2018年6月18日

テクノロジーリーダーが2030年までに世界の主な問題の解決を支援

HPEは、世界が直面する難問のいくつかを2030年までに解決するために、世界経済フォーラムを始めとするパートナーを募っています。対象となるのは、金融サービス、医療、製造、輸送の4つの産業です。

Hewlett Packard Enterpriseは、新たな取り組みを通じて、世界的に極めて重要な問題のいくつかを解決したいと考えており、HPEと共に社会、文化、経済、環境に関する課題に取り組むよう他の組織の協力を求めています。

目標は、2030年までにいくつかの分野で大幅な前進を果たすことです。対象となる世界的な問題を解決するために、どのような行動を起こせばよいか、業界はどのように変化していくか、どのようなロードマップが必要になるかといった事柄に取り組みます。

1つ確かなことは、このような目標は達成可能であるということです。Hewlett Packard Labsの最高技術責任者兼ディレクターであるMark Potterは、「テクノロジーに関して言えば、無限の将来性と壮大な規模のプロジェクトがあることで、私たちは未来について統一した見解を持っています」と述べています。「しかし、そのどれだけが現実的なのでしょうか?」

世界は猛烈な速さで変化しており、テクノロジーを利用すれば人々の生活を改善できます。事情をよく知らない人でさえ、その前兆を耳にしています。たとえば、キャッシュレス経済、ロボットの作業員、自動運転車、時速500マイルでチューブの中を疾走する輸送システムなどです。今日、それぞれのテクノロジーはまさに実用化されようとしています。

HPEは、世界経済フォーラムを含むいくつかのパートナーと協力して、この野心的な取り組みの目標を達成しようとしています。この取り組みは、金融サービス、医療、輸送、製造の各分野に重点を置いた複数の要素からなっています。たとえば、ブロックチェーンやその他のテクノロジーを使用した、消費者にとってさらに安全な金融サービスは、見込みがあると判断されています。

2030年までに、どこまでたどり着くことができるでしょうか。Hewlett Packard LabsのCTO兼ディレクターであるMark Potterは、テクノロジーが真の意味で変革をもたらすために欠かせない点について説明しています。

 

金融サービス

銀行業界は、人々がお金を扱い、使う方法を変えようとしています。最も重要な課題は、金融取引のセキュリティ強化です。

ビットコインは2018年にウォール街で話題となり、その価格は劇的な上昇を遂げましたが、最近では他のほとんどの代替デジタルキャッシュと同様、急激に落ち込んでいます。しかし、その長期的な将来はどうでしょうか。識者の意見は分かれています。暗号通貨が2030年までに市場の5〜10%を占めるようになるとしたら、インタビューを受けたエグゼクティブの中には驚く人もいるでしょう。

暗号通貨が話題になるのはなぜでしょうか。暗号通貨の基盤となっているテクノロジー、つまりブロックチェーンを利用すると、ほとんどの不正行為を排除できる可能性があるためです。

  • 経済はキャッシュレスに向かっています。2030年までに米国の取引の80%はキャッシュレスになるという見解が一般的です。
  • 消費者を対象とした銀行の役割の大部分がなくなり、ロボットのアドバイザーやAIが普及します。

 

製造

消費者はカスタマイズを求めており、それには垂直統合が欠かせません。テクノロジーは製品の「マスカスタマイゼーション」を可能にして、製造業に革命をもたらすでしょう。IoT、3D印刷、AIのテクノロジーを利用すると、製造業では、量産時と同程度の自動化と効率性を維持しながら、小規模なバッチでも完全な部品を作成できるようになります。

一般的に製造業では、マスカスタマイゼーションの前提条件となるのは「垂直統合」、つまり、運用テクノロジー (OT) とITシステム/プロセスの集約です。これらの2つの要素を集約することは、現在の製造業において特に重要な問題の1つです。ただし、一部の業界リーダーは、垂直統合が成功するのは短期的には大企業に限られ、中小企業に浸透するのは2030年以降になると予測しています。

 

IoTの普及

さらにIoTがあります。このテクノロジーは製造業に完全に統合されようとしています。次の段階は、分析機能の向上によってIoTが役立つようになる領域を特定することでしょう。

 

迫り来る熟練労働者の不足

労働力の不足によって自動化が進み、製造業が米国に戻ってくる可能性があります。Deloitte社によれば、米国の熟練した製造業労働者のうち270万人 (22%) が今後10年間で引退します。これは驚異的な数字です。この状況が発生するタイミングで、製造業では新たに70万人の熟練労働者を確保する必要が生じます。最終的に、業界は200万人の労働者の大規模な不足に直面することになります。労働統計局は、米国の経済成長を達成するには、今後10年間に300万人の新たな労働者が熟練を要しない労働のために必要になると付け加えています。こうした厳しい現実を踏まえて、米国の製造業者は、労働力の縮小を埋め合わせるため自動化に大きく依存する可能性が高いでしょう。

 

医療

専門家は、データを活用および統合して患者の予後を改善するテクノロジーに大きな機会を見出しています。

医療とIoTが、ウェアラブルなものから摂取可能なものに至るまで共通の基盤を持つようになり、症状管理と環境モニタリングの間のリンクが自動的に行われるようになると、人の健康状態を調べるために長期の入院や侵襲的検査は不要になるでしょう。幅広い全体的なアプローチで患者のニーズと行動を把握すると、より効果的ですぐれた治療が可能になります。

 

コスト抑制

現在のところ、創薬のプロセスは膨大な時間と費用がかかるうえ、当て推量で行われている部分もあるため、候補となった化合物のうち、研究、治験、審査を経てアメリカ食品医薬品局の承認を受け、大規模生産に至る割合は、わずか数千分の1にとどまっています。

1つの薬を開発する費用は膨大な額になります。タフツ大学医薬品開発研究センターの調査によれば、薬の開発には25億ドルを超える費用がかかります。別の見積もりではさらに高く、40億ドル、さらには110億ドルにものぼります。しかし、AI、クラウドコンピューティング、IoT、そしてビッグデータを活用することで、効果の高い新たな医薬品の開発と流通にかかる費用と時間が削減されています。

 

輸送

人々が都市部に移動するにつれて、交通需要に応えるために都市の既存のインフラストラクチャは変化する必要に迫られます。その上に、さらに手軽で環境に優しい通勤、安全な運転、多くの移動手段が実現されます。今後のトレンドについて以下に説明します。

インターモーダルモビリティ: インターモーダル輸送の構想は、さまざまな輸送方式の間でシームレスな統合を実現するというものです。たとえば、旅行者はいつでも、A地点からB地点までの最適な輸送方式を組み合わせて案内を受けることが望ましいでしょう。実際のところ、どのような目標に向かっているのでしょうか。一部のフューチャリストは、インターモーダルは旅客輸送から始まると主張していますが、依然として数多くの課題があります。他の人々は、米国で輸送方式の完全な統合が実現するのは2040年以降になると予想しています。

車とモノとの通信 (V2X): 自動運転車は大きな注目を浴びていますが、今後数年で運転についての体験は他の多くの面でも変化していくでしょう。V2Xとは、自動車が他の車や、街灯、建物、サイクリスト、歩行者といった周囲の交通システムと通信できるようにするためのテクノロジーです

ただし、このような自動車が道路に変革をもたらすには、自動運転車のための規則が必要になります。未完成のテクノロジーについての規則をどのように策定できるでしょうか。

カーシェアリングと相乗り: Global Market Insights社の予想によれば、カーシェアリングの市場は35%の前年比成長率で拡大し、2024年までに全体で165億ドルの収益をもたらします。事実、スタンフォード大学のある教授による最新の調査では、車の個人所有率は2030年までに80%低下すると予測されています。

公共輸送機関のイノベーション: 公共輸送機関の話題の中には、高速鉄道やハイパーループよりもさらに興味をかきたてるものがありますが、その中で将来性の高いのはどのテクノロジーでしょうか。ヨーロッパやアジアでは、政府が交通機関に積極的に関与しているため、高速鉄道は急成長を遂げています。コペンハーゲンやバンクーバーのような都市では、今や自動運転の鉄道さえ存在しています。米国の状況はさらに複雑です。

一部の業界ウォッチャーは、ハイパーループについて楽観的な見方をしています。高速鉄道のようにインフラストラクチャの課題がないためです。Elon Musk氏による先進的な音速輸送システムの構想は、早ければ5年以内にプロトタイプが完成し、2030年までには広く採用される可能性があります。

出典: 業界動向の記事『Future:Now』から抜粋

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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