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2022年1月14日

これからの時代に求められるリアルタイム分析

膨大なデータが日々収集されている今日、エッジから最大の価値を引き出す方法が求められています。

Michael Lee Sherwood氏は、ラスベガスを訪れる観光客のために、彼らがストリップ通りに足を踏み入れたり、主要なホテル近くの交差点で停車したりする都度、テクノロジーを通じて利便性の向上に努めています。

Sherwood氏は、世界のエンターテインメント中心地の最高イノベーション責任者として、人々が可能な限り迅速かつ安全に街を移動できるようにするため、エッジコンピューティングプロジェクトの試験運用にここ数年来取り組んでいます。「ブラックジャック」と呼ばれるこのプロジェクトの鍵となるのが、交通カメラ、信号機、自動運転車などに搭載された100以上のセンサーからデータを収集して検査するための分析テクノロジーの活用です。

このプロジェクトはまだ始まったばかりですが、将来的には、短気な人や急いでいる人をイライラさせる時限式信号機に代えて、交通パターンを常時監視して瞬時に調整することで混雑や待ち時間を最小限に抑制できるスマートシステムを実現できると期待されています。

「私たちはデータを活用することで、すべての交差点をよりインテリジェントにすることを目指しており、その実現にはエッジコンピューティングが欠かせません」とSherwood氏は説明します。「あらゆる種類のデータを収集して分析し、数ミリ秒で結果を出すためには、エッジでの処理が不可欠です」。

Sherwood氏をはじめとする多くのテクノロジーリーダーが認識しているとおり、IoTデバイスの普及が進む中で、世界中の何十億ものコネクテッドオブジェクトから情報を収集して集約および評価し、有効活用するチャンスが拡大しています。

「IoTショーの主役はさまざまな場所で生成されるデータですが、これまで多くの組織がそうしたデータの取り扱いに戸惑い、十分に活用されてきませんでした」
IDC社、リサーチ担当バイスプレジデント兼業界アナリスト、DAVE MCCARTHY氏

こうしたことは言うまでもないことに感じられるかもしれませんが、IDC社リサーチ担当バイスプレジデント兼業界アナリストのDave McCarthy氏が指摘するように、IoTの進化が始まって最初の10年間は、多くの組織がIoTデバイスから得られるデータの活用よりも、デバイスの展開に注力しがちでした。その一因として、エッジコンピューティングが登場するまでは、こうしたデータをスピーディに処理して有効活用するのが難しかったことが挙げられます。中央のデータレポジトリとの間で情報を双方向にストリーミングする場合、レイテンシ、接続性、コストなどが大きな障害となります。

「IoTショーの主役はさまざまな場所で生成されるデータですが、これまで多くの組織がそうしたデータの取り扱いに戸惑い、十分に活用されてきませんでした」とMcCarthy氏は述べています。「そのうち利用できる日が来るだろうと、情報をとりあえず溜め込んでいるCIOが少なくありません」。

今こそこうした情報の利用に着手すべきときです。IDC社は、2023年には新規のエンタープライズインフラストラクチャの半分以上がエッジに配備されるようになり、エッジテクノロジーに対する全世界の支出額は2024年までに2,500億ドル規模に達すると見ています。

しかしながらHPEの調査によると、こうした傾向にもかかわらず、今なおITリーダーおよびビジネスリーダーの多くがエッジコンピューティング分析戦略の策定における初期段階にあります。多くのリーダーが業務効率や競争力を高めるうえでエッジが重要なことは理解していますが、人工知能 (AI) や機械学習 (ML) といった、エッジでのより効果的なデータ処理や分析に欠かせないテクノロジーもいまだ初期段階にあります。さらに多くのIT組織で、エッジプログラムを次のレベルに引き上げるための技術的な知識や経験も不足しています。

ビジョンを現実に

HPE Pointnext ServicesのAIおよびデータサイエンスプラクティス担当チーフアーキテクトのGlyn Bowden氏は、エッジコンピューティングのビジョンが現実になったと言えるのは、実配備されている何十億ものIoTデバイスを中央のデータレポジトリに接続することなく活用できるようになったときであると考えます。こうした環境では、エッジは独立して運用され、ローカルなMLモデルが観測可能な結果に基づいてデバイスやオブジェクトの動作を制御します。

一例としてスマートファクトリーでは、ベルトコンベヤ上を流れる半導体について、特定の色や形状であることが想定されます。コネクテッドカメラにより、シリコンチップの位置が間違っていたり、形状、サイズ、色などが異なっていたりする画像がキャプチャーされた場合、機器の誤動作を示唆している可能性があります。この情報に基づき、AIアルゴリズムによって機械の修理が推奨されるか、または人間の介入なしに自動的に修理が行われます。また特定された逸脱が問題ないと判明した場合には、モデルを調整することも可能です。同様に工場の照明や温度、階高、機器のモデルなど、さまざまなファクターに応じて、個々の機械向けにモデルを微調整することもできます。

Bowden氏はこうした処理を「エッジでの推論」と呼んでおり、これは数学的なロジックとルールをローカルな知識ベースに適用して、実用的な結論 (問題の機械を修理する、特定の部屋の暖房を弱める、など) を得るプロセスを意味します。AIおよびMLを分析ソリューションと組み合わせることで、こうした処理が可能になりますが、Bowden氏が指摘するように、そのためのセットアップや継続的な管理は複雑かつ困難になりがちです。そのため同氏はこうした業務をプロフェッショナルサービス企業に委ねることを推奨しています。

「技術的には毎秒1万件の意思決定が可能であっても、適切なセットアップが行われていなければ、ビジネスがリアルタイムに対応できず、十分な効果が得られません」とBowden氏は述べています。「外部の支援を得ることで、エキスパートによる適切なセットアップが行われ、コスト効率の高い運用が可能になり、安全性も高まります」。

Bowden氏は、エッジ分析のセットアップは安全面にもかかわる可能性があると指摘します。一例として、社屋に入ろうとしている人物が社員かどうかを顔認証で判断している場合、入館許可を与えるか否かを一瞬で推論する必要があります。判断に時間がかかると、警備員が待ちきれずに許可すべきでない人物を通してしまったり、入館処理が滞って社員の生産性低下を招いたりする恐れがあります。またこのようなケースでは、AIの利用が最適な解決策であるのか、よりシンプルな自動化プロセス、あるいは警備員の訓練の方が効果的であるのかを考察する必要があると同氏は指摘しています。

そして言うまでもなく、自動運転車の普及に向けては、LiDARシステムから提供されるデータを処理して、車両が近くの対象物にどれだけ接近しているかを判断するエッジ分析機能が重要になります。些細な誤りや遅延が大惨事を招く可能性があるため、現場での監視が欠かせません。

「こうした理由から、今後は推論の多くがコアデータセンターではなくエッジで行われるようになると思われます」とBowden氏は述べています。「この予測が外れることはまずないでしょう」。

継続的な学習プロセス

ラスベガスではSherwood氏がブラックジャックプロジェクトを通じてエッジの活用を進めています。その一例が数年前からストリップ通りで行われている自動運転車の試験走行です。今では運転の安全性を向上させるために、エッジでの分析により現場の状況を判断し、コマンドを自動送信することも可能です。「雨が降ってきた場合、スピードを落とすよう車両に直接伝えられます」とSherwood氏は説明します。

ブラックジャックプロジェクトを通じて、適切な質問をして適切な答えを適用するようにモデルを訓練することの難しさなど、予想外の課題が明らかになったと同氏は述べています。そのためラスベガス市では、この分野の専門知識を持つベンダーやサービス企業の支援を得て、独自のデータ分析処理の構築に取り組んでいます。

「私たちにとってこれは未知の領域であり、今なお学んでいる最中です」とSherwood氏は説明します。「しかしながら、これはその価値がある取り組みであり、多くの組織、とりわけ地方自治体は将来に向けて、何らかのエッジ分析プログラムを持つことが推奨されます。豊富なデータをすでに収集している組織の場合、プログラムを構築することで大きな成果を期待できます」。

リーダーへのアドバイス

  • エッジでの分析で重要なのは、デバイスの展開ではなく、その活用方法です。
  • 多くの組織では、必要とされる高価値データの収集がすでに行われています。
  • この分野は非常に専門性が高いため、ためらうことなく専門家の支援を求めてください。
  • エッジ分析の活用は終わりのない取り組みであり、過程から学ぶことが大切です。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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