ロスト・イン・スペース: 宇宙ごみの難題

現在、1億個を超える軌道上デブリが地球を周回しています。NASAには、宇宙ごみが地球に落下するというまれな出来事に対処する戦略があります。

宇宙ごみがニュースの話題になることはほとんどありません。それらは通常、宇宙にとどまって地球を周回しており、私たちが気付くのは宇宙ごみが空から落ちてくるときだけです。 

たとえば、最近、制御を失った中国のスペースラブが地球に衝突したことで、数多くの科学的な騒動がありました。8.5トンもある中国の天宮1号が粉々になるか、軌道を周回する別の宇宙船に衝突していたら、低地球軌道 (LEO) にかなりの量のデブリがまき散らされたことでしょう。LEOにはこれ以上のごみは不要です。(もちろん、運用を停止した多くの宇宙船が廃棄されている太平洋にも、これ以上のごみは必要ありません。)  

最終的に、中国の天宮1号は地球や宇宙に何の影響も与えませんでした。しかし、宇宙ごみに対処する戦略的な計画が欠かせないことは言うまでもありません。軌道上を周回しているあらゆる物体は、稼働中の通信衛星、国際宇宙ステーション (ISS)、その他の宇宙システムに損害を与える可能性があります。

良いニュースは、この問題に対処すべく、数多くの取り組みや研究が行われていることです。大きな問題となっているのは次のようなものです。NASAの報告によれば、1cmより小さな軌道上デブリは1億個を超えており、10cmより大きな軌道上デブリは21,000個を超えています。直径1〜10cmの粒子の推定数は約500,000個で、1cm未満の粒子の数は1億個を超えています。このごみのほとんどは、地球のLEOにあります。LEOは通常、地球表面から160〜2,000km (99〜1,200マイル) の高度にあると定義されています。ほとんどの人工衛星、ISS、ハッブル宇宙望遠鏡は、LEOに存在しています。 

NASAによれば、軌道上デブリは、宇宙船、人工衛星、宇宙飛行士にとって最も重大な脅威です。最良のシナリオでは、軌道上デブリとの衝突は宇宙船に穴を空けたり損害を与えたりします。最悪のシナリオでは、壊滅的な故障に見舞われます。1秒あたり10km (36,000km/h) の平均速度で移動する1cmの塗装の薄片は、地球上を時速96kmで移動している250kgの物体と同じだけの損害を与える能力があります。10cmの推進体は7kgのTNT爆薬に匹敵します。(詳しくは、NASAの宇宙ごみセンサーのビデオを参照してください。)

このようなデブリは具体的にどこから来たものなのでしょう。NASAの軌道上デブリプログラムオフィスによれば、2016年の時点で (前回、宇宙ごみを発生させたトップ10のミッションに関する報告が公表されました)、軌道上デブリの圧倒的な最大の発生源は、引き続き、2007年1月に中国の対衛星攻撃テストのターゲットとなった風雲1号Cという人工衛星でした。「この衛星だけで、今や3,428個の破片が記録されており、これは、地球の周回軌道上にある記録済みの人工物のほぼ20%を占めています。このテストやその他の出来事から発生したデブリは、現在、米国の宇宙監視ネットワーク (SSN) によって追跡されており、定期的に公式のデブリ一覧に記録されています」とNASAは述べています。2010年には、この人工衛星に由来するごみは2,841個でした。

トップ10の人工衛星の破片量、2016年1月 

画像の著作権: NASAによる軌道上デブリの季刊ニュース。ここで完全なグラフを参照できます。

 

軌道上デブリには、ありとあらゆる種類の宇宙システムの部品が含まれており、これらの発生源は遺棄された宇宙船や打ち上げロケットの上段部分です。NASAによれば、このようなデブリには、打ち上げロケットから宇宙船を分離する間やミッションの運用中に意図的に放出された物体や、既存の宇宙船に小さな粒子が衝突して剥がれた塗料の小さな薄片などが含まれます。

2番目と4番目に多い衛星デブリの発生元はCosmos 2251とIridium 33でした。これらは2009年2月に史上初の偶発的な人工衛星の衝突事故を引き起こしました。軌道上に残ったデブリ雲は、Cosmosでは68%以上、Iridiumでは58%でした。後者で残ったデブリの量が前者よりも少ない理由の1つは、面積対質量比が高いデブリが多かったことにあります。NASAによれば、これらのデブリ雲の高度は比較的高いため、今後数十年にわたって危害を及ぼす原因になるでしょう。

また、NASAは、1957年以降に打ち上げられた5,160回の宇宙ミッションのうち10回で発生したデブリが、地球軌道で現在記録されているすべての物体の約3分の1を占めていると指摘しています。

宇宙でのハイパフォーマンスコンピューティングは大きな飛躍を遂げており、たとえば、NASAはHPEのSpaceborne ComputerをISSで稼働させて、将来の火星へのミッションで使用できる可能性のあるテクノロジーをテストしています。

 

宇宙デブリを地球に落下させる解決策

宇宙デブリの数が増加していくと、最も恐ろしいシナリオの1つが現実になると、宇宙の専門家は述べています。NASAの科学者であるDonald Kesslerが1978年にこの分野の論文を書いた後に、ケスラーシンドロームという言葉が知られるようになりました。これは、LEOのデブリの密度が十分に高くなると、物体間の衝突によって、デブリと宇宙船や人工衛星との間で壊滅的な衝突の連鎖が発生する可能性があるというものです。この現象で多くのデブリが生まれると、さらに多くの人工衛星や他の宇宙船を破壊することになります。映画『ゼロ・グラビティ』を観ていれば、スクリーン上でケスラーシンドロームの描写を目にしているでしょう。

NASAは次のように述べています。「特定の軌道のデブリ量が臨界質量に達すると、物体がそれ以上軌道に投入されなくても衝突の連鎖が始まることが、Kesslerによって実証されました。衝突の連鎖が始まると、人工衛星や宇宙船に対するリスクが、軌道がもはや使用できなくなるまで増加します。Kesslerは、そのようなしきい値に到達するまで30〜40年かかるだろうと提言しており、一部の専門家は、今日、LEOにはすでに臨界質量があると考えています」

NASAは、宇宙デブリの分野における自らの役割は、既存のデブリ領域に新しいデブリを増やさないように将来の宇宙船を研究開発することにあると言います。「軌道上デブリは、宇宙ベースのサービスやオペレーションの継続的な利用や、宇宙と地球の双方での人と財産の安全性にリスクをもたらします。米国は、宇宙での政府および政府以外の活動による軌道上デブリの生成を最小限に抑えて、将来の世代のために安全な宇宙環境を保存するよう努めなければなりません」とNASAは述べています。

世界中の他の宇宙機関にも独自の軌道上デブリ対策部門がありますが、デブリの問題を軽減する方法についての世界的な正式の合意はありません。

問題を発見して、おそらくいつの日か改善するために、数多くの取り組みが進行中です。現在、以下のようなプロジェクトがあります。

  • SpaceXは、ネットを展開して宇宙デブリを捕獲するというアイデアをテストするために、サリー大学の実験システムをISSに届けました。このミッションでは、小型のメイン衛星プラットフォームが軌道上に乗ると、人工的なデブリのターゲットとして2つのCubeSat (超小型人工衛星) を展開し、ネットを使用した捕獲機能のデモを実施します。デブリはLEOまで牽引され、地球の大気圏で崩壊するようLEOに残されます。正方形のCubeSatは通常、長さが約10cm、体積が約1リットル、重量が約1.3kgです。
  • NASAは3月にLEOで小さな軌道上デブリを見つけようとするメリーランド大学の取り組みに出資しました。この手法では、デブリのプラズマシグネチャを検出するセンサーを備えたCubeSatの一群を使用します。「小さなデブリは現在検出することができませんが、宇宙船に危険をもたします。最近発見された前駆体プラズマソリトンは、プラズマ中を高速で移動する荷電デブリによって励起されます。これをCubeSatの一群のシンプルなセンサーで検出すると、小さな軌道上デブリをマッピングすることが可能になります。提案されたこのテクノロジーを用いると、危険度の低い軌道上に宇宙船を導くだけでなく、デブリ緩和の取り組みを定量的に評価できるようになるため、小さな軌道上デブリとの相互作用に革命をもたらすでしょう」と同大学は主張しています。
  • 今年の初めに、NASAはスペースデブリセンサー (SDS) をISSに設置しました。このセンサーは直径5mmから0.5mmの間のデブリを監視し、その特性を詳しく調査します。SDSによる調査中に収集されたデータは、研究者が軌道上デブリ全体の分布をマッピングし、宇宙ステーションやLEOから離れた場所で将来のセンサーを計画するのに役立つでしょう。そのような場所では、軌道上デブリによる宇宙船の損害のリスクがさらに高くなります。「軌道上デブリの環境は絶えず変化しているので、継続的に監視する必要があります」とNASAは述べています。「大気圏の上層で低軌道のデブリが崩壊していく一方で、新しい打ち上げや宇宙での新たな出来事によって、デブリの総数は増加していくでしょう」
  • Airbus社は、宇宙船に取り付けられるハープーンシステムに取り組んでいます。宇宙船は金属のハープーン (銛) を発射してターゲットに突き刺し、地球の大気圏に引き戻して制御された再突入を実現します。Space.comによれば、このハープーンは、欧州宇宙機関 (ESA) が10年間のサービスの後に2012年に機能停止した8.8トン (8メートルトン) の大型人工衛星Envisatに対処するために検討しているテクノロジーの1つです。専門家の意見では、Envisatは現在、LEOで宇宙船を脅かしている宇宙ごみの最大級の破片の1つです。「Envisatを捕獲するには、ハープーンの長さは約1メートル半で、重量は2.5kg (5.5ポンド) でなければなりません」と、Airbus Defense and Space社のアドバンストプロジェクトエンジニアであるAlastair Wayman氏は語ります。「Envisatと比較すれば、かなり小さなものです」
  • ハープーンのアイデアと発想が似ているのが、Astroscale社によって開発されている小さな宇宙船です。Astroscale社によるエンドオブライフサービスのミッションは、2019年前半に計画されています。このミッションは、より大きな人工衛星の耐用期間終了サービスを同社が実施する能力を実証するものになります。Astroscale社の説明によれば、「チェーサー」が「ターゲット」(シミュレートされた宇宙デブリ) を見つけると、そのターゲット (実際には機能停止した人工衛星が想定されています) とドッキングし、混雑したLEO領域から離脱させて、大気圏への再突入時に燃え尽きるようにします。
  • ESAは、同機関の「クリーンスペースイニシアチブ」で、高度な画像処理、複雑なガイダンス、ナビゲーションと制御、デブリを捕らえる革新的なロボット技術など、必要なテクノロジーの開発を検討していると述べています。実際の適用を含め、幅広い除去対象向けのテクノロジーが研究される予定です。2023年に打ち上げられる「e-Deorbit」は、ESAが実施する最初のADR (能動的なデブリ除去) ミッションで、その目的は、ESAが所有する大きな物体を現在の軌道から取り除き、大気圏への制御された再突入を行うことです。

 

宇宙ごみの難題: リーダーへのアドバイス

  • 宇宙ごみは大きな問題です。軌道上デブリは、宇宙船、人工衛星、宇宙飛行士にとって最も危険な脅威です。
  • 2016年の時点で、NASAの軌道上デブリプログラムオフィスが前回に公表したトップ10の宇宙ごみ発生源のミッション報告によれば、軌道上デブリの最大量の発生源は圧倒的に風雲1号C人工衛星でした。
  • 問題を発見して、おそらく改善するための取り組みが進行中です。つい最近、SpaceXはサリー大学の実験システムをISSに届けました。このシステムでは、ネットを展開して宇宙デブリを捕獲するというアイデアをテストします。 

 

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