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OTとITが衝突するとき: インダストリアルエッジにおけるコンバージェンスの管理

企業が新たなテクノロジーのメリットを得るには、非の打ちどころのないデータセンターでの作業に熟達したITチームと、危険な工業環境で作業をすることの多い運用テクノロジー (OT) の担当者の連携が不可欠です。それがうまくいかなければ、文化の衝突が起き、危機的な状況に陥る可能性があります。

 

産業界がインダストリアルIoT、分析、クラウドコンピューティング、そしてAIを搭載したロボットなどの新しいテクノロジーを活用しようとする中、リーダーたちも新たな管理の要件に対応し、より高度な方法で連携する必要に迫られています。

ITマネージャーやITスタッフは、かつては工場から遠く離れた本社オフィスに閉じこもりがちでしたが、今ではオペレーター、エンジニア、サポート技術者、メンテナンススタッフといったOTの担当者と並んで作業を行っています。

ITマネージャーやITスタッフは、OTの担当者とともに、重機、工業用ロボット、またはコンピューター数値制御 (CNC) テクノロジーをベースとする機器で構成されることもある、既存のOTプロセス、アプリケーション、およびハードウェアに責任を持ち、それらと専用のストレージやコンピューターハードウェア、クラウドベースのアプリケーション、高度なセンサー、そしてインダストリアルIoT (IIoT) を構成するその他のコンポーネントを連携させる役割を担っています。

 

エッジにおけるOTとITの融合

Hewlett Packard EnterpriseのIoTおよびコンバージドエッジシステム担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるTom Bradicich博士は、次のように述べています。「エッジはこれまでOTが活用されてきた場所であり、製造現場、風力発電所、潜水艦、スマートカー、スマートシティ、発電所、スマートグリッド、工業用油の精製所などはすべてOTの領域ですが、現在ではITの活用が広がっています」。

Bradicich博士によると、多くの企業は、プロセッサーとセンサーを搭載した工業用ポンプなどの高度な工業用機器に加え、データセンターやクラウドからエッジまでのITシステムとOTシステムをカバーする「エッジからコアに至るまでの」統合ソリューションを活用しています。

またITによる制御は、アプリケーション、ネットワーク、ハードウェア、およびセキュリティの管理をサポートするために、中央のITシステムや企業システムだけでなく、さまざまなエッジにまで広がりつつあります。

ただし、すべてのOT担当者が、ITにより大きな役割を持たせることを受け入れているわけではありません。Texmark Chemicals社の運用担当バイスプレジデントとして、製造、メンテナンス、物流、プロセスの安全管理、米国運輸省が指定する危険物、および環境コンプライアンスを監督するLinda Salinas氏は、「私の経験では、OTスタッフと比較して、ITスタッフは両者の間でプラットフォームを共有することに抵抗がない」と述べています。

その一方で、OTの領域に踏み込む心構えができていないITスタッフもいます。これについてBradicich博士は、次のように述べています。「コンピューターの基盤を取り替える方法をよくわかっているスタッフがいたとしても、そのスタッフが石油リグまで出向いて作業を行うようなことがあり得ない場合、コンピューターの基盤を取り替える方法をわかっているうえに、石油リグまで出向いたり、潜水艦の中に入ったり、自動車工場まで足を運んだりできる人を探さなければなりません。エッジは多様性に富んでいるため、こうした例を挙げればきりがありません」。

GE Digital社のバイスプレジデントであるEric Feagler氏は、それぞれが専門領域を持つOT部門とIT部門の間には元からあつれきがあるとしたうえで、次のように述べています。「私は多くのITスタッフが意思決定に関与し、場合によっては運用側の完全な理解を得ることなく物事を進めようとする場面をよく目にします。たとえば、(プログラマブルロジックコントローラー) システムを購入してクラウドに接続する予定でなかったとしても、IT部門がそれを名案と考えている場合もあります」。

 

OTスタッフ: 仕事をしやすくする

Texmark社のSalinas氏は、石油化学メーカーである同社が、ヒューストンから少し外れたところにあるテキサス州ガリナパークの工場で開催されたテクノロジーイノベーションワークショップに参加した2016年12月のある日のことを覚えています。同氏によると、同社の幹部と顧問はそれまで、IT部門がOTのプロセスをどのように変革できるのかを話し合ってきましたが、OTスタッフの多くがそれについての考えを聞いたのはその日が初めてでした。

イノベーションセッションが行われた部屋には、インストゥルメンテーションやメンテナンスなどのOTのスペシャリストだけでなく、セールス、顧客サービス、コンプライアンス、安全、経理、そしてTexmark社のCEOであるDoug Smith氏まで、20人のメンバーが集まりました。Chemical Exchange Industries社の一部門である同社は、約50人の従業員を雇用しており、ジシクロペンタジエンやさまざまな工業用アルコールおよび溶剤を製造しています。また、加工業者として顧客から受け取った原材料を処理し、顧客に代わって完成した石油化学製品を販売しています。

終日にわたったセッションでは、各部門が直面する固有の問題だけでなく、訪問者、請負業者、および従業員のアカウンタビリティ、確認できない部分があるプロセス、メンテナンスや検査の非効率性といったより幅広い組織の問題を含む課題について、長時間議論が交わされました。このセッションの目的は、Texmark社でさまざまな機能的役割を担う従業員から情報を収集し、工業分野で普及しつつある新たなテクノロジーを活用して解決できる可能性がある課題を実際のプロジェクトに落とし込むことにありました。

メンバーは自身のアイデアや経験を共有できる機会を心待ちにし、ブレインストーミングを楽しみにしていました。Salinas氏は、このときのことを次のように振り返っています。「私たちが部屋に集まり、進行役から手始めに『私に何かできることはありますか』という質問が投げかけられると、30年の経験を持つ機械工のGeorge Villarrealが手を挙げ、『仕事をしやすくして欲しい』と答えました」。

予想外のコメントは多くの笑いを誘いましたが、後から振り返ると、そのコメントには、Texmark社が最先端の精製所と呼ばれる概念である先進的な石油化学製品の製造環境を整備する中での、OTスタッフにとっての重要な優先事項が反映されているとSalinas氏は考えています。

これについて同氏は、次のように述べています。「これこそが肝心なポイントです。Georgeが仕事をしやすくなれば、課題に費やす時間が短くなり、その解消に費やすコストも少なくなります。そして必要とされている部分にだけ労力を集中させることができれば、新たなプロジェクトの評価を行ったり、トラブルシューティングチームに参加したり、他の問題の根本原因を探ったりといった別の作業に費やせる時間が生まれます。また、ベストプラクティスについて他の従業員にトレーニングを行ったり、スキルを向上させるために自身のトレーニングを行ったりすることもできます。こうした作業に費やせる時間ができれば、より幅広いビジネスニーズに対応することが可能になります」。

 

OT部門とIT部門の全員に同じ考えを持たせる

工場や現場の作業を厳密に制御することに慣れているOT部門とより標準的なエンタープライズアプリケーションやITアーキテクチャーに慣れているIT部門を連携させる必要があるため、工業分野の組織はコンバージェンスに苦労するかもしれません。

とはいえ、それを成し遂げることは可能であり、Salinas氏とBradicich博士はいずれも、共通点を見出すことがOTとITのコンバージェンスの成功の鍵であると述べています。

これについて、Bradicich博士は、「管理チームと幹部チームが自社の共通善について合意する必要がある」と述べ、最低限の共通点を見出したうえで、詳細な運用領域や具体的なメリットを明らかにするようアドバイスしています。

Bradicich博士は、最初に自社に利益をもたらすという最低限の共通目標を掲げた自動車メーカーを例に挙げています。このメーカーのITチームとOTチームは、さらに先へと進み、車の販売数を増やして収益を向上させるという共通の目標を定めることに合意しますが、この時点で、生産を拡大して車の生産台数を増やすための工場の現場の改善、つまりさまざまなOT部門とIT部門の積極的な連携についての議論が交わされる可能性があります。

これについて、Bradicich博士は次のように述べています。「このとき誰が責任を持つのかを議論することになるため、少し複雑な状況にはなりますが、少なくとも常にこうした目標を持っておけば、状況が厳しくなったときにそれに頼ることができます」。

Salinas氏によると、Texmark社では全員が全体像を把握しています。そしてこれについて同氏は、次のように述べています。「どの部門に所属しているのか、また現場で作業しているのか、コンピューターの前に座っているのかどうかにかかわらず、私たちは誰もが、利益を生み出してビジネスを継続させるという大義と最終目標の実現に各自の業務がどのように貢献するのかを理解しています。そのようなチームを持てば、全員がTexmarkのビジネスの安全性、効率、および利益性の向上につながるあらゆるものを進んで取り入れるようになります」。

Texmark社のOTおよびIT担当部長であるSalinas氏は、次のような見解を示しています。「OTの領域とITの領域は異なりますが、私はそのどちらでも成果を挙げることを約束します。そして両者が融合したときには、ビジネスをサポートするという共通の目標を掲げているため、私たちは連携することになります」。

ただしSalinas氏は、連携が始まる前であっても、計画を進めるために他の部門を関与させることがきわめて重要であると述べています。そしてTexmark社のイノベーションセッションを振り返った同氏は、課題と実行可能な解決策について話し合うために社内全体の代表者が同じ部屋に集まることが非常に重要であったと考えています。

これについてSalinas氏は、「Texmarkでは同じ部屋にできるだけ多くのメンバーを集めることになったが、他の企業では同じような決断を下さなかった可能性があると思う」と述べたうえで、少数の部門のごく少人数のメンバーだけを集めると、社内の他のメンバーがイノベーションのプロセスに力を注いでくれないかもしれないというリスクがある、と付け加えています。

 

役割を見直して報告する

また企業は、役割や命令系統を見直さなければならない場合があり、運用テクノロジーと情報テクノロジーのコンバージェンスが必要になること以外にも、企業が構造を見直すきっかけとなる内外の要因は数多く存在します。たとえば、Texmark社では分散制御システム (DCS) を担当するスタッフがメンテナンス部門に所属していたこともありましたが、これについてSalinas氏は、「DCS、インストゥルメンテーション、およびOTが進化したことにより、DCSマネージャーは現在、エンジニアリング部門のディレクターに報告を行っている」と述べています。

また別の要因として、ITとOTがもはやコストセンターではなく、実際にイノベーションを促進して競争力を向上させるものであるという認識が高まりつつあることが挙げられます。

GE社のFeagler氏は、テクノロジーを活用して運用を変革するために、上級管理職に組織の枠を超えた「機能レイヤー」としての役割を担わせている企業もあるとしたうえで、次のように述べています。「肩書きは最高デジタル責任者、イノベーション担当VP、または何か別の似たようなものでもかまいませんが、私はこうした最高デジタル責任者が置かれて、コンバージェンスを促進するためのイノベーションを許可するようになると見ています」。

ただし、ITとOTの大規模な統合を期待してはならず、この点について、Bradicich博士は次のように述べています。「私はこれまでのキャリアの中で、CIOがコストセンターから脱却して取締役になる場面を目の当たりにしました。またOTの最高責任者も取締役に昇格しています。IoTの『モノ』の価値の向上に伴って、今後自社に対するOTチームの貢献度がさらに高まると予想されるため、OTの責任者とCIOが1つになるようなことはないと思います」。 そして同氏は、IoT接続デバイスのデータと有益な情報が製品のイノベーションとディスラプションの新たな波を巻き起こすと予測しています。

 

外部からのサポート

工業部門の多くの企業と同じように、Texmark社もサードパーティベンダーやサービスプロバイダーにコンバージド・インフラストラクチャの構築を依頼してきました。ヒューストンのCovenant Technology Services社は、Texmark社に従来型のITサポートを提供するだけでなく、同社のOTスタッフやHPE、PTC社、CB Technologies社、OSIsoft社、National Instruments社、ENIOS Technologies社などのソリューションプロバイダーと緊密に連携しています。

Bradicich博士は、サードパーティベンダーにより、これまでのスタンドアロンのOTシステムより簡単に管理できるOTとITを統合した機能が提供されるようになるとしたうえで、「一般的に、現在のコンピューターと制御システムによるロボットアームの管理では、データセンターのコンピューターシステムで見られる標準的かつ簡単な自動化された管理の手段が用いられていない」と述べています。また同氏は、標準インターフェイスによって使いやすさが向上するだけでなく、これまでのOT環境にはなかった代替性ももたらされる、と付け加えています。OTシステムとITシステムを統合すれば、構成とサポートが容易になり、OTのスペシャリストからトレーニングを受けたITスタッフに至るまで、さらに幅広いメンバーがそれらを利用できるようになります。

 

IT部門がOT部門に言ってはならない5つのフレーズ:

 

「PLCをクラウドに接続してみてはどうですか」。

「ラインを数時間止めても、大したことにはならないでしょう」。

「すみません。買ったばかりの眼鏡に傷をつけたくないので、安全ゴーグルは着けられません」。

「工場に20年ものの機械があると聞きましたが、もう廃棄してもよいのでは?」。

「手が油まみれにならずに、あのボックスまでCAT6を配線する方法はありませんか」。

運用テクノロジーとIT: リーダーのためのアドバイス

  • OTとITのコンバージェンスを進めるには、OT部門とIT部門だけでなく、経営陣、他の部門、およびパートナーからも賛同を得る必要があります。
  • OTとITのコンバージェンスによってもたらされる運用、またはテクノロジー面のメリットだけに目を向けるのではなく、工場の現場などの作業者にどのようなメリットがあるのかを考えなければなりません。
  • 共通点を見出してユースケースを明らかにします。責任の問題が生じた場合は、必ずその共通点を再度確認し、プロセスまたはテクノロジーを担当する事業部門のオーナーに従います。
  •  一般的に、ITはこれまでOTによって完全に制御されていた領域であるエッジに移行すると見られています。OT部門はテクノロジーのプランニング、実装、およびメンテナンスの役割をIT部門に割り当てる必要があります。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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