2020年9月25日

VDIの時代がついに到来した理由

長い時間がかかりましたが、最近の事態によってVDI開発が表舞台に立つことになりました。

カナダにある150億ドル規模の電気通信事業者TELUSの世界向け子会社であるTELUS Internationalも、先端的な多くの企業と同じように、より多くの主要従業員に在宅勤務を許可することを検討してきました。

文化的には、リモートワークは企業の考え方や優先事項に完全には浸透していません。実際、同社はどちらかといえば、世界20か国に及ぶスタイリッシュなオフィスと働き方を自慢にしています。

「最前線のチームメンバーに関して言えば、弊社はまったくステイホームな企業ではありません」TELUS InternationalのCTOで、カリフォルニア州デイナポイント在住のJim Radzicki氏は言います。「そうなりたくないとか、弊社のテクノロジーではリモートワークをサポートできないというわけではありません。顧客が弊社に求めるサービスの提供方法に対して、そのようなアプローチは適していないと感じるだけです」

そして、2020年3月17日がやってきました。その日、TELUS Internationalの5万人の従業員のうち30パーセント近くが在住しているフィリピンの政府が、COVID-19への対策として48時間以内にオフィスを閉鎖するようにという指令を企業に出したのです。Radzicki氏にとってその指令は大きな課題でしたが、チャンスでもありました。

この難しいタスクを完了するために、TELUS Internationalは既存の仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI) への投資を拡張してクラウドVDIに投資し、その週のうちに、突如リモートとなったフィリピンの最前線の従業員の多くを安全に、シームレスに企業ネットワークリソースにアクセスできるようにしました。問題は起こりませんでした。次に、同社が稼働している他の国でも同様のロックダウンが起こることを予測し、このプログラムを世界中に拡大しました。

「弊社では元からVIDを使用しており、従業員と一部の顧客がリモートで仕事をできるようにしていましたが、COVID-19のために10年分先に進むことになりました。10年が1週間に凝縮されたのです」 Radzicki氏は言います。 「このテクノロジーを展開することで出てくるややこしい懸念事項はすべて忘れさられ、チームは『大丈夫、できるさ。やってみよう』 となりました」

 

VDI導入の増加

TELUS Internationalは、パンデミック後の世界でより多くの人がリモートで働きたいと考える可能性が高いことに備えて、VDIテクノロジーを検討または実際に導入している多くの企業の1つにすぎません。

事実、長い間将来性があるもののニッチなテクノロジーと考えられていたVDIですが、Enterprise Strategy Group (ESG) と仮想デスクトップインフラストラクチャ企業であるWorkspotによる最近の調査では、回答者の88パーセントが、複数のデバイスからVDIおよびサービスとしてのデスクトップ (DaaS) にアクセスすることに以前よりも関心を持っていることが分かりました。

デジタルワークスペースプラットフォームのベンダーであるCitrixは、VDIを定義して、中央サーバーでデスクトップ環境をホストし、特定のデスクトップイメージを仮想マシン (VM) 内で実行し、ネットワークを介してエンドクライアントに配信する機能としています。これらのエンドポイントはPCや、タブレットまたはシンクライアントターミナルなどのデバイスです。仮想デスクトップは中央サーバーのVM内に存在します。

弊社では元からVIDを使用しており、従業員と一部の顧客がリモートで仕事をできるようにしていましたが、COVID-19のために10年は先に進むことになりました。10年が2週間に凝縮されたのです。

TELUS International CTO、Jim Radzicki氏 

ESGのシニアアナリストであるMark Bowker氏によれば、VDIは便利であるものの、広範囲に導入されることはこれまで決してありませんでした。リモートで仕事をする従業員は生産性が低下すると考えたり、このテクノロジーのコスト、制御性、サイバーセキュリティの問題に懸念を抱いたりする意思決定者があまりにも多くいたためです。

「COVID-19以降、それが変わってきています。従来のVDIベンダーは、VDIライセンスまたはテクノロジーに対する関心だけではなく、実際の導入例の急増を報告しています」Bowker氏は言います。「VDIが生まれた理由はCOVIDとは関係がありませんが、この度の災難のために、企業は一貫した方法でデスクトップ機能を管理および保護し、ユーザーに届ける優れた方法があることに気がつきました」

WorkspotのCEOであるAmitabh Sinha氏によれば、企業がオフィスを閉鎖するように指示されたときに彼らがVDIに関して発見した最も大きな利点の1つは、それによって非常にすばやく完全なリモートインフラストラクチャに移行できるということでした。

「1日で移行したお客様もいました。そして、いずれにしても必要なことだと分かっていたため、コストはそれほど懸念とはなりませんでした」Sinha氏は言います。「700人の従業員が働けなくなれば、1日で数百万ドルの損失となる可能性もあります。広い視野で見れば、数十万ドルを費やしてライセンスを追加し、そのような事態を避けることは、企業にとってそれほど大きな冒険ではありません。

 

コロケーションの事例

Sinha氏によれば、今後一部のグローバル企業は常に独自のデスクトップインフラストラクチャを展開することを選びますが、頻繁にパフォーマンスまたはネットワークレイテンシーの課題に直面することになります。そして、それによってVDIがいわれのない非難を浴びることになります。

多くの企業が1か所または2か所のデータセンターのみからVDIを運用し、世界中のあらゆる従業員がそこにアクセスするため、パフォーマンスは非常に低くなります」Sinha氏はそう警告します。「また、VDIのワークロードは複雑です。多くの場合さまざまな音声、ビデオ、グラフィックの要素が含まれ、テラバイト単位のストレージが必要となるためです。これらは小規模なプロジェクトではありません。つまり、設計に9か月をかけ、実装に9か月をかけてから、運用の複雑性に対処しなければならないのです」

ただし、Amitabh氏によれば、サービスとしてのソフトウェアモデルを導入することで、企業はVDIを設計、展開、運用してくれる適任のサードパーティにその重荷を預けることができます。

「パブリッククラウドを活用するDaaSソリューションによってオンプレミスインフラストラクチャへの投資を節約し、管理の複雑性を軽減できるだけでなく、レイテンシーを軽減してエンドユーザーに優れたパフォーマンスを提供できます」Amitabh氏はそう言います。

アナリストは、これらの利点によって、今後数年におけるクラウドベースのVDIの導入が加速すると予測しています。事実、Allied Market Researchの新しい報告では、この市場は2016年の36.5億ドルから2023年には101.5億ドルと、約3倍に成長すると見込まれています。

 

パッケージドVDIソリューション

一部のベンダーは、企業がテスト使用をしたり、特定のユースケースに向けてすばやくVDIを展開したりすることを可能にするパッケージドソリューションを提供することで、その機会を先取りしようとしています。

「実質的に、我々は完全なエンドツーエンドモデル を構築しました。設計、実装、運用、管理はすべてこちらが担当し、最初の6か月間、お客様には実際に使用された分のみお支払いいただきます」HPE GreenLakeの戦略的アライアンスエグゼクティブ、Daniel Williamsは言います。「6か月以降も引き続き使用される場合は、正式な契約に移ります。この世界的な危機の中で、リスクも敷居も低く、誰もがすぐに仕事を続けて生産的になれるVDIオプションを企業に提供したいと考えています」

Williamsによれば、企業は事前構成済みのVDIサービスを利用することで、より長期間のリモートワークプランをサポートするためにどのようなデスクトップインフラストラクチャが必要かを判断することもできます。最近実施された多数の調査では、 多くの企業が、パンデミックが収束した後も以前はオフィスで勤務していた従業員の大半をリモートで勤務できるようにしたいと考えていることが示唆されています。

Williamsは、それが本当であれば、多くのお客様が長期的なニーズに合わせたソリューションのカスタマイズを希望するはずだと指摘します。「単にこの危機を乗り越えようとしている小規模な企業とは違い、大企業のお客様の多くは2、3年後までを見据えてリモートの従業員がさらに増えると予測しています。そのため、何万人ものユーザーに向けて弊社のサービスをカスタマイズしてほしいと希望しています」Williamsはそう言います。

TELUS InternationalのRadzicki氏によれば、同社もまた、VDIを長期的に使用する可能性があると考えています。

「デスクトップ上で配信しなければならないレガシーアプリケーションなどが非常に多く残っているため、先には長い道のりが待っています。しかし、VDIは弊社の標準になりつつあります」Radzicki氏は言います。「リモートワーク戦略については、異なる場所で異なるテクノロジーは必要ありません。デスクトップがリモートにあるかオフィスにあるかを問わない、単一のVDI環境を利用するほうが理にかなっています」

 

:VDI 概要

  •  度重なる事態により、企業はVDIの使用を再評価することを強いられています。
  • VDIをすばやく実装することは可能であると実証されています。
  •  パッケージドソリューションにより、VDIのニーズに柔軟に対応できます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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