2020年1月10日

スマートシティの構築に向けた3つの出発点

スマートシティを構築するための万能の手法は存在しませんが、以下では都市の迅速なスマート化に役立つ3つのアプローチをご紹介します。

あらゆる都市はテクノロジーによるスマート化が可能です。しかしながら各都市にはそれぞれの事情や特徴があり、それに応じて最適な手法も異なるため、スマートシティへの道程をどのように開始すべきかの判断は容易ではありません。デジタルトランスフォーメーションを既に推進している都市もあれば、まだ着手できていない都市もあります。また民間企業が改革を牽引している都市もあれば、政府機関が中心的な役割を果たしている都市もあります。さらに都市によっては、完全な白紙状態からスマートシティの構築を開始できる場合もあります。

このようにスマートシティへの進化に向けた万能な手法は存在しませんが、変革の出発点と経路は大きく3つに分けられ、都市のデジタルステータス、民間企業の関与、政府の資金調達、ノウハウ、意志などに応じて選択することが可能です。

この記事では3つの異なる経路の概要を紹介するとともに、各都市が自身の現状を把握し、最適な経路を選択し、計画を実行に移す手段を決定する方法について説明します。

なお説明に先立って、都市およびそのITスタッフに認識しておいていただきたいのが、都市とはエコシステムであり、行った変革に対するエコシステムの反応は予測できないという点です。そのため変革の推進にあたっては柔軟な姿勢を維持し、計画を随時見直すことも必要です。スマートシティの構築は終わりのない適応の旅であり、インフラストラクチャや計画の調整を怠ってはなりません。

以上の点を踏まえて、それでは詳細を見ていきましょう。

 

市場主導型アプローチ


市場主導型アプローチでは、民間企業が既に推進している活動をベースに、都市のデジタルトランスフォーメーションを開始します。都市は民間企業と連携し、インテリジェントなインフラストラクチャとソリューションを導入するための出発点として、企業主導の取り組みを活用します。このアプローチが成果をあげている例として、サッカー人気が非常に高いヨーロッパのある都市が挙げられます。

この都市がパートナーに選択した有名サッカーチームは、将来有望な子供を対象としたエリートスクールを運営しています。このチームは、より的確な指導により子供たちの才能を引き出すために、分析、データ、およびその他のテクノロジーを活用したスクールの改革を目指していました。

しかしながらスクールは真空中に存在しているわけではなく、同チームではスクールを取り巻く環境、具体的にはサッカースタジアムとその周辺地域を含めた改革が必要と判断しました。そこで同チームは、真のサッカー体験を提供し、選手のパフォーマンスに関する詳細情報を収集し、選手の能力向上を支援するために、スタジアムを最新施設に改修しました。またファンにとってスタジアムがより楽しい場所になるよう、周辺地域への店舗、モール、シアターなどの誘致にも力を入れました。

新しいスタジアムや店舗には、インテリジェンスを組み込んだ最新のインフラストラクチャが必要でした。そこで市政府は民間企業と提携し、これらのインフラストラクチャを活用することで、近隣地域およびその住民に新たなサービスの提供を開始しました。これはWin-Winのパートナーシップであり、企業と都市の双方がメリットを得られます。

さらに周辺地域にもたらされたメリットを見た他の地域の市民からも、同様のサービスを求める声が上がることが予想され、このようにして都市全体の変革が促進されます。

 

ポイントソリューションアプローチ


ポイントソリューションアプローチでは、まずは都市の各部門が、注力すべき課題 (交通量の緩和など) をピンポイントで特定し、その解決に注力します。その際重要になるのが、ソリューションの構築に単独で取り組むのではなく、都市内の他のIT部門との相乗効果を追求することです。都市は細分化されていることが多く、部門ごとに予算、将来展望、目標などが異なりますが、関連するポイントソリューションに関して協力することで、それぞれのスマートシティ目標のすり合わせが図られます。

さらにIT組織は各部門の枠組みにとらわれることなく、市長およびその他の政府レベルとも連携する必要があります。多くの場合、市長は都市のインテリジェントな未来についてのビジョンを持っており、ITはそのビジョンに言わば便乗できます。さらに国がスマートシティの推進に力を入れている場合、その国の都市は連邦政府や州政府などから資金や専門知識の提供を受けられる可能性があります。

このアプローチの具体例を挙げてみましょう。ある都市が、最寄りの駐車場を検索できるアプリを含むスマートパーキングソリューションの構築を計画しているとします。この計画が実現すれば、人々は駐車場を簡単に見つけられるようになり、また都市の駐車場が均等に利用されて、運用効率が高まると期待されます。

一方、この都市の別の部門では大気汚染対策として、汚染が一定レベルを超えた場合に、その区域における車の走行を禁止する取り組みが進められています。このような場合、スマートパーキングソリューションを汚染対策ソリューションと連動させることで、人々が駐車場を探しているときに、汚染度が高いために現在走行が禁止されている区域に車を向かわせないようにすることが可能になります。あるいは駐車場所を探している人がクリーンな電気自動車に乗っている場合は、禁止区域の走行を許可するといったことも可能です。

このように複数のポイントソリューションを結び付け、外部の機関とも連携することで、スマートシティを自然かつ有機的な方法で段階的に構築できます。

 

包括的なソリューション


スマートシティの構築に向けた3番目の経路は、包括的なトップダウンアプローチです。このアプローチを選択するには、必要な資金をすべて確保できている必要がありますが、すべてを一から計画できます。この手法では、まずは都市の物理インフラストラクチャを構築し、その上にデジタルインフラストラクチャを実装する形になります。まずは適切なデータフレームワークとAPIを展開し、スマートシティの燃料であるデータを中核に据えてすべてを構成します。データを一般に公開したり、アプリケーションマーケットプレイスを立ち上げたりすることも可能です。マーケットプレイスを介して誰でもデータを利用できるようになれば、民間企業と都市部門の双方が、より良い都市の実現に向けて、革新的なアプリケーションやソリューションの構築を推進できます。

さらにこのアプローチを推進する場合、意思決定者や都市プランナーは、十分なデータをタイムリーに活用して、都市および市民にとって最善の判断を下せます。こうしたアプローチはドバイで採用され、さらにインドの複数の巨大都市でも現在推進されています。

 

最適な経路を選択する方法


スマートシティへの取り組みを開始するにあたり、都市関係者は何に留意すべきでしょうか。何よりも大切なのが、何をすべきかを考えすぎないことです。行動を先延ばしせず、まずは始めることが大切です。最初のユースケースを特定して、最初のソリューションの展開を開始すれば、次に取り組むべき課題が自然に明らかになってきます。

ただし新たなソリューションが新たな境界を生み出すことがないよう留意してください。スマートシティで最も大切なのはつながりの強化であり、障壁を築くことではありません。構築されるつながりにこそ価値があると認識し、常に全体像と最終目標を念頭に置いて、個別のソリューション開発に取り組むことが大切です。

一例として、ある都市がスマート廃棄物管理ソリューションの構築を決定したとしましょう。都市の廃棄物削減を目的に開始されたソリューションが、より広範な成果をあげることは珍しくありません。例えば、非効率的なゴミ収集ルートが改善される、汚染や騒音が軽減される、より清潔な都市環境が実現する、といった成果が考えられます。こうした成果を生み出すためには、何らかの選択を行う際に、常に次のステップを考慮に入れて判断を下すことが必要です。都市の改善に向けた取り組みには終わりがなく、よりよい社会を目指して継続的に努力することが求められます。

最後に、スマートシティの構築を白紙状態から開始できるのは、包括的なアプローチを採用する場合のみである点にも注意してください。それ以外の場合には、常にレガシーなシステムが存在しています。さらにシステムだけでなく、「レガシー」な都市そのもの (インフラストラクチャ、サービス、プロセスなど) も考慮しなければなりません。また関係者によって以前になされた選択にも束縛されます。したがって変革の推進にあたっては、現在のビジネスニーズに応えるだけでなく、最終的なスマートシティ構想の実現も目指しつつ、既存の環境に新たなITテクノロジーをどのように取り込むかを考える必要があります。

 

スマートシティに至る3つの経路: リーダーのためのアドバイス
 

  • 市場主導型アプローチ:民間企業が既に推進しているイニシアチブを出発点として、それらの企業と連携しながら、スマートシティの構築を目指します。
  • ポイントソリューションアプローチ: 解決すべき課題をピンポイントで特定し、都市の他部門が取り組んでいるスマートソリューションと連携させつつ、課題の解決を図ります。
  • 包括的なアプローチ: すべてを白紙状態から計画します。都市の物理インフラストラクチャ上に適切なデジタルインフラストラクチャを構築し、都市のスマート化に役立つデータを収集します。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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