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2021年4月9日

ピアの比較がAIOpsに変化をもたらす理由

テレメトリデータを収集しているベンダーであれば、顧客が行うようにベンダー同士を比較できます。これにより、あるベンダーで効果のあった対策を別のベンダー問題解決に利用できるようになります。

金曜日の午後に発生したネットワークの問題は月曜日にならないと修復できない。そうした時代はとっくに終わりました。現在は、有能なIT部門なら24時間365日トラブルに対応できると考えられています。

問題の多くは、自動化によって数分内で解決できます。たとえば、問題が突然発生しても、それが一般的なものであれば特定のアルゴリズムが機能して、ほかのネットワークから収集したデータを基に、十分に裏付けのある解決策が提示されます。もちろん、こうした機能を実現できるのは、インテリジェントな方法で絶えずデータを収集し処理している場合に限られます。これが、IT運用で人工知能を利用する、AIOpsと呼ばれる手法です。

しかし、めったに発生しない問題や、これまでに体験したことのない問題が発生した場合はどうでしょうか。要求が絶えず変化し、最新のテクノロジーを常に把握し利用するのが非常に難しい世界では、そうした問題がいやというほど発生します。実際に、あらゆるIT業務、とりわけネットワーク運用が、こうした状況に置かれています。そこで、ピア (同じ状況にある企業) の比較に注目します。

一見すると、特別な問題や固有の問題に見えても、多くの場合それらは一般的なものです。たとえば、同じような建物で運用を行っている企業は、ガラスの壁によってWi-Fi信号が減衰するといった問題に同じように直面するでしょう。最初は、固有の問題にしか見えないかもしれません。しかし、その問題を解決できれば、そうした経験を活用して、ほかの企業も問題を解決できます。

AIには高品質のデータが大量に必要

ネットワーキングベンダーは通常、すべての顧客のワイヤレス、スイッチング、WANなどのデバイスに加え、ユーザークライアントやIoTクライアントからテレメトリデータを収集して、有効なベースラインを確立しています。AIでは、そうしたデータ収集が不可欠です。どのようなAIでもトレーニングデータが必要であり、データセットの規模が小さかったり、多様性が十分でなかったりすると、開発者やネットワーク運用者が求める結果を得られないからです。ここで重要なのは、データが持つ個人的な要素を収益化することではなく、利用されている技術の動作を測定することです。

そうした大規模なデータセットは、数週間や数か月では収集できません。ネットワーキングの場合、データを継続的に何年も収集して初めて、データセットの価値を得ることができます。業界トップのベンダーは、現在、約32TBのテレメトリデータを毎日収集し処理しています。それを何年も前から実践しているのです。

時間をかけてテレメトリデータを収集するのは、思うほど簡単ではありません。ユーザーが求めるもの、つまり接続の安定性と、負荷のないトラフィックを定量化し、直接測定できなければならないからです。たとえば、スループット、レイテンシ、リソース効率などが定量化されますが、これらは、さまざまなネットワーク設定の影響を受ける可能性があります。こうした数量が相互に作用することで、最終的なユーザーエクスペリエンスが決まります。

テレメトリデータの分析では、ZoomやMicrosoft Teamsといった、主要なアプリケーションの使用記録も確認でき、そうした利用状況を分析に加えられます。

もう一つ重要なのは、どのデータも、ユーザーの満足度向上と、ネットワークデバイスの最適化につながる設定を把握するために使用しなければならないことです。原則として、AIOpsでは、機械学習アルゴリズムによる2つの方法でそれらを行います。「教師あり学習」を行う分析エンジンは、過去に使用された設定を学習して、パフォーマンス面でユーザーエクスペリエンスを最適化できる設定を推奨できます。「能動学習」を行うエンジンは、これまで使用されたことがなくても、ネットワークパフォーマンスを向上させる可能性のある設定を推奨できます。

影響を与えているものとは: ネットワーク環境の要因

さまざまな解決策によって、機械学習アルゴリズムを最も効率的に展開し、最良のネットワーク設定を推奨させることができます。ただし、影響を与える要因は、そうした設定だけではないことに注意することが重要です。

要因には、そのほかにも、ネットワークが利用される場所の建築資材、アクセポイント間の距離、ネットワークに接続する際に使用するデバイスの種類などがあります。こうした要因は、AIOpsでは調整できないため、それぞれに合ったネットワーク設定を行う必要があります。

大学のキャンパスとファーストフードレストランを例に取ります。キャンパスでは通常、広大な敷地に複数の建物が存在しており、ユーザーはデスクトップパソコンとスマートフォンを並行して使用しながら、半日または一日中そこで過ごします。ファーストフードレストランでは多くの場合、建物が1つだけ存在します。ユーザーは、1時間以上そこにいることはなく、主にスマートフォンでインターネットを閲覧します。

こうした傾向が、ネットワーク設定を左右します。大学のキャンパスで重要なのは、ユーザーが自分のスマートフォンやノートパソコンでどこからでもネットワークにアクセスできることです。2時間程度利用したところでネットワークから切断されるということもあってはなりません。

ファーストフードレストランでは、ローミングが問題になることはなく、ユーザーも、一定時間後に再認証が必要になることに慣れています。混んでいるレストランで、大学のキャンパス以上に注意が必要なのは、通りを歩いている人がレストランのネットワークを利用したり、それに負荷をかけたりしないようにすることです。それが可能かどうかは、ネットワーク設定による場合があります。

ピアグループを活用して外部の状況を把握する

顧客のサイトは、レストランなのか、大学のキャンパスなのか。こうした情報は、テレメトリでは収集されず、ベンダーのデータベースにも蓄積されません。この2つによって判断できるのは、アクセスポイントの数やインストール環境での利用パターンといった、インストール環境の特性だけです。

しかし、そのようなテレメトリデータを多数の顧客サイトから収集していれば、AIOpsによって、それらのサイトを、類似の特性を持つ「ピアグループ」としてまとめられます。こうしたピアグループは、同じような課題を抱えており、通常同じようなネットワーク設定を必要としています。こうすることで、これらのグループを互いに直接比較できるようになり、最終的には、ピアグループ内の特定メンバーに有効な解決策を、他のメンバーにも役立つように展開できます。これが、ピアグループごとに一連の問題解決策を生み出すことにもつながり、こうした解決策は、画一的なアプローチよりも効果をもたらす可能性があります。

お客様の環境に適切なベースラインがあれば、論理的にピアを比較できるようになり、類似のネットワークと比較した、お客様のネットワークパフォーマンスを明確に把握できます。

AIOpsでは、異なるサイトを1つのピアグループにまとめ、パフォーマンスに基づいてそれらをランク付けできます。毎回そのように機能するとは限りませんが、ピアがパフォーマンスの設定に使用する最適化の設定は、パフォーマンス改善に取り組むネットワーク管理者の参考になるでしょう。

ピアを比較して課題を解決し、問題を未然に防ぐ

ピアを比較できない場合、既存のベースラインの修正しかできず、それを超える、ネットワークパフォーマンスのベースライン確立は難しくなります。スタジアムとコーヒーショップではネットワークに対する要求が大きく異なるため、その両方に同じ設定を推奨したプロバイダーは手探りで問題に対処することになり、役に立たない推奨対策を受けたITチームは自力で問題を解決するしかありません。

それとは対照的に、ピアグループを使用すると、空港やショッピングモールといった、ネットワークが構築された場所での高パフォーマンスの基準を示す最適なベースラインが自然に形成されます。

結論: 個別化によるパフォーマンス向上

ピアの比較では、画一的なアプローチですべての問題を解決するのではなく、それぞれの問題に適した解決策を推奨できます。これにより、ネットワークの柔軟性を維持して、特定の環境の変化に適応でき、ひいては問題を未然に防ぐことができます。

すべてのネットワークが1つのカテゴリにまとめられ、意味付けが行われるのではなく、ピアの比較では、AIOpsが次のレベルに発展します。環境要因とその影響範囲にかかわらず、ネットワーク設定を簡単に変更できるようになるのです。これにより、問題が発生した場合に何が可能でどのような修復を行えるのかを示す最適なベースラインを設定できます。

大規模なデータセットがなく、データを継続的に収集できなければ、これを完全には実現できません。また、顧客の各ネットワーク環境の問題を、それ自体のデータを利用して監視できる動的なベースラインがなければ、期待どおりのサービスレベルを達成することもできません。そこで、役に立つのがピアの比較による推奨です。これにより、AIOpsを、単なるネットワーク修復の手段から、ネットワークパフォーマンスを継続的に最適化するための解決策に発展させることができます。

Aruba社、Trent Fierro氏の協力を得て、この記事とそのほかの記事を執筆しました。

AIOpsでピアを比較する: リーダーへのアドバイス

  • 私たちは、AIとビッグデータの新たな用途やそのビジネス上のメリットを今でも学んでいる段階です。
  • ネットワークの健全性とパフォーマンスは複雑なテーマです。おそらく、皆さんは、それらを最適化するのに必要な知識を完全には得られていません。
  • ネットワークパフォーマンスは、膨大な数の可変的要素によって変化します。AIとビッグデータを利用すれば、人間が圧倒されるようなものを解明できます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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