2019年10月18日

小さな挑戦、大きな効果: 決済システムの概要

決済業界は大きな変革の途上にあり、ブロックチェーン、モバイルウォレット、非接触型チップクレジットカード、電子決済プラットフォームなど、複数の新しいテクノロジーによって効率性の向上が約束されています。ただし、決済は可能でも、すべての金融テクノロジーが利益を生むわけではありません。

現在のビジネスの包括的な目標は、2つの要素から成ります。リアルタイムで行動することと、実行にかかる費用がゼロコストとなるまで効率性を向上することです。この努力は、基本的なものから最も難解なものまで、すべてのプロセスに当てはまります。特に決済処理料金が高く利ざやが少ない場合、決済処理は重要な事例となります。

「大規模な小売り業者やスーパーの利ざやは非常に少ないのです。例えば、大規模なスーパーの利ざやは1.5パーセントで、支払うインターチェンジフィーも1.5パーセントです」と、Toshiba Global Commerce Solutionsの戦略およびビジネス開発部門エグゼクティブディレクターであるJohn Pistone氏は言います。「10パーセントのクレジットカード使用者を現金に変えることができたら、年間数百万ドルを節約し、これらのお客様に対する利ざやを倍にすることができます」

しかし、すべての新しい金融テクノロジー (フィンテックとも呼ばれます) が問題なく支払い可能だからといって、利益が生まれるとは限りません。

「Stripe、PayPal、Squareのようなサービスはとても便利です。どれも簡単に統合して支払いを受けることができます」と、自動車買取業者であるSellMaxの共同創立者、Sean Pour氏は言います。

ただし、高い手数料など、欠点は以前の金融サービスと似たようなものです。「(これらのサービスは) 取引手数料を請求し、それが積み重なっていきます」とPour氏は説明します。「通常は、取引ごとに2.9パーセントと30セントです。その他の欠点は、通常はお金が2日間保留されることです。そしてStripeの場合は、支払いを受けるまでに最大で2週間かかることがあります。ただし、これらのサービスを利用すれば非常に素早く支払いを受けることができ、業務を加速させることができます」

 

金融サービスの変革

現在の、また今後登場する非常に豊富なフィンテックが決済業界を変革しつつあり、新興企業の参入の余地が生まれています。

「フィンテックによって、小規模企業でも大手の銀行や金融機関と競合することができます。これは、金融テクノロジーサービスの焦点が、最大であることから、最も素早く最も効果的であることへとシフトしたことを意味します」と、中小企業向けのオンライン金融業者であるUnited Capital SourceのCEO、Jared Weitz氏は言います。
このシフトによって、最大規模の金融機関にも変化が起こっています。

「控え目に言っても、フィンテックによって、金融機関はシステムと価値提案を根本的に見直す必要があります」と、クラウドベースのフィンテックプロバイダーであるHighRadiusの戦略的パートナーシップ部門責任者、Vikram Gollakota氏は言います。これらの従来型の金融サービス組織は、アップデートに踏み切るはずです。決済処理は通常、処理、清算、確定するまでに数日がかかるためです。「新しい決済テクノロジーは、リアルタイムの取引を目指しています」とGollakota氏は言います。「リアルタイムの決済は非常に現実的です。すでに39か国で、即時決済が導入されています」

金融サービス企業は、サービスのメニューと、サービスを提供する顧客の種類にも変化をもたらしています。「Revolut、Monzo、Monese、Atom bankなどのフィンテックは、信用情報のない文字通り数百万人という顧客にサービスを提供し、銀行ではまだ不可能なレベルのリスクを取っています」。エンドユーザーの認証および検証サービスとデータプライバシーコンプライアンスサービスを提供するBASIS IDのCEO、Akim Arhipov氏はそう説明します。

フィンテックサービスは変化しているため、今こそブランドの差別化のチャンスです。特に、決済サービスは、急成長する顧客体験の動向の非常に重要な部分を占めます。

スターバックスは、決済サービスが商品の特徴となっている主要な例です。スターバックスは、決済をその有名なカスタマーサービスプロトコルに組み込みました。「スターバックスには、Appleよりも多くのモバイル決済ユーザーがいます (2,340万人)。そして、米国の売上の39パーセントはロイヤルティプログラムによるものです」とPistone氏は言います。

スターバックスのモバイルアプリケーションの機能によって、ユーザーは事前に注文し、ロイヤルティポイントを獲得して、ポイントを使って注文の支払いができます。「スターバックスは、モバイルの体験と店内の体験を組み合わせてデジタルフライホイールという戦略を確立しています。これは、購入データからインサイトを収集し、パーソナライズしたオファーや情報を買い物客に提供するというものです」とPistone氏は説明します。「オファーがうまくいけば、売上に変わります。顧客は非常に円滑に支払うことができますし、購入はロイヤルティ報酬プログラムに還元されるために、顧客は引き続き興味を持って戻ってきます。そして、そのサイクルが続くのです」

 

フィンテックのラインナップ

決済システムには多くのテクノロジーが関与しています。フィンテックの種類が異なれば、その目的も異なります。そのため、1つの目的に対しては最上位のテクノロジーであっても、別の目的に対してはランクが低い場合があります。ただし、通常は、以下が一般的なフィンテックの品評です。

モバイルウォレットは、取引におけるお客様側の利便性のためにあります。モバイルウォレットは円滑で、予算ツールなどの追加機能が付いていることがよくあります。
ただし、利益を受けるのは消費者だけではありません。企業にとって、モバイルウォレットは比較的実装の費用が安く、導入も簡単です。

「企業もモバイル決済から利益を得ることができます」と、プロフェッショナルソフトウェア開発企業であるScienceSoftの企業モビリティリサーチャー、Anastasia Yaskevich氏は言います。モバイル決済は素早くシンプルであるため、「行列を減らし、購入しようと思ってから取引を終えるまでにお客様にかかる時間を削減することができます」
Yaskevich氏はこう続けます。「大手のブランドは支払いとロイヤルティプログラムを組み合わせた独自のアプリを開発しています。一方で、Apple PayやGoogle Payなどの既存のモバイルウォレットを喜んで使用している企業もあります。小売り業者に必要なのは、NFCまたはQRスキャナーを搭載したPOS端末だけです。小規模な企業は、販売員が簡単にスマートフォンに取り付けることができるポータブルNFCリーダーを導入することもできます」

ピアツーピア (P2P) ウォレットは、急速に人気を高めています。「PayPalが所有するモバイル決済サービスVenmoのライバルであるP2PウォレットのZelleは、実際はWells FargoとBank of Americaが率いる229行の銀行のネットワークです。2018年の取引は4億3300万件で、決済合計は1190億ドルにも上りました」とPistone氏は言います。「P2Pの利点は、手数料に関する中間業者の必要をなくし、現金またはクレジットカードの必要性を排除し、そしてZelleやVenmoの観点から言えば、消費者インサイトにつながる膨大なデータを収集できるツールとなることです」

暗号通貨には有益な点が多くありますが、ビットコインなどの暗号通貨で支払ったり、支払いを受け入れる準備ができている消費者やビジネスはほとんどありません。シナリオをより複雑にしているのは、ブロックチェーンがまったく関与していないことです。選択肢の点でいえば、一部の暗号通貨は別の暗号通貨よりも便利です。

ある時点でブロックチェーンの立て直しがあり、優れた面のみが残るはずです。それでも、考慮するべき重要なポイントが他にもあります。

「ブロックチェーンの主な利点は、個人が即時に決済できることです。通常、ほとんどの決済処理業者は数日間お金を保留にしますが、ビットコインを使えばすぐにお金が手に入るため、キャッシュフローが滞りません。さらに、暗号通貨であれば多くの不必要な銀行手数料を支払わずに済みますが、政府が保証する通貨のセキュリティは失われます」とPour氏は言います。

しかし、金融機関は潜在的な利点に気付いています。「JPモルガン・チェースは、決済時点の支払いを改善するためにブロックチェーンを使用しています。彼らは、インターバンク インフォメーション ネットワークと呼ばれる75行の銀行のネットワークを作りました」とPistone氏は言います。Pistone氏によれば、このネットワークは、フィンテックのスタートアップが彼らのエコシステムのために製品を開発できるようなエコシステムを生み出そうとしています。これによりJPモルガン・チェースは、事業を脅かす存在としてのスタートアップと競合するのではなく、パートナーとなってその関係性を活用できます。

モバイルとブロックチェーンの組み合わせは、あらゆる場所で台頭しています。最も顕著なのはソーシャルメディアネットワークとメッセージングアプリです。例えば、AlipayとWeChat Payはメッセージングアプリを使用してお金を動かしています。

「Facebookは現在、この分野に参入しようとしています」と、Pistone氏は、メッセージングアプリのWhatsAppを使いながら言います。Facebookは特に、3億人のWhatsAppユーザーがいるインドに利点を見出しています。

「Facebookはそのメッセージング機能を、米国ドルのような不換通貨に紐付けした暗号通貨である『ステーブルコイン』と組み合わせようとしています。小売りでの決済を目的としていますが、これは送金にも使用できます。Barclaysのアナリストによれば、この決済システムと新しいインスタグラムの『購入可能タグ』を組み合わせることで、Facebookはさらに190億ドルの収益源を得ることになります」とPistone氏は続けます。

テーブル決済フィンテックは、現在レストランで人気です。このテクノロジーは卓上タブレットを使用するため、お客様の支払いをするためにウェイターがクレジットカードを持って歩き回る必要がありません。セルフサービスの決済と考えることができます。
「最近米国の多くのレストランが、運営の効率性向上、セキュリティの強化、テーブルの回転率向上のためにテーブル決済テクノロジーを導入しています」と、ホスピタリティ業界に向けたテーブル決済ソリューションのプロバイダーであるTableSafeのビジネス開発部門責任者、Erik Ploof氏は説明します。「一部のレストラン運営者は、テーブルに設置した単一のソリューションによって、またはサーバーによって管理されるタブレットを使用して、テーブルでの注文と決済の概念を一つにまとめています」
ただし、Ploof氏によれば、その他の多くの運営者、特に優れたサービスに焦点を当てた包括的なサービスを提供する運営者は、注文プロセスと決済プロセスを別にすることに価値を見出しています。

このようなフィンテックは、ボーリング場、エクササイズジム、ヘアサロンなど、他のビジネスにおいても検討されています。このテクノロジーは、1か所での決済の列や、プロバイダーステーションのボトルネックを解消したい業界にとって利点となります。例えば、美容師が自分の携帯電話のSquareで決済を処理する場合などです。
買掛金自動化は、業務委託形式の労働者からサプライチェーンのベンダーへの決済まで、すべてに対応しています。「買掛金自動化のような企業決済ツールによってもたらされる効率性は、特に製造業者と販売業者が、現代の増加し続ける『瞬間的な満足』の需要を満たすために必要としているものです」。調達から支払いおよびサプライチェーンコラボレーションに向けたサービスとしてのソフトウェアプロバイダーであるSourceDayのCEO、Tom Kieley氏は言います。

「Amazon、Walmart、そして今ではTargetも、翌日または当日配送を推進しています。他でもないこれを保証することが、新しい基準になりつつあります。販売業者がこれに追いついて競合する唯一の方法は、サプライチェーンのすべてのリンクを迅速化する方法を見つけることです。そして、決済を自動化およびデジタル化することは、そのパズルの大きなピースです」とKieley氏は続けます。
パーソナライズドフィンテックは、特定の決済の問題を解決し、個人のニーズに応えるように設計されています。「なぜ人は、お金を入れるために金属のプリペイドカードを選ぶのでしょうか? これらのカードを発行することで、フィンテックは顧客に重要性、成功、革命といった印象を与えています」とArhipov氏は説明します。「あるいは、別の例として従業員用のデビットカードであるZestfulがあります。従業員への特典プログラムとして予算を確保し、トレーニングやフィットネスで使用することができます。会計士には、払い戻しプロセスが必要ありません。便利でしょう?」

販売時点 (POS) ローンは、新しい決済プランです。この方法は、借金が嫌いで、クレジットカードの使用を避ける傾向にあるミレニアル世代に最も人気です。
POSローンの消費者への利点は、第一に利息がないことです。「クレジットカード会社と同様に、貸付業者は小売り業者に手数料を請求します」とPistone氏は説明します。「通常POSローンは、4か月間Xドルの支払いなど、一定額に分割されます。しかし、購入した商品はその日に持ち帰ることができます。数年前であれば、購入予約で冷蔵庫を購入した場合、最後の支払いが終わってからやっと家に持ち帰ることができました。承認は即座に完了します」

フィンテックの成功にとって重要なのは総合的な価値です。「大事なのはテクノロジーではありません。体験のパーソナライズ、ユーザーの振る舞い、そしてブランド力です」とArhipov氏は言います。「フィンテックは、個人に対しても企業に対しても強力なブランドを打ち立てる必要があります。そして、重要なのは量よりも価値です」

 

決済システム: リーダーへの教訓

  • お客様には多くの決済オプションを提供してください。お客様の決済を簡単にすることで、顧客体験を改善し、リピート販売を促進できます。
     
  • 金融サービスの手数料を下げるために、追加の報奨や割引を提供することを検討してください。お客様がこれらの決済オプションを使用した場合に、割引や追加の報奨を提供します。

  • 新しいフィンテックを使用して、従来の銀行との条件を改善するように交渉しましょう。銀行手数料、条件、リアルタイムのデポジットや決済クレジッティングなどのサービスを従来の銀行と再交渉し、コストを削減してキャッシュフローを改善しましょう。 

  • ブランドの決済オプションをカスタマイズして、ロイヤルティプログラムに結び付けましょう。スターバックスのように、独自のアプリを開発して決済オプションとロイヤルティプログラムを組み合わせることを検討してください。
     

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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