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お知らせ 2017年10月23日
インダストリアルIoTには、最適化から変革へ移行することが必要
グローバルな調査により明らかになった現在の戦略、その達成率と障壁
ナイジェル・アプトン(Nigel Upton)
ヒューレット パッカード エンタープライズ
IoT & Global Connectivity Platform担当
ワールドワイドディレクター兼ジェネラルマネージャー
このお知らせは、ヒューレット パッカード エンタープライズ(本社:米国カリフォルニア州パロアルト、以下:HPE)が、2017年9月20日(現地時間)に公開した英文ブログに基づいて作成した日本語抄訳です。
インダストリアルIoT(IIoT)は、より高度な自動化を実現したり、予知保全によってサービスの停止を回避したりするなど、既存のプロセスやビジネスモデルを最適化する手段として捉えることができます。
しかし、IIoTにはそれ以上の有用性が求められています。これまで私たちは、デジタル化による新しいビジネスモデルがメディア、小売、旅行といった業界にもたらした破壊と創造を目の当たりにしてきました。同じことが製造、化学、エネルギーといった業界にも徐々に起こりつつあります。IIoTは、その本質において単に効率が数パーセント向上したというだけではなく、、数兆ドルに上るビジネス機会から、どの企業がどれくらいのシェアを獲得できるのか、あるいは、デジタル中心の価値創造の分野で、どの企業がワークベンチをどれくらい拡大できるのかということが重要なのです。
これは、IIoTを導入する目的が最適化を超えたものでなければならないということを意味しています。つまり、変革です。データを活用する新しいプロセスを研究開発、生産、マーケティング、販売に導入したり、新しい協力関係をサプライチェーンに構築したり、新しい方法を製品やサービスの開発や商品化に確立したりする必要があるのです。そして、これらはすべて、「モノ」と「モノ」との間での相互運用を可能にし、限られた時間内にデータから得た洞察を提供できる技術アーキテクチャによって支えられる必要があります。
今回、HPEは世界有数のIIoT関連会議である『Industry of Things World』と共同で調査を実施しました(*1)。企業のリーダーたちが最適化または変革の手段として、どの程度IIoTに取り組んでいるのか、どの程度成功しているのか、そしてその最大の障壁は何なのかについての調査です。この調査では、導入されている技術アーキテクチャの種類、IIoTにおけるパブリッククラウドの重要性、エッジコンピューティングが果たす役割にも着目しています。
〈最適化の目標は、IIoTプロジェクトの達成率〉
企業がIIoTへ取り組むにあたり、達成したいビジネス目標は何かという質問に対し、回答者の大多数が「効率性の向上(64%)」を挙げています。同様に、柔軟性の向上(48%)や開発期間の短縮(35%)といった回答が上位を占め、IIoTの目的が新しいビジネスを開拓することではなく、既存のビジネスを最適化することに向けられていることがわかります。反対に、新しいビジネスモデルの確立(34%)、マーケティングの改善(27%)、IoTデータを活用した製品開発(26%)、既存の製品販売からXaaSモデルへの移行(25%)など、変革に関連するビジネス目標は比較的に低い結果になっています。
効率性の向上や開発期間の短縮は間違いなく重要なビジネス目標です。しかし、IIoTという文脈の中で最適化に関連するビジネスゴールが上位を占めているということは、依然として多くの企業がIIoTというコンセプトの有する変革的な本質を全面的に受け入れていないということの指標としてみることができます。
上記の回答結果から、多くの回答者のIIoTプロジェクトがすべて成功してはいないと推測できるでしょうか。答えはイエスです。過去12ヶ月の間、IIoTプロジェクトが目標に達した、または目標を超えたと回答したのは53%で、残りの47%が目標を達成できなかったと回答しています。さらに、僅かではありますが、完全な失敗に終わったとの回答もあります。
では、企業がIIoTプロジェクトを推進する上で何が障壁になっているのでしょうか?回答者は、スキル不足と自社の企業文化を最大の障壁として挙げています(各38%)。これは、IIoTプロジェクトを成功させるには、企業としての変革が必要であり、その中心的な要素として新しいスキルや新しい発想が必要であることを強調しています。これは同時に、組織構造の不備(27%)、不適切なガバナンスやマネジメント(21%)といった課題を含め、多くの企業にとって変革への足かせになっています。
この調査は、変革がIIoTへの取り組みを支える技術にも当てはまるということを明確に語っています。簡単にIIoT技術を買うことはできません。IIoTでは情報技術(IT)および運用技術(OT)アーキテクチャの根本的な再設計が必要なのです。
〈IIoT技術は簡単には買えない:技術アーキテクチャの変革が必要〉
スキル不足および自社の企業文化に次いでIIoTの最大の障壁としてあげられたのが、何が標準だかわからない(36%)という回答でした。これは、IIoTの「モノ」同士が相互に意思疎通を図る難しさを示しています。たとえば、KUKAのロボットとABBのロボットとの意思疎通、製造機械とITシステムとの意思疎通、製造工場とエネルギー供給事業者との意思疎通などです。こうした意思疎通を可能にするには、新しい技術アーキテクチャ同様、情報技術(IT)と運用技術(OT)を一つに収束させる共通の標準が必要になります。
このため、企業が求めるスキルについての回答も、1番目にIT/OTに共通のアーキテクチャを新開発できる技能(45%)、3番目にIT/OTの運用やサポートに一元化されたアプローチを確立できる技能(32%)という結果になっています。また、求められるスキルの一つにソフトウェア開発(42%)もありますが、これはIT/OTソフトウェアがパッケージ化されたアプリケーションとして市販されることが少ないため、新しいタイプのIT/OTソフトウェアが必要であることを示しています。
〈エッジおよびクラウドコンピューティングも同様に大きく成長〉
今回の調査では、エッジおよびクラウドコンピューティングが今後のIT/OTアーキテクチャで果たす役割にも着目しています。多くの市場関係者は、IIoTにおけるクラウドの重要性について強調しています。しかし、この調査が示す通り、エッジコンピューティングも重要であり、同様に大きく成長することが推測されます。
エッジコンピューティングでは、コンピュートや分析に関するリソースが、データセンターやクラウドで実行されるのではなく、「モノ」の近く、あるいは、「モノ」そのもので実行されます。車載IT、あるいは、製造機械に組み込まれ、工場フロアや石油掘削リグで稼働しているITシステムを想像してみてください。
まず、データソースに近いITシステム(エッジ)とクラウドで現在どのくらいのセンサーデータが分析されているのかを見てみると、その割合は両者で非常に低く、半数以上の企業がセンサーデータの30%以下しか分析していないことがわかります。残りのセンサーデータは、従来のように企業のデータセンターで処理されています。
しかし、5年後を調べてみると、これらの数値は大幅に変化し、その比率は反転するでしょう。大多数の企業がエッジおよびクラウドでセンサーデータの30%から70%、あるいは、70%以上を分析するようになるでしょう。
矛盾する結果に思えるかもしれませんが、IIoTが約束しているものを享受するには、従来のITアーキテクチャを根本的に変革しなければなりません。そして、それを実現するには、エッジとクラウドの両方の技術が必要なのです。
〈エッジコンピューティングを活用する3つの理由:セキュリティ、レイテンシー、帯域幅〉
なぜエッジとクラウドの両方の技術が必要なのでしょうか?これに関しても設問を設けています。まず、IIoTにエッジコンピューティングを活用する最も重要な3つの理由として、セキュリティ(52%)、レイテンシー(遅延)(41%)、帯域幅(35%)という回答結果になっています。最初にレイテンシーと帯域幅についてですが、路上の障害物に向かって時速100キロで走行する自動運転車を想像してみてください。車載ITシステムは、衝突を避けるため、ミリ秒(1000分の1秒)以内にメガバイト単位やギガバイト単位のセンサーデータを分析する必要があります。まさしく、そうしたセンサーデータを遠隔のクラウドに送信し、応答を待っている時間はないのです。これは製造機械などにも当てはまります。次にセキュリティについてです。すべてのデータをネットワーク経由で送信することは、ハッカーの攻撃対象になる恐れがあるため、その場でデータを分析し、一部の暗号化されたデータのみをクラウドに送信する方が賢明なのです。
同様に、クラウドを活用する重要な理由もあります。上位3つは相関分析(66%)、ディープラーニング(51%)、水平統合(36%)という回答結果になっています。機械、車、工場など1件のインテリジェンスのみでは十分とは言えません。複数の機械、車、工場のデータを一つのセンターに集約し、そのパターンを比較して相互に関連付けた方がより多くの価値を生み出すことができます。そして、そうしたデータから深い洞察を導き出すことが可能になります。これは、まさにディープラーニングであり、深層学習によって得られた結果は、「モノ」に反映され、性能の向上の他、新しい状況や未知の状況にも適応し、サービス停止の回避にもつながります。さらに複数の機械、車、工場の連動性を向上できるようにもなり、交通や高度に自動化されたサプライチェーンにおける「群知能」にもつながります。
これは、IIoTがハイブリッドな世界になることを示しています。そして、その主要なタスクの1つは、エッジ、核となるデータセンター、クラウドに至るまで、その全体の架け橋となるような統合アーキテクチャを開発することです。
〈明るい展望を示す調査結果であるが、未だ道半ば〉
繰り返しになりますが、IIoTの旅路は、最適化を超えるものです。技術、アーキテクチャ、プロセス、人、ビジネスモデルなど、企業のあらゆるレベルに変化が求められ、まさに変革と言えるものです。今回の調査結果は、そうした意味では、まだ業界が発展途上の段階にあることを全体的に示しています。しかし、IIoTは最先端のコンセプトであることを考慮すべきです。このため、企業がIIoTを計画および実践するにあたり、すでに変革的なアプローチが重要な役割を果たしているということは、明るい展望を示す調査結果であるとも言えます。同様に、注目すべきは、47%という未達成率ではなく、53%という達成率に注目しています。グラスには水が半分しか入っていないのではなく、半分も入っているということです。一方、まだやるべきことがあるのも事実です。私が業界に望むことは、変革を受け入れ、それを極めることです。そして、IIoTという旅路を急ぐことです。時間はあまりないのですから。
さらに詳しい情報は、 https://www.hpe.com/us/en/solutions/industrial-internet-of-things.html (英語)をご覧ください。
*1 『インダストリアルIoTの現況』(2017年9月発行)。約350名のマネージャー、ディレクター、ならびに経営幹部を対象に2017年7月から9月まで実施した回答結果に基づいています。回答者のうち、約60%がヨーロッパ出身、12%が北米出身、12%がアジア太平洋出身です。回答者のほとんどはIndustry of Things Worldカンファレンスに参加した経験があり、平均以上のIIoT成熟度を示しています。