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2021年12月10日

エッジが開く未来

インテリジェントエッジの構築こそが、まさにインテリジェントな選択です。
もう後戻りはできません。そして後戻りしたくなる理由もありません。価値あるデータが膨大に眠るエッジにこそ、私たちの未来があります。エッジは、あらゆる企業データの主要なソースとなりつつあります。エッジのコンピューター機能に、進化し続ける人工知能を組み合わせたものが猛烈な勢いで増加しています。また、現在の経済情勢では、工場、小売店、車内を問わず、離れた場所から多くのタスクを実行することがコンピューターに求められており、可能性は広がる一方です。

それによって将来は、今日のデータセンターに比べ、一段と集約されたコンピューティングがエッジの複数のレイヤーで実行されるようになると考えて間違いありません。また、形は変わっても、同じ量のネットワーキングが使用される見込みです。実際、5年後に、エンタープライズコンピューティングの転換点となったこの時期を振り返って見れば、IT組織が、50年間にわたって企業コンピューティングの要であったデータセンターから軸足を移さなければならなくなったことを直感的に理解するはずです。

以前にも同じようなことがありました。1990年代後半から2000年代初めにかけてのドットコムブームの際に実用化されたインターネットテクノロジーは、データセンターにおけるコンピュート、ストレージ、ネットワーキングの規模だけでなく、その規模を生み出すために展開されるテクノロジーをも一変させました。やがてビッグデータが登場し、統計ソフトウェアやニューラルネットワークソフトウェアと統合され、ついに機械学習が利用できるようになりました (機械学習は30年前に構想されていたものの、わずかなデータセットと10年ほど前の貧弱な並列プロセッサーでは実現不可能でした)。

MLとAIにより、すべてが変わりつつあります。あらゆる種類のデバイスがテレメトリデータを収集しており、それにより、デバイス自体をすべての面にわたって管理しつつ、人間または他のデバイスに対応を促すためのインサイトを提供しています。つまり、こういったことが、企業 (および従業員) と周囲の世界との関わり方そのものを変えようとしています。

エッジとは、コンピューティングの領域を指します。データセンターを多数のコンピューターとストレージで埋め尽くすのではなく、実際のビジネスが行われている現場に、桁違いに多くのコンピューティング要素を展開することを意味します。こうしたITインフラストラクチャをエッジに移す必要があるのは、「現場」で生成されるデータがあまりにも多く、データセンターに頼っていては処理に時間がかかり、コストがかさんで効果に乏しいためです。

エッジで重要なのは「次のアクション」

エッジには、(大規模なデータセットではなく) 一連のライブデータを何らかの作業に変換できるだけのML (機械学習) のインテリジェンスが含まれます。エッジで重要なのは、機械学習のインテリジェンスによって促される次のアクションです。以前は、データセンターで構築したインテリジェンスを広範なネットワークを介して自由に移動させ、世界中で利用できるようにしていました。エッジデバイスは自ら推論することが可能ですが、おそらく近い将来、独自のトレーニングも現場で行えるようになります。

私たちは、さらに新しいテクノロジーの時代に足を踏み入れています。もちろん今日の企業は、最初にバックオフィスをデジタル化したときのように、ゼロからスタートしているわけではありませんし、そのような時間もありません。企業の経営者は、よく言われるように、すぐに役立つインサイトを求めています。

データセンターの外にあるあらゆるもの (数十億台、そしておそらく近い将来、数兆台のデバイス) に、あらゆる種類のモニターが搭載され、AI対応のコンピューターにネットワーク接続されています。データは大量に高速で生成されるため、人間では到底処理できません。

しかし、人間の能力が必要となるのはそこではありません。その部分は機械に任せることができます。こうしたエッジシステムで重要なのは、その場で有効なアクションをとることです。それには新しいアーキテクチャー、新しい考え方、そして専門知識が必要となります。

インテリジェントエッジをインテリジェントに構築

小型のデータセンターのようなものをリモート拠点に投入するのは比較的簡単です。ただし、リモート拠点で十数種類のアプリケーションを実行しており、さらに多数のリモート拠点がある場合は必ず、IT組織が従業員、プロセス、テクノロジーを取りまとめる必要があります。

たとえば、小売業界では、取引の実行や在庫の管理に何十年もリモート処理が使われてきましたが、今日の小売店は、施設内にビデオカメラを設置してパターン認識を行いながら、店の通路やセルフレジでの不正を監視しています。それを行うシステムは、AIを駆使する特殊なサーバーであり、GPU処理でサポートされています。パターン認識アプリケーションは6種類ほどありますが、それに加えて (在庫や人員を含む) 資産管理向けのセンシングアプリケーションがあり、すでにPOSアプリケーションも導入されています。

また、ITの一元管理 (ソフトウェアリリース管理、ハードウェアのリモート設定および監視、技術サポートのチケット発行の変更、修正など) に導入されているすべてのプロセスを、エッジに適用する必要があります。

こうしたことから、エッジでは、データセンターよりも広範囲に分散した、大規模な問題が生じる可能性があり、問題は一層複雑になります。それに加えてエッジには、数多くのレイヤーがあります。これには、文字どおり人とモノの接点となる一方で、データセンターにはまったく含まれない、POP (ポイントオブプレゼンス) などのアグリゲーションエッジでもある、現場のインフラストラクチャも含まれます。IT組織が単にエッジに飛び付くと、こうした現実に戸惑うことになります。

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文化の変化は、ただ不快なものになる可能性もあります。誰もが知っているデータセンターインフラストラクチャの構築 (クラスター化された高密度サーバーにより、データセンター全体、さらには一部のモノリシックなレガシーシステムに広がるクローズドネットワーク上でスケーラブルなコンピュートとストレージを実現すること) は、ITの中心がデータセンターからエッジへと移る中で、難解な技術となっていきます。

IT組織が抱える問題も、「インフラストラクチャでいっぱいの部屋で、どうすれば2,500種類ものアプリケーションを実行できるか」といったものから、「従業員やマシンとのあらゆるやり取りを自動化し、その他のインフラストラクチャをサポートしてエクスペリエンスを提供したり、エンドツーエンドにプロセスを管理したりするにはどうすればよいか」へと変わっていきます。

注意すべき点がもう1つあります。エッジはすべて、相対的なものです。パブリッククラウドなどの中間地点 (多くの分析が行われるアグリゲーションレイヤーにある場合が多い) で一部のインフラストラクチャ要素を実行する場合、その場所が、さらに遠方にある現場のエッジに対するアグリゲーションエッジとなります。数百のリージョンと、そこに流れ込むその他のPOPを抱えるパブリッククラウドでは、便宜上、およびデータ主権上の理由から、こうした容量の一部がアグリゲーションエッジとして展開されるようになると考えるのが妥当です。

一方で、リアルタイム、またはほぼリアルタイムのデータ処理に設定されるレイテンシの要件を満たすには、最も遠いエッジでのコンピューティングが必要になります。また、世界の帯域幅は (将来の6Gネットワークでも) 不足しており、すべてのデータのバックアップを中央のデータセンターに物理的に転送して処理することは不可能です。こうしたことから、ストレージをローカルに配置し、一定期間後に一部のデータを削除することが求められています。

小売店におけるセルフレジのビデオ監視に話を戻すと、商品の誤ったバーコードをスキャンしたり、スキャンし忘れたりする人がいた場合、小売店は、すぐに把握して従業員を送り込み、その列を監視して問題を修正したいと考えるはずです。これを1秒か2秒で行う必要があります。ビデオストリームをパブリッククラウドのリージョンに送信する場合、毎秒10フレームでも、数十秒かそれ以上かかることになります。インフラストラクチャの規模を考えると、その処理は高速かもしれませんが、小売店が答えを出す前に、買い物客は家に帰ってしまいます。

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一定のコンピュート、ストレージ、ネットワークを物理環境に展開しておく必要があるのは、環境内で即座に処理することが、エッジにおけるバリュープロポジションのすべてであるからです。小売店におけるセルフレジのビデオ監視に当てはまることは、はんだ付けの品質を監視しているマザーボードの組立ラインや、製造現場を監視している自動車メーカーにも当てはまります。ビジネスのあらゆる領域で、ミスは高くつきます。ミスを早期に発見することは、時間または金銭、あるいはそのどちらも失わずに済むことを意味します。

留意すべき難しい点がもう1つあります。エッジは、単独では存在しません。何らかの方法で物理環境を制御するために、エッジでセンサーとAIを使用する無数のアプリケーションが存在します。さまざまなセンサーとプラットフォームがあり、ベンダーは垂直統合しようとしますが、これらは必然的に、店舗、倉庫、工場、空港、駅などの物理環境において共存することになります。エッジは、実際はエッジのネットワークであり、何らかの方法でまとめて管理する必要があります。すべてのエッジデバイスをそれぞれの方法で管理するのでは効率が悪いため、そうすることはできません。

こうしたエッジデバイスを誰がインストールして管理するのかは、まだ明確になっていません。これらのデバイスを使用する企業かもしれませんし、デバイスを供給するベンダーかもしれません。また、すべてのデバイスが接続されていてベンダーがリモートで管理できる、制御環境を備えた「データルーム」を提供するだけの企業かもしれません。

システムインテグレーターが個別の状況に合わせて各種のエッジを組み合わせるために現れ、全体を管理することを提案するはずです。またお客様は、こうしたインフラストラクチャの外観と操作性を、可能な限りオンプレミスのデータセンター機器と同じものにしながら、クラウドのようなサブスクリプションモデルで提供してほしいと考えます。今後数年の間に、エッジコンピュートはサーバーインストール件数 (今日の一般的なサーバー構成要素の定義よりもはるかに緩やかな定義を使用) の20%を占めるようになり、いずれは、世界のデータセンター全体の総コンピュート能力の2倍から3倍にまで増加する見込みです。

エッジへの移行

エッジコンピューティングの導入を検討している企業が、プラットフォームの設計にあたって留意すべきポイントが5つあります。

  • 接続: 今はもう、純粋なハードウェアと呼べるものはありません。あらゆるものが接続されています。エッジでは、それが何であれ、物理環境と連携しているセンサーからすべてが始まり、そこから遡って進んでいきます。また、データチェーンへの接続や処理がそうでなかったとしても、デバイスはローカルで動作する必要があります。
 
  • 自律: 今日のほとんどの工場では、すでに何らかの形でロボットフォークリフトとも呼ばれる無人搬送車 (AGV) を導入していますが、AGVはそうした形状だけではありません。以前は機能へのネットワーク接続が必要でしたが、機械学習の手法により、接続することなく、安全に運転を継続できるようになりました。また、採掘作業では、掘削装置のモーターに搭載されたセンサーを使用して、ドリルビットが破損しそうか、または破損しているかを確認できます。この機能は、さらに役立つ可能性があります。ドリルビットから得られる同じテレメトリデータを監視し、AIのアルゴリズムを確認すれば、ビットが破損する前に、極めて硬い岩盤にあたっていることを作業員に警告できます。それによってビットとモーターを保護し、ビットの破損に伴うダウンタイムを回避できます。
 
  • レイテンシと大容量データ: エッジの現場では、瞬時に意思決定を行う能力が求められており、月面車や火星探査車のように、その場で、リアルタイムに意思決定を行う必要があります。ネットワークのレイテンシのせいで、意思決定に何分もかかるようなことは許されません。同様に、意思決定を行うのに大量のデータを必要とする場合で、そのデータを効率的に、またはコスト効率よく移動できない場合も、エッジで意思決定を行い、有効なアクションをとることが求められます。
 
  • 複雑なイベント処理: 前述のドリルビットの例では、実際に機能しているのは、複数のセンサーで、すべてリアルタイムで行われる複雑なイベント処理です。ドリルには、ゲージに加えて振動センサーも搭載されており、モーターへのエネルギー投入量とモーターによる電流引き込みを監視しています。また、拡張農業では、農家が国の気象機関の過去のデータを取得し、エッジのセンサーがリアルタイムで取得する農地の状況と組み合わせて、個別の野菜の種まき時期を決定します。センサーの数が多いほど、状況を的確に見極められるようになり、またエッジで適切なアクションがとれるようになります。
 
  • データのクラウド回避: ストレージがよくないという理由で、クラウドにデータを移さないようにしている人はいません。むしろ、テレメトリデータが増えすぎて保管できなくなっているのが現実です。比較的安く、さらに価格が低下しているクラウドストレージでも、保存に多額のコストがかかり、使用にはさらにコストがかかるようになります。エッジのデータ量は、クラウド上のデータストレージの価格が低下するよりも速いペースで増大していくため、エッジのデータを保存してクラウドで処理するという計画では、最初から損をします。そのよい例が、自動運転車です。自動運転車のモデルをトレーニングする場合、そういった車をトレーニングするには、実際の状況から大量の情報を収集しなければなりません。通常は数十個のカメラと何時間もの走行が必要となり、そのデータはペタバイト規模になります。データをクラウドにアップロードして保存できたとしても、決められたトレーニングを行うためにAIクラスターに移動するには、莫大なコストがかかります。一番簡単なのは、交換可能なストレージアレイを製造し、データセンターに向かう車内で使用して、取り替えることです。


エッジは競争が激しく、企業は競争力を求めています。そのためには、テクノロジーのためのテクノロジーを導入するのではなく、具体的な成果を得ることに重点を置いたエッジ戦略を策定する必要があります。まずは、物理環境のさまざまなソースからデータやテレメトリデータを取得するプロジェクトを (安全な方法で) 実施し、次に、プロジェクトに機械学習モデルを適用して物理環境でのアクションを自動化していきます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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