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2019年10月4日

ロボットと働くこととは

アドバイスが必要になるのが明日でも10年後でも、以下のヒントを覚えておいてください。

まだ職場ではロボットを見かけないかもしれませんが、次の5年から10年のどこかで状況は簡単に変わるかもしれません。ロボットはすでに、現場で人間と一緒に働いています。ロボットに与えられた仕事はダラスで金属部品のやすりをかけたり、英国で道路工事作業員と一緒に働いたり、コロラド州のレストランで寿司を握ったりと多岐にわたります。

国際ロボット連盟 (IFR) の書記長であるSusanne Bieller氏によれば、現在大部分のロボットは工場に配備されていますが、これらの人間ではない労働者は建築、飲食サービス、小売業界などでも見られるようになってきています。

これは人間にとって何を意味するのでしょうか? 学術研究者は、職場へのロボットの導入による影響を調査し始めています。例えば、ある調査によれば、工場労働者はロボットが自分たちの仕事を奪う可能性があると信じていると同時に、ロボットによって人間の仕事量を軽減できることにも気付いています。このテーマにふさわしく、タブレットを搭載したBaxterというロボットが、研究者によるこの調査の実施を手伝いました。

ダラスの学際的な金属製品製造企業であるAll Axis Machiningのオーナーであり、協働ロボットユーザーであるGary Kuzmin氏によれば、仕事を失うことは人間にとって深刻な懸念ですが、現段階では、問題になるのは主に単一の職務を実行する職業のみです。多角的な仕事をする従業員は、仕事にまつわる退屈や危険から解放され、より興味深い (そしてより安全な) 側面に多くの時間を費やすことができます。

現段階では、ロボットが人間と歩調を合わせることができるようになるには長い年月がかかると考えられています。例えば、ロボットにはまだ工具を適切に使う手先の器用さがないと言う人もいます。

そして、人間との意思伝達という面では、ロボットは決して人間に追いつけないかもしれません。「人間は、もし選べるのなら、他人とのやり取りを好みます。たくさんのコーヒーマシンをサンフランシスコに出荷し、椅子とテーブルだけを置いた空の店舗に設置するのは簡単なことでしょう。しかし、これがスターバックスにとって深刻な脅威になるとは誰も考えません」と、14本の腕を持つ小売ロボットMiniFacの発明者であり、Ideastostuff.comの経営者であるAlder Riley氏は話します。

少なくとも理論的には、労働者が仕事を失った場合、優れた従業員を引き続き雇いたい機転の利く雇い主であれば、これらの従業員を他の職務のために再教育するはずです。


ロボットは本当に人間のライバルか?

コーネル大学によって実施された別の調査によれば、賞金のかかった競技でロボットが人間を打ち負かした場合、人間は自分の能力が低いと考えることが分かりました。人間は努力することを少し怠るようになり、最終的にはロボットを嫌いになります。

「しかし、人間は賞金のかかった競技で自分を打ち負かした他の人間に対しても同じように感じるはずです」と、Bieller氏は考えます。

一方で、ロボットは他の競技者を「嫌う」ことはできません。AIテクノロジーによってロボットは素晴らしい知能を備えることができますが、感情を持つことはありません。「ロボットをチェスなどのゲームで人間に『勝つ』ようにプログラムすることはできますが、ロボットが勝つかどうかを『気にする』ことはないのです」と、Bieller氏は付け加えます。


異なるロボットは動きも異なる

現在では非常に多くのロボットが存在するため、人間と同じように、ロボットを一般化することは簡単ではありません。

産業用ロボットと呼ばれる、完全操業中の現場に導入された初期のロボットの多くは単一のタスクのみを実行するように設計され、ほとんどの人間の労働者とは物理的に異なる隔離された環境で作業をしています。一般的に、これらの産業用ロボットは人間であればすぐに退屈するような反復作業に向けて、通常は、刺激の強い化学物質や噴煙ような人間にとって有害な危険物質を伴う環境に導入されています。

光センサーやタッチセンサーの向上などの技術的進歩によって、産業用ロボットは人間と同じレベルで、もしくは人間よりも上手に塗装や溶接といった作業ができるようになっています。Bieller氏によれば、これらのロボットの一部は目の前にある物体を感知し、避けることもできます。


協働ロボットの登場

しかし、別の種類の工場シナリオに向けて、ロボットメーカーは、協働ロボットまたはコーボットと呼ばれるモジュラー型のマシン労働者を生産しています。Kuzmin氏によれば、コーボットは、さまざまな顧客に向けて複数のタイプの製造業務を行う機械工場などの製造環境に適しています。

一般的に、コーボットは複数のタイプの作業を行うようにプログラム可能です。コーボットには取り換え可能な複数の付属品またはアームが付いています。また、コーボットには、人間に物理的な危害を加える可能性を排除するために設計された安全機能が搭載されています。事実、国際標準化機構 (ISO) は、これらの仕様を明記したコーボットの標準を作成しています。

さらに、AIを搭載した一部のコーボットは、人間の「指導」によって、ピック&プレースなどの特定のタスクを完了するために必要な動きを逐次学習しています。

またコーボットでは、人間の場合に存在する物理的な制約が取り除かれるため、力仕事にも活用されています。手術用ロボットによって、医師はロボットがなければ極端に時間がかかる手術や、おそらく不可能な手術を実施することができます。この手術用ロボットによって外科医師は人体への負担を最低限に抑えた手術を行うことができ、疲労も軽減されます。

プロフェッショナルなソフトウェア開発者は、基盤となるプログラムにかなりの労力をかけています。また、プログラマーは、製造業者が作業現場でロボットと一緒に作業しているときに簡単にコマンドを実行できるように、マウスでポインターを移動してクリックするだけで操作できるGUIモバイルアプリケーションを作成しています。

 

ProGloveのディレクターであるAdam Brown氏によれば、工場環境でのコーボットの利用はますます増えているものの、そのほとんどは評価目的だといいます。Brown氏は、新しい状況を非常に詳しく把握しています。ProGloveはロボットではなくウェアラブルなバーコードスキャナーを製造しているものの、同社が製品を販売する顧客は、コーボットの使用を検討している顧客ベースと同じであるためです。

Brown氏が見てきたところでは、現在多くの企業が、「明日、5年後、10年後の計画」のどこにコーボットが適しているかを見極めようとしています。

大部分の製造業者にとって、コーボットはまだ好奇心の段階だとKuzmin氏も言います。しかし、All Axisは、すでにコーボットの実用段階へと移行している機械工場の1つです。Kuzmin氏によれば、実際のところ同社は、Universal Robotsからロボットを導入して以来、以前よりも多くの人間を雇用しています。これは一部には、All Axisがコーボットと従来の機械を統合するためのソフトウェアを作成することに焦点を当てた2つ目のビジネスを立ち上げたためです。

Axisの統合ビジネスに従事していない人間は、現場でいくつかの方法でコーボットと協働しています。ロボットは自分ではアームを交換することができないため、人間の「世話人」がそれを行います。また、人間はタブレットベースのアプリケーションを使用して、頻繁に変更されるロボットの作業をプログラムおよび再プログラムします。

Kuzmin氏によれば、現場の人間はコーボットとうまくやろうとしています。第一に、人間は企業のロボットスクールで新しい、潜在的により市場価値のあるスキルを取得することができ、業務中に有給の研修を受けることができます。


もう1つの建設的な使用方法

ロボットは建築業界でも有用ですが、この目的で使用されるロボットは、輸送が簡単であり、広いスペースを動き回れる必要があります。したがって、この業界では、初期段階にはコーボットは導入されず、移動ロボットと呼ばれる異なるタイプの機械が活用されています。従来型の産業用ロボットと同じように、移動ロボットは非常に特定的な目的のために設計されています。ただし、その名前が示唆するように、移動ロボットは工場の特別な場所に隔離されて人間から引き離されているわけではありません。

TinyMobileRobotのロボットは、道路の測量および工事とスポーツグラウンドの整備という、2つのタイプの屋外利用を目的としています。工事の面では、ロボットは、道路作業員が道路を再舗装するときに従う目印をマークします。スポーツグラウンドの整備では、アメリカンフットボールのフィールドにおける50ヤードと30ヤードのラインなど、フィールドのゴールポストの間にラインの目印を配置/再配置する単純な作業を行います。

デンマークを拠点とする同社のマーケティングマネージャーであるBertel Kirkeby氏によれば、このロボットは車のトランクに収まるほど小さく、重さは1台18キロ以下です。しかし、道路とグラウンド整備の作業員は、ロボットが方向を見失い、道や観客席、あるいはどこだか分からない場所に行ってしまうのを、どのようにして防ぐのでしょうか?

ロボットには機能の1つとして、リモートコントロール付きのタブレットアプリケーションが搭載されています。また、一部のロボットはGPSなどのナビゲーションテクノロジーに対応しています。

TinyMobileRobotのスポーツグラウンド整備ロボットは、Pioneer Athleticsによって米国で広く提供されています。同社は運動場用器具の企業であり、大学やスポーツクラブにロボットを提供しています。

工事および測量業界の顧客にはニューハンプシャー州マディソンの舗装管理企業であるSir Lines-A-Lotや、世界規模の道路建設のスペシャリストであるWJ U.K.などがあります。

WJとの最近の仕事では、移動ロボットは、M4、M6、M60などの幹線道路の改修プログラムで事前のマーキングを行いました。現場にいた人々によれば、WJのマネージャーたちはロボットの速さと正確さに驚き、一緒に作業する人間は安全面での利点に感謝したそうです。

結局のところ、事前のマーキングは、実際に道路を舗装するときに車両の運転席に座ることによって与えられる保護なしに、自動車の行き交う道路を歩き回ることを意味します。

Sir Lines-A-LotのオーナーであるChip Henry氏によれば、TinyMobileRobotのロボットはニューイングランド州中の空港にラインを引くためにも使用されています。


レストランのキッチンのロボット

現場のロボットの導入がすべてうまくいっているわけではありません。飲食サービス業界の有名な例では、CaliBurgerレストランチェーンとの6か月の契約を勝ち取った後、ハンバーガー返しロボットであるFlippyは2018年3月に、仕事の初日から一時的に解雇されてしまいました。何が問題だったのでしょうか? Flippyは人間と円滑に共同作業することができなかったのです。

子供時代にあなたが知っていた (またはあなた自身がそうだった) 人間の「優等生」のように、Flippyは他の人間とうまくやるには優秀すぎることが判明したのです。肉に調味料を振るスタッフ、マスタードや付け合わせを加えるスタッフ、お客様にランチを運ぶスタッフは、スピードの速いFlippyについていくことができませんでした。

さらに、後に分かったことですが、マシンビジョンの問題で、Flippyはバーガーをトレイに乗せるときに何度も標的を外していました。

ただし、数か月のスタッフトレーニングとロボットの改良後、Flippyは職場に戻り、それ以降は同レストランチェーンのパサデナ店で1日に300個のバーガーを返しています。Flippyは今でも試作段階ですが、混雑時に問題なく使用できるようになったら、CaliBurgerは全国中の店舗にこのロボットを導入したいと考えています。Miso Roboticsの「スマート」ロボットは、環境から学習し、時が経つにつれて新しいスキルを追加できるとされています。

Flippyは、2018年のワールドシリーズ中、ロサンゼルスのドジャースタジアムで揚げ物料理のコックとしても働いていました。また、2018年12月には、デリで使用するキッチンアシスタントとしてこの自動ロボットをWalmartがテストし始めました。

一方で、デンバーエリアのSushi-Ramaレストランチェーンに導入されたAUTEC寿司ロボットファミリーの2台のロボットは、最初から問題なくうまくいったそうです。5店のレストランのシェフでありオーナーであるJeff Osaka氏と、20人の人間の従業員は、これまで3年半の間、Maki MakerロボットやNigiri Makerロボットと一緒に働いてきました。

移動ロボットとは対照的に、AUTECのレストランロボットは据え置き式です。これらのロボットはコンベヤーベルトの定位置に配置され、人間の隣で文句も言わずにプログラムされた作業をこなします。

「人間の場合はスキルが足りなかったり、レストランがとても忙しくなって疲れが出てきたりするとミスをする可能性がありますが、ロボットは常に一定の製品を作ります」とOsaka氏は言います。

「私たちはシャリに魚の切り身を乗せて握りを作り、シート状のライスには独自の材料を入れて海苔を巻きます。寿司ロボットと一緒に働くのは、素晴らしいことだとしか言いようがありません。ロボットは病欠したり、長いコーヒー休憩を取ったりしません。まさに模範的な従業員です」とOsaka氏は断言します。

しかし、人間の従業員と寿司ロボットの間のコミュニケーションは、どちらかといえば制限されていることをOsaka氏は認めています。「私たちのコミュニケーションのほとんどは、単に彼らに『生命』を与えることです。つまり、ただスイッチを入れるだけです」


次は小売ロボット?

発明家のRiley氏は、大量のロボットが小売分野にも導入される日を予見しています。ロボットは、小売のオーダーピッキングですでに活用されています。「マシンビジョンが向上することで、商品の特定と物体操作を組み合わせることが容易になります。これにより、小売業の日常的なタスクの自動化が一層進むはずです」とRiley氏は予測します。

現在Riley氏は、自分が開発したMiniFacと一緒にサンフランシスコの小さな売店で働いています。複数のアームを持つロボットは、お客様のためにカスタムのおもちゃから義手まで、幅広い3Dオブジェクトをプリントしています。この小売ロボットの他のアームの一部は、例えばレーザーでの刻印やコンピュータ数値制御に専念しています。「私たちは、主要なお客様が自分で機械を持っていなければ作成できない、または作成する余裕がないアイテムを生産します」とRiley氏は言います。

「しかし、MiniFacは試作品です。そのため、センサーとの通信のトラブルシューティングに多くの時間をかけています」


協力のヒント

もし自分の会社で職場にロボットを導入する準備をするとしたら、そのときは成功に導くために何ができるでしょうか? 以下は、専門家から聞いたいくつかの戦略です。


ロボットを理解する

「従業員は、ロボットに何ができるかだけでなく、ロボットには決してできないことも現実的に知る必要があります」と、IFRのBieller氏は言います。

Riley氏も同意して、「企業は、従業員と一緒に働くロボットを理解するために大きなリソースを当てるべきです」と言います。「従業員は、職場のロボットのアームを、急に現れて彼らの生活を脅かす、激しく動く金属の触手ではなく、自分たちの仕事を助けてくれる、一定の範囲の動きを持って特定の動作をする一連のモーターで作られたツールとして見る必要があります」


概念をゆっくりと導入する

コーボットを購入することを突然決定し、その移行について次の日に決定事項として人間の従業員に発表するのでは、人間の従業員の熱意を高めることはできません。それどころか、恐れと怒りをかき立てる可能性があります。

そうならないように、このような技術的革新に関する展望について、従業員の間に徐々に話が広がっていくようにします。ProGloveのBrown氏によれば、ロボットという概念へのウォーミングアップとして、従業員に十分な時間を与える必要があります。

例えば、職場で「ロボットフェア」を開き、人間がロボットと触れ合う機会を提供して、実際のコーボットが到着するずっと前に、ロボットとはどういうものかを経験してもらうことができます。


チームワークを促す

現代では、チームのメンバーに人間以外も含める必要があります。実際にロボットを導入するなら、スタッフメンバーがその計画に賛同することで、会社全体としてどのような利点があるかを従業員が分かるようにしてください。

可能であれば、人間に金銭的なインセンティブを与えてください。Kuzmin氏によれば、Axisでは、コーボットと協力して生産性の目標を達成した場合、従業員はボーナスを受け取ることができます。

前述のように、ロボットは勝ちやお金にこだわりませんが、人間はどちらにもこだわります。


ロボットとの生活を楽しむ

Bieller氏によれば、ロボットと協働するためのゲーミフィケーションテクノロジーはまだありませんが、現在開発中です。「それでも、金銭的な報酬がかかったゲームで人間とロボットを競争させることはお勧めしません」と、Bieller氏は皮肉をこめて言います。

一方で、ロボットにペットの名前を与えることでロボットを人間らしくすることは、人間とロボットの仲間意識の邪魔にはならないでしょう。

例えば、WJ U.K.では、新しい移動ロボットにエリックという名前を付けています。ドイツのチェーンソー製造業STIHLの工場では、従業員はFANUC製の、梱包組み立てラインで使用される工場内のコーボットを、親しみをこめて「ハルク」と呼んでいます。

さらに、STILHでは、梱包ラインのスタッフをコーボットの開発の初期の段階から関わらせ、設計、人間工学、テストに対する多大な発言権を与えたそうです。

発明家のRiley氏によれば、彼のMiniFacにはニックネームはありませんが、それぞれのアームにはニックネームが付いています。「しかしこれは、『赤と白の塗装の、左から三番目のアームの調子が悪いな。押し出し機を交換しよう』というよりも、『今日はベッツィーの調子が悪いな。押し出し機を交換しよう』と言うほうがずっと簡単だからです

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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