ネット中立性とIoTについて 知っておくべきこと

2015年のネット中立性規則が最近撤廃されたことで、IoTはどのような影響を受けるのでしょうか。議論を両サイドから探ります。

 

米連邦通信委員会 (FCC) が、同委員会の2015年のネット中立性規則を撤廃したことで、モノのインターネット (IoT) の成長に拍車がかかる可能性があります。少なくともその規則に批判的な一部の人々がそう考えています。

規則の撤廃を決める12月の投票における、FCCの委員長Ajit Pai氏の主張によれば、IoTは今後数年間で急成長すると予測され、ブロードバンドとモバイルプロバイダーは自身のネットワークに投資するインセンティブを必要とする、ということになります。

IoTデバイスの数が、急増すると予測されていることは事実ですが、その理論は、中立性規則が原因となり過去2年間でブロードバンドの投資が減少したという、真偽が明らかでない主張に大きく依存しています。一部の指標では、ブロードバンドの投資は確かに減少しましたが、正確な原因は不明です。

Pai氏と彼の支援者が撤廃を擁護すると、ネット中立性規則の複数の支持者が、FCCのアクションは実際にはIoTの妨げになる可能性があると示唆しています。規則がなくなることで、ブロードバンドプロバイダーが一部のコンシューマーグレードのIoTアプリケーションをブロックまたは減速できるようになると彼らは反論します。そのシナリオでは、自身のスマートホームサービスを提供するブロードバンドプロバイダーが、競合他社のスマートホーム製品を抑制する可能性があります。

撤廃が投資の急増につながるという主張は拡大解釈であると、一部のネット中立性の支持者は言います。

コネクテッドカーや産業界のシステムなど、帯域幅の影響を受けやすい大部分のIoTサービスは専用またはエンタープライズネットワークで運用されます。こうした専用のネットワークは、パブリックインターネットに適用されるネット中立性規則の影響下にはなかったと、デジタル著作権団体のPublic Knowledgeでシニアバイスプレジデントを務めるHarold Feld氏は述べています。

また、パブリックインターネットで転送されるコンシューマーグレードのIoTサービスのほとんどは、ストリーミングビデオなどのサービスと比較すると、ごくわずかなネットワークリソースを必要とする狭い帯域幅のデバイスを使用するとFeld氏は語ります。

 

IoTをネット中立性規則と結び付けることが、まさにバズワードになろうとしています。

 

デジタル著作権団体、Public Knowledge、シニアバイスプレジデント、Harold Feld氏

Feld氏は次のようにも語ります。「たとえ、IoTが誰もが予測するような割合で拡大しても、明らかにボリュームが小さいため、ネットワークトラフィックを占めるパーセンテージはきわめて低いままです。帰宅直前に自宅の温度を18度から22度に調整する操作は、ネットワークの需要を高めるようなことではありません」。

現在計画済みのIoTサービスに、計画外の大規模なネットワーク投資は発生しないと思われるとFeld氏は言います。「大規模な投資が発生するとすれば、コネクテッドカーなどが考えられます。それならば投資のほか、個別のネットワーク構築も発生します」とFeld氏は付け加えます。

また、Feld氏は、IoTをネット中立性規則に結び付けることが、「まさにバズワードになろうとしている」とコメントしています。

さらに、商用インターネットのネットワーク需要も増加すると、ネット中立性規則が実施されてもされなくても、ブロードバンドプロバイダーとキャリアは自身のネットワークに投資する、と語る規則の支持者もいます。

「いずれにしろキャリアは、競合他社と争うために投資が必要です」とPCメーカー、Psychsoftpcの社長であるTim Lynch氏は語ります。

それでも、撤廃の支持者は、ブロードバンド業界自体の投資額が、2014年には784億ドルであったが、ネット中立性規則の可決後最初の年である2016年には760億ドルに減少していると指摘します。

経済学者のHal Singer氏は、2015年に制定された規則でブロードバンドを一般のキャリアサービスとして再分類することに反対していましたが、同氏もまた、12の大手プロバイダーの投資が近年減少していることを発見しました。それに対して、ネット中立性を支持するFree Pressは、減少を示す投資額に異論を唱えました。

ブロードバンドの投資が減少したとしても、ネット中立性規則が、その他の要因の一つである一部のモバイルキャリアがLTEの展開を徐々に減少させていることと比較してどの程度その原因になっているかは明らかではありません。

 

「規則がない場合はどうでしょうか。モノのインターネットがこの面倒な実験的フェーズを乗り越え、家庭だけでなく、想像もしないようなすべての商用アプリケーションでリアルタイムな価値を生み出すことを考えてみてください」

 

FCC委員長、Ajit Pai氏

IoTが議論の主題ではありませんでしたが、Pai氏は、ネット中立性規則を撤廃する投票の前にそれを議論に持ち込みました。

Pai氏は、FCCの12月の会議で、複数のブロードバンドプロバイダーが、規則を理由に投資を控えるとエージェンシーに伝えたことを述べました。また、ネット中立性規則を維持することは、「10年後、20年後に必要なインターネット」に悪影響を与えかねないと語りました。

「IoTの出現、VRなどの高ビットレートのアプリケーションの開発、私たちがまだ完全に把握できていない大容量のビットコインの発掘などの新たな活動によって、ネットワークの需要がこれまでにないほど圧倒的に増加しています。時間とともに、ネットワーク自体を拡張する必要も出てきます」とPai氏は付け加えました。

今日の帯域幅だけで顧客のニーズを満たすか、または、インターネットに対して基本的に何もすることがなければ、ブロードバンドを規制対象の共通キャリアサービスに再分類するといった2015年の規則がそのような弊害を生むことはないとPai氏は語ります。しかし、新たなテクノロジーが数多く出現しており、それらがさらに帯域を必要とするとも主張します。「規則がない場合はどうでしょうか」 Pai氏は続けます。「モノのインターネットがこの面倒な実験的フェーズを乗り越え、家庭だけでなく、想像もしないようなすべての商用アプリケーションでリアルタイムな価値を生み出すことを考えてみてください」

2015年の規則に対する懸念の多くは、ブロードバンドを規制の軽い情報サービスの代わりに、電気通信法のタイトルIIの下で規制の厳しい共通キャリアサービスとして再分類するといったFCCの当時の決定を中心に生じました。

タイトルIIにはレートとネットワーク共有の規則など潜在的な規則が数多く含まれ、2015年のFCCではこうした共通キャリアの規則の多くを課すことは差し控えると約束されましたが、将来の委員会でも同様である保証はないと元民主党下院議員で、ブロードバンドによる利益の支持団体、Internet Innovation Allianceの名誉会長であるRick Boucher氏は語ります。

モバイルキャリアが次世代ネットワークの構築を検討しているにもかかわらず、潜在的な新たな規則の不確実性が投資の妨げになったとBoucher氏は語ります。また、多くのIoTネットワークがパブリックインターネットから切り離される場合もあるが、5GのモバイルサービスがIoTにとって重要な推進力になるとも述べています。

Boucher氏はまた、モバイルキャリアは「まさに5Gを展開」しようとしているが、新たなモバイルテクノロジーでは4Gの展開以上に多数のアンテナ、ルーター、ネットワーク機器などを購入する必要があり、「これまで以上に大規模な投資が必要」であると付け加えます。

たとえば、将来FCCが、2000年代始めに一部のプロバイダーに対して行った事例のように、ブロードバンドプロバイダーに競合他社とのネットワーク共有を要請した場合、「展開への投資を正当化するために必要な収益を得るのがきわめて難しくなる」とBoucher氏は述べています。

 

ネット中立性における リーダーのためのアドバイス

  • FCCの2015年のネット中立性規則に対する反対者の一部は、撤廃によって、IoTの成長を促進するために必要な投資が新たに生じると語ります。
  • 一部の指標によると、2016年と2017年のブロードバンドの投資は確かに減少しています。
  • 規則の支持者はIoTへの影響を疑問視しています。商用のIoTサービスの多くはパブリックインターネットとは切り離されたネットワークで稼働しているため2015年の規則の影響を受けません。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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