2020年7月3日

遠隔医療が医療従事者の負担を軽減し、利便性を向上

医療提供者への負担が世界中で著しく増加するなか、既存の医療制度では考えられなかった新たなテクノロジーが、治療の新しい標準になりつつあります。

新型コロナウイルスの発生によって経済と医療が急激に逼迫し、世界中に動揺が広がっています。現在のパンデミックが最終的に収束しても、しばらくすると次のパンデミックが始まる可能性があります。しかし、これが、医療サービスに変化をもたらします。そうした医療が私たちに寄り添い、これまでの医療の世界を完全に変えることになるのです。

「今目の前で発生している状況から、未来の医療を見て取れます」と、ヒューレット・パッカード エンタープライズでヘルスケア/ライフサイエンスストラテジストを務めるRich Birdは語ります。「長期的に見ると、医療は劇的に向上します」

このブログでは、枠にとらわれず変化し始めている医療を取り上げます。

 

変化のきっかけ

呼吸器疾患であるCOVID-19は、新型コロナウイルスによって発生します。急速に蔓延しており、生命を脅かすレベルに達しています。場合によっては数時間でそうした状況を招きます。感染は、数か月で世界中の国々に広がり、至る所で医療現場を逼迫させています。

多くの国で、医療スタッフが極度の疲労とウイルスそのものに苦しめられており、重症の患者が一時しのぎの病院に搬送されています。感染者が急増すると、マスクや人工呼吸器といった、特定の医療用具や医療器具がすぐに不足するようになりました。死亡者数がかつてないほど増加するなかで、研究者たちは、分野や国境を越えて協力し、医療処置、治療方法、ワクチンの発見に必死で取り組んでいます。

人類にとって最も深刻な脅威に打ち勝つには、集中した早急の対応を断固として行う必要があります。その一方で、容赦なく発生するその他の医学的問題に対処しようにも、時間、体力、リソースがほとんど残されていません。多くの場合それらも急を要する問題です。

前例のない重圧を受けている何百万人もの医療従事者を救おうと、「あれば便利」と考えられていた遠隔医療が、「絶対不可欠」なツールとして見直されています。

 

明らかになった遠隔医療の重要性

パンデミックが続くなか、遠隔医療の重要性が明らかになりました。たとえば、連邦通信委員会 (FCC) は、医療提供者の遠隔医療サービス/機器を対象に2億ドルの資金を提供するプログラムを早急に立案し承認しました。医療提供者は、そのプログラムの下、最高で100万ドルを受給できる資格があります。これは、CARES Actの一環として行われるものです。CARES Actは、2兆ドルという史上最大規模の対策法であり、COVID-19によって冷え込む経済を立て直すことを目的としています。

「COVID-19による緊急事態が医療制度に打撃を与え、リソース不足と非常に感染力の高いウイルスという問題があるときに、実際に訪問しなくても医療提供者に相談できる。これには非常に価値があります」と、Nicholas Lalla氏は述べています。同氏は、Tulsa Innovation Labsの共同創設者であり常務取締役を務めています。同氏の組織は、オクラホマ州タルサを拠点とする40億ドル規模の慈善団体、George Kaiser Family Foundationの一機関として、技術主導の経済発展を推進しています。

「COVID-19による緊急事態は、医療を利用できることがいかに重要かを浮き彫りにしました。私たちは科学とテクノロジーの力を結集して医療の提供方法を変え、地方に住む人や貧困層といった、サービスを十分に受けられない人たちに手を差し伸べる必要があります」とLalla氏は語ります。「1人の感染者が、地域または都市全体に影響を及ぼす可能性があるのです」

遠隔医療のアプリケーションの多くが、HIPAAなどの法律に準拠しています。しかし、政府規制、保険会社の制約、医学管理機関の方針が、日々緩和、または完全に廃止されつつあり、遠隔医療機器を危機的状況での重要な代替手段とすべく、その範囲が拡大されています。

「私たちは電子的に薬を処方しています。患者は、HIPAA準拠の仮想アプリを介して、医師、医療団体、セラピストの治療を受けています」と説明するのは、薬物とアルコール依存症治療を提供するJourneyPure社の最高医学責任者、Stephen Loyd医学博士です。「このアプリはFaceTimeに似ていますが、患者と、365日24時間対応のライフコーチとをつなぎ、安全なメッセージ送受信を可能にします。このアプリでは、薬の服用、日々の記録、十分な睡眠を促す通知も受け取れるため、健康的な生活を維持できます」

COVID-19とは関係のない、通常、急性、慢性の疾患には、さまざまな診断ツールと治療の選択肢が必要なため、そうしたいずれの疾患にも採用および適応できるようにと、遠隔医療の拡大が急速に進められています。

たとえば、Orit Markowitz医学博士は、Mount Sinai病院で、色素性病変と皮膚がん部門の部門長を務め、非侵襲性皮膚がんの発見と治療を専門にしています。博士はCOVID-19の発生後、仮想のがん診断を利用して、遠隔から患者の治療を行っています。

新しいツールが、通常の皮膚検査に使用されるようになり、家庭での皮膚がん検査が進んでいます。たとえば、スマートフォン向けのダーモスコープツールでは、スマートフォンが顕微鏡の役割を果たし、問題のある皮膚の斑点を医師が仮想的に診察できます。

2つ目の例は、テープを使用して色素性病変を分析し、黒色腫を診断するテストです。このテストでは、ほくろに、テープのようなパッチを貼って剥がし、皮膚の細胞を採取します。その後、採取した皮膚を検査室に郵送します。医師は、最も侵襲性の強い皮膚がんであったかどうかを、72時間以内に患者に通知できます。

「カルテや画像を早めにデジタル化したおかげで、これらがすべて可能になったのです」とHPEのRichは語ります。「あらゆる技術を利用できるようになりました」

 

将来の医療の基礎となる遠隔医療

遠隔医療はもはや、医療をわずかに支える技術とは言えなくなっており、重度ではない慢性的な病気などのさまざまな治療に、当たり前のように利用されつつあります。通常、期待されないような分野でもそうした傾向が見られます。

「従来、理学療法 (PT) は、対面でのやり取りと、直接手で触れる治療が必要でした。そのため、COVID-19のパンデミックによって、これに関わる医療従事者が厳しい状況に置かれています」とTodd Norwood氏は語ります。同氏は医学療法士、医学療法博士であり、仮想遠隔医療を提供するPhysera社で臨床サービスの責任者を務めています。

「この現場に携わる者として、私は、医学療法士が、現在の環境で自分と患者両方のリスクを管理することについて、自分自身に厳しい判断を課していると考えます」とNorwood氏は述べ、さらにこう続けます。「遠隔医療による医学療法を利用すれば、現在の状況でも、安全かつ効果的な方法で治療を継続できます。すでに、第三者の評価を受けた強力なエビデンスがあり、そうした医学療法がさまざまな症状に有効であることがわかっています。最終的には、より多くの患者が必要な治療を受けられるようにする必要があります」

「パンデミックの勢いが弱まっても、患者や医療提供者は遠隔医療の便利さを忘れそうにありません。この方法なら治療を受けやすく、感染力の強い病気から身を守れるからです。とりわけ、政府規制や医療警察によって生じていた障壁が、今なくなりつつあるのですから」とRichは指摘します。

確かに、FCCによるCOVID-19遠隔医療プログラムでは、遠隔医療の長期研究が正式に採択されました。同委員会が、遠隔医療の勢いが続くことに関心を示しているように思われます。

保険会社も遠隔医療を受け入れています。これは必要に駆られたことや、規制が変わったことなどによります。

Van Wey, Presby & Williams法律事務所の医療事故専門弁護士であり、人身傷害の専門家でもあるKay Van Wey氏によると、州法の改定が進むなか、テキサス州などの一部の州では、遠隔医療による来院を適用範囲とすることを健康保険会社に義務付ける法案が可決されました。同氏は、多くの州でCOVID-19に関する特別な法案が可決されたとも述べています。こうした法律では、健康保険会社とHMOに、遠隔医療の来院に対しても、実際の来院と同じように医療従事者に補償を行うことが義務付けられています。

 

保険の形態に変化が求められる

「UnitedHealth GroupのOptumといった大手保険会社や、Anthem社など、Blue Cross Blue Shield協会のメンバーは、遠隔医療サービスの自己負担額または補償額を一時的に軽減しました。これで、費用を気にせず治療を受けられるようになっています」と、アプリケーションベースのアルコール依存症治療プログラムを提供するRia Health社のCEO、Tom Nix氏は述べています。

「当社では、屋内退避令が出て以来、大手保険会社との契約が急増しました。結果として50%増加しましたが、それは、遠隔医療による治療を選択しなければならない、ネットワーク内のメンバーによるものでした。自己負担額の軽減が、早急な治療を求める人たちの利用を大きく後押ししたのです」と、Nix氏は指摘します。

ジョージア州など、多くの州の至る所で、遠隔医療が次々と実施されているようです。今では、オンラインと携帯電話のアプリで、遠隔医療サービスを利用できるようになっています。こうしたサービスは、薬局、従来の医療提供者、緊急医療提供者、保険会社を介して提供されています。これらすべての遠隔医療提供者がシェアを争うため、まもなく市場競争が激化するでしょう。しかし遠隔医療は始まったばかりであり、まだまだ成長を期待できます。

「いずれにせよ、今後、後戻りすることを望む人は誰もいません」とRichは語ります。「遠隔医療なら数分で終わることを、病院で何時間も待つなど想像できますか。多くの人は、それを望みませんし、そうでない人は、病院へ行くのに大変苦労します。従来のヘルスケアモデルに戻るためのしっかりとした議論は見られません。それをよくわかっているのは患者です」

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

enterprise.nxt

ITプロフェッショナルの皆様へ価値あるインサイトをご提供する Enterprise.nxt へようこそ。

ハイブリッド IT、エッジコンピューティング、データセンター変革、新しいコンピューティングパラダイムに関する分析、リサーチ、実践的アドバイスを業界の第一人者からご提供します。

enterprise.nxt
ニュースレターのご登録

enterprise.nxtから最新のニュースをメールで配信します。