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2021年9月28日

プライベート5Gネットワークの導入が増えている理由

今年は工場へのプライベート5Gネットワークの導入が進むと考えられます。主力企業にとっても、5Gの動向を注視し、状況を把握すべき時です。
消費者向けに大々的に宣伝された5Gへの期待は、産業界にも急速に広まっています。大手メーカーは5Gの可能性に魅力を感じて、新しい施設にプライベート5Gネットワークを導入しています。たとえば、主要なメーカーの状況を見れば明らかです。来年には、これらのメーカーの工場の多くが本格的に稼働し、5Gの高帯域幅、モビリティ、IoTの利便性、セキュリティを実現するでしょう。

「製造業では、5Gへの移行を数多く目にすることになり、それは非常に大規模なものになるでしょう」と語るのは、情報通信技術のコンサルティング会社であるACG Research社の最高技術責任者、Peter Fetterolf氏です。ロボットや自動運転フォークリフト、AR/VRメガネ、ドローンなど、いわゆるインダストリー4.0のテクノロジーをメーカーが導入するには、5Gの機能が必要になります。「ドローンが人に衝突したり、ロボットが製造中の製品を破壊したりしないようにすることは非常に重要です。このようなインダストリー4.0の領域では、ベストエフォート型の免許不要帯域であるWi-Fiでは対応できません」とFetterolf氏は言います。

5Gは性能が格段に向上しているので、有線ソリューションの代わりに使用できます。
プラントでは、5Gのほうがはるかに便利です。
PATRICK FILKINS IDC社のシニアリサーチアナリスト

おそらく、メーカーにとって最も明らかな5Gの利点は、Wi-Fiと同じように、費用がかかる配線やケーブルを使わずに工場を建設できることです。有線ソリューションはネットワーク帯域幅を提供する一方で、工場内のモビリティの邪魔になり、製品ラインの進化に伴いロボットや組立ラインを再構成する際の障害になります。5Gを使用すれば配線が不要になり、コストを削減して適応性を高めつつ、高帯域幅と超低レイテンシを実現できます。5Gネットワークの速度は4G LTEの100倍になる見込みです。

「現在はまだ初期の段階ですが、5Gに興味を持って投資している組織がいくつもあります」とIDC社のシニアリサーチアナリストであるPatrick Filkins氏は言います。「5Gは性能が格段に向上しているので、有線ソリューションの代わりに使用できます。プラントでは、5Gのほうがはるかに便利です」。大手のメーカー、港、倉庫業者はプライベート5Gの最適な候補であり、これらの組織の中にはすでにプライベート4G LTEネットワークを導入しているところもあると彼は指摘します。

Filkins氏によると、常時稼動の時間確定的な専用通信を必要とする組織の2つ目のグループは、鉱山、公益事業、石油・ガス会社であり、これらの組織もプライベート4G LTEネットワークを導入している可能性があります。候補となる3つ目のグループは、教育、政府、医療、小売などの分野の従来型企業です。これらの組織の多くは、エンタープライズグレードのWi-Fiを導入していますが、業務において高度なプライバシーが非常に重要であることが、アップグレードパスとして5Gに魅力を感じている主な理由ではないかとFilkins氏は指摘します。

工場にとって魅力的な機能:  ネットワークスライシング、より強固なセキュリティ

5Gネットワークの魅力の1つはネットワークスライシングです。この機能を使うと、同一の物理ネットワーク上で複数の独立した論理ネットワークを動作させて、物理的な帯域幅を分割できます。各スライスは、特定のアプリケーションのニーズに適したエンドツーエンドのネットワークです。工場では、高速な通信が求められるAR/VRアプリケーションをあるスライスで処理し、低レイテンシが重要なロボットの操作を別のスライスで処理することができます。さらに、ネットワークスライスを割り当てると、ワークロードの要求に応じてボトルネックを解消し、スループットを向上させることができます。

5Gのセキュリティは、いくつかの点でWi-Fiや4G LTEよりも改善されています。ヒューレット・パッカード エンタープライズの通信メディアおよびソリューション部門の最高技術責任者であるJeff Edlundによると、5Gではアプリケーションやサービスレベルでポリシーとセキュリティ制御を実装できます。これはWi-Fiで一般的に可能なレベルよりも細かいアプローチです。また、5Gでは、4G LTEの128ビット暗号化よりも強固な256ビット暗号化を採用しています。さらに、ユーザーのアイデンティティ情報と位置情報は暗号化されますが、この機能は4G LTEにはありません。ただし、米国国土安全保障省によると、5Gの実装が4G LTEインフラストラクチャをベースに構築された場合、分散型のサービス拒否攻撃やSS7/Diameterに関する課題など、従来の脆弱性の一部が引き継がれる可能性があるため、注意が必要です。

Wi-Fi 6と5G

Wi-Fiの実装に熱心に取り組んできた組織はWi-Fi 6へのアップグレードを望むかもしれませんが、どのような状況でも、プライベート5Gについて詳しく調べて、自社のニーズにマッチするかどうかを検討し、両方のテクノロジーが共存できることを念頭に置いておくべきです。「Wi-Fi 6にアップグレードし、その後に特定のユースケースで5Gを導入した組織は、両者の間にゲートウェイテクノロジーを使用することになるでしょう」とEdlundは言います。

実際、Wi-Fi 6は、5Gアーキテクチャーにおいて無線アクセスネットワーク (RAN) のエレメントとして機能するため、5Gのイネーブラーになります。5Gアーキテクチャーでは、高スループットを実現するために、ネットワークコアと、デバイスに近いネットワークエッジの両方でトラフィックを処理します。RANはネットワークコアのスループットの負荷を軽減するため、5Gで期待される低レイテンシを実現する鍵となります。エッジでの相互運用性を高めるために、O-RANアライアンスではO-RANアーキテクチャーと呼ばれる一連の標準を定義しています。

4G LTEから5Gへ移行する米国の組織はCBRS (Citizens Broadband Radio Service) を導入したいと考えるかもしれません。CBRSは米国海軍のために確保された3.5GHzの周波数帯ですが、特に海軍施設から離れた地域ではほとんど使用されていません。これまでのところ、CBRSは4G LTEの展開で魅力的であることがわかっています。昨年の初めに、CBRSアライアンスは米国でのCBRSの5G仕様を策定済みです。

購入するか自社で構築するか

先駆的な大企業に続いて、中小のメーカーや主力企業も5Gの動向を注視して状況を把握し、将来の5G展開に備える必要があります。彼らは5Gの機能や要件を熟知し、5GとWi-Fi 6ネットワークの相互運用性について学ばなくてはなりません。そして、いずれは組織で5Gに移行するためのロードマップの作成を検討することになります。

「5Gの展開はWi-Fiよりも難しいでしょうが、それでも組織が自社で展開できないわけではありません。システムインテグレーターと連携したり、パートナーに構築と運用を依頼したりすることもできるでしょう」とFetterolf氏は言います。

5Gが広く普及するには、Wi-Fiのように簡単に展開できる必要がありますが、これは近いうちに実現するでしょう。プライベート5Gネットワークでは一般的に5Gスモールセルが実装されますが、このセルは通信事業者のベースステーションと同じテクノロジーを用いて構築されるためです。ただし、5Gではセルの消費電力が低くなり、カバーする範囲は小さくなっています。「5G NRテクノロジーの展開が加速するにつれて、キャリア帯域でも免許不要帯域でも、5Gスモールセルの経済性とシンプルさがWi-Fiに近づいていくことを期待しています」とEdlundは述べています。

ネットワーク機器プロバイダーの中には、いわゆる統合型のブラックボックスソリューションを構築しているところもありますが、さまざまなアプリケーションで5Gの特性を利用できるように、5GネットワークのAPIを公開するオープンなアプローチをとることを推奨するとEdlundは言います。「オープンなNEF (Network Exposure Function) によって新しいアプリケーションやサービスを導入できるようになるので、私たちはオープンなアプローチを支持しています」とEdlundは続けます。たとえば、ロボットのメーカーでは、NEF経由で自社のロボットへの5G接続を確立すれば、サービス担当者がテレメトリ情報にアクセスできるようになり、同じロボットをNEF経由でプログラムして、サプライチェーンの関係者や他の工場と協調作業するように設定することもできると彼は説明します。

5Gから6Gへ

Filkins氏は、5Gの標準化団体である3GPPが新しいリリースを準備する中で、5Gは進化し、より高度な機能を備えるようになっていくと指摘します。「5Gの進化は始まったばかりです」と彼は言います。現在はリリース16ですが、3GPPは2022年にリリース17を発行する予定であり、計画段階にあるリリース18もいずれ発行されます。新しいリリースが発行されるたびに、インダストリー4.0向けにさらに多くの機能が利用できるようになり、それらの機能を活用するために5Gのチップセットが組み込まれたロボットや工場設備が登場するでしょう。さらに将来を見据えると、ネットワーク業界では5Gの後継として6Gが注目を集めています。6Gは、業界の大企業に現在のインダストリー4.0のメリットを保証しつつ、将来の主力企業に新世代のインテリジェントな低レイテンシアプリケーションを約束します。

リーダーへのアドバイス

  • 会社でインダストリー4.0の実現を考えている場合は、5Gネットワークが必要になるでしょう。
  • 5GはWi-Fiに取って代わるものではなく、Wi-Fiと相互運用するもので、その際にはWi-Fi 6をRANとして使用します。
  • プライベート4G LTEネットワークを使用する組織は、5Gによって高速化と新機能が手に入りますが、従来のセキュリティに関する問題に注意する必要があります。
  • 5Gの機能を最大限に活用するには、新しいアプリケーションやサービスを実現できるように、NEFを利用したオープンで最適なアプローチを検討します。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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