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2019年4月16日

変化するCDOの役割

一般的に、最高データ責任者 (CDO: Chief Data Officer) の役割とは、データの管理と収益化を通じて企業の変革を推進することとされています。しかしながら、その役割は変わりつつあります。以下では4つの具体例を挙げて、CDOに求められる新たな役割を紹介します。

従来のCDOの責務は、データの保管場所がオンプレミスか、クラウドか、あるいはその両方であるかにかかわらず、データセンター内のデータを管理することが中心でした。しかしながらCDOの役割は変わりつつあります。今日のCDOは、データの分散化、民主化、商品化、共有、クラウドへのストリーミング、エッジでの増殖などに対処することを求められています。さらにCDOとCIOの関係性も複雑化しています。以下では、こうした状況が企業におけるCDOの責務をどのように変化させ、そのキャリアに影響を及ぼしているかを考察します。

CDOたちもこうした状況を座視しているわけではなく、データテクノロジーや分析モデルの進化を認識して、オンプレミスのデータセンター、ハイブリッドクラウド、およびマルチクラウド間のバランス調整に力を注いでいます。また厳しさを増す法規制に対応しつつ、ビジネスユーザーのためのデータの民主化、セルフサービス型データサービスの構築、オンザフライでのDatabase-as-a-Serviceアカウントの確立などにも 寸暇を惜しんで取り組んでいます。

しかしながら技術的な側面に加えて、社内政治の側面でも、CDOを取り巻く環境は変化しています。業務の大幅な効率化に役立つ、ダッシュボード、データ共有/コラボレーションツール、機械学習とAIなども登場していますが、どの手法を採用すべきかの判断を誰が行うのかが問題です。

CDOの役職は、少なくとも大企業では一般的になりつつあります。2017年にPricewaterhouseCoopers社が実施した調査によると、世界の大規模な公開企業2,500社中19%がCDOの役職を設けています。

 

役割は変化しても、CDOの役職は不滅

Forrester社は2017年のレポートで、「CIOの役割の変化によって5年以内にCDOは不要になる」と予測しています。

この予測はその後大きな反響を呼び起こしました。ビッグデータと分析に関する2019年の5大予測に関するenterprise.nxtの記事で、アプリケーション、データ、およびクラウド統合ツールのプロバイダーであるSnapLogic社の最高技術責任者であるJames Markarian氏は、「CIOの「I」が「Information (情報)」を意味することが忘れられがちな時代は終わった」と述べています。Markarian氏によると、CIOの役割は「インフラストラクチャとセキュリティから、企業のデータ/情報戦略の牽引」へと急速に移行しています。

すなわち状況は縄張り争いの様相を呈しており、CDOの敗色はすでに濃厚です。こうした状況を打開するには、CDOは自身の役割を上司であるCIOと競合しないものへとシフトし、両者の上位に位置する経営トップとの関係性を強める必要があります。

 

CIOの役割の変化がCDOに及ぼす影響

CIOとCDO間の摩擦は予想外のものではなく、両者の役割は、データツールの選択やデータルールの確立など、さまざまな領域で重複しています。

しかしながら、あまり知られていないのが、両者の世界観の違いです。CDOの中にはIT部門の出身でない人も多く、そのためCIOとCDOでは、保有しているスキルセットやビジネス目標が大きく異なることも少なくありません。

先頃発表されたForrester社のレポートによると、ITのバックグラウンドを持つCDOは47%で、言い換えると半数以上がIT部門の出身ではありません。Forrester社のアナリストによると、後者のCDOはビジネス部門の出身で、その内訳は企業戦略部門が13%、ビジネス分析部門が11%、マーケティング/販売部門が9%です。残りは「基幹業務、リスクとセキュリティ、コンサルティング、カスタマーエクスペリエンス (CX)、およびその他の非IT部門」で経験を積んだのち、CDOに就任しています。

CIOによる職務の浸食が進むなか、今こそCDOは、データ管理の技術的側面における支配権を巡ってCIOと争うのではなく、IT領域外のスキルで勝負することを検討すべきです。

CDOの役割をより有意義なものに変えていくために、以下のような新たな責務について考察してください。

 

あらゆる派閥の統一責任者

データの民主化は、多くの業界で共有される重要なビジネス目標です。これは組織内の誰もがデータを利用しやすくすることにより、あらゆる事業部門におけるあらゆる意志決定がデータ主導で行われるようにする取り組みを意味します。

程度の差はあれ、大多数の企業でデータの民主化が進められていますが、利害が一致しない派閥間の摩擦が生じることも少なくありません。こうした状況はCDOにとって、その豊富なビジネス知識を生かすチャンスでもあります。

「CDOは組織改革において、独自の立場から重要な役割を果たすことができます。改革にあたっては、テクノロジーの問題とは別に、共通のデータ戦略や指針の策定などで、さまざまな派閥 (DevOps、LOB、中央ITなど) 間の調整が必要になります」と、機械学習ベースのビッグデータバックアッププロバイダーであるImanis Data社でCMOを務めるPeter Smails氏は指摘します。

「当社が知る限り、ほぼすべての企業でこうした状況が見受けられます」とSmails氏は付け加えます。「そのためCDOの役職を設ける企業が急増しています」。同氏はこうした役割の変化が今後10年間は続くと見ています。

 

企業責任における良心

より厳格な新しい規制 (GDPRなど) の登場に伴い、企業はデータを保護し、個人のデータプライバシーを尊重する責任を負うこととなります。こうした規制に違反した場合は、多額の罰金が科されます。しかしながら、公益のためのデータ活用を目指している企業においても、常に正しい理由に基づいて正しく行動するためには、支柱となる良心が必要です。

「今日のCDOは、非常に重要でありながら、見過ごされがちなある責任を負っています。それは企業の「良心」としての役割です」と、データの可視化とBIプラットフォームのプロバイダーであるPeriscope Data社の共同創設者兼CEOであるHarry Glaser氏は述べています。

一例として、分類、予測、ランク付けなどにAIや機械学習データを使用する場合、「機械に任せきりでは、モラルに反する結果が導き出される危険性が高い」とGlaser氏は指摘します。CDOは、AIにより導き出された推論がビジネスに財務的な悪影響を与えないように注意するとともに、AI主導の行動が社会にモラル上の悪影響を及ぼさないように注意しなければなりません。

この点についてGlaser氏は、「CDOはデータチームのリーダーとして、AIシステムによるデータ分析に伴うリスクとその影響についての知識を生かして、AIシステムの監督者の役割を担うことができる」と述べています。

 

全社規模のコラボレーション責任者

Glaser氏によると、CDOは技術的なデータスキルとビジネススキルを兼ね備えたコラボレーションエキスパートとしての役割を求められています。今日のCDOは、データサイエンスチームを率いるだけの立場ではなく、データに関係するすべての部門と協働しなければなりません。また、スキルレベルが異なるさまざまなチームおよび個人が連携できるように支援することも必要です。

「CDOが担うべき責務の一部は明白で、具体的にはデータガバナンス、データ品質管理、マスターデータ管理などが挙げられます」とGlaser氏は指摘します。「しかしながらCDOの役割は拡大しており、ビジネス分析やデータ戦略の統率も求められています」。

「シチズンデータサイエンティストの時代を迎え、誰もが自分でデータを探索することを望んでいる今日、広範囲にわたるコラボレーションの統括は決して容易な任務ではありません」とGlaser氏は付け加えています。

 

データ戦略の執行責任者

CDOは従来、データガバナンスとコンプライアンスに責任を負ってきましたが、データアクセスの需要が増すなか、こうした役割はより手腕を要するようになっています。また今日では組織内のほぼ誰もが、各自のニーズに応じてデータを収集および処理していることも、問題を難しくしています。

CDOは、法規制に対応しながらイノベーションを推進するために、きめ細かい戦略を策定しなければなりませんが、これは言うほど簡単なことではありません。

「組織内へのデータ取り込みポイントが増加していることも、CDOの仕事を難しくしています。企業が出資しているものでも、企業のビジョンに沿ったものでもない情報源が、組織に影響を及ぼすことも想定されます」と、マネージドサービスプロバイダーのPhoenixNAP Global IT Solutions社の社長兼CEOであるIan McClarty氏は指摘します。

「CDOは、どのようなデータが人為的に持ち込まれているのかを厳しくチェックする必要があります」とMcClarty氏は付け加えます。そのうえでCDOは「執行および教育面を強化してデータの取り込みを抑制するか、あるいは逆に、膨大なデータを新たな資産として取り込んで情報の収益化を図るか」を選択しなければなりません。

データの取り込みから生成、コンプライアンスルールの遵守まで、さまざまな業務に役立つツールが数多く存在していますが、適切なルールやポリシーを作成し、どのような場合に原則を遵守し、どのような場合に妥協すべきかを判断し、公正かつ論理的に問題に対処するためには、賢明かつ戦略的なリーダーが必要です。言い換えると、こうした技術的な能力を超えた領域でこそ、CDOはその強みを発揮できます。

 

変化するCDOの役割: リーダーのためのアドバイス

  • CDOとCIOの職責が衝突するケースが増えています。いずれの役割も調整が必要で、CIOはデータ管理ストラテジストとして、CDOはデータ使用監督者としての役割を求められています。
  • 企業の良心としての役割を担う責任者が社内に存在していなければ、企業の社会的責任のムーブメントは行き詰まり、またプライバシーの侵害に対する罰金を科される危険性も増大します。CDOはこの役割に最適です。
  • データの使用と影響に関して、CIOの考え方が伝統的に内向きであるのに対して、CDOは外向きです。競争が激しく変化の速い市場で成功するために、企業は両方の視点を必要とします。そのため考え方の異なる2つの役割を維持することが推奨されます。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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