考えてもみなかった商用ドローンの4つの利用方法
多くの業界は、特に搭載型と地上配備型の人工知能 (AI) やビッグデータ分析機能で収集するデータを組み合わせることにより、ドローンの新たな利用方法を見つけ出しています。この記事では、ユニークなドローンの商業用途をいくつか紹介します。
ドローンはあっという間に普及し、手のひらサイズのおもちゃから本格的な無人航空機まで、さまざまな形でドローンビジネスが展開されてきました。また、すでにこうしたテクノロジーを取り入れている、農業や石油・ガス探査といった業界もあれば、特に搭載型と地上配備型のAIやビッグデータ分析機能で収集するデータを組み合わせることにより、ドローンの新たな利用方法を見つけ出している業界もあります。この記事では、ユニークで素晴らしいドローンの商業用途をいくつか紹介します。
複雑な空中写真の撮影
ドローンは、子供が操縦して安価なデバイスから驚くような画像を作成できるほど一般的になりましたが、高品質の動画や空中写真を低コストで撮影できる機能が登場したことにより、商用動画の制作にも低価格の無人航空機 (UAV) を利用することが可能になりました。
リモート制御を使用すれば、自由かつ柔軟にドローンを操縦できますが、従来の航空機のような信頼性と制御性はありません。しかし市場にAIが投入されたことにより、状況は一変しました。これについて、Cinematic Aerospace社の社長であるChristian Tucci氏は、次のように説明しています。「多くの場合、ドローンに搭載されたAIは、通常サイズの大きいドローンが必要とされる、映画やTV用の複雑な映像の撮影に役立ちます。AIを活用すれば、何人もの撮影メンバーを雇わなくても、低予算でこれまでにない映像を撮ることができます」。
ただし、動画制作はドローンによる撮影でAIがサポートする役割の1つにすぎず、UAVの操縦では、飛行の制御と安定化、飛行中の画像処理、着陸後の後処理、飛行に関する統計情報の分析など、さまざまな面でAIのメリットがもたらされています。ドローンが完全自律モードで飛行しているか、地上のオペレーターがリモートからドローンを制御しているかどうかにかかわらず、AIは、技術的に不可能だったり、必要なアプリケーションが高すぎたりして達成できなかったであろうミッションを遂行する役割を担っています。
以下の4つの重要なテクノロジーのおかげで、高解像度カメラ、複数のセンサー、およびAIを組み合わせた小さい飛行装置が、さまざまな業界で広く活用されるようになりつつあります。
- リアルタイムコミュニケーションとデータ転送により、飛行中に有益な情報を得られます。オペレーターは、リアルタイムで分析結果を取得して飛行計画を修正したり、飛行中に他の措置を取ったりすることにより、飛行の回数を減らしてミッションを完了するまでの時間を短縮できます。
- 自動画像撮影と高解像度カメラにより、従来の空中動画制作設備よりはるかに低コストでTV/映画品質のコンテンツを制作できます。
- 高度なセンサーにより、比較的強風でも事前に定義した飛行経路でドローンを飛ばし続け、障害物をリアルタイムで検出して回避できます。テクノロジーが進化して信頼性が証明されると、最終的には航空機の規制が変わり、完全自律飛行が可能になるかもしれません。
- 搭載型のAIにより、たとえば、記録された時点で画像を編集して個人情報を隠したり、状況に応じてナビゲーションを行ったりできます。
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物的損害の分析
自然災害によって建物が損害を受けた場合、従来の方法では、航空機による調査や地上での調査に基づいて状況を評価し、最終的に保険会社にその情報を伝えますが、命を救ったり、家族や会社が元の状態に戻れるように支援したりするために迅速な対応が求められるときには、こうした方法は時間がかかり、非効率的な場合があります。
たとえば、EagleView社はドローンにAIを応用し、画像を後処理して詳細な分析結果を提供していますが、これにより、保険会社は保険契約者から求められたときに、適切なサービスを割り当てることができます。これについて、EagleView社のデータサイエンス/機械学習担当ディレクターのShay Strong氏は、「ハリケーンの季節には、当社のAIソリューションにより、複数の解像度の画像で風や洪水による物的損害を特定した」と述べています。
同社では、衛星データを利用するAIモデルで損害が起きた範囲とその程度を短時間で評価した後、超高解像度のドローンの画像を収集して、損害を受けた地域のデータを集め、個人財産の具体的な損害状況を地図に反映しています。これについてStrong氏は、「ドローンに搭載されたAIが、損害の種類と場所を分類した後、ナンバープレートや顔などの個人情報を隠し、財産の損害の程度をランク付けする」と述べています。そして詳細が明らかになると、人間がAIモデルの出した結果を目で確認し、損害評価に基づいて保険会社の対応を決定します。
AIモデルの評価が間違っていたときに指示を出すために、最終段階での人の介入は今もなお非常に重要で、システムに情報をフィードバックすると、AIモデルがそのフィードバックに基づいて学習し続けます。
エンジニアリングと輸送
スマートシティで混雑したエリアの駐車場の問題の解決が試みられるようになるのに伴って、交通の問題もAIを搭載したドローンで監視されるようになりつつあります。
駐車場の混雑状況を把握するには、趣味で使うレベルのドローンを駐車場で飛ばすだけで十分と思うかもしれませんが、それは手始めにすぎません。Tucci氏によると、あるプロジェクトでは、AIとドローンを組み合わせることで病院の駐車場の問題が解決されました。あるエンジニアリング企業は、各駐車場に大人数のチームを配置して1日中使用可能な駐車スペースを数えるのではなく、同氏のチームに上空から各駐車場の写真を撮影するよう依頼しました。これにより、チームのメンバーは1日のさまざまな時間に駐車されている車の数を数えられるようになりました。
これについて同氏は、「いくつかの駐車場は大きいうえに細長く、FAAが定める400フィートの高さ制限もあったため、1回で各駐車場 (の動画) を撮影できなかった」と説明しています。そこで同氏のチームは、毎時間ドローンがキャンパス上のグリッドパターンに従って自律的に飛行するよう、AIソフトウェアで飛行経路の計画を立て、1人のオペレーターが現場で制御装置を確認するだけで済むようにしました。そしてここで撮影した画像を組み合わせて、高解像度の合成画像が作成されました。「ソフトウェアのAIにより、こうした計算をほぼ瞬時に完了させ、リアルタイムでパラメーターを調整できるようになったのです」。
このドローンに搭載されているカメラシステムのAI機能は、画像やデータの匿名性を維持するために、顔やナンバープレートの番号などの個人の詳細を自動的に不鮮明にし、ドローンは、2営業日にわたって毎時間同じ経路を飛行する中で、数百の異なる画像を作成しました。このエンジニアリング企業は、他のWebベースのAI対応ソフトウェアを使用してこれらの画像をつなぎ合わせ、詳細な画像で車の流れと駐車の傾向を分析したうえで、病院にアドバイスを行いました。その結果、病院のスタッフが入口の近くに車を停められるようになっただけでなく、訪問者をより適切な駐車スペースに誘導できるようになりました。
長距離配送
ドローンの中には、趣味で使うレベルのドローンより大きく、小さいヘリコプターというより飛行機に近いものもあり、ある商用ドローンは、770ポンドもの荷物を積んで、最大1,550マイルの距離を飛行できます。また、Dronamics社のUAVは、同社が生産するサイズの小さいドローンより多くのセンサーとコンピューティング容量を搭載できるようになっており、より迅速かつ的確に周囲の環境と飛行状況を把握することが可能です。
これについて、Dronamics社の共同創設者であるSvilen Rangelov氏は、「サイズが最も大きく高速であるため、航空機が経路にある障害物を検出した時点で、余裕を持って対応と操作が行えるよう、現在の大部分のセンサーで得られるレベルを大きく超える視野が必要である」と述べています。同社では、従来の航空機のパイロットの操縦方法にAIを取り入れて、リモート制御でドローンを操縦しており、同氏は、「規制当局の承認が得られるかどうかがわからないため、完全自律飛行と半自律飛行の両方に関する計画を立てている」と語っています。
もちろん、航空機を完全に自律化してAIのブラックボックスに制御を任せるのは、単純にリスクが高いため、自動運転車より多くの問題があり、Rangelov氏が指摘しているように、「業界はまず、半自律 (人間が監視する) 飛行で有人飛行の安全記録を達成できるか、それを超えられることを規制当局に証明する必要があり、それを証明できた時点でようやく完全自律飛行が議題になります」。
Rangelov氏によると、今のところ航空機のAIは、人間の操縦に取って代わるものというより、予想外の事態による衝突の防止や回避のために使用されているケースが最も多く、「予測可能な方法で物体を重量に逆らわせ続けるには、非常に微妙なバランスが必要です」。AIは、無人飛行のイネーブラーではなくエンハンサーであり、数十年も前から知られている、飛行を維持するためのアルゴリズムは、Boeing社やAirbus社の航空機に搭載されているようなオートパイロット機能で使用されていますが、「こうしたシステムは、AIの前身であると考えることができる」、と同氏は付け加えています。
信頼性、センサー、コミュニケーション、および画像処理の品質の向上に伴って、業界は、従来の航空機のツールに代わる、低コストのオプションとしてのドローンの新たな利用方法を見つけ出しています。AIは、こうしたリソースの稼働率を向上させるために使用されることが増えつつあり、オペレーターは、より質の高いデータとより正確な結果を得て、必要な時間と手間をさらに減らすことができます。今後業界の要求に応じて航空機の規制が変わり、信頼性が向上するのに伴って、成長を続けるAI対応ドローンの強みを取り入れる業界が増えていくものと思われます。
ドローンとAI: リーダーのためのアドバイス
- 低コストのアプローチであっても、価値ある成果を得られます。
- 規制の問題は、潜在的なドローンの運用方法に影響を与える可能性があります。
- 一部の業界では、使用可能な情報の価値をすぐに示すことができます。
この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

Scott Koegler
Revelationship社社長、5件の記事
ビジネス、コンピューティング、およびテクノロジーに関するトピックの執筆で20年の経験を持つ、テクノロジージャーナリストのScott Koegler氏は、15年にわたって3社の中規模企業でCIOを務め、ジャーナリストとしての執筆活動に大きな影響を与えるものの見方を学びました。開発、マーケティング、ビジネスプロセス、および経営幹部レベルのエグゼクティブと仕事をする中で、ビジネスとテクノロジーが交差する部分に焦点を合わせられるようになった同氏は、サプライチェーン業界のニュースレターであるec-bp.comを発行しています。
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