ネットワーキングの未来に向けて統合されつつあるソフトウェア・デファインド・ネットワーク

The Linux Foundationは、いくつかのソフトウェア・デファインド・ネットワーク (SDN) プロジェクトの統合を進めていますが、それは今後、どのようになっていくのでしょうか。

Open Networking Summitの壇上でスマートフォンを持ち上げ、「あなたはどのくらいの間隔でスマートフォンを見ますか。また、スマートフォンでどのくらいインターネットを使用しますか」と質問を投げかけた、Open Platform for NFV (OPNFV) のネットワーク機能仮想化 (NFV) 担当バイスプレジデント兼ディレクターであるHeather Kirksey氏は、次のように語りました。「オープンソースネットワーキングに注目すべき理由はそこにあり、私たちはグローバルな通信インフラストラクチャの変革を進めているのです」。

ネットワーキングと言えば、オフィスのWi-Fiルーター、プレナムに隠されたケーブル、またはバックホーで切断されたインターネットのバックボーンケーブルといった、ハードウェアインフラストラクチャを思い浮かべるかもしれませんが、進化を遂げつつある未来のネットワークは、オープンソースのOpen Compute Project (OCP) をはじめとする、幅広いハードウェアで動作するオープンソースのソフトウェア・デファインド・ネットワーク (SDN) で構成されるようになります。

これについて、The Linux Foundationのネットワーキング担当ゼネラルマネージャーであるArpit Joshipura氏は、次のように述べています。「オープンソースのソフトウェア開発の原則がハードウェアに適用されるようになるのは、素晴らしいことです。私たちは、SDNとNFVの展開の新たな機会を模索するうえで、OCPが欠かせないと考えています」。

またKirksey氏は、次のように付け加えています。「多くの通信事業者は、無駄のないホワイトボックスのハードウェアを求めているため、私たちは、Open Computeのハードウェアとオープンソースのソフトウェアを使用して、通信業界のセントラルオフィス向けのスタックを構築しています」。

このような有望なソリューションにより、オフィス、データセンター、および通信事業者から帯域幅とサービスを提供することが可能になります。Red Hat社の最高技術責任者であるChris Wright氏によると、クラウドコンピューティング、Netflixなどの人気の高いインターネット動画サービス、そして完全に成熟した4Gと新たに登場した5Gにより、ネットワーク接続に対するニーズは増大し続けており、同氏は、「SDNとNFVは5Gの前提条件であり、それらがなければ、通信事業者は5Gを提供できない」と述べています。

SDNとNFVは、2011年にOpenFlowから始まりました。OpenFlowは、「最新のイーサネットスイッチとルーターに、回線速度で動作して、ファイアウォールを実装したり、ネットワークアドレス変換を行ったり、サービス品質を確保したり、統計情報を収集したりする、(通常はTCAMで構成される) フローテーブルが含まれていることを活かす」、というシンプルなアイデアに基づくもので、こうしたアーキテクチャーによって、いわゆる「プログラマブルネットワーク」を構築できるようになりました。

その後、ネットワーキングのニーズに応える形で、カスタムハードウェアではなくソフトウェアを使用するという、このような基本的なアイデアに基づいた、いくつかのオープンソースプロジェクトが生まれました。そして現在では、開発者、ベンダー、ユーザーのいずれもが、SDN、NFV、およびそれらに関連するプログラムを使用して、急激に進化を遂げています。ハイパーコンバージド インフラストラクチャの初心者ガイド

非常に大きな混乱をもたらす非常に多くの略語

ネットワーキングに関心を持っている技術者の多くは、すでにSDNの知識を持っていますが、この将来有望なビジョンには、NFVやSDNに関する非常に多くのオープンソースプロジェクトが存在するという大きな欠陥があります。その一例としては、Central Office Re-architected as a Datacenter (CORD)、Open Network Automation Platform (ONAP)、OpenSwitch Network Operating System、Open vSwitchなどが挙げられ、いくつかのプロジェクトは、SDNプログラム、Tungsten Fabric (旧OpenContrail)、OpenDaylight (ODL)、Trellisといった、同じ領域の一部をカバーしています。このような状況の中、ネットワークプロフェッショナルでさえ、これほど多くのプロジェクト、そして言うまでもなく、それらを表す無数の略語を把握するのは、ほとんど不可能であると感じています。

また、オープンソースのSDN/NFVには、The Linux FoundationとOpen Networking Foundation (ONF) という2つの母体があり、当初2つのグループは、互いを気にかけていませんでした。The Linux FoundationのOpenDaylightが初めて登場したとき、ONFのエグゼクティブディレクターであるDan Pitt氏は、「ONFが基礎的なアーキテクチャーとビルディングブロックを開発するユーザー主導の組織であるのに対し、OpenDaylightプロジェクトは主に、SDNの1つのインスタンスを生成することのみに重点を置いたベンダー主導の組織である、という点で私たちの組織は大きく異なる」と述べています。ここでPittの言うユーザーとは、AT&T、Deutsche Telekomなどの通信事業者を指します。

健全さと秩序をもたらすとともに、何よりも重要となる連携可能なプログラムを提供するために、業界には何ができるのでしょうか。これに関してはまず、The Linux FoundationとONFが、次第に両者の間にあるギャップを解消しつつあります。

たとえば、ONFの理事長であり、AT&T Labsの所長とCTOを務めるAndre Fuetsch氏は、つい先日、ロサンゼルスで開催されたThe Linux FoundationのOpen Networking Summitにおいて、ONFの新しい戦略計画を発表しました。これについて、The Linux Foundationのネットワーキング運用担当バイスプレジデントであるPhil Robb氏は、会議の中で次のように述べています。「The Linux FoundationとONFはいずれも、通信業界全体のイノベーションの推進に取り組んでおり、足並みを揃えています。SDNを機能させるという共通の目標を掲げる両組織は、不必要な重複をなくすために連携し、できる限り早急に本稼働に移りたいと考えています」。

それと同時に、The Linux Foundationは、標準化団体、業界グループ、およびオープンソースプロジェクトを統合し、それぞれの強みを活かす計画を発表しました。こうしたグループはそれまで、独立して運用されてきましたが、有効なソリューションを開発するために、強調的に取り組みを進めなければならなくなりました。ソフトウェアのスピードで進む世界では、従来のプロセスは時間がかかりすぎます。また誰もが納得しているように、緊密な連携が不可欠なうえ、SDNやNFVは、単一のグループが所有、または運用できないほど広く普及しています。スタンドアロンのコンポーネントはどれも重要ですが、それだけでできることには限りがあります。

 

すべてを統合する1つのSDN

その後、驚くべきことが起き、The Linux Foundationの統合計画は、マインドシェアを獲得することがなかった壮大なテクノロジーイニシアチブの泥沼にはまり込むことなく、大きく進展することになりました。

これについてKirksey氏は、「ガバナンスの統合は自然の流れである」と見ています。

さらに、これらのグループは、それぞれのサイロから抜け出して経済的なメリットを得ています。

The Linux FoundationといくつかのオープンソースSDNのコミュニティは、2018年の1月に集結し、Linux Foundation Networking Fund (LFN) を結成しました。LFNには、複数のSDNグループにアイデアの融合を促すとともに、一元的な管理体制でコストを削減するという、2つの目的があります。

これについてJoshipura氏は、「Kubernetesとその他のPlatform as a Service (PaaS) クラウドプロジェクトを統合した、The Linux FoundationのCloud Native Computing Foundationを手本とするLFNは、すでに多くのケースで連携しているネットワーキングコミュニティを同じように統合していく」と説明しています。

各プロジェクトは、今後もそれぞれが掲げる既存の能力主義の方針に従って運用されるものと思われます。技術面の独立性、コミュニティの親和性、リリースのロードマップ、およびWebプレゼンスは維持されますが、スタッフと財源は、統合された運営委員会を介してメンバープロジェクト全体で共有されます。

LFNに加盟するSDNの組織は急増し、すでにオープンソースネットワーキングプロジェクトの上位10個中9個がLFNに加わっています。これについてJoshipura氏は、3月の後半に「LFNは3か月足らずでメンバー数100社というマイルストーンを達成した」と述べています。このようなベンダーのうち、ONFは準会員としてLFNに加盟し、全員が同じチームに所属しています。

もう1つのメリットは、アイデアを融合できる点にあり、たとえば、ONFが新しいStratumプロジェクトのリファレンスアーキテクチャーに関心を持っているということが、The Linux Foundationとそのグループに受け入れられています。オープンソースのOpenStackクラウドのエグゼクティブディレクターであるJonathan Bryce氏が言うように、「統合とは主にリファレンスアーキテクチャーを作ることなのです」。

今のところ順調ではあるものの、どのプロジェクトや組織に関するニュースより重要なのは、SDNのコミュニティ、管理チーム、および開発者チームを同時に同じ場所に集めることです。

すべての開発者が同じ場所に集まったのはこれが初めてであり、これについて、Kirksey氏は次のように述べています。「すべての開発者が1つの部屋に集まるだけでも、大きな価値がありました。集まったメンバーからは、『このテストが使用できるのか』という声が上がり、ドキュメントの担当者からは、『同じツールを使用できる』という意見が出されました」。そして同氏は、その結果として開発が大きく改善された、と付け加えています。

Open Networking Summitでは、全員の意見が一致し、ホールや会議室は、同じような目標を掲げて同じようなアイデアの実現に何年もの月日を費やしてきた、今では競争相手が最高の協力者になり得ることをわかっている人々でいっぱいになりました。

もちろん、誰もがこうしたオープンソースのアプローチを完全に受け入れるわけではありません。現在、Juniper Networks社のTungsten Fabricは、The Linux Foundationのオープンソースプロジェクトとなっていますが、同社のクラウドテクノロジー担当バイスプレジデントであるRandy Bias氏は以前、私に次のように言いました。「私たちは他のプロジェクトとの連携に力を注いでいますが、正直なところ、競合するプロジェクトもあるでしょう。そのため、ODLとTungstenのチームは、より一層『コーペティション』に取り組まなければなりません」。

今もなお、SDNやNFVの真の変革は、ネットワークテクノロジーやソーシャルネットワーキングではなく、最も古い人間の交流の形である、膝を交えた話し合いの中から起きているのです。

 

SDNプロジェクトの統合: リーダーのためのアドバイス

  • 既存のネットワークインフラストラクチャは、オープンソースのソフトウェアが推進要因となっているSDNに取って代わられます。
  • オープンソースのSDNは、間違いなくあらゆるネットワーキング企業と通信企業に支えられています。

これは、テクノロジーの機能強化に力を注ぐグループが、そのようなイノベーションにより効率的に取り組めることを意味します。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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