2018年6月4日

コネクテッドカーテクノロジーとレンタカービジネス

Avis Budget社が、メンテナンスコストの削減と高いROIの実現を目標に、カンザスシティ都市圏において、5,000台のレンタカーをワイヤレス接続する試みを開始しました。以下では、このコネクテッドカーのパイロットプロジェクトの概要を紹介します。

現在、数多くの企業がカーテクノロジーの試験運用を実施しており、最終的にどの企業が業界の勝者となるかを予測するのは困難です。

こうした取り組みの目的は突き詰めれば利益の追求であり、多くの経営者が未来のカーテクノロジーについて、ソフトウェアやシリコンレベルの検証だけに留まらず、ビジネスケースの分析にも取り組み始めています。彼らが求めているのは、企業にとって昔ながらの重要な指標を得ること、すなわちコネクテッドカーや自動運転車テクノロジーを購入および実装した場合の投資収益率 (ROI) の検証です。自動運転車が関係する事故は、このテクノロジーの研究開発スピードを鈍らせ、政府による監督の強化につながる可能性があります。しかしながら専門家は、自動運転車テクノロジーへの関心は高い水準に維持されると見ています (ただし広範な普及までには、まだ数年かかる見通しです)。

なかでも注目すべき事例の1つが、Avis Budget Groupが大カンザスシティのミズーリエリアで昨年から開始した大規模なコネクテッドカーのパイロットプロジェクトです。このプロジェクトでは、20か所以上のAvisレンタカー拠点と総計5,000台もの車両が、同社のフリート管理プラットフォームおよびAvisモバイルアプリに接続される予定です。この取り組みから得られる経験を生かして、同社はコネクテッドカーテクノロジーをグローバルに展開するという壮大な事業計画を描いています。Avis Budget社は全世界に59万台の車両を所有しており、2020年までにそれらの車両を同社の管理プラットフォームにワイヤレス接続したいと考えています。

 

自動運転車のレンタル

Avis Budget社はコネクテッドカーテクノロジーの可能性を追求している一方で、自動運転車に対する関心は明らかにしていません。しかしながら、カンザスシティにおけるコネクテッドカーテクノロジーの試験運用が、個人、都市、企業、パートナーなどへの自動運転車のレンタル事業を立ち上げるうえで必要なビルディングブロックを同社に提供するであろうことは容易に推察できます。

Avis Budget社やHertz社のような大手レンタカー会社は、自動運転車のイノベーターがひしめく市場で、将来のための足場を築こうと奮闘しています。こうしたイノベーターの中には、世界規模の自動車メーカーや配車サービス企業の大多数が含まれており、大手レンタカー会社にとってこれらの企業は、ライバルになる場合もあれば、信頼できるパートナーになる場合もあります。

一例として、昨年Avis Budget社は、Alphabet社傘下のWaymo社と契約を締結し、アリゾナ州フェニックスにあるAvis/Budgetレンタル拠点において、Waymo社の自動運転公開試験プログラムのためのフリートサポートとメンテナンスサービスを提供することを発表しました。同様の動きとして、Apple社もカリフォルニア州で自動運転車の実証実験を行うために、Hertz社から小規模な車両フリートをリースしていると伝えられています。

「私たちは実践的な経験を積むことで、自律型車両の管理とは何を意味するのかを明らかにしたいと考えています」と、Avis Budget社の最高イノベーション責任者を務めるArthur Orduña氏は最近のインタビューで語っています。「そのため当社はフェニックスにおいてWaymo社のフリートをサポートする契約を結びました。AV (自律型車両) の実現はもはや未来の夢ではなく、現実的な目標です」。

Avis社は、カンザスシティにおける試験運用を通じて、コネクテッドカーフリートがどの程度の効率化につながり、その結果としてどの程度の収益向上が見込めるかを明らかにしようとしています。

「各車両の位置を知るための仕組みがあれば、現在手元にある車両を正確に把握できます」とOrduña氏は説明します。「また車両の状態をタイヤからオイルやガソリンに至るまで把握する仕組みがあれば、お客様に提供する車両をタイムリーに効率よく準備できます。こうしたメリットが積み重なることで、コストの削減、業務の効率化、さらにはデータ主導型企業への移行が促進されます」。

Avis Budget社がカンザスシティ都市圏を実験の場に選んだ理由の1つとして、Orduña氏は「どの程度の効率性と経済効果が得られるかを明らかにし、米国市場さらには世界市場へと事業を拡大した場合の成果を推察するうえで、十分な市場規模があった」ことを挙げています。

カンザスシティにおけるパイロットプロジェクトは、このテクノロジーの動作を実地に検証して、必要な調整を行うことに加えて、費用対効果の詳細分析に必要な情報を収集することを目的とします。

「率直に言ってROIは非常に重要です」とOrduña氏は説明します。「私たちは具体的な数字を得たうえで、(今年後半に) 分析を開始する予定です。次世代のモビリティに関しては、目を見張るような予測がなされています。しかしながら私たちはパフォーマンスや効率性に関する実データを収集したいと考えており、それらの数値が有望なものであることを期待しています」。

なお、どの程度の数値を期待しているかについては、Orduña氏は明言を避けています。

 

車両分析による総コストの削減

Avis Budget社が全世界のフリートメンテナンス予算を10%削減できたとしたら、控えめに見積もっても、年間1億ドル以上のコスト削減が可能であるとアナリストたちは見ています。2017年の同社の売上は約88億ドルです。

フリートメンテナンスにその13%が費やされていることを考えると、カンザスシティで行われている試験運用が、同社にとっていかに重要なものであるかがわかります。カンザスシティにおいてメンテナンスコストを10%削減できれば、Avis Budget社が計画している世界規模のコネクテッドカーテクノロジーの展開が十分に正当化されると、Gartner社のアナリストは見ています。Gartner社によると、トラック/業務用車両フリートの場合、一般的な予測分析プラットフォームを使用することで、メンテナンスコストを10~15%削減可能です (ただしレンタカー会社の場合は、トラックフリートほど車両の保有期間が長くありません)。

 

タイヤ空気圧に関する考察

Avis Budget社がカンザスシティで展開しているコネクテッドカーのパイロットプロジェクトでは、200を超える現行のメンテナンスプロセスおよびプラクティスが自動化されて、車両の清潔度からタイヤ空気圧に至るまで、さまざまな項目が監視および評価の対象となります。例えば、ある顧客がレンタカーを借りて、州間ハイウェイ上で時速70マイルまで速度を上げたところ、突然ダッシュボード上にタイヤ空気圧警報インジケーターが点灯した場面を想像してみてください。Orduña氏が指摘するように、「これは決して望ましいユーザーエクスペリエンスではありません」。

こうした事態を避けるために、カンザスシティにおけるAvis社の実証実験では、タイヤ空気圧が正常範囲から数ポンド高いまたは低いことが検出される都度、警報がリアルタイムでフリート管理プラットフォームに送信されるように設計されています。例えばある日のレポートにより、空港駐車場にある300台の車両のうち、20個のタイヤ空気圧に問題があることが判明したとします。このレポートを活用すれば、2か月に1度のチェックを待たずに、問題の20個のタイヤを直ちに手作業で修理できます。「こうした取り組みにより、お客様の運転中にダッシュボード上のインジケーターが点灯するような事態の回避や、手作業によるタイヤチェックの手間の省略だけでなく、結果的にタイヤの寿命を延ばすことにもつながります」とOrduña氏は述べています。

タイヤが路上でパンクした場合、レンタカー会社はレッカー代やタイヤ交換費用 (200ドル以上) を支払わなければならず、さらに1日あたり50ドルの機会損失コストも発生します。「先進的なテクノロジーは、こうしたコストの節減だけにとどまらず、カスタマーエクスペリエンスの向上にも効果を発揮します」と、Northcoast Research社アナリストのJohn Healy氏は指摘します。「レンタカーの運転中にパンクを経験したことのある顧客は、おそらくはそのレンタカー会社を2度と利用しません」。

路上走行車に関係しているすべての企業が、コネクテッドカーテクノロジーやコネクテッドカーが生成するデータに関心を持っており、自社で購入または構築していない機能を求めて、他社との連携を模索しています。「レンタカー会社は、さまざまな側面から顧客にアピールするため、車両の運転状況を検知可能なテレマティクスなどのテクノロジーの開発を進めています」とHealy氏は説明します。「すべてのレンタカー会社がこうした取り組みを行っていますが、なかでもユニークなのが、Avis社がカンザスシティで採用しているアプローチです」。

Waymo社とのパートナーシップに加えて、Avis Budget社はコネクテッドカーテクノロジーに関する能力の強化にも継続的に取り組んでいます。2013年にAvis Budget社は人気のカーシェアリング会社であるZipcar社を買収しました。また今年の早い段階で、Avis社は自社が保有する車両に、5万個のI.D. Systems社製テレマティクスプラットフォームデバイスを搭載する計画を発表しています。

さらに今年9月からは、約1万台のトヨタ社製コネクテッドカーがAvis Budget社のフリートに順次加わる予定になっています。

Avis社は2016年に、ユーザーによる同社車両の検索や車両情報へのアクセスを容易にするモバイルアプリを立ち上げ、現在では約35万人がこのアプリを利用しています。

 

コネクテッドカーテクノロジーが都市にもたらすメリット

Avis社によるコネクテッドカーのパイロットプロジェクトでは、カンザスシティに対して、エリア内を走行中の同社車両から地域の交通データが提供されます。これらのデータは、新しい道路、交通、さらには自動運転車などに関する計画の策定に役立ちます。

市当局者は手始めとして、Avis Budget社の顧客に対して、同社のレンタカーや顧客のスマートフォンを介して地域の観光スポット情報を提供することを計画しています。さらにこうしたパートナーシップを通じて、「世界最先端のコネクテッドスマートシティ」として、都市そのものをアピールすることも可能になります。

「Avis社とのパートナーシップは、コネクテッドカーから自動運転車への進化に伴って、データ交換環境がどのように変化するかを把握するうえでも役立ちます」とカンザスシティの最高イノベーション責任者を務めるBob Bennett氏は述べています。「都市と産業界は協力して、自律型テクノロジーそのものと同様に革新的で、健全かつ共生的なデータ交換協定を構築する必要があります。この点に関して、ブロックチェーン型のデータ管理および分析ツールが重要な役割を果たすと私は考えます」。

IDC社アナリストのMark Zannoni氏は、カンザスシティなどの都市によるコネクテッドカーの活用方法の1つとして、車載のモーションセンサーで突然の振動を検知することで、路上の障害物やくぼみを発見することも可能であると指摘します。「都市は、アクティブなデータベース内で車道の状態を把握できるようになります」と同氏は述べています。

Zannoni氏が指摘するように、このパートナーシップはカンザスシティにさまざまなメリットをもたらしますが、Avis Budget社の側でも顧客関係の側面で大きなメリットを期待できます。「車両で何らかの問題が発生した場合に、顧客が電話をかけてくる前に状況を自動的に把握できれば、Avis社にとってどれほどのPR価値があるかを想像してみてください」とZannoni氏は指摘します。

将来的に自動運転車が普及したときには、レンタカー会社は車載カメラやセンサーを活用して、乗客の行動をモニターすることさえ可能になると予想されます。Zannoni氏が述べているように、人間の運転手がいなくても、シートの汚損や病人の発生などのアラートを生成することも夢ではありません。

自動運転車の普及に伴うレンタカー業界の将来的な見通しは、配車サービス業界の場合と類似しており、3年前に下降期に入った業界セグメントの活性化が期待されます。「レンタカーは、人間の運転手がいらない配送車として使用される場合もあれば、多数のサンプルを運ぶ必要があるセールスマンによって1週間レンタルされる場合もあるなど、さまざまな形で利用されるようになると予想されます」とZannoni氏は説明します。「レンタカー各社はさらなる発展を目指しており、そのための手段の1つとして、競合企業を含めた他社との連携が模索されています」。

Healy氏が指摘するように、レンタカー会社は自身が進歩的であり、従来のビジネスモデルからの脱却が進んでいることを実証する必要があります。「大多数の企業は車両フリートを自社で所有および管理することを望んでおらず、レンタカー会社は車両エコシステムを変革する役割を期待されています」。

 

スマートシティにおけるコネクテッドカーテクノロジー: リーダーへの教訓

  • 業界リーダーは、スマートテクノロジーの導入を進めている都市とのパートナーシップを検討する必要があります。
  • 昔ながらのROIに焦点を当てることで、最新テクノロジーによるイノベーションを促進できます。
  • パイロットプロジェクトは、ROIを適正に見積もるのに十分な規模で実施する必要があります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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