IT部門の価値を経営陣に正しく認識してもらうには

IT部門が行っている活動の多くは、とりわけすべてが順調であるときには、目に見えづらいものです。しかしながら、CIOをはじめとするITリーダーは、舞台裏やクラウド内で達成されるテクノロジー成果を経営陣に認識させて、正当な評価を引き出すように努める必要があります。

ヘルプデスクや年間予算計画などの機会に、自身の存在を時折アピールしなければ、IT部門の存在は他の部門から忘れられがちです。すべてが設計どおりに機能している限り、ITスタッフの活動内容をビジネスサイドが知る必要はなく、ITは裏方に徹することになります。ITサービスがクラウドに移行し、自動化や機械学習によりユーザーアプリケーションのプロビジョニングが迅速化され、セルフサービス方式が普及し、データの民主化が進むなかで、この傾向はますます強まっています。

こうした変革を可能にしたIT部門の知識や努力は、正当に評価されているとは言えません。ITリーダーは上層部に対して、自身の専門知識やリーダーシップの高さをどのようにアピールすべきでしょうか。自慢は慎むべきですが、過度の謙虚さも好ましくありません。手柄を声高に吹聴する必要はありませんが、控え目過ぎると、「我々が達成した素晴らしい成果を正しく評価して欲しい」という重要なメッセージが相手に伝わりません。

以下では効果的な戦術をいくつかご紹介します。これらの戦術でカギとなるのが、ビジネスの観点から意味のある言葉のみを使用するということです。

 

ビジネスリーダーの目標を把握し、その目標に沿って対話を進める

ビジネスリーダーへの説明では、「そのIT成果が相手にとって何を意味するのか」を最後に示すことが大切です。有能なITリーダーは、技術スタッフが行っている活動と、その活動が会社の業績に及ぼす効果を、明確に結び付ける能力に優れています。開発者がCloudFormationテンプレートの構築に尽力したことをアピールしても、ビジネスリーダーの関心を引くことはできません。

それに対して、顧客向けの新しいセルフサービスポータルが予定よりも2ヶ月早く運用開始され、顧客満足度が向上していることは、経営陣から高く評価されます。

経営幹部も人間であり、一般の社員と同様に、業務目標を達成することで現在の役職を維持する、あるいは次のボーナスを獲得することを強く望んでいます。対話の相手が個人的な利益のために達成を望んでいる目標を把握し、その目標に沿って説明を展開するようにしてください。こうすることで、対話の相手から重要な味方とみなされるようになります。

「ビジネスリーダーたちは、それぞれが個別の責務や目標を有しており、予算権限を持つ人物にITリーダーやスタッフが重要な味方であると認識してもらうことは、IT部門にとって大きな強みとなります」とデジタルマーケティングサービスプロバイダーであるMarketing Mojo社の運用担当ディレクターを務めるJeff Driscoll氏は指摘します。

なおIT部門の活動がビジネスリーダーたちになかなか評価してもらえないのは、中核製品がソフトウェアやIT関連サービスの企業の場合にも広く見受けられる一般的な状況であり、ITリーダーの行動に何らかの誤りがあったせいではありませんので、ご安心ください。

「製品として出荷される「機能ワーク (機能コード)」に対して、直接出荷はされないものの、出荷される製品に問題がないかどうかを検証するために欠かせないサポートコードと呼ばれるものが存在します」と、自動テスト結果分析を主事業とするTesults社の創設者であり、ビデオゲーム業界でソフトウェアエンジニアとして働いた経験を有するAjeet Dhaliwal氏は説明します。このサポートワークには、自動テスト、ビルドインフラストラクチャ、DevOpsなどが含まれるとDhaliwal氏は指摘します。

このようなサポートコードは軽視されがちで、経営陣がその重要性を認識していないケースが少なくありません。こうしたITタスクは、企業が高品質の製品を販売するうえで欠かせないものであり、「この業務を担当している部門は、製品開発プロセスにおける陰のヒーローです」とDhaliwal氏は付け加えます。

今こそこうしたダイナミクスを変えるべき時です。以下では、ITリーダーおよびIT部門の価値を上層部に正しく認識してもらうためのアドバイスをいくつかご紹介します。

 

レポートおよび会議を再構築する

成功への道筋は、あらゆるステータスレポート、定期的な発表、および会議を見直すことから始まります。こうしたレポートや会議では、IT部門が達成した重要な成果の発表が既に行われていると思いますが、ターゲットとなる相手の視点に立って情報を提供することが大切です。あらゆる発表の場において、数値を挙げるか、またはその他の方法により、IT部門が達成した成果が「ターゲットとなる相手にとってどのような意味を持つのか」を最後に示すようにしてください。

「コスト節減などのメリットは常に有効です」とDriscoll氏は指摘します。「さらに、IT部門が全体的なビジネス戦略との整合性を重視しており、IT部門自身よりも企業全体の利益を優先し、ビジネスにより一層貢献するべく努めていることをアピールするようにしてください」。

「こうした努力を続けることで、コスト削減の必要性が高まったようなときにも、経営陣がITに対して優先的に予算配分してくれるようになります」と同氏は付け加えます。

なお、これは膨大なレポートを作成せよということではありません。Progressive IT Solutions社の経営者であるMario DiMarcantonio氏が指摘するように、より高い評価を得るためには、「相手のビジネスにもたらす価値」を「簡潔に」示すことが大切です。

 

上層部による承認機会をより有効に活用する

経営幹部の承認を必要とするケースは可能な限り避けたい、と考える人は少なくありません。しかしながら、そうした機会は、IT部門の存在およびその重要性を経営幹部に認識してもらう絶好のチャンスです。

「優れた成果を達成したITスタッフに報奨を与えることもお勧めです。報奨とは、ボーナス、賞品、「今月の優秀社員」といった企業内表彰などを意味します。多くの場合、こうした報奨の付与には上層部の承認が必要です」とサンディエゴ市でソフトウェア開発マネージャーを務めるMickey Mounarath氏は指摘します。「こうした機会は、報奨対象のスタッフが達成した輝かしい成果を経営陣に説明するチャンスです」。

 

業績を可視化して共有する

通常IT部門では、ビルドシステムの保守と監視、自動テスト、全般的なDevOps、データベース管理といった、さまざまな業務を内部的に追跡するために、可視化ツールが広く活用されています。卓越した成果が達成された場合には、その情報を内部だけに保つ理由はありません。

一例として、Dhaliwal氏が関わったチームでは、チームの業績を明確に示すために各種の可視化ツールが活用されていました。その1つが、テスト結果、主要画面キャプチャー、ログ、テスト頻度、クラッシュデータなどを示すダッシュボードを搭載したレポートツールです。このダッシュボードは、製品開発チームの進捗に合わせて毎日更新されました。これらのツールは、主としてIT部門向けに開発されたものです。

しかしながら、こうしたツールは経営陣に対する情報提供にも役立ちます。「私たちは自動化に努めたことで、1日に多数のジョブを並列実行して、数百時間分の作業を実施できるようになりました」とDhaliwal氏は説明します。こうした手法を採用しなければ、製品リリースにより多くの時間がかかったり、はるかに大規模な開発チームが必要とされたりした可能性があります。

こうしたIT部門の輝かしい業績を経営陣に伝えない手はありません。「私たちは、これらのダッシュボードをオフィスのテレビやモニターに目立つように表示し、さらに電子メールやSlack通知による成果の報告も行いました」とDhaliwal氏は振り返ります。「ビジネスリーダーたちはこれらのダッシュボードを見ることで、(人によっては初めて) IT部門が提供しているチェックやサポートの重要性を認識しました」。経営幹部のなかには、必要とされる製品テストの詳細さに驚いていた人もいます。彼らはそれまで数百ものテストケースが必要とされることさえ知りませんでした。「適切に可視化しなければ、こうした情報は目に見えません」と同氏は付け加えます。

 

外部コンサルタントのような姿勢で対話を進める

意思決定者との会議を、外部コンサルタントが行うような、戦略策定のための共同セッションに変えることも必要です。前回の会議以降に達成された事項や、前回討議された課題の現状を検証し、今後の見通しを明らかにしてください。

「優先順位付けが必要な事項を明確化することも大切です。意思決定者が検討しやすいように、予算/時間配分の競合状況を示すようにしてください」とDriscoll氏はアドバイスします。「これにより、すべての事項を達成するには時間と予算が足りないことを納得してもらえます。また計画の内容や目標を示し、そのことが意思決定者の業績向上にいかに役立つかを説明してください」。

ただし、こうした作業に時間をかけ過ぎてはなりません。何と言っても「時は金なり」です。ITリーダーおよび経営幹部の貴重な時間を無駄にしないように注意しましょう。

こうした情報は要約して提示することが重要であり、可能であれば箇条書き形式で1ページに収めることが推奨されます。「経営陣は多忙であり、直接的かつ簡潔なコミュニケーションを求めています。時間を無駄にされたと感じたら、経営幹部のITリーダーに対する印象は大きく悪化します」とDriscoll氏は警告します。

 

まとめ

ITリーダーは、あらゆる機会を捉えて、自分自身およびIT部門の価値をアピールする必要があります。

「大規模企業のIT部門が、CEOなどの経営幹部にIT部門の価値を正しく認識してもらうためには、外部のコンサルタントやサポートサービス企業と同等の取り組みが求められます」とDriscoll氏は述べています。「何と言っても重要なのはコミュニケーションです」。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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