2021年1月8日

ワークプレイスの新しい姿を考える

働き方が今度どのように変わるのかを予測し、ビジネスリーダーにお勧めの対策をご紹介します。

2020年の初めにパンデミックが拡大し始めたとき、2030年代にワークプレイスがどう変わっているのかを気にかけたビジネスリーダーはいませんでした。彼らが最も重視したのは、従業員がリモートでコミュニケーションを行える環境を整え、従業員の安全を確保し、ビジネスを継続させるという、最初の大きな課題を乗り越えることでした。

2020年が終わろうとしている今でも、パンデミックの影響への対処が行われています。しかし同時に、新しい働き方に適応する方法が明らかになり、これまでにない実践方法も試されています。組織によっては、パンデミックの影響でワークプレイスに対する考え方が変わったり、すでに進んでいたワークプレイスの変革が加速したりしていますが、いずれにしろ、ワークプレイスが将来どのような姿になるのかを考えるときが来ています。

どのようなワークプレイスになるのか。何が変わるのか。現在のパンデミックへの対処によって2030年代以降の働き方がどう再形成されるのか。従業員のエクスペリエンスがどう変化するのか。ワークプレイス変革に取り組む人たちにとっての成功とは何か。これらを予測し、解決策を見つけなければなりません。

何事にも言えることですが、さまざまな要因が重なることもあり、汎用的な1つの方法ではすべてに対処できません。多くの場合、ワークプレイス固有の構造と用途によって方法が異なるうえ、仕事環境が変われば、ニーズも変わります。従来のオフィス環境、製造業の現場、病院、小売店のそれぞれに、独自のコミュニケーション方法があり、顧客への対応や、ビジネス価値の創出が行われています。そうした環境ごとに、現在の重圧や、将来の変化に対する反応が異なっており、それぞれのリーダーに、従業員が耐えられるような、ちょうど良いペースの変化を探求することが求められています。

とは言え、多くのリーダーに共通しているのは、デジタル技術の利用を増やし、従業員が価値を生み出せるようにしていることです。この数年間、さまざまな業界や地域で、デジタルワークプレイスモデルへの投資が進んでおり、効率性と価格競争力を確保して、顧客を重視する方法が追求されています。このパンデミックによって、仮想環境での業務への移行が急速に進む中で、こうしたデジタルモデルが重宝されるようになりました。リモートワークが大きな役割を果たし、その他の社会的傾向が影響力を増すと、物理的な場所に関係なく生産性を維持できるハイブリッドワークプレイスモデルとしてデジタルモデルがますます活用され、それが当たり前のようになります。

このパンデミックにより、社会では、ワークプレイスの役割や意味が急に変化しました。ワークプレイスとは、もはや毎日通う場所ではありません。この変化に適応する必要があるのは明らかですが、そうした対応がどれほど重要かは、業界によって大きく異なります。次に、3つの種類のワークプレイスを取り上げ、それぞれがパンデミック後の世界でどう変わっていくのか予測を立ててみます。

 

現代的なナレッジワーカーの環境

この環境は、将来のワークプレイスの姿を、今までのところ最も明確に示す現代の仕事環境であり、はっきりとした境界がない状態で運用されています。オフィスは1つと考えられていますが、それはさほど重要ではありません。多くの従業員が自宅や移動先でリモートワークを行っています。テクノロジー企業やファイナンシャルサービス会社は今年 (2020年)、ナレッジワーカー環境を、ほぼ完全な仮想環境に移行するのに最も都合の良い状況にありました。今後は、的を絞った技術投資と、プロセス改善を行い、自社で保有する知的財産を保護する必要があるでしょう。

この環境での課題の1つは、従業員がこうした環境で果たす役割を見直すことです。オフィスはこれまで、共同作業の中心となる場所であり、ペーパーワークを行う場所であり、情報が蓄積される場所でもありました。将来のハイブリッドワークでは、ワークプレイスの提供よりも、会社とのつながりを強化する場所の提供が重視されるようになります。金曜日に自宅からダイヤルインして会議に参加できる在宅勤務は、従業員にとってうれしい特典でしたが、将来は、それが当たり前のことになるでしょう。月曜から木曜まで自宅で実務をこなし、週に一度オフィスに出向いて会議に参加し、従業員を評価したり、スタッフと交流したりすることができます。

このように環境を再構成すると、不動産にかかる費用を削減できますが、その他の投資を余儀なくされます。その1つは、従業員エクスペリエンス全体への投資であり、そうしたエクスペリエンスの実現に重要となるのが技術です。これによって、さまざまなプログラム、サービス、リソースなどを提供することで、従業員が孤独を感じず、刺激を受けながら日々働けるようになります。

従業員の安全を考慮した投資も必要になります。出勤がほとんどなくなるとは言え、オフィス内で働くナレッジワーカーの安全を守る必要があります。その対策として、デスク間の距離を空けてソーシャルディスタンスを確保したり、除菌フィルターを設置したりします。デジタル技術の活用も有効です。たとえば、オフィスに赤外線カメラを設置し、感染追跡アプリを導入すると、スタッフを介した感染を予防できます。

コラボレーション技術への投資も考慮する必要があります。2020年のナレッジワーカーの環境では、基本的な業務に必要なハードウェアとソフトウェアを従業員にすぐに提供できました。しかし、境界のない将来のワークプレイスでは、部門ごとに、さまざまなワークエクスペリエンスを得られるようにしなければなりません。現時点で整っている、汎用的なモデルに基づくリモート接続では、将来の要件を満たせなくなります。在宅勤務する5万人の従業員に対応しようとすると、深夜にプログラムをリリースする担当者への対応とは異なるレベルの接続環境、サービス品質、セキュリティを、企業として確保する必要があるのです。

 

操作と現場作業を行う環境

製造工場、石油掘削現場、建設現場といった、業務上多くの現場作業が必要な環境は、境界のない、ナレッジワーカーの環境のようには運用できません。現場での業務を考慮しながら、ワークプレイスを再設計し、共同作業、安全性、コスト効率を向上させる必要があります。

特に重視されるのは安全性です。現場作業が必要な環境では、ナレッジワーカーの環境以上に、病気の検査の自動化、赤外線カメラ、感染追跡アプリ、除菌フィルターシステムの導入といった、健康を守る最新の安全対策が必要になります。環境を見直してソーシャルディスタンスを十分に確保すれば、現場で必要な作業や、外部委託できない作業を行っている担当者を守ることができます。

こうした環境では、新しい作業の進め方が見られるようになります。その1つは、大規模な自動化によって、手作業が必要な仕事を削減することです。また、残りの手動作業を現場以外のリソースに割り当てることで、現場のリソースを強化できます。自動化すれば、組み立てから最後の梱包に至る作業を、人手に頼らなくても済むようになります。将来のワークプレイスでは、高いスキルを持つ従業員がますます必要になりますが、機械の他に、拡張現実やリモートコラボレーションなどの自動化や技術を、設計、プログラミング、微調整できれば、現場での作業員数の削減につながります。

技術導入によって、実際の操作プロセスで共同作業を行えるようにもなります。機械のメンテナンスが必要になった場合、エンジニアが現場で作業できないことや、コスト効率上、それが不可能なこともあります。拡張現実を利用すれば、現場以外にいる有能な作業者が、機械を修理したり、部下の作業者にプロセスを説明したりすることができます。

 

2つが入り混じった環境

これは、ナレッジワーカーのワークプレイスと、現場作業が必要なワークプレイス両方の側面が入り混じった環境です。病院などのこうした環境では、医師による患者データの分析や、カルテの作成といった、知識を非常に必要とする業務が重視されます。しかし、実際に患者と接する場合、肉体労働や手作業の業務が同じくらい重要になります。小売店でも、現場、現場外、仮想環境での業務が行われており、それが、将来のワークプレイスを設計する上で特有の課題となっています。

こうした環境では、これまで、最新の仮想環境への移行が躊躇されてきました。その理由は、規制要件上の懸念があったことや、顧客 (病院の場合は患者) に直接会って対応することが、長い間最善とされてきたことにあります。しかし、こうした環境でも、ナレッジワーカー環境のような運用が始まります。仮想環境での業務をますます活用し、自由に共有できるオフィス環境を作るのです。たとえば、病院ではこれまで、医師が患者の病室を直接訪ねて毎日診察を行っていましたが、これからは、リモートでスタッフと連携し、仮想環境を通じてリモートで患者を診察することが多くなります。チームレビューも仮想的に行い、効果的な情報共有の実践によって、各部門や、地域の拠点を管理します。

小売店ではオンライン販売が加速します。実店舗の役割が縮小され、そうした店舗は商品の展示や手渡しを行う場所として利用されるようになります。自動化とデジタル化が進むと、店舗を物理的に訪ねなくても済むようになります。

その他にも新しい傾向が見られ、業界では、将来のワークプレイスの運用を変更しなければならなくなります。ある業界では、パンデミックのような大きな出来事によって、需要と供給が急速に変化します。特定の製品やサービスの需要が急増するのです。医療を例に取ると、それがよくわかります。誰もが自宅で働くようになり、通信サービスの需要も増加しました。殺菌剤やトイレットペーパーといった特定の小売製品も同様です。こうした業界の将来のワークプレイスでは、俊敏な技術とプロセスを導入して、市場の急な変化を予測し、需要の急増に対応可能な供給力を備える必要があります。

プライバシーを中心とした、合理的な新しい社会契約も見られるようになります。プライバシーと言えば、世界中でさまざまな対応が取られています。時間はかかりそうですが、プライバシーに関する多くの対策が各国で標準化される可能性があります。これによってワークプレイスでは、現在と過去の記録を追跡するシステムを導入して、プライバシーがやや犠牲になりますが、パンデミックの拡大を抑制できるようになります。

 

将来を見据えたワークプレイス設計にお勧めの方法

  • 評価を実施する: 操業停止が現在運用中の環境に及ぼす影響を評価します。
  • 適応に備える: そうしたワークプレイスの課題に最もコスト効率良く対処する戦略を立てます。
  • 変化をチャンスと考える: 大きな課題の克服に備えるだけでなく、変化を、イノベーションと市場シェア拡大のチャンスとして捉えます。
  • セキュリティとプライバシーを確保する: 仕事環境を見直す上で意思決定を下すときには、これらの問題を中心に据えるようにします。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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