2021年1月8日

世界最速のコンピューターが6つの点で暮らしを変革

好きな車、映画、信頼する医師や銀行。そのすべてを支えているのがスーパーコンピューターです。

ボブ・ディランの名言にあるように、風向きを知るのに天気予報士はいりませんが、長期予報を行ったり、カテゴリ5のハリケーンの進路を予測したり、数十年にわたる気候変動の被害をシミュレーションしたりする場合には、スーパーコンピューターが必要です。

その名前が示すように、こうしたマシンでは数千基のプロセッサーが同時に動作し、考えられないほどのボリュームのデータに対する演算が毎秒数千兆回行われています。

科学者は、このような非常に処理能力の高い電子機器を使用して、人類にとって最も厄介な問題のいくつかを解決しており、ローレンス・リバモア国立研究所のSierraのようなマシンが、熱核弾頭の爆発半径を計算したり、人間の心臓の詳細なモデルを作成したりしています。また、オークリッジ国立研究所のSummitは、より優れたバッテリを設計したり、超新星のシミュレーションを行ったりする目的で使用されており、アルゴンヌ国立研究所の近く稼働を開始するエクサスケールシステムであるAuroraでは、研究者が人間の脳をマッピングしたり、核融合を活用したりすることが可能になります。

スーパーコンピューターはすでに、私たちの大部分が気付かない点で生活に影響を与えており、ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) による進化は、天気を確認したり、車で診療所に行ったり、映画を観たり、銀行口座を管理したりといった、私たちの多くが毎日行うようなことに組み込まれています。

ここで、より一般的な事例について見てみましょう。

 

天気: 傘は必要か

地球の大気中では常に (2の後に44個の0が続く) 2x1,044の分子がぶつかり合っており、私たちが天気と呼ぶものを作り出していますが、こうした粒子のごく一部の相互作用を予測する場合でも、数十億回の計算が必要です。

24時間の天気予報に初めて成功したのは、ペンシルバニア大学のElectronic Numerical Integrator and Computer (ENIAC) であり、1950年の4月のことでした。当初第2次世界大戦中に弾道を計算する目的で作られたENIACは、多くの人から世界初の汎用コンピューターであるとみなされています。

コンピューターによる予報は1950年代中頃までに一般的となり、アメリカ国立気象局は現在、IBM社とHPE Crayが提供する、それぞれが一般的に使用されているマシンの約1万倍の処理を行える部屋いっぱいのサイズの2台のスーパーコンピューターを使用しています。天気予報の精度は年月とともに着実に向上し、今日の5日間の予報では、一般的に90%の精度が目標とされていますが、10日間の予報に関しては、今もなお精度は半分未満となっています。そのため、長旅の荷造りをする場合は、念のために傘を持っていくのがいいでしょう。

 

自動車: 出発

スーパーコンピューターは、30年以上にわたって自動車のスピード、安全性、およびエネルギー効率の向上に貢献してきました。日本の自動車メーカーは1980年代後半にHPCの使用を開始し、マツダ株式会社は、1993年に発売したRX-7の流線形の「エアロウェーブ」ルーフラインを設計するために800万ドルのCrayスーパーコンピューターを導入しました。また2004年には、General Motors社が自動車の衝突試験の結果をシミュレーションする目的でスーパーコンピューターを購入しました。そして自動運転車の時代へと移行するのに伴って、HPCは道路上にあるのがごみ袋なのかベビーカーなのかを判断できるよう自動車のAIシステムをトレーニングするうえでさらに重要な役割を果たすようになると思われます。

また給油のために立ち寄るガソリンスタンドでもスーパーコンピューターが役に立っており、石油化学会社は3次元地震波モデルを活用して油田の場所を予測しています。そして最終的に燃費の悪い車が完全な電気自動車に取って代わられるときには、スーパーコンピューターが、長持ちする電気自動車用のバッテリの設計に貢献したことがその理由となるかもしれません。

 

医療: AIの医師による診断

今年はもうインフルエンザの予防接種を受けましたか。スーパーコンピューターは、鳥インフルエンザと豚インフルエンザのワクチンの開発で重要な役割を果たし、現在では、COVID-19の治療法の研究で大いに活用されています。

医療研究者は、AIとスーパーコンピューターを使用して人間の臓器のデジタルツインを作成し、実際に人間に処置を施す前にどのような反応があるのかを確認しています。また今日では、ヒューレット・パッカード エンタープライズのBlue Brain 5が、人間の脳を理解するうえでの重要な一歩となる、げっ歯類の新皮質内にある880億のシナプスのマッピングに役立てられています。

そして最終的に、ハイパフォーマンスコンピューティングは、各自の遺伝子構造に合わせて治療法が調整される、新時代の個別化医療の先駆けとなることが期待されています。

 

金融サービス: その支えとなるスーパーコンピューター

外国でクレジットカードを使用して、購入の確認を求められた数分後に銀行から電話がかかってきたことはありませんか。そのような電話がかかってくるのは、HPC上で動作する機械学習アルゴリズムが活用されているからです。銀行詐欺が行われそうになった時点でそれを特定するには、とてつもないコンピューティング性能が必要とされますが、たとえば、1時間に1億6,500万件の取引を処理するMasterCard社は、各取引に約200万個のルールを適用することにより、わずか数秒で詐欺を特定しています。

金融サービス機関はその他にも、サイバー攻撃を検出して撃退したり、信用リスクや投資を評価したり、規制を遵守しているかどうかを確認したり、価格を予測したり、高速取引を管理したりなど、さまざまな面でスーパーコンピューターを活用しており、次に銀行のカスタマーサービスに電話をかけたときには、感情の状態を評価して適切な担当者に取り次ぐことができるAI主導のボットが応答するかもしれません。

 

エンターテインメント: 今晩何を観たいですか

最近のメジャーな映画の中でコンピューター生成画像 (CGI) を一切使用していないものを見つけるのは困難であり、2018年には、すべてをCGIで制作した映画が約60億ドルの興行成績を上げています。そしてアニメーションが高度化するのに伴って、さらなるコンピューティング性能が必要とされるようになり、(2014年に公開された) ディズニーの「ベイマックス」に登場する、柔らかい白色の主人公であるベイマックスは、それぞれの物体に反射する100億の光線をシミュレーションする、5万5,000コアのスーパーコンピューターを使用してレンダリングされました。

そしてその後、(2019年には)「キャッツ」が公開されましたが、それについて多くは語りません。

とはいえ、CGI映画は皆さんが思っているよりはるかに長い期間もてはやされ、(1958年に公開された) アルフレッド・ヒッチコックの「めまい」では、第2次世界大戦時代の対空照準器を使用して、スピログラフのようなオープニングタイトルが作られました。スーパーコンピューターが中心的な役割を果たした初めての映画は、1984年に公開された「スター・ファイター」であり、この映画ではCray X-MPを使用して27分間の特殊効果映像が作成されました。

 

天文学: 可能性は無限

私たちは、目や望遠鏡で夜の空を眺めて近い過去をのぞき見ていますが、天文学者はそのときにスーパーコンピューターを使用して130億年前に目を向け、ビッグバンの直後に宇宙がどのような状態であったのかをシミュレーションしています。HPCは、銀河系がどのように誕生したのかをモデル化したり、ブラックホールの深さを詳しく調べたり、暗黒物質の謎を解明したりする目的で使用されてきました。

これはおそらく、スーパーコンピューターが最も長く多大な影響を与えてきた領域であり、それによって宇宙とその中に存在する地球がどのように形成されてきたのかについての私たちの理解は変わりました。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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