユーザもいるかと思われます。少なくともカタログスペック的には商用 UNIXのダウンタイムを逆転するのではないでしょうかね。
New networking features & tools for Red Hat Enterprise Linux 7 beta
昨年はあまり細かな説明がなかった teamドライバの説明がありました。この機能は従来の bondingドライバを高機能にしたものとなります。bondingとは異なり殆どの部分が userspaceで稼動するのですが、現時点でも性能は bondingと同等か多少いい値がでているとの事です。管理者が従来の Red Hat Enterprise Linux 6で最初に行うのは恐らく #chkconfig NetworkManager offではないでしょうか。従来の NetworkManagerはネットワーク機能の全てが使える訳ではなかったため /etc/sysconfig/network-scritps/ifcfg-ethXを直接操作していました。プレゼンターはこの行為、即ち NetworkManagerを停止するのはやめておけ! どうしても停止したくても考え直せ!と云うぐらいの進化を遂げたと力説していました。GUIベースのものは見た目はおおきく変わっていませんが、ネットワーク関連の操作が全て可能になり、CLIでも #nmcliと #nmtuiでの操作が可能なので今後は NetworkManagerを使う様にと説明していました。あと、使いやすそうな cursesベースの IP traffic monitor(#iptraf-ng)が導入されていました。ちなみに、 RC-3のデフォルトパッケージグループである minimumだと、#ifconfigが導入されませんので一部の老人はかなり焦るかと思います。無いものは無いままにと云う達観している方は、#ifconfig eth0 1.2.3.4 netmask 255.255.255.0; ifup eth0とかの惰性でやっていたコマンドの代わりに #nmcli connection add type ethernet ifname eno1 autoconnect yes ipv4 1.2.3.4 gw1 1.2.3.1 ; nmcli device connect eno1とかが必要になるみたいです。
Red Hat Enterprise Linux 7 beta & Microsoft Windows
Red Hat Enterprise Linux 7では Microsoftの Active Directoryに直接に接続する事ができる様になっています。具体的な設定例が記載されています。
Portable, lightweight, & interoperable Docker containers across Red Hat solutions
Containerの CPU, memory, network, disk I/Oのオーバーヘッドはほぼ無いに等しいとの事です。ここで初めて知ったのですが、Docker = AUFS(another Union filesystem)だと思っていたのですが、Red Hat Enterprise Linux 7には AUFS patchは適用されておらず、AUFSの代わりに LVM Thin-provisioning(どうも LVMなしでも使えるみたいです)を使ったスナップショットでファイルシステムの世代管理を行うとの事でした。ちょっと気になったのが /var/lib/dockerは btrfs(7.0では Tech. Preview扱い)でなければならないとの記載があるのですが、これは btrfs必須と云う意味ではなくて btrfsを使う場合には少なくともここだけは btrfsにしろ、って事なのでしょうかね? AUFS, CoW, Snapshotの 3形態を利用した際の長所と短所の表があるのが助かります!! このセッションでは Limit root accessとの事でしたので user namespaceの分離ができていない Docker v0.9を意味している話かと思われます。
Tuning Red Hat Enterprise Linux for Databases
データベースは門外漢ですが、細かなチューニング指南がありますので役立ちそうな内容でした。
Application-centric packaging with Docker & Linux containers
ISVベンダーに対する Dockerイメージの認定に関する説明がされています。別セッションでの説明で Dockerは Image-based Containerなので、Host OSとは別の Linuxを稼動させる事が可能との事ですけど、#docker run -i -t centos /bin/bashして /etc/redhat-releaseを見ると確かに CentOSなのですが、#uname -rすると kernel 3.10です。Docker内で稼動させるアプリが kernelに特化して動きが変わる部分がある場合にはどうするのでしょうかね。そこが Ecoシステムとして認定等して稼動確認していくと云う事になるのでしょうかね。ちなみに pullした centosには /bootはありませんので、よしなに。
Red Hat Enterprise 7 Beta File Systems
Red Hat Enterprise Linux 7では従来の LVMスナップショットではなく LVM Thin-provisioningでのスナップショットに切り替わる事の説明がありました。ストレージ容量がかなり効率的に使える様になり実用的になっています。ハードウェアストレージでのスナップショット機能... 危うしってところですかね。せっかくファイルシステムレベルでのロールバックができるのに snapperに関して誰も言及しないのが気になりました(SUSE系が主導しているからでしょうかね)。ここでも dm-cacheと FS-cacheの話はしていましたが bcacheの話はしていなかったのが気になります。btrfsが何故 Tech. Previewなのかの説明がありました。btrfsの重複排除機能がオフラインだけでなくオンラインでも出来る様になったら嬉しいですよね(大いに期待!)。Red Hat Enterprise Linux 6での XFSサポートは最大 100TBだと思っていましたが、300TB迄サポートされる構成もベンダーの構成によってはサポートされていると云うのは初めて知りました。あと、表紙で `Red Hat Kernel File & Storage Team`の表記に対して態々 STRIKEで消してある事に対しては説明がなかったと思います(聞き取れなかったのかも)。btrfsって従来の Linux用ツールでは対応できないものが少なくありません。例えば Subvolを使うと対応していない #dfではその値が正常採取できませんので #btrfs filesystem df /等と叩く必要がありますが、system-storage-managerに含まれる #ssm listを叩くと btrfsを意識せずに情報入手が可能となり、地味に便利です(年寄りは後から btrfsコマンドを使えなくなってしまう危険性をはらんでます)。
Device | Free | Used | Total | Pool | Mount point |
/dev/loop0 | | | 100.00 GB | | |
/dev/loop1 | | | 2.00 GB | | |
/dev/sda | | | 93.13 GB | | PARTITIONED |
/dev/sda1 | | | 500.00 MB | | /boot |
/dev/sda2 | 82.62 GB | 10.02 GB | 92.64 GB | rhel | |
/dev/sdb | | | 256.00 MB | | |
/dev/sdb1 | | | 250.98 MB | | |
Pool | Type | Devices | Free | Used | Total |
rhel | btrfs | 1 | 85.02 GB | 92.64 GB | 92.64 GB |
Volume | Pool | Volume size | FS | FS size | Free | Type | Mount point |
rhel | rhel | 92.64 GB | btrfs | 92.64 GB | 85.02 GB | btrfs | |
rhel:root | rhel | 92.64 GB | btrfs | 92.64 GB | 85.02 GB | btrfs | / |
/dev/loop0 | | 100.00 GB | ext4 | 10.00 GB | 9.18 GB | | |
/dev/sda1 | | 500.00 MB | xfs | 491.25 MB | 399.19 MB | part | /boot |
/dev/sdb1 | | 250.98 MB | vfat | | | | |
Red Hat Enterprise Virtualization Hypervisor Roadmap
Red Hat Enterprise Linuxと Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV-H)の機能差の説明に `CEPH Enablement`と云うのがありました。これ口頭で説明していなかった気がします。Live Snapshot Mergeは去年のセッションで説明があった、オリジナルとスナップショットの差分とを組み合わせてフルの VMイメージを作成する機能の事かと思われます(RHEV v3.2で既に実装されているものですと同じでしょうかね)。Red Hat Enterprise Linux 7の KVMでは PCI Express error containmentと云うのがありました。PCI-Expressの AERからの情報を使うのだと思いますが説明はこのセッションにも別の RAS関連のセッションにもありませんでした。AERのサポートはファームウェアとドライバの両方が対応している必要があると思うのですが、対応状況を調べるのが大変そうです。
Linux Containers Roadmap Red Hat Enterprise Linux 7 RC
Containerの種類の説明がありました。Host Containerとは、Host OSと同じものであり、#yum updateで kernelアップデートが可能。Image-based Containerとは、Dockerが採用しているものであり Host OSとは別の Linuxを稼動させる事が可能。Red Hat Enterprise Linux 7ではこれら Host Containerと Image-based Containerを同時に稼動させる事が可能。Dockerの説明として v0.9をベースに説明が行われています.......... で、昨年のセッションでは、Containerの種類として、Generic containerと、systemd containerが 7.0でサポートされる予定で、chroot containerは途中の 7.xからサポートする予定で、booted OS containerは 7でサポートする予定がない!と云う話でした。今回の Host Containerと云うのが Generic形式なのか systemd形式なのかはおいておいて、Image-based形式と云うのは booted OS形式だったのではないのだろうか???と思うのですが、ここら辺の説明がありませんでした。
Perforamance Analysis and Tuning - Part 1
KVM NUMA環境ではゲストに対して不要なメモリを割り当てるべきではないと云う目から鱗な説明がありました。
Performance Analysis and Tuning - Part 2
キャッシュを利かせた状況でのファイルシステム毎の性能差が示されています。Full Dynticksパッチは仮想 CPU上にスレッドが 1ヶし存在しない場合に無用な割込みを行わないものだそうです。
Automatic NUMA Balancing
本セッションは Red Hat社と HPEの共同セッションでした。ProLiant DL580 Gen8, DL980 G7と謎の開発中な 8-socket IVY-EXシステムでの NUMAチューニングの結果を披露しています。
EXPO/製品展示ブース
Red Hat Summitでは Red Hat社と IHV/ISVベンダーの展示が EXPO形式で行われていました。
AMD社
AMDブースには `Opteron`と云う製品名の x86互換ではなく ARM互換の A1100が展示されていました。既にサンプル出荷がされていましたので、これを使った実機展示もされていました。昨年の Red Hat Summitで感じたのは ARMは 64bitが出荷される前に失速してしまうのだろうかと云う考えが脳裏をよぎりましたが、AMDが Opteronの名前を与えた ARM 64を見ると、Intel Atomが追いついてしまっているのかも知れないが、まだまだいけるのかもと期待をさせてくれました。
Cisco社
Ciscoです。UCSです。正直なところ昨年衝撃を受けた、ラックに液晶パネルを埋め込んで説明する展示が進化し、タッチパネルになっていました。これはイイと思います。
Docker社
今回の Red Hat Summitの影の主役とも呼べる Dockerです。ブースは小さめですが、ひっきりなしに人が集まります。
HPE社
HPEブースです。主役は ProLiant初の UEFI機となる DL580 Gen8と Moonshot用カートリッジ m300です。
Inktank社
後に衝撃を受ける Cephを担いでいる Inktank社です。見た際には「Cephベースの製品が出展されている。SUSE Storage Serverとカブるやつだなぁ...」ぐらいにしか思っていませんでした。Cephと云うのは Red Hat Storage Serverで云う Glusterとか p-NFS(parallel)様なもので、Software-defined Storage製品のベースとなる製品の一つです。何が衝撃かと云うのは後述します…
Intel社
Intelブースでは、RAS機能にネーミングを施しており、Run Sure Technologyと呼んでいました。ixgbe系の 10Gb Ethernetを利用した SR-IOVの説明がありました。
Midokura社
日本からは Midokuraが出展しておりました。結構大きいサイズのブースで 4コマ程使っていたと思います。ハードウェアプラットフォームを意識させない自社開発な IPベースの Software-defined Network製品の説明を行っていました。
netApp社
netAppブースは意外に地味でした。p-NFSでこの世の春を謳歌しているのかと思いましたが、それを前面に押し出していると云う感じもなく、謙虚な展示でした。
Oracle社
Oracleブースです。当然 Oracle Linuxですので、kernelを rebootせずに更新する事が可能な kspliceのデモを行っていました。kspliceは既に実績があり、こなれている製品である事をアピールしていました。製品の複雑さでは ksplice > kGraft > kpatchになるかと思いますが、この手の機能は upstream kernelに取り込まれるか否かが非常に重要になってきます。過去 kspliceは upstream kernelへの mergeを複雑過ぎる等の理由で rejectされていますが、再度 mergeを考えているらしいので、今後この手の機能の merge競争が楽しみです。
Red Hat社
Red Hatブースです。場所がサンフランシスコですのでゴールデンゲートブリッジの絵を描いている人が居るなぁ、と思っていたところレゴのブロックで絵を描いていました。
SIOS社
日本からは LifeKeeperでご存知の SIOSも出展していました。と思ったのですが、どうも米国 SIOSらしいです。
Solarflare社
NTPに対応した10Gb EthernetのSolarflare社の新製品らしきNICが展示されていました。と云うよりただのNICではなくAOE(application on-board engine)と云うネットワークを中心としたアプリケーションエンジン用のボードです。10Gb Ethernetコントローラと GPUらしきものを積んでいるらしく、このAOE上だけでネットワークの暗号化等の負荷の高い処理をカスタムコンピューティングするとの触れ込みです。専用の開発キットも用意されているとの事です。
製品展示ブース
トレーニングついて
Red Hat Summitでは技術セッションだけではなく、ラボとしてPCを用意したトレーニングコースも用意されています。実は今までセッション優先で参加した事がなかったのですが、最新のトレーニング内容を入手したく今回初参加しました。150席近い数のシートがが用意されていました。Red Hat Enterprise Linux 7を利用した、アップグレード、インストール、systemdのセットアップ、firewalld、Gnome3、Docker等の自習用環境が用意されていました。自分で環境を作ってあれこれするのもいいですが、まずは触りだけでも知っておきたいと云うレベルかと思ったのですが、意外と難しい内容もあり皆悪戦苦闘していました。Fedoraでも見たこと無い様な新機能はここで説明文を読みながら行う事で理解力が高まると思います。特に Beta段階で実装されていた biosdevname(emX)ではなくbiosdevnameとsystemdを組み合わせた Persistent netwok naming(enoX)に変更されている事は実はこのトレーニングに参加して初めて知りました。
みっちりやると2時間コースですが、課題内容の PDFをダウンロードして直ぐに別のセッションへ移動していくジプシー(強者)が居ました。これはこれで効率的な参加方法かもしれません。
食事について
Red Hat Summitでは朝食、昼食、夕食が提供されます。昨年は朝食がサンドイッチで昼食もサンドイッチで同じモノ感が溢れておりましたが、今年の昼は HPEがスポンサーとなり、ちょっと豪華な食事になっていました。
初日のイベントについて
初日のキーノートセッションに参加した際、参加者に対して椅子があきらかに足りてませんでした。会場が狭かった訳ではありません。実は Red Hat Summitの10周年を記念したセレブレーションとして、Alter Egoと云う80年代の曲を中心にカバーするミュージシャンが登場しちょっとした立食スタイルのパーティ会場となりました。今まで(過去 2回しか参加してませんが)この様な派手な演出が Red Hat Summitで行われた事がなかったので、ちょっとびっくりと云うか周りも想像していなかったのではないかと思います。最初は戸惑っていた観客も席を立ち中央に集まりだして踊りだす人も出ていました。
二日目のイベントについて
今までのBostonで行われた二日目のパーティはパブを借り切って行っていました。今年は San Franciscoだからなのか、Fisherman's Wharfにある Exploratioriumと云う科学博物館を借り切ってのパーティでした。恐らく普段はここでは飲食させて貰えないのではないかと云う感じの場所です。今年も音楽が鳴り響くブースはあるにはあったのですが今回は音楽は主役ではなく、体育館の数倍規模にぎっしり展示されたもの珍しい実験器具が主役です。これを見るだけで2時間程掛かるため、早々に退出する人は少なかったのではないかと思われます。この後の11時以降は、飲み足りない参加者は無料のチケットを持っての恒例、深夜のパブ巡りツアーに出向いて嵌めを外していた筈です(今まで参加した事がありませんので想像です)。
雑感
実は、昨年参加したRed Hat Summitから10ヶ月、内容的な大幅な変化はなく、ブラッシュアップ的な話が多いのかと勝手に想像しておりましたが、いい意味で裏切られました。
今回参加して思ったのは、システムはアプリケーション開発者がもっとも嫌う(個人的見解)であろうシステムからのハードウェア部分の切り離し段階を大きく飛び越えて、クラウドと云われるとモヤーっとした雲みたいな(個人的見解)世界に本当に突入するんだなぁと云うのをようやく実感として受けとめました。従来のハードウェア的な部分はアプリケーション開発者にとって見た雲ないし、知りた雲ない、雲雲な部分でした。KVM等による仮想化のメリットはアプリケーション開発者にとってのメリットと云うよりもシステム管理者にとってメリットがあったのだと思いますが、軽量なコンテナ技術によりアプリケーション単位での隔離が可能となる事によるアプリケーションメンテナンスの簡略化、Dockerにより開発から実環境へのデプロイ方法の確立が見えてきました。自社用のアプリケーションを作成する必要があるエンタープライズユーザに大きなメリットが発生する段階に突入するのだと思われます。
あと、去年もそうでしたが MRGの影が見えなくなっているのが気になります。
来年の Red Hat Summitはまた東海岸のボストンに戻り、例年通りの 6月となります。
本レポートを書いている途中で、Red Hat社が Cephを担いでいる Inktank社の買収を発表しました。Red Hatは Glusterベースの Red Hat Storage Serverをリリースしていますが、今後は Cephと両方提供していく事になるのでしょうか。ちょっと驚きです。また、SUSE Linux Enterprise Server 12のβテストが始まっているのですが、その mailing listで SUSEのプロダクトマネージャが「現在のβには入ってないけど、製品版には Dockerを Technical Previewとして搭載するヨ!」と云う宣言が発せられました。Linuxでコンテナと云えば Dockerと云う事になりそうな勢いです。
Open Source & Linux
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2015年11月1日付でHewlett-Packard CompanyをHewlett Packard Enterprise Company とHP Inc.に分社する以前に販売された製品については、現在のモデルと異なる、古い製品名およびモデル番号である場合があります。