2020年6月19日

在宅勤務への急速な移行に伴う新しいITの課題

従業員は今や、自宅から会社や同僚とつながるようになっています。この記事では、セキュリティから帯域幅にいたるまで、ITの問題を解決するための簡潔で重要なリストを紹介します。この未曾有の状況でチームを束ねて生産性を維持する際に直面するかもしれない問題をまとめました。

在宅勤務自体は新しいものではなく、極端な発想でもありませんが、この新型コロナウイルスの危機に全員が在宅勤務することは、これまでにない極端な状況です。どうすればよいかを理屈の上ではわかっていても、問題なくやり通すことは簡単なことではないでしょう。

ここでは、私たちが直面する可能性のあるいくつかの種類の問題について説明します。もちろん、誰も予想しなかった多くの問題が他にも発生することは間違いないでしょう。しかし、私たちは切り抜けなくてはなりません。

 

ネットワーク (特に携帯電話ネットワーク) の負荷

一般家庭向けのブロードバンドネットワークは通常、日中は混雑していませんが、これからの数週間はそうはいかないでしょう。携帯電話ネットワークの使用率も高まるかもしれません。これまでオフィスの機器を使って電話やメールを利用していた人々が、自宅から仕事の電話をかけるようになるからです。

料金の問題も発生するかもしれません。自宅のブロードバンドや携帯の契約で無制限のデータプランを選んでいるでしょうか? ビデオ会議を頻繁に行う場合は、そのようなプランが必要になるでしょう。多くの場合、インターネットサービスプロバイダーの契約には、ピーク期間にユーザートラフィックの優先度を下げる条項があり、そのような期間にはサービス品質の変化に気付くかもしれません。今後、一日の「ピーク期間」は、これまでよりはるかに長くなる可能性があります。

主要な通信キャリアであるVerizon、AT&T、T-Mobileの各社は、ネットワーク負荷の増加に対する準備ができており、そのような状況への対策を用意していると発表しました。しかし、それが十分なものかどうかは 現時点ではわかりません。

Verizon社とT-Mobile社は、一部の直営店を休業にしました。大手キャリアの多くの店舗はフランチャイズ経営なので、休業するかどうかはオーナーの判断に委ねられています。

リモートワークをサポートする製品のベンダーは、トラフィックの大幅な増加に直面しています。これらの会社はうまく対応できるでしょうか? リモートミーティングサービスのTeamsを含む、一部のMicrosoft Office 365サービスでは、ヨーロッパの月曜日の早朝にサービス停止が発生しました。Microsoft社はこの問題を3時間以内に解決し、原因は「アップストリームでの停電」にあるということなので、新型コロナウイルスの危機とは無関係だったのかもしれません。しかし、問題が発生する可能性はあります。Zoom社やLogMeIn社のような小規模ベンダーにとって、この危機は大きな試練になるでしょう。

Microsoft社は、管理者向けのガイダンスを公開しました (Office 365管理センターで確認できます)。これは、Office 365の機能を調整してリモートでの使用率の急増に対処するという内容で、具体的には「一部の必須ではない機能を一時的に調整する」というものです。以下のように記載されています。

たとえば、以下の機能を変更する可能性があります。

  • プレゼンスを確認する頻度
  • 第三者がタイピングしているときに表示する間隔
  • ビデオの解像度

 

ビデオの解像度はおそらく、Microsoft Teamsのようなビデオ会議機能に関係するものでしょう。最高ビデオ品質は「必須ではない」かもしれませんが、ユーザーエクスペリエンスに影響するかもしれません。このMicrosoft社の発表に関係なく、競合他社も同じような対策を検討することを迫られるでしょう。

同じような理由で、無料サービスの機能が制限されていないかを確認してみてください。たとえば、この記事を執筆している時点で、Zoom社のWebサイトには以下のメッセージが表示されています。

重要な通知: 需要が増加しているため、電話によるダイヤルインの音声会議機能は、無料の基本プランから一時的に除外される可能性があります。この期間は、弊社のコンピューター音声機能を使用することを強く推奨します。電話によるダイヤルインの音声会議が必要な場合は、別のパッケージオプションをご確認ください。

 

ホームセキュリティ

多くのリモートワーカーは、これまで仕事とは関係なかったコンピューターやネットワークを仕事で使用するようになるでしょう。このような状況は心配の種となります。

組織の仮想プライベートネットワーク (VPN) を通じてネットワークにアクセスすることができ、さらに、VPNのユーザー数が急増しても対応できる容量があれば理想的です。VPNの環境を外部委託しており、追加の容量を購入できる場合は、少なくともその選択肢を検討すべきです。

自宅のコンピューターで仕事をすることをユーザーに許可する場合、その環境のセキュリティを検証するのは現実的ではありません。セキュリティで保護されていないと考えるのが妥当です。そのような状況では、Windows TerminalやCitrixなどのターミナルインターフェイスをVPN上で実行するのが良いでしょう。ただし、全員が利用できるとは限りません。

より簡単にセキュリティを確保する方法があります。サポートされていないバージョンのWindowsやmacOSからの接続をブロックする手段があれば、それらの接続を許可しないことを検討してください。

在宅勤務のユーザーがWi-Fiネットワークのセキュリティを保つ方法を以下に示します。

  • 個人を特定できないSSIDを使用します。
  • ネットワークに強力なパスワードを設定します。
  • ネットワークの暗号化を有効にして、最低でもWPA2-PSKの暗号化方式を使用します。
  • WPA3をサポートしている最新の機器があれば、その方式を使用します。セキュリティが大幅に強化されています。
  • ルーターの管理者アカウントに、ネットワークのパスワードとは異なる強力なパスワードを設定します。
  • Wi-Fiルーターや他のネットワークハードウェアのファームウェアが最新のバージョンになっていることを確認します。

 

許可されていないソフトウェア

リモートワークのプランが明確でなく、十分な容量も用意されていない場合、従業員は仕事をこなすために便利なツールを何でも使おうとします。リモートワークの準備が整っている会社は少ないので、このような状況は頻繁に発生するでしょうが、できれば避けたい事態です。

たとえば、会社でOffice 365を使用した文章の共同作業が許可されている場合、個人のGoogle Docsアカウントでその作業を行いたくはないでしょう。その逆の場合も同様です。特定のソフトウェアやインターネットサービスを使用しないというわけではなく、重要なのは、会社で許可されたソフトウェアとサービスだけを従業員が使用できるようにすることです。セキュリティと相互運用性を確保し、全員がオフィスに戻ったときに問題が起こらないことが何より大切です。

会社で許可されたソフトウェアのうち、VPNや仮想ミーティング用の製品などで、追加のライセンスの購入が必要になることもあるでしょう。

 

ヘルプデスクにかかる負荷

多くのユーザーは、新たな技術上の問題に直面することになります。うまくVPNに接続できるか? オフィスで使っていた認証情報は自宅からも使えるか? といったことです。FAQを作成してメールで全員に送るとよいでしょう。

また、リモートユーザーの多くがMacを使って仕事をすることを希望するかもしれません。これは、Macで機能するシステムや機能しないシステム、何らかの対処が必要なシステムを把握する良い機会になります。これらの情報をまとめておけば、必要とするユーザーに送ることができます。

 

COVID-19に関係する詐欺に注意する

COVID-19の危機を利用しようとする詐欺に注意してください。在宅勤務をターゲットとした詐欺は、攻撃者の間でおなじみの手口の1つです。

個人的なコミュニケーションに注意を払うようユーザーに伝えてください。全員が在宅勤務をしている場合、攻撃者はビジネスの情報を手に入れるために、自宅にいるユーザーを標的としてフィッシング詐欺を仕掛けます。「在宅勤務をしてみませんか?」という件名の詐欺メールは「在宅勤務をしていますか?」というものになり、生産性向上ツールの売り込みメールの後ろに攻撃者が潜んでいます。

インターネットでのコミュニケーションでは、注意を怠らず無条件に信用しないという原則を徹底しましょう。AT&T社のCyber Awareページには、他のユーザーを指導するために役立つヒントが記載されています。

 

在宅勤務のデメリット

実際に在宅勤務を行ってみると、誰もがその問題からすぐに教訓を得ます。これまで説明したような技術上の問題ではなく、心理的な問題です。

自宅では、たとえ1人でいる場合でも、オフィスにいるよりも集中して働くことが難しくなります。自宅にはたくさんの誘惑があるからです (テレビ、キッチン、飼い犬など)。このようなものは、オフィスにいればあまり魅力を感じることはありません。

自宅にいるのが自分だけでない場合は、周りの人が一番の問題になります。彼らは、あなたが仕事中であることを知っていても、家にいるなら時間が空いていると思います。また、あなたの様子を見て「メールを読んでいるだけ」だと思い込み、自分たちの用事のほうが重要だと考えます。

子供がいれば、1人の時間を作ることは難しいでしょう。休校の間、子供たちは家に閉じ込められており、やることがありません。邪魔されずに仕事ができれば、幸運な人の一人なのです。

 

すべてが終わったとき

在宅勤務についての壮大な実験が終わったとき、会社や従業員がその考えを気に入り、ビジネスで在宅勤務が一般的な働き方になるかどうかという点については、業界内で多くの憶測が飛び交っています。

そういう変化は確実にあるでしょうが、従業員の多くは、再び街に通勤してオフィスに通えるようになったことに感謝し、交通渋滞がある日常に戻れたことに笑顔を見せるでしょう。シリコンバレーの技術者たちはオフィスでまた無料の食事やゲームを楽しめるようになったことを喜び、郊外からの通勤者は再び街での娯楽を楽しむようになるでしょう。

雇用主の多くも同じように感じるでしょう。リモートでのコミュニケーションは対面でのやり取りとは違い、おそらく創造性や生産性の一部が失われてしまうからです。

最終的に、この経験によって私たちは変わっていくでしょうが、一部で予想されているように大きく変化することはないでしょう。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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