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2019年4月16日

2019年のブロックチェーンの展望

2019年は、コンソーシアムに支援されたパイロットプログラムにより、ブロックチェーンの活用に向けた機運が高まると予想されます。

ブロックチェーンは、メインストリームになることが期待されていながら、今一歩のところで足踏み状態にあるテクノロジーの1つです。ブロックチェーンは、暗号通貨の基盤テクノロジーとして知られていますが、その他にもサプライチェーンの安全性強化からセキュアな取引に至るまで、さまざまな分野での活用が期待されています。

ブロックチェーンにとって2019年はどのような年になるでしょうか。ついにメインストリームになれる日が来るのでしょうか。以下では複数のエキスパートの見解をご紹介します。

 

ブロックチェーン1.0から次の段階へ

ブロックチェーンが発明されたのは2008年、すなわちテクノロジー分野の時間感覚では大昔と言える10年前です。ブロックチェーンは最初に暗号通貨ビットコインの取引台帳の実現に使用され、今では当たり前のように存在しています。そのため、HPEのディレクター兼上級テクノロジストのTom Golway氏が指摘するように、さまざまな点でブロックチェーンが未だ発展途上のテクノロジーであることが忘れられがちです。同氏が指摘するように、これまでブロックチェーンは主としてビットコインなどの暗号通貨の実現に活用されてきました。

「用途が暗号通貨に限られていた段階をブロックチェーン1.0と呼びます」とGolway氏は説明します。「これに対してブロックチェーン2.0の段階では、企業間取引や企業コンソーシアムにおいて、サプライチェーンやシンジケートローン (個々の買い手に対して複数のパートナー企業が連携して行う融資) などのさまざまな分野の効率化にブロックチェーンが利用されるようになります」。

さらにブロックチェーン2.0に続くブロックチェーン3.0の段階では、IoTやAIにブロックチェーンが活用されるようになるとGolway氏は見ており、「バージョン2.0の段階に入ると、ブロックチェーンのメリットが喧伝され、人々の期待が大きく高まります」と述べています。

2019年に進展が予想される領域について、Golway氏は「2019年の注目は、コンソーシアムにより構築されるパイロットプログラム」であると明言しています。

Golway氏が指摘するように、ブロックチェーンは企業間取引に使用された場合にとりわけ効果を発揮するため、そのメリットを最大限に引き出すにはコンソーシアムの構築が欠かせません。またこうした理由により、解決すべき課題は技術面だけにとどまらず、法規制、安全性、ガバナンス、プライバシーなどに関するガイドラインとともに、ビジネス上の関係性を明確に定義することが必要であると同氏は述べています。

「ブロックチェーンコンソーシアムの構築にあたって障害となるのは、テクノロジーの側面ではありません」とGolway氏は指摘します。「難しいのはテクノロジー以外の、例えばガバナンスなどの側面です」。

Golway氏によると、ヘルスケア業界および金融サービス業界ではコンソーシアムの構築が進んでいますが、現時点ではこれらのコンソーシアムでブロックチェーンによる効率化は行われていません。2019年には一部のコンソーシアムでブロックチェーンのパイロット運用が始まると同氏は見ています。

どちらの業界でも、限定的な形では、ブロックチェーンの利用が開始されています。ボストンのマサチューセッツ総合病院では、ブロックチェーンネットワークを活用して、患者のプライバシーを保護しながら医療機関相互のデータ共有を促進することを目的に、韓国の新興企業であるMediBloc社と協働でブロックチェーンのパイロットプロジェクトが実施されています。同様にメイヨークリニックでもブロックチェーン関連のパイロットプログラムが多数展開されており、また金融テクノロジー企業のFinastra社でもシンジケートローン組成の効率化を目的に、R3 Cordaブロックチェーンプラットフォームの利用が開始されています。

Golway氏は、2019年にはサプライチェーンにおけるブロックチェーンの利用が拡大すると見ています。そのモデルケースとして同氏が挙げるWalmart社では、大腸菌の発生などの問題をより迅速に追跡して消費者の安全を守るために、食品サプライチェーンの管理にブロックチェーンを導入しています。さらに同氏が指摘するように、製薬業界でもサプライチェーンの安全性向上を目的とするコンソーシアムの設立が検討されており、その実現手段としてブロックチェーンが注目されています。

 

すべてはパイロットプログラムから始まる

ブロックチェーンを専門とするコンサルティンググループUnblocked FutureのCEOを務めるAlison McCauley氏も、2019年にはブロックチェーンを活用するコンソーシアムの構築が加速すると見ています。また同氏は、競争力の強化を目的として、このテクノロジーの導入を検討する企業が増えると確信しています。

「2019年には、ブロックチェーンリテラシーの向上に向けた取り組みを開始する企業が増えると予想されます。このテクノロジーの機能について、より多くの社員の理解を深め、最適なユースケースを見出すことが求められます」とMcCauley氏は指摘します。「また競合他社に後れを取らないように、ブロックチェーンの普及を見越して、試験運用にいち早く着手することも必要です」。

McCauley氏は、オンライン広告詐欺 (ロボットによる偽の広告クリックにより、実際には人間が見ていない広告に対して、広告主が報酬を支払わされる不正行為) との闘いにもブロックチェーンが効果を発揮すると期待しています。さらに重要な点として同氏は、2019年には金融サービス企業でも、さまざまな手法によるブロックチェーンの活用が始まると見ています。金融サービス企業が直面している深刻な課題の1つに、アカウントにサインアップしようとしている人物の身元確認が挙げられます。こうした領域でもブロックチェーンの利用が検討されており、マネーロンダリングとの闘いに役立つと期待されています。

2022年までに、全世界で1億5,000万人がブロックチェーンベースのデジタルIDを保有するようになると見込まれます。

 

出典:IDC

「現在、金融サービス企業はこの問題に多くのコストと労力を費やしており、ブロックチェーンによる効率化が期待されます」とMcCauley氏は説明します。

ブロックチェーンの普及を妨げている問題の1つとして、ブロックチェーンを使用するアプリケーションの多くでユーザーエクスペリエンスが非常に低く、設計手法も確立されていないことが挙げられます。この点についてMcCauley氏は、「2019年には、より多くのアプリケーションデザイナーが参入し、よりシンプルかつ直感的に利用可能なアプリケーションが増える」と予想しています。

ブロックチェーンテクノロジーが企業ではなく消費者によって直接利用されるようになるまでには、今しばらく時間がかかるとMcCauley氏は見ています。「ブロックチェーンが一般消費者によって利用されるようになる前に、まずは企業のバックエンドへの導入が進むと思われます」と同氏は指摘します。ただし1つの例外として、2019年には複数の大手有名企業が小規模なパイロットプログラムを開始し、ロイヤルティプログラムや得意客プログラムで、ブロックチェーンベースの暗号通貨トークンが消費者に直接発行される可能性がある、とMcCauley氏は予想しています。

 

信用とデジタルID

IDC社では、2019年以降、人々の身分証明手段としてのブロックチェーンの利用が拡大し、より多くの人が世界の経済活動に参加できるようになると予測しています。IDCレポート「IDC FutureScape: 2019年の世界のIT業界予測」によると、「身分証明の手段を持たない人は、全世界で驚くべき数に達します。15億人以上が身分証明書を保有していないことを理由に、21世紀の経済活動から事実上締め出されており、また金融サービス、医療サービス、政府サービスなどを受けられずにいます」。

同レポートによると、多くの政府機関および非政府機関 (NGO) がこの問題に対処するため、ブロックチェーンベースのIDサービスを利用して「身分証明の手段を市民に提供」し始めています。エストニア、シンガポール、およびインドでは、この方法がすでに導入されており、2019年以降、さらに多くの政府機関やNGOが後に続くであろうと同レポートは付け加えています。

ただしソリューションの構築に必要な経験を持つ人材の不足など、実現に向けてはいくつかの課題も指摘されています。必要な知識が不足しているのはエンジニアだけでなく、ビジネスマネージャー、規制当局、およびその他の関係者も同様です。そのため同レポートでは次のように警告しています。「検証可能なIDを提供する手段としてブロックチェーンは有望ですが、この取り組みは未だ初期段階にあります。大規模プロジェクトの運用に必要なストレージやネットワークなどの要件も明らかになっていません。またID管理プログラムを安全に本格運用するための基本的手順さえ確立されていないのが実情です」。

その一方で同レポートでは、2022年までに、全世界で1億5,000万人がブロックチェーンベースのデジタルIDを保有するようになると予測しています。

 

IoTとブロックチェーン

スタンフォード大学でブロックチェーン関係のコースを担当し、サンノゼ州立大学工学部に勤務するAhmed Banafa氏は、2019年に予想される最大のブロックチェーントレンドの1つとして、IoTとの組み合わせを挙げています。

「インターネットに接続されたデバイスは、デバイス同士を結び付け、データの安全性を高めるための、何らかのセキュリティシステムを必要とします」とBanafa氏は指摘します。「この点に関してブロックチェーンテクノロジーは、IoTデバイス間の通信を支えるセキュアかつスケーラブルなフレームワークを提供可能です。最新のセキュリティプロトコルでも、IoTデバイスで使用するには脆弱性が懸念されますが、ブロックチェーンはサイバー攻撃に対して高い耐性を発揮します」。

さらにGolway氏によると、2019年におけるブロックチェーンとIoTの組み合わせは、デバイスの安全性向上だけにとどまらないメリットをもたらします。同氏は、一般消費者が自宅のIoTデバイスから得られるデータやリソースを収益化することを可能にするブロックチェーンのパイロットプログラムが、2019年末までに開始されると予測しています。

さらにGolway氏は、一般家庭にIoTデバイスが浸透するにつれて、スマート電力メーターが家電やデバイスのデータ収集ハブとしての役割を担うようになり、電力使用量を継続的に追跡したり、冷蔵庫やストーブの故障率を追跡したりすることが可能になると見ています。こうしたデータは家電メーカーや公益事業会社にとって非常に価値があると同氏は指摘します。このように一般消費者がスマートメーターをブロックチェーンにつないで、自身のデータを販売することが可能になります。データは匿名化されるため、提供元が特定されることはありません。「ハードディスクなどのストレージデバイスを持っている人が、同様の手法により、ストレージクラウドを販売することさえ可能になります」と同氏は説明します。

ごく初期段階のパイロットプログラムがすでに始動しており、HPEおよびStreamr (ブロックチェーンベースのデータプラットフォーム) により、Audi Q2に搭載された通信バスから情報がリアルタイムで収集されています。このプログラムではStreamrにより、燃料消費量、場所、加速度などの情報を含むデータがストリーミングされて安全に保管されます。この取り組みが本格運用段階に入ったら、消費者はAudiに送信される匿名化データの対価を得られるようになります。

 

結論

2019年はブロックチェーンにとってどのような年になるでしょうか。多くの専門家が、2019年には複数の有望なブロックチェーンユースケースが始動するものの、その範囲は限定的かつ小規模で、確立されたビジネスモデルの変革をベースにしたものになると見ています。

この点についてBanafa氏は次のように要約します。「ブロックチェーンを活用したいと考えている企業にとって、大きなチャンスが待ち受けています。ただし、2019年における大多数のブロックチェーンアプリケーション開発トレンドに必要なのは、開発者だけではありません。ブロックチェーンを活用しようとする企業は、従業員および全体的な事業戦略を変革する必要があり、こうした取り組みは時間を要します」。

 

2019年のブロックチェーン: リーダーのためのアドバイス

  • 2019年には、コンソーシアムによって構築されたパイロットプロジェクトにより、ブロックチェーンの活用に向けた機運が高まると予想されます。
  • IDC社によると、2020年までに、全世界で膨大な人数がブロックチェーンベースのデジタルIDを保有するようになる見込みです。
  • ブロックチェーンはIoTセキュリティを大きく向上させます。ブロックチェーンテクノロジーは、IoTデバイス間の通信を支えるセキュアかつスケーラブルなフレームワークを提供可能です。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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