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2021年12月10日

HPEのエキスパートが答える エッジの定義

そもそもエッジコンピューティングとは何を意味するのでしょうか。HPEでは、エッジを、人、場所、モノ、それらに関するデータが交わる場所と広く定義しています。
メリアム=ウェブスターの辞書には、「the line where an object or area begins (物体または領域の境界線)」と書かれています。21世紀の企業にとって、エッジは、イノベーションやインスピレーションが生まれる場所です。

多くのコンピューティング能力が、クラウド上のデータセンターから、物理環境の近くへと移されつつあります。IDCは、2025年までに、全世界でネットワークに接続されているIoTデバイスが560億台に達し、企業データの75%がエッジで生成されるようになると予測しています。

しかし、そもそもエッジコンピューティングとは何なのでしょうか。HPEでは、エッジを、人、場所、モノ、それらに関するデータが交わる場所と広く定義していますが、厳密な答えは、エッジを特定のビジネスニーズにどのように適用するかによって異なります。

エッジデバイスは、オフィスの冷房やエネルギー効率の維持に使用されるシンプルな内蔵センサーから、新たな火星探査車を製造している複雑な産業用ロボットに至るまで、多岐にわたります。これには、食料品店で買い物客が使用する自動レジ、街頭を監視するインテリジェントカメラ、医師による画像診断をサポートするAI対応のMRI装置などが含まれます。

エッジコンピューティングの意味を突き詰め、組織での活用方法を探るために、この分野のエキスパートを集めました。このドリームチームのメンバーは次のとおりです。

  • Lin Nease: HPE Advisory and Professional ServicesグループIoT担当チーフテクノロジスト兼HPE Fellow
 
  • Partha Narasimhan: HPEの子会社で次世代ネットワークアクセステクノロジーの主要プロバイダーであるArubaのCTO
 
  • Dr. Eng Lim Goh: HPEのハイパフォーマンスコンピューティングおよび人工知能担当CTO


このテクノロジーリーダーたちに、エッジと、エッジが企業にもたらす影響についての基本的な質問を投げかけました。

エッジが話題になっていますが、皆さんにとってエッジはどのような意味をもちますか?

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Nease: エッジは、タコの触手のようなものです。今、私たちがデータセンターの中心と考えている、空調設備のある大規模な多目的データセンターの外にあるすべてのものを指しています。エッジは極めて多様であり、小さなデータルームからスマートフォン、センサーまでのあらゆるものに加え、それらを接続するネットワークインフラストラクチャも含まれます。物理的な環境、またはそれを再現したデジタル環境に置かれるべきものはすべて、エッジで実行されることになります。

Narasimhan: HPEでは、データセンターの外にあるすべてのインフラストラクチャをエッジと定義することから始めています。しかしエッジは、気が付くと私たちが置かれている場所であり、私たちが求めるエクスペリエンスのことでもあります。物理的な環境をデジタル化し、そのデータからインサイトを引き出すことで、私たちが作業している空間を詳細に可視化することが重要です。たとえば、産業環境では、エッジで収集されたデータを使用して運用を改善し、安全性を高めてコストを削減したり、収益性を向上させたりできます。

Goh: エッジは、最初にデータが収集される場所を意味しており、例を挙げると、小売店のサーバーに接続されたIPカメラ、工場内の機械や電子顕微鏡に搭載されたスマート振動センサーなどです。エッジデバイスの主な特徴は、ネットワークの面では、入ってくるデータよりも出ていくデータの方がはるかに多いという点です。3つ目の特徴として、こうしたデバイスには、ユーザーがデバイスに供給できる電力量、動作可能な環境のタイプ、使用できる帯域幅の量など、何らかの制約があります。

エッジが突然、これほど注目されるようになったのはなぜですか? その原因とは何でしょうか?

Nease: ムーアの法則で、コンピュートとデータ処理をIoTデバイスの形で物理的な環境に導入できる段階に到達しました。それにより、さまざまな新しいユースケースをサポートできるようになりました。たとえば、顔認識論理をカメラに組み込み、カメラが人を瞬時に識別できるようにすることが可能です。携帯電話の基地局間を運転しながら移動していると、車のナビゲーションシステムも動作する必要があり、エッジでのデータ処理が必要となります。広大な土地で天然ガスのパイプラインを運転している場合は、低帯域幅の衛星回線しかない場合もあります。ポンプを制御している論理がエッジで実行されることになります。

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Narasimhan: パーソナルデバイスとIoTデバイスの数が増えているということは、データが増え続けていることを意味します。こうしたデータのすべてを一元的な拠点やクラウドで処理すれば、多額のコストがかかるため、多くの組織は、それらのデータを取得するだけで終わっています。しかし、そのようなデータをソースのある場所で処理できれば、コストが大幅に低下し、より多くのユースケースを実現できるようになります。重要なのは、クラウドのようなエクスペリエンスをエッジに取り入れ、拡張現実や仮想現実といった新しい低レイテンシのサービスを実現することです。

Goh: センサーの精度は向上し続けており、そうしたセンサーは増える一方です。このことは、センサーがこれまで以上に多くのデータを収集していることを意味します。一方で、帯域幅のコストは同じペースで低下しているとは言えず、そうしたデータをすべて中継すれば多額のコストがかかることになります。そのデータをローカルで収集して処理すれば、コスト効率が高まる可能性があります。それと同時に、低レイテンシを必要とするアプリケーションの数も増加します。クラウドに送ったデータの処理結果を待つ時間がないときこそ、エッジでの処理能力が必要となります。

クラウドネイティブコンピューティングやAIなどのテクノロジーは、エッジコンピューティングを活用するうえでどれほど重要ですか?

Nease: 極めて重要です。1つ例を挙げると、HPEのサーバーはエッジAIを利用して製造されています。チェコ共和国にあるHPEの工場では、システムがマザーボードに対する80もの外観検査を90秒未満で実施します。以前なら、人間が行っていたと思いますが、見落とす場合もあったはずです。AIの導入で、品質管理に関する問題の発生件数が大幅に減少しました。こうしたパターン認識をクラウドで行っていれば、10分以上かかっていたと思います。

Narasimhan: マイクロサービス、コンテナ、オーケストレーションなどのクラウドネイティブテクノロジーは、アジリティと拡張性を得るうえで重要です。状況は常に変化しており、テクノロジーの変化に対応する能力が必要となります。また、一部のアプリケーションをエッジで、その他をクラウドで実行し、お客様や環境のニーズに応じて入れ替える必要がある場合もあります。エッジでクラウドネイティブサービスを利用すれば、そうしたケースにも柔軟に対応できます。

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Goh: ほぼすべてのエッジコンピューティングの事例で、ある程度のAIまたはルールベースの機械学習モデルを使用しています。センサーがクラウドにアップロードするデータは、機械学習モデルのトレーニングに使用されます。そのモデルが、コンテナを利用してエッジデバイスに戻されます。次に、これらのデバイスが当該モデルを使用して自律的に意思決定を行います。今日のエッジデバイスは、クラウドで生成されたモデルに基づいて推論していますが、今後は、自らローカルで学習できるほど高性能になる可能性があります。

エッジにおける大規模展開の妨げとなっているものは何ですか?

Nease: 最大の壁は、複雑さです。展開、管理、監視が必要なシステムの数が、エッジでは格段に増加します。それに伴い、攻撃対象領域も拡大します。犯罪者らがビデオカメラやHVACシステムを大量にかき集めて、未だにデフォルトの管理者パスワードを使用しているごく普通のインフラストラクチャにDoS攻撃を仕掛けているところを何度見てきたでしょうか。エッジにおけるセキュリティは大きな問題となっています。

Narasimhan: もちろん、考え方です。エッジの展開を他の場合と同じように考えるわけにはいきません。ストレージやインフラストラクチャをお客様に出荷して、お客様にその展開と管理を行ってもらうのではなく、サービスとして、一元的に管理とオーケストレーションを行う必要があります。抵抗は少なくないでしょう。もう1つの大きな問題は、セキュリティとプライバシーです。お客様に代わってデータを管理するのに適したツールを提供するにはどうすればよいでしょうか。お客様の信頼を得るには、誰にPII (個人情報) などのデータへのアクセス権があり、そのプロセスがどのように管理されているのかをオープンにするしかありません。

Goh: 先ほど述べたエネルギーや環境面の制約についてですが、たとえば、車載用のエッジデバイスを製造する場合は、12ボルトのバッテリで稼働できなければなりません。ほこりですぐに詰まってしまうため、冷却ファンは使用できません。人のすぐそばで使われるのであれば、動作音も抑える必要があるなど、さまざまな制約があります。HPEは、文字どおりのエッジである、国際宇宙ステーション向けの高性能コンピューターを製造しています。制約の1つに、500ワット未満の電力しか使えないというものがありました。(編集者による注記: HPE-Cray Auroraなどのスーパーコンピューターには、その60,000倍の電力が必要です)。また、打ち上げの振動と、地球上に比べて10~100倍高い放射線レベルに耐えられるものにするという制約もありました。こうした点をすべて、設計に盛り込む必要がありました。

企業は、エッジテクノロジーの導入にあたり、他にどのような点を考慮すべきですか?

Nease: エッジにおける最大の制約は、技術面ではなく、プロセスと導入のパターンにあります。いち早くエッジを取り入れた企業は大きなメリットを得られますし、それにより新たなビジネスが生み出されることになります。

Narasimhan: 物理的な環境のデジタル化と自動化が猛烈な勢いで進められていますが、それによって生じる脆弱性の数は過小評価されています。2017年のArubaのユーザーカンファレンスでAWSが使用できなくなり、デモを1件も実施できなかったことを思い出します。車庫のシャッターを開けることも、自宅にある他のデバイスを使用することもできないと不満を述べる人の多さを見て、面白く感じると同時に不安になりました。私たちは、必要なときにこうしたものを使用できると思い込んでいるだけです。サイバーセキュリティに求められる注意力のレベルが、エッジの導入ペースに追い付いていません。

Goh: お客様には、エッジテクノロジーを検討している理由を明確にすることをお勧めします。それは、技術的な理由でしょうか。それとも戦略的な理由でしょうか。ある技術的課題を解決すればビジネス上の問題を解決でき、そのためにインテリジェントエッジが役立つ場合、私たちは、あるアプローチをとります。しかし、お客様が「戦略を変更しようとこのビジョンを掲げている。変更にすぐに着手するには、エッジが極めて有効だ」と考えているなら、まったく別のアプローチをとる必要があります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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