マルチクラウドにおける予測分析

マルチクラウドの管理は、予測分析の実用的な手段の1つです。このことはあまり知られていません。クラウドコンピューティングがより複雑になるにつれて、これらの高度な分析は、リソース消費率、コスト、可用性などの予測に役立ちます。

 

クラウドコンピューティングは非常に複雑です。多くのITリーダーは、ビジネスが1社または2社のクラウドベンダーで標準化されるような、統一されたインフラストラクチャを望んでいますが、現実にはそうなりません。

その理由は単純です。ビジネスが依存するアプリケーションは、さまざまなクラウド上にあります。企業のクラウドミックスを簡素化するため、ユーザーにいくつかのアプリケーションやサービスの使用を強制的に停止させることは理不尽です。つまり、複数のクラウドを同時に管理するマルチクラウド戦略が、唯一の論理的手段になります。

それでも、マルチクラウドの管理は難しい作業であり、しばしば予期せぬ障害を伴います。たとえば、プラットフォームを抽象化すること、つまり、コンピューターコードなどの複雑な内容をプラットフォームのより低いレベルに押し込むことでユーザーインターフェイスを簡素化することは、開発者やユーザーにとっては有用ですが、IT運用スタッフにとっては複雑さが増す可能性があります。この種の複雑さは管理上の問題を増加させます。

「クラウドに移行すると、新しい複雑なレイヤーが管理業務に追加されます。」と述べるのは、ZDNetのDavid Gewirtz氏です。「選択したさまざまなパブリッククラウドプロバイダーによって提供されるリソースだけでなく、そのすべてを管理するために必要なすべてのソフトウェアとライセンスも対象にして、複数のクラウドにまたがって自動化と管理を行う必要性を念頭に置き、計画と予算確保を行う必要があります。」とも述べています。

そこで必要になるのが予測分析です。

 

データグラビティの中心

予測分析は、歴史的およびリアルタイムのデータパターンと傾向に基づいて将来の事象を予測する、分析の一種です。予測分析は、Amazon Web Services Spotインスタンスのコストの予測と管理、サーバーやネットワークの障害の予防、顧客体験の管理など、今日では無数の場所で使用されています。

マルチクラウド環境で予測分析を最大限に活用するための鍵は、データがすべての中心にあることをまず理解することです。データグラビティにより、すべてのビジネスアプリケーションが一括して維持されます。データグラビティはあらゆるビジネスにおける意思決定の原動力であり、すべての分析を可能にする中心軸です。

IT部門は、これらのテクノロジーを使用することで、クラウドミックス内の各クラウドサービスが時間とともにどのように使用されるのか、または使用されないのかを予測し、管理できます。また、ライセンスやサービスレベル契約の要件が将来にわたって満たされるかどうかを確認したり、ボトルネックを予測し混乱に対応するなどの問題の予測や予防機能を利用できます。

 

ハイブリッドITによる変革

上記のことから、アクセス可能で柔軟なデータストレージと精緻化された総合的なデータ戦略は、ビジネスアナリティクス全体を機能させるうえで不可欠です。ビジネスでクラウドサービスの集合を全体的に機能させるには、クラウドごとに存在するすべてのデータサイロを破棄することが間違いなく不可欠です。しかし、それには新たな分析戦略が必要です。

「マルチクラウドの消費は今や新たなIT標準になっているため、拡大する技術的な資産を管理する分析戦略がこれまで以上に重要です。」と語るのは、Red Hatの管理ソフトウェア担当シニアディレクターであるThomas Anderson氏です。

しかし、マルチクラウドの複雑さは、多くの予測分析機能に重大な圧力を与える可能性があります。サービスとしての人工知能 (AI)、サービスとしてのスーパーコンピューティング、サービスとしてのデータサイエンス、サービスとしてのデータストレージ、IoT (Internet of Things) データの大量処理など、多くの新しいテクノロジーがクラウドに実際に移行しています。それらはすべて、(特にエッジコンピューティングと連携して)より多くのストレージとクラウドコンピューティングリソースを必要とします。

予測分析は、マルチクラウド管理における分析ミックスの一部です。特に、リソース消費率、コスト、可用性の予測、内部処理の効率化、リスク管理、パワーオートメーション、AIとのニューラルネットの共有、AIに向けたニューラルネットアルゴリズムの開発予測や指示までも行うことが可能です。

そのことから、インフラストラクチャの管理にも同様に予測分析が使用されています。

「クラウドとマルチクラウドのインフラストラクチャがコモディティ化され、コンテナー、サービスとしての機能、機械学習の新しい世界などに道を譲り、分析と管理がインフラストラクチャに続くべき時が来ています。」とAnderson氏は言います。

機械学習における予測分析の役割は、マルチクラウドがどれだけ大きく複雑に成長したとしても、企業がマルチクラウドを管理し最適化することを可能にします。

予測分析と機械学習は、ニューラルネットにおいて同様の起源を共有しています。ディープラーニングは、きわめて高度なアルゴリズムを持つ非常に複雑な機能です。正確な予測を行うため、機械学習の出力が予測分析の入力に追加されます。

ディープラーニングとAIが進歩するのに伴い、予測分析が独自のアルゴリズムに組み込まれるようになりますが、その多くは人間がコードを作成したものではなくなります。「理論上、AIで適切な数学的アルゴリズムを選択することは、機械が適切な手法を決定するにつれて時代遅れになります。」と、Richard Boire氏は『Predictive Analytics Times』という投稿の中で語っています。AIが独自のコードを作成し、独自のアルゴリズムの選択を学ぶと、クラウドオートメーションの自動化がさらに進んでいきます。

 

マルチクラウド分析戦略の策定

あらゆる企業のマルチクラウド分析戦略はその企業特有です。しかし、マルチクラウドで分析を使用する計画では、考慮すべき共通の事柄があります。以下にその4つの事柄を示します。

サードパーティ製のマルチクラウド監視プラットフォームを検討。「GoogleがStackdriverを買収したのは偶然ではありません。クロスプラットフォームの監視プラットフォームとして再スタートしたのです。Googleは、AWS CloudやMicrosoft Azureとのより効果的な競争を目指す中で、マルチクラウド監視の価値をいまだに提唱しています。」と、RedMonkの創設者であるJames Governor氏は述べています。

サードパーティのマルチクラウド監視プラットフォームを使用してもIT部門での作業が容易化されない場合、クラウドサービスごとに分析を個別に実行し、出力をレポートまたはダッシュボードに集約します。あるいは、すべてのカスタムアプリケーションと同様に、クロスプラットフォーム分析のための独自の分析を作成することも可能ですが、この方法が理想的であることはまれです。

今すぐにディープラーニングを採用。ディープラーニングは未熟なテクノロジーですが、すでにビジネスの方法を変えつつあります。しかしながら、マシンの「トレーニング」には大量のデータと時間がかかるため、今すぐ始めてください。そうすれば、予測分析の入力に追加すべきさらなるインサイトが得られ、これらのテクノロジーが成熟するにつれて、革新、自動化、技術研究に集中するための優位な位置に立つことになるでしょう。

予測分析を使用して、データストレージの広がりとコストを抑制。ストレージコストは安価で、1つのデータセットを複数のクラウドそれぞれに格納して使用する方法が促進されています。しかし、それは本当に安価な方法ではありません。ガバナンス、コンプライアンス、データ一貫性、セキュリティなどの面で、データ管理は、集約的で高価です。さまざまな場所にある同じデータセットに対して分析を繰り返し実行することも無駄です。これらのサイロを解体し、クラウド間でデータをアクセスできるようにします。予測分析を使用して、プロセスとアクセシビリティを管理および最適化します。

クラウドとエッジの両方を計画。IoTによって、センサー、ゲートウェイ、ユーザーなどに近いエッジで分析を行うことがより一般的になるため、より多くのデータとアプリケーションも「外」に存在します。データの少なくとも一部と、分析のほぼすべてのアウトプットは、最終的にクラウドで処理されるため、マルチクラウド分析戦略にエッジ管理を含めます。少なくとも、全体的な分析戦略の観点から、マルチクラウドの一部としてエッジを扱います。

これでマルチクラウド分析の話は終わりでしょうか? おそらくそうではありません。1つ例を挙げると、AIと予測分析は、すでに他の分野でそうなっているように、マルチクラウドという考えそのものを破綻させる可能性があります。

しかし、クラウドは普及しています。他のすべてのものと同じように、時間とともに変化しています。そして、クラウドが残っている限り、それを管理するうえでの予測分析の役割も同様に残ります。

分析用途において、性能と高い評判によりAIは引き続き強力に使用されると予想されます。理論的には、少なくとも、AIによって近い将来マルチクラウドの管理が容易になるはずです。また、IoTとエッジコンピューティングも成長し、クラウドコンピューティング機能に対する要求がさらに高まります。

将来がどうなるにしても、マルチクラウドを管理することはビジネスにすぐに必要なことです。目標が達成され、プロセスが効率化され、問題が予防されることを確実にするためには、予測分析を実行することが最善です。さらに、予測分析は、次に起きることに対し、非常に重要な注意喚起を与えてくれます。

 

マルチクラウドにおける予測分析: リーダーとしての知恵

  • マルチクラウドは、企業が複数のプロバイダーのクラウドサービスを使用することを指します。それは非常に複雑で管理が難しいものです。
  • マルチクラウドは、サービスとしてのAI、サービスとしてのスーパーコンピューティング、サービスとしてのデータサイエンス、サービスとしてのデータストレージ、IoTデータの大量処理など、より多くのクラウドサービスが追加されるにつれて、ますます成長しています。
  • 予測分析により、IT部門は、リソース消費率、コスト、可用性の正確な予測、内部処理の効率化、リスク管理、ライセンス管理、パワーオートメーションなどを、複数のクラウドサービスとプロバイダーにまたがって行うことが可能です。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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