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2020年10月2日

クラウドへの迅速な移行に続く次のステップ

多くの組織は、クラウドへと迅速に移行する中でいくつかの重要なステップを抜かしている可能性があります。この記事では、クラウドにおける長期的な成功を確実なものとする方法を紹介します。

世界的なパンデミックの影響で延期されていた数多くのクラウドイニシアチブの計画が動き始める中、大規模な組織は、クラウドアプリケーションを使用して人々を連携させ、重要なビジネス機能を支えています。また政府機関は住民向けのサービスをオンラインに移行し、食品小売店はオンラインでの販売とインバウンド顧客の要求に対応するためにクラウドインスタンスを追加しています。

少なくともしばらくの間、クラウドは多くの組織を窮地から救ってきましたが、それはどの程度の期間だったのでしょうか。クラウドの導入を加速させたことで問題は発生しなかったのでしょうか。クラウドへの移行を急いだために、安全性、持続可能性、効率、およびコスト効率に優れた将来のクラウドオペレーションの実現に役立つ可能性がある重要なステップを抜かしてしまった組織はないでしょうか。

自社のクラウドへの移行が当初の計画より早く完了したのであれば、今こそが少し立ち止まって状況を見直す絶好のタイミングかもしれません。現在のディスラプションの後もクラウドがそれぞれのニーズに対応するものとなるよう、これまでのステップを確認して現状を評価し、順序だった詳細な計画を立ててみてください。

ここからは、長期間にわたってクラウドを最適化するうえでの7つのポイントを紹介します。

 

「なぜ」から始める

Simon Sinek氏は、自身の著書である『Start with Why』において、いかなる状況でも関連付けることのできる正直な最終目標を設定することの必要性を強調し、「あなたが何をするのかではなく、なぜそれをするのかが人々の購入の決め手となる」と述べています。そのため組織は、なぜクラウドに移行するのか、移行できるからといってそうすべきなのか、ということについて考えなければなりません。

このパンデミックの中で大部分のエグゼクティブから返ってくる答えは、クラウドによって企業は差し迫った問題を解決できる、クラウドによってワークフォースを連携させることができる、クラウドによって使用量が増えてもWebサイトがクラッシュしなくなる、といった簡単なものでしょう。

いくつかのワークロードを移行すれば短期的に問題を解決することはできますが、クラウドを正しく活用するというのは、クラウドが組織にどのようなメリットをもたらすのかを長い目で見るとともに、広範なIT戦略の中でクラウドに果たして欲しいと考える役割についての明確なビジョンを掲げることが求められる長期的なプロセスです。あなたは、自社にあらゆる製品を投入して新境地を切り開くイノベーターとして有名になって欲しいと思っていますか。それとも低コストで業界をリードする企業になって欲しいと思っていますか。データの使用量を増やしたいと思っていますか。どれだけのリスクを冒すことができますか。クラウド戦略を策定するときには、こうした質問を投げ掛けることになります。

ただ単に可能だから、または短期的な問題を解決する必要があるからという理由でクラウドに移行しても、長期的な成功を得ることはできません。クラウドへの移行にあたっては、何を目標とするのか、そしてその目標を達成するうえでクラウドがどのように役立つ可能性があるのかを明らかにしなければなりません。

 

すべての問題を明らかにする

クラウドプロジェクトはあらゆるメリットをもたらしますが、これまでのやり方を変えることが求められるため、組織内の一部の人にとっては脅威になる可能性もあります。

あなたのチームが急いでクラウドを導入したのであれば、まだ反対派を取り込むことはできます。ソーシャルディスタンスのガイドラインで許されるのであれば、まずは主要関係者を集めます。これにより、誰もが質問をしたり将来の計画について議論したりするだけでなく、プロセス、役割、ツールについて思っていた不満やクラウド主導のビジネスで取り入れる必要があるその他の事柄について述べることができるようになります。

HPE Pointnext Servicesでは、3日間の体系的なワークショップでクラウド導入プログラム (CAP) の詳細に関するエグゼクティブのトレーニングを行っており、経営幹部レベルのエグゼクティブスポンサーからアプリケーションオーナー、財務担当、セキュリティ担当、GRC (ガバナンス、リスク、コンプライアンス) 担当、中央のIT運用担当、インフラストラクチャコーディネーター、データベースエンジニアまで、さまざまな領域のリーダーを関与させています。クラウド導入と同じように重要なイニシアチブでは、最初のステップとしてすべての派閥の足並みを揃えることがきわめて重要です。

 

Cloud Business Officeを置く

クラウドに関する取り組みの多くは各部門で開始されており、1人のスタッフがクレジットカードを使用してAmazon Web Services (AWS) などの実装の料金を支払っています。このような対応は、在宅勤務の期間に多く行われていたと思われ、インスタンスが3つに増えるとすぐに実装の数が30に達するものの、すべてが中央で制御することなく運用されているのが実情です。

ここですべてのクラウドアクティビティを調整するオフィスを置けば、多くの混乱が解消されます。クラウドプロジェクトは長期にわたるうえ複雑で、どのような組織にとっても (特にレガシーインフラストラクチャと時代遅れのプロセスでビジネスを行ってきた組織にとっては) 困難なものです。情報に基づく意思決定を行えないことがクラウドプロジェクトの推進を阻む最大の要因になることはわかっていますが、迅速な意思決定が可能なチームを編成すれば、そうした障害を取り除く (または少なくとも軽減する) ことができます。

Cloud Business Officeは、単なるクラウドのCenter of Excellenceではなく、最初の実装から継続的な運用に至るまで、クラウドプログラムのあらゆる側面の管理と指導を行う恒久的な運用/管理組織です。そして既得権益を持つリーダーを集結させて全員の足並みを揃え、クラウドユーザー (事業部門またはソフトウェアオーナー) をサポートする役割を果たします。

 

早い段階でセキュリティとガバナンスに対応する

最近の調査において、セキュリティの問題がパブリッククラウドの導入を阻む最大の障壁であることがわかりました。クラウドの導入を急いだ組織は、この調査結果が早い段階でセキュリティとコンプライアンスに対応する必要があり、実装を通してそうした傾向が見られるという点に留意する必要があります。

見落とされることが多いのは、企業のリファレンスアーキテクチャーの繰り返し可能なパターンに対応する、セキュリティとガバナンスの制御目標を評価するプロセスです。制御目標は、特定の企業が従う必要のある業界標準によって企業ごとに大きく異なり、こうした標準や規制が特定のクラウドプログラムにどのように対応しているのかを把握するのは容易ではありません。

HPEでは、Cloud Security Allianceが作成したクラウドコントロールマトリックスとAWS、Azure、およびGoogleの繰り返し利用可能なアーキテクチャーをマッピングしていますが、広く認められているベストプラクティスに照らして制御とテクノロジーのギャップを特定すれば、大幅に時間を節約できます。セキュリティのリファレンスアーキテクチャーを基礎から構築するのではなく、ベースラインを作成してから各自に固有のニーズに合わせるようにしてください。

 

継続的コンプライアンスを実現する

クラウドに移行する組織は、レガシーアーキテクチャー用に作成したコンプライアンスフレームワークを使用し続けるわけにはいきません。データセンター環境で識別、評価、コンプライアンスのために使用していたツールやプロセスは、クラウド実装には適しておらず、標準的な変更管理と制御のアプローチを使用してもうまくはいきません。クラウドの新しい従量制モデルには、コンプライアンスが絶えず管理される新たなレベルのガバナンスが必要です。

継続的コンプライアンスとは、規制遵守や企業のコンプライアンス、セキュリティ、リスク、およびガバナンスを一元的に管理するために、可能な限りコンプライアンスチェーンを自動化することを意味します。リアルタイムで監視と修正を行う継続的コンプライアンスモデルを導入すれば、組織が対処しなければならない問題が減るうえ、運用のセキュリティが強化され、お客様は深刻化する前にリスクを的確に把握できるようになります。

HPEでは、お客様のクラウド環境を絶えず監視してクラウドにおけるサービスの使用と使用量を制御するソフトウェアに継続的コンプライアンスのビジョンを向け、特定のガバナンスおよびコンプライアンス要件をチェックする「ソフトウェアシグネチャー」を使用して制御を行っています。

 

経済性について考える

クラウドへの移行を進める多くの企業は、コストを節約することを1つの目的として経済性について考えています。クラウドは、ニーズに基づいてサービスの使用を開始したり停止したりできるため、オンプレミスの環境よりコスト面でメリットがあるのは明らかです。

ただし、クラウドを利用するお客様は明細書を注意深く確認する必要があり、そうしなければすぐにコストが増加してしまうことになりかねません。これは買い物に行って2個で1個の値段のセール品を買うようなものであり、安い買い物のように思えますが、1個ではなく2個の商品を買っているため、結局支払う金額が多くなってしまいます。このように、クラウドではすぐに必要以上のサービスを購入してしまう可能性があります。

組織は、さまざまな戦術でクラウドの使用料を抑えることが可能です。クラウドの消費量は、効率を向上させてクラウドインスタンスを適正規模化することで削減できるわけですが、その方法の1つとして、環境のアップタイムをより効率的に管理することが挙げられます。リソースのプロビジョニングに数か月を要する傾向があるオンプレミスの環境とは異なり、クラウドのユーザーはアイドル状態のリソースのプロビジョニングを数分で解除し、生産性に悪影響を与えることなくそれらの料金の支払いを回避できます。

また組織は、使用できると確信しているレベルまで容量を事前に購入することで割引を受けられます。そして自動拡張を有効にしておけば、ピーク時の需要に対応するために容量をオーバープロビジョニングすることがなくなり、アプリケーションの負荷が最小限になったときにコストが削減されます。さらにストレージの管理も可能になり、アーカイブにクラウドストレージを活用すれば、ミッションクリティカルな本番環境用の高額なストレージの使用量を抑えることができます。

 

アジリティと制御を維持する

クラウドのコストを抑えるために取ることができる戦術的なアクションは数多くありますが、より広い視野で考え、アジリティと制御を維持しながら、クラウドだけでなくIT環境全体の投資を最大限に活用するようにしてください。

現在ではハイブリッド化が進んでいますが、クラウドに移行するのに最適なアプリケーションもあれば、そうでないアプリケーションもあります。多くの組織は、クラウドとの間でアプリケーションをバーストするとともに、クラウドとオンプレミスの複数の拠点を維持しており、1つの拠点で分析を、また別の拠点でレポート作成を行うなど、アジリティが新たな標準となっています。

このような新しいハイブリッド環境で成功を収めるために、組織は多くのイニシアチブを同時に進めていく必要があります。これに関しては、運用の規律を守ってコンプライアンスを維持し、支出が適切に行われるようにしなければならないうえ、それらの機能を自動化する必要がありますが、オンプレミスかクラウドのいずれか1つの環境でもそれは容易ではなく、複数の環境ではなおのことです。

ヒューレット・パッカード エンタープライズでは、場所にかかわらず、アプリケーションとデータにクラウドのエクスペリエンスをもたらすことをビジョンに掲げていますが、お客様は、セキュリティ、レイテンシ、ガバナンス、経済性といったクリティカルな要因に関して、その時点で何が組織に最も有用であるのかに基づいてそれらを配置する場所を決定する必要があります。

ただし、ワークロードが配置されている場所にかかわらず、お客様にはパブリッククラウドと同じようなシンプルさ、アジリティ、およびコスト面の柔軟性が必要ですが、HPEではそうした要件に対応するソリューションをHPE GreenLakeと呼んでいます。HPE GreenLakeには、可視性を向上させてこれらの懸念を緩和するのに役立つコンプライアンスやコスト管理などの機能向けのモジュールがあり、リソースは、環境全体のニーズに基づいて、マネージドサービスベースでサービスとして割り当てられます。

 

長期的な計画を立てる

では、クラウドに移行すれば、それで終わりなのでしょうか。ここまでで概説した留意事項を考えれば、そうでないことは明らかです。多くの組織では、パンデミックによってクラウドが最優先課題となりました。クラウドに移行した組織はすぐにメリットを得ており、今後ビジネスプロセスにおけるクラウドの活用を拡大するための計画を進めていますが、迅速な導入は慎重かつ長期的な計画に代わるものではありません。

将来に向けた準備を進めている今こそ、クラウドの推進を正しい方向へと向かわせるべきときなのです。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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